なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ヘルハザード/禁断の黙示録」 The Ressurected (1991)

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監督:ダン・オバノン
製作:マーク・ボード
   ケン・ライチ
原作:H・P・ラヴクラフト
脚本:ブレント・V・フリードマン
撮影:アーヴ・グッドノフ
特殊効果:トッド・マスターズ
音楽:リチャード・バンド
出演:ジョン・テリー
   ジェーン・シベット
   クリス・サランドン
   ロバート・ロマヌス
アメリカ映画/106分/カラー





<あらすじ>
私立探偵ジョン・マーチ(ジョン・テリー)の事務所にクレア・ウォード(ジェーン・シベット)なる美しい人妻が訪れ、夫チャールズ・デクスター・ウォード(クリス・サランドン)の身辺を調査して欲しいと依頼する。
彼はもともと有能な科学者だったが、ある時期から言動がおかしくなったという。離れの研究室から漏れ聞こえてくる叫び声、窓から外へ照らされる異様な光。夫婦間には深い亀裂が入り、チャールズはアッシュ博士なる謎の人物を連れて家を出ていき、名門ウォード家に代々伝わる片田舎の古びたあばら家に閉じこもってしまったのだ。
あばら家の周辺を調査し始めるジョン。チャールズは何かしらの研究を行っているようだった。やがて、出入り業者が全身の肉を削ぎ落とされた状態で発見され、警察はあばら家を強制捜査する。今や別人のようにやせ細ったチャールズはクレアを人質に取って抵抗するが、結局は身柄を拘束されて精神病院へ送られた。
一方、ジョンはチャールズのトランクから古い日記を発見する。それはウォード家の先祖ジョセフ・カーウェンが1770年代に記したもので、これを発見した時期からチャールズの様子がおかしくなったという。それによるとジョセフは近隣住民から錬金術師と噂され、実際に得体の知れない実験に没頭していたようだ。やがて、彼の研究室から流出した“異形のもの”が住民に発見され、暴徒と化した人々はジョセフの自宅を焼き払った。それが今のあばら家がある場所だった。ジョセフの肖像画を見たジョンは、あまりにもチャールズと酷似していることに驚く。
部下のロニー(ロバート・ロマヌス)とクレアを伴ってあばら家を捜索したジョンは、地下へ続く秘密の扉を発見。そこで彼は身の毛もよだつ恐ろしい“何か”を発見する。そして、チャールズの不可解な行動と研究に隠された、ある衝撃の事実を知ることになるのだった…。

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'80年代ホラー映画ブームの熱狂がひと段落した感のあった'90年代初頭。ホラー業界全体が目に見えて勢いを失いつつあった。ジョン・カーペンターやトビー・フーパー、ダリオ・アルジェントらの巨匠も、徐々に撮りたい映画を撮れないような状況となっていき、安上がりなだけでクオリティの低い作品が増え始める。しかも、日本では宮崎勤事件の影響でホラー映画が槍玉に挙げられ、レンタルビデオ店からホラー・コーナーが一斉に撤去されるわ、劇場公開作品も激減するわと踏んだり蹴ったり。ホラー映画ファンとしては実に嘆かわしい状況だった。

そうした中で登場した本作は、確かに低予算の足枷はそこかしこに見受けられるものの、メカニカル効果を駆使した徹底的なゴア描写やゴシック風の味付けを施したモダン・ホラー的作風は'80年代のエンパイア・ピクチャーズやキャノン・フィルムズの良質なB級ホラーを彷彿とさせるものがあり、いたく感銘を受けたものだ。

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原作はご存知のとおり、恐怖小説の大家H・P・ラヴクラフトの代表作の一つ「チャールズ・ウォードの奇妙な事件」。それを「エイリアン」('79)や「スペース・バンパイア」('85)の脚本家であり、「バタリアン」('85)の監督であるダン・オバノンが映画化するというのだから、それは確かに面白くないわけがないだろう。

舞台を現代に移した上で、設定やプロットにもかなり変更が加えられているものの、しっかりとラヴクラフトの世界観が再現できているのは嬉しい。フィルム・ノワール的なアプローチを試みている点も、原作の語り口を考えれば大正解だ。ラヴクラフト作品の映像化は、スチュアート・ゴードン監督の「死霊のしたたり」('85)や「フロム・ビヨンド」('86)の例外を除けば、総じて失敗作に終わることばかり。これは数少ない成功例と言える。
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ちなみに、原作に出てくるチャールズ・デクスター・ウォードは有望な若き医学生。その奇妙な変化に疑問を抱いたウォード家の主治医が真相を暴いていくことになる。なので、本作の私立探偵ジョン・マーチとウォード夫人クレアは、全くのオリジナル・キャラである。

さらに、原作ではチャールズと同じような研究をする仲間がおり、手にした不老不死のパワーを悪用して世界征服を目論むという壮大な設定が用意されているのだが、その部分をバッサリと削除し、ホラー・ミステリーとしてコンパクトにまとめたのも賢明だ。
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脚本を書いたのは、オムニバス・ホラー「ネクロノミカン」('93)でもラヴクラフトの世界に挑んだブレント・V・フリードマンだが、実はオバノンもノークレジットで脚本に携わっている。というのも、もともとフリードマンとオバノンは別々で同じ原作の映画化企画を進めており、その事を知ってお互いにタッグを組むことになったからだ。なので、基本的にはフリードマンの脚本を母体としつつ、オバノンが用意していた脚本の要素も随所に盛り込まれたという。
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原作の骨組みだけを抽出して構成を練り直し、ラヴクラフト特有の自然主義的な世界観やアメリカン・ゴシックな風合いを残しつつ、クラシカルとモダンのバランスを絶妙にキープしたさじ加減も成功の要因。現代が舞台だからといって、下手にコンテンポラリー色を出してしまったら失敗していたはずだ。
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また、チャールズやジョセフによる禁断の実験から生まれた“失敗作”の数々を、メカニカル操作による緻密なクリーチャー・エフェクトで生々しく再現した特殊効果マン、トッド・マスターズの見事な仕事ぶりも特筆すべきだろう。「スリザー」('06)でサターン賞を獲得しているマスターズだが、最近ではテレビドラマにあるまじき残酷描写が話題を呼んだ「トゥルー・ブラッド」('08~'14)でもその手腕を発揮している。

さらに、「死霊のしたたり」や「フロム・ビヨンド」でもお馴染みのリチャード・バンドが音楽スコアを手がけているのも要注目。どことなく'80年代的な雰囲気…というよりも、スチュアート・ゴードン作品的な雰囲気が漂うのは、いかにもリチャード・バンドらしいスコアリングの賜物だとも言えよう。
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私立探偵ジョン・マーチ役にはドラマ「LOST」のジャックの父親役や映画「007/リビング・デイライツ」('87)のCIA諜報員フェリックス・ライター役で知られるジョン・テリー。クレア役にはドラマ「フレンズ」でロスの前妻キャロルを演じたジェーン・シベット。どちらも小粒な印象の役者であることは否めないが、まあ、大した問題ではない。なんたって、本作の真の主役はチャールズ・デクスター・ウォードなのだから。

そのウォード役を演じているのが、ホラー映画ファンには「フライトナイト」('85)のフェロモンダダ漏れバンパイア役、もしくは「センチネル」('77)でやっぱりお前が怪しかった!なヒロインのフィアンセ役でお馴染みのクリス・サランドン。まあ、一般的には「狼たちの午後」('75)の哀れなオカマ役が一番有名なのだろうが(笑)。インテリ風だけどどこか胡散臭くて屈折したキャラを演じさせたら天下一品の怪優だけあって、本作の役柄にはまさしくピッタリだし、なによりもある種の怪物的な存在感に説得力がある。クリス・サランドンあっての本作だといっても過言ではなかろう。

また、ジョン・マーチの手となり足となり情報収集をする助手ロニーを、「初体験リッジモント・ハイ」('82)のクールな一匹狼の高校生マイク役でむちゃくちゃ印象的だったロバート・ロマヌスが演じていることにも触れておきたい。
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なお、本作は日本でもブルーレイ化されているが、筆者はそれに先駆けて発売されたドイツ盤ブルーレイの初回限定盤BOXを所有。なぜかというと、こちらの方が圧倒的に特典映像が多いのだ。インタビュー・ドキュメンタリーは、いずれもArrow FilmsやScream Factoryなどの特典ドキュメンタリーを制作しているRed Shirt Picturesが撮り下ろしており、英語にドイツ語の字幕が付いているので視聴には全く問題なしだ。

実際に比較はしていないので断言こそ出来ないものの、恐らく本編映像は日本盤ブルーレイと同じフィルムを使用しているのではないかと思う。収録時間の若干の違いは、原版テープの映像方式に依るものであろう。同梱DVDはPAL方式なので、さらに収録時間の差異が発生している。

画質は決して上等とは言えないものの、まあ、ブルーレイとしては許せる範囲内。少なくとも、筆者が所有している旧アメリカ盤DVDに比べると雲泥の差で向上している。ただし、本作は4:3のスタンダードサイズ画面の上下にマスキングをした擬似ワイドであるため、スタンダードサイズ収録だった旧DVDが本来の画面サイズに当たる。実際、両者を比較してみると旧DVD盤の方が上下の映像情報が多い。まあ、痛し痒しといったところだろう。

評価(5点満点):★★★★☆
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参考ブルーレイ情報(ドイツ盤3枚組)
ブルーレイ(1枚)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio(ドイツ語)・2.0ch DTS-HD Master Audio(英語)/言語:ドイツ語(吹替)・英語/字幕:ドイツ語/地域コード:B/106分
DVD(2枚)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:5.1ch Dolby Digital(ドイツ語)・2.0ch Dolby Digital(英語)/言語:ドイツ語(吹替)・英語/字幕:ドイツ語/地域コード:2/97分
特典/製作者マーク・ボード、ケン・ライチ、脚本家ブレント・V・フリードマン、特殊効果トッド・マスターズ、俳優ロバート・ロマヌスによる音声解説/俳優クリス・サランドンのインタビュー(16分)/脚本家ブレント・V・フリードマンのインタビュー(18分)/作曲家リチャード・バンドのインタビュー(10分)/プロダクションデザイナー、ブレント・トーマスのインタビュー(8分)/特殊効果トッド・マスターズのインタビュー(16分)/未公開シーン集(18分)/ファンゴリアのチェーンソー・アワードにおけるダン・オバノンのスピーチ映像(3分)/オリジナル予告編集(USビデオプロモ版・日本劇場版)
発売元:Filmsworks/MGM (2015年)



by nakachan1045 | 2016-07-12 04:45 | 映画 | Comments(0)

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