なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「想い出よ、今晩は!」 Buona Sera, Mrs. Campbell (1968)

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監督:メルヴィン・フランク
製作:メルヴィン・フランク
原作:エイケン・モアウッド
脚本:メルヴィン・フランク
   デニス・ノーデン
   シェルドン・ケラー
撮影:ガボール・ポガニー
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:ジーナ・ロロブリジーダ
   シェリー・ウィンタース
   フィル・シルヴァース
   ピーター・ローフォード
   テリー・サヴァラス
   フィリップ・ルロワ
   リー・グラント
   ジャネット・マーゴリン
   マリアン・モーゼス
アメリカ映画/103分/カラー作品





<あらすじ>
南イタリアの風光明媚な村サン・フォリーノ。終戦から20周年を記念し、かつて駐留していた元米軍兵士たちを迎えて祝賀会が催されることになる。村をあげて準備に盛り上がる中、ただ一人浮かない顔をしているのが未亡人カルラ(ジーナ・ロロブリジーダ)。というのも、彼女は重大な秘密を抱えているのだ。
一人娘ジーア(ジャネット・マーゴリン)を育てる元米軍将校キャンベルの未亡人で通っているカルラだが、実はそもそも彼女に結婚歴などない。キャンベルという旦那の存在も全くのでっち上げだ。実は戦争末期にカルラの家では若い米軍兵士を泊まらせていた。明日の命も分からないような状況下、当時まだ17歳だったカルラは戦地へ赴く若者たちに同情し、10日間で3人の兵士たちと関係を結んだのだ。
その結果、ジーアを妊娠したカルラだったが、3人のうち誰が娘の父親なのか本人も見当がつかない。しかも、戦争が終わって彼らはみんなアメリカへ帰国。そこで、彼女は自分と娘の名誉を守るため、キャンベル・スープをヒントに架空の夫を捏造し、戦死したことにしたのだ。さらに、娘を育てるためには養育費が要ることから、父親の可能性があるフィル(フィル・シルヴァース)、ジャスティン(ピーター・ローフォード)、ウォルター(テリー・サヴァラス)の3人にそれぞれ、ジーアはあなたの娘だと告げ、全員から毎月養育費を送金させていた。そのおかげで、ジーアをスイスのアメリカン・スクールに通わせていたのだ。
万事それで上手くいっていたはずなのだが、祝賀会には元米兵3人も家族を連れてやって来る。彼らが鉢合わせして騙されていたことを知ったらマズイ。その上、亡き父(?)の同僚だった元米兵に会いたいという娘ジーアもスイスから帰国。これまで言い聞かせていた父親が存在しないばかりか、本当の父親が3人のうち誰なのか分からないなんて、娘には絶対に知られてはならない。一方、男性たちも一目でいいから我が娘に会いたいと接近しつつ、イタリアに腹違いの娘がいるなんて妻にバレたら大変だ。
かくして、カルラと3人の男たちは、それぞれの秘密を守るために悪戦苦闘し駆けずり回るのだが、フィルの妻シャーリー(シェリー・ウィンタース)が、戦死した英雄的米軍将校との娘を育てるイタリアの未亡人という美談を知って感動し、祝賀会で表彰しようと言い始めたことから、とんでもない事態に発展していく。



人間の可笑しくも哀しい性(さが)を大らかな笑いとペーソスで包み込んだ、当時のハリウッド映画らしからぬセックス・コメディである。主演はイタリアを代表する世界的ディーヴァ、ジーナ・ロロブリジーダ。舞台も明るく開放的な南イタリアの片田舎。ヴィットリオ・デ・シーカの「昨日・今日・明日」('63)や「あゝ結婚」('64)に代表される、イタリア産セックス・コメディに多大な影響を受けた作品であろうことは想像に難くない。

未婚のまま子供を産んだ女性が、後ろ指を指されたくないからと嘘に嘘を重ねる。そこまではよくある話かもしれないが、ほぼ同時に付き合った3人の男性のうち、誰が子供の父親なのか分からないというのが本作のミソ。しかも、それぞれ我こそが娘の父親だと思っている。そんな、ただでさえややこしい状況の中、3人の父親候補が鉢合わせするという不測の事態が発生。娘にも男性たちにも事の真相を知られたくないヒロインの、まさに行き当たりばったりな隠蔽工作が、スラップスティックなドタバタ喜劇として描かれていく。

と同時に、本作は男たちの身勝手な偽善にもチクリと釘を刺す。種だけつけておいて、あとは放りっぱなし。生活費の援助はしていたとはいえ、20年ぶりに現れて父親面しようなんてのは、やっぱり虫が良すぎる。しかも、奥さんや子供たちに隠れて会おうとする姑息さ。そもそも、彼らは普段から妻に甘えっぱなしで、ろくに家庭など顧みていない。そのくせ、良き家庭人、良きアメリカ人としていっぱしの社会的地位を得ている。割を食うのはいつも女ばかりってなわけだ。

ちなみに、3人の父親候補が娘の前に現れるという設定は、映画化もされた大ヒット・ミュージカル「マンマ・ミーア!」とソックリ。ハッキリとした真相は定かでないものの、恐らく「マンマ・ミーア」のストーリーは本作を下敷きにしているのだろう。ただ、あちらでは特殊なシチュエーションがドタバタ騒動を生み出す仕掛けとしてしか機能していないのに対し、本作はそこから世間一般的な常識では割り切れない人間の複雑さ、愚かさ、滑稽さをしっかりと際立たせ、ある種の人間賛歌にまで高めている点が秀逸。イタリア人の少々荒っぽい大らかさと、アメリカ人の小市民的なモラルを対比しながら、古き良きアメリカ的価美徳の矛盾に切り込んでくるあたりも実に小気味いい。

また、ジーナ・ロロブリジーダ以下の多彩なオールスター・キャストの顔ぶれも賑やかで楽しい。図々しくも愛情溢れるパワフルなイタリアのマンマを、お色気たっぷりに演じるロロブリジーダは最高だ。シナトラ一派のお洒落な二枚目ピーター・ローフォードや強面のテリー・サヴァラスが、男の情けなさをコミカルに演じているのも珍しい。図らずも夫の秘密を暴いてしまうお人好しの天然オバサンを演じるシェリー・ウィンタース、夫に振り向いてもらいたいばかりに憎まれ口ばかり叩く妻を演じるリー・グラントも好演だ。また、ヒロインの粗暴だが情熱的な恋人ヴィットリオ役で、「黄金の七人」('65)の教授ことフィリップ・ルロワが顔を出しているのも見逃せない。

監督のメルヴィン・フランクは、ビング・クロスビー&ボブ・ホープのコンビによる、いわゆる“珍道中”シリーズの脚本家として有名な人。映画監督としては、ダニー・ケイ主演の傑作コメディ「あの手この手」('54)を撮っている。スラップスティックな笑いは得意中の得意な人だ。そのコメディ・センスは本作でも冴えまくり。カラフルでお洒落なムードもいい。しかも、ラウンジ・スタイルのポップな音楽を手掛けるのはイタリアのマエストロ、リズ・オルトラーニ。また、ヴィットリオ・デ・シーカの「ふたりの女」('60)などの名作で知られるイタリアのカメラマン、ガボール・ポガニーが撮影監督を務めている。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:103分/発売元:Kino Lorber/MGM/20th Century Fox (2015)
特典:オリジナル劇場予告編


by nakachan1045 | 2016-08-09 20:41 | 映画 | Comments(0)

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