なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「追跡」 Experiment in Terror (1962)

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監督:ブレイク・エドワーズ
製作:ブレイク・エドワーズ
原作:ゴードン夫妻
脚本:ゴードン夫妻
撮影:フィリップ・H・ラスロップ
編集:パトリック・マコーマック
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:リー・レミック
   グレン・フォード
   ステファニー・パワーズ
   ロス・マーティン
   ロイ・プール
   ネッド・グラス
   アニタ・ルー
アメリカ映画/118分





<あらすじ>
サンフランシスコの閑静な住宅街。若い女性銀行員ケリー・シャーウッド(リー・レミック)が車で自宅に戻ると、ガレージの暗がりで正体不明の男が待ち伏せしていた。男はケリーや同居する高校生の妹トビー(ステファニー・パワーズ)の日常生活をつぶさに調べており、自分の言う通りにしないと2人とも命はないと脅迫する。彼の要求は銀行から10万ドルを盗み出すこと。警察に連絡すれば容赦なく殺す。具体的な指示は追って連絡すると言い残して男は去っていった。
恐ろしさのあまりFBIサンフランシスコ支局へ電話をかけるケリー。しかし、すぐに犯人に気付かれ、途中で電話を切られてしまう。銀行が狙われている。電話を受けたベテラン捜査官リプリー(グレン・フォード)は、ただのいたずら電話ではないことを直感し、通話記録などから電話の主がケリーであることを突き止める。
支店長の協力のもとケリーと面会したリプリーは、秘密裏にFBIが彼女と妹の2人を警護すること、FBI直通の無線機を24時間体制で用意すること、そして何があっても犯人の指示通りに動くようにと伝える。おとり作戦で犯人を捕まえようというのだ。しかし、犯人からの執拗な脅迫電話、常に見張っていることを思い知らせるような恫喝工作が続き、ケリーは精神的に参っていく。
一方、リプリー捜査官のもとに何らかの助けを求める女性が訪れるものの、真相を告白する直前に殺されてしまう。女性の部屋を捜索したFBIは、残されたメモ書きから彼女がケリー脅迫犯の知人で、FBIへの接触がバレて殺害されたことに気づく。やがて、ケリーと犯人の通話内容を解析した結果、容疑者はレイプや強盗、殺人などの前科がある男リンチ(ロス・マーティン)と判明。リプリー捜査官はリンチの愛人である中国人女性リサ(アニタ・ルー)を探し出すが、入院中の一人息子を我子のように可愛がってくれるリンチが犯罪者であるはずないと固く信じるリサは捜査への協力を頑なに拒む。
そして、いよいよリンチから具体的な10万ドル強奪計画の指示が出された。万全の体制で警護に当たるFBI。ところが、そんな事情を知らない妹トビーがリンチの罠にかかり、人質として囚われてしまう。FBIの存在がバレればトビーの命はない。果たして、ケリーはどうするのか…?

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大人向けの洒落た恋愛映画やコメディ映画でお馴染みの名匠ブレイク・エドワーズ。あの「ティファニーで朝食を」('61)の次に手がけたのが、こちらの超シリアスでダークな犯罪サスペンスだ。深夜に帰宅したヒロインがガレージで犯人に背後から襲われるショッキングなオープニングから、ただならぬ不穏な空気がスクリーン全体に漂う。

主人公だけでなく最愛の妹の一挙一動にも常に目を光らせ、日常のふとした瞬間に己の凶悪な存在を見せつけ、逃げ場のない不安と恐怖を徹底的に植え付けることで、犯罪に加担する以外に選択肢がないと思い込ませていく。その巧妙かつ残忍、なおかつ得体の知れない犯人像はなかなか強烈だ。

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そんな犯人の行動を追跡し、正体を突き止め、卑劣な犯行計画を阻止しようと動く捜査官リプリー。本作は映画的なハッタリや誇張などを極力排し、根気と粘り強さの求められる地道なFBIの捜査手法を骨太なリアリズムで描いていく。本作の原作および脚本を手がけたゴードン夫妻の旦那ゴードン(そう、フルネームはゴードン・ゴードンというらしい)は、第二次世界大戦中にFBI捜査官だったという異色の経歴の持ち主。妻とコンビでミステリー作家へと転身したわけだが、戦前に20世紀フォックスのパブリシストとして働いていたこともあり、ハリウッドと太いパイプがあったことから映画の脚本にも携わったようだ。いずれにせよ、ゴードン氏のFBI捜査官としての実体験が本作の脚本に生かされていることは明らかだろう。

そうした実録犯罪ドラマ的な要素を盛り込みつつ、エドワーズ監督は計算し尽くされたスタイリッシュな演出でスリルとサスペンスを盛り上げていく。フィルムノワール的な雰囲気は、彼が製作・監督・脚本を手がけたテレビドラマ「ピーター・ガン」('58~'61)でも実践済みなので慣れたもの。極端に陰影を強調したモノクロの表現主義的なイメージ、被写体を巧みに配置することで生まれる人工的な画面の奥行き、日常と非日常の狭間にある恐怖を炙りだしていくわけだ。

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本作はデヴィッド・リンチ監督のカルト・ドラマ「ツイン・ピークス」に多大な影響を与えたとも言われている。確かに、冒頭のクレジット・シーンでは“ツイン・ピークス”(サンフランシスコに実在する地名)の看板が出てくるし、「ツイン・ピークス」のガーランド・ブリッグス少佐の名前は本作の犯人ガーランド・リンチに由来するらしい。彼がケリーの耳元で囁く“俺は過去に二度、人を殺している“と言うセリフは、「ツイン・ピークス」のキラー・ボブのセリフとしてそのまま使われている。

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そうした「ツイン・ピークス」絡みのネタも含め、どこかシュールで悪夢的なイメージの強い本作は、恐らくクラシック映画ファンだけでなくカルト映画マニアにも訴求するものがあるかもしれない。派手なアクションや直接的なバイオレンス描写など一切ないにも関わらず、息の詰まるような緊張と衝撃を畳みかけていくエドワーズ監督の力量には感心せざるを得ない。「ティファニーで朝食を」や「ピンク・パンサー」だけがブレイク・エドワーズじゃない、ということを改めて認識させられる。

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主演は本作に続いてエドワーズ監督と組んだ「酒とバラの日々」('62)でアカデミー主演女優賞に輝いたリー・レミック。ベビーフェイスのアイドル的なルックスのせいで、女優としてはずっと過小評価され続けた人だが、やっぱり巧い女優さんだなあと思う。極限の中で不安や恐怖と闘いながら状況を打破しようと模索するケリーの葛藤を、抑えた演技で的確に表現していく。ただのスクリーム・クイーンに陥らないところが凡百の女優との決定的な違いだ。

そんな彼女の静かな熱演をしっかりと受け止める、リプリー捜査官役のグレン・フォードもベテラン大御所の余裕だ。「ギルダ」('46)や「カルメン」('48)などリタ・ヘイワースとの名コンビでも鳴らしたタフガイ俳優だが、強くて逞しくて頼りになる男を演じさせたら抜群に光る。

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さらに、ケリーの妹トビー役にはステファニー・パワーズ。恐らく筆者世代には大富豪の探偵夫婦が活躍するテレビドラマ「探偵ハート&ハート」('79~'84)のチャーミングな熟女スターという印象の強い人だが、本作の当時は「パームスプリングスの週末」('63)や「アカプルコの出来事」('65)などティーン向け青春映画のアイドルだった。それゆえに伸び悩み、活躍の場をテレビへと移したわけだが、それはそうとして、無邪気なあどけなさを残した本作の彼女の可愛らしさときたら!終盤で犯人に拉致監禁され、恐怖に怯えるシーンなど思わず感情移入してしまう。

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意外なキャスティングだったのは、犯人リンチ役のロス・マーティンだ。西部劇とスパイアクションを合体させた大ヒットドラマ「0088/ワイルド・ウエスト」('65~'69)の秘密捜査官ゴードン役で有名な彼。いかにも善良そうな親しみやすさが身上の俳優だったが、そんな彼が演じるからこその薄気味悪さが遺憾なく発揮されている。悪人は普通っぽい人が演じる方が怖い、とよく言われるが、これなどはまさにその証拠だ。

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評価点数(5点満点):★★★★☆


参考DVD情報(UK盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(1.79:1)/音声:モノラル/言語:英語・ドイツ語・イタリア語/字幕:英語・ドイツ語・イタリア語・ギリシャ語・ヒンドゥー語・ポルトガル語/地域コード:2・4・5/時間:118分/発売元:Sony Pictures
特典:なし

by nakachan1045 | 2016-07-10 03:01 | 映画 | Comments(0)

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