なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「血臭の森」 Assault (1971)

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監督:シドニー・ヘイヤーズ
製作:ジョージ・H・ブラウン
   ピーター・ロジャース
原作:ケンダル・ヤング
脚本:ジョン・クルーズ
撮影:ケン・ホッジス
音楽:エリック・ロジャース
出演:スージー・ケンドール
   フランク・フィンレイ
   レスリー=アン・ダウン
   ジェームズ・ローレンソン
   トニー・ベックリー
   フレディ・ジョーンズ
   アンソニー・エインリー
   デヴィッド・エセックス
イギリス映画/91分/カラー作品





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<あらすじ>
イギリスのとある女学校で、帰宅途中に近道の森を通り抜けようとした学生テッサ(レスリー=アン・ダウン)が、何者かによってレイプされるという事件が起きる。幸い命に別状はなかったが、ショックのあまりテッサは記憶を失い、言葉も話せなくなってしまった。精神科医のロマックス(ジェームズ・ローレンソン)がリハビリを試みるものの、成果は芳しくない。
この事件を受けて、学校では教師が車で生徒を自宅へ送り届けることにする。しかし、帰りを急いでいた学生スーザン(アナベル・リトルデール)はそれを無視して森へと足を踏み入れる。スーザンがいないことに気付いた美術担当の女教師ジュリー(スージー・ケンドール)は、彼女を追って森の中へと車を走らせるものの、そこで無残な死体となったスーザンを発見する。その際に犯人の姿を目撃したのだが、車の窓越しで歪んで見えた上に一瞬のことだったため、はっきりとは顔を覚えていなかった。
事件のショックで思い悩むジュリー。しかも、特ダネを求める新聞記者(フレディ・ジョーンズ)が自宅まで執拗に追いかけてくる。そこで彼女は一計を案ずる。犯人を目撃した美術教師が犯人の似顔絵を描いて一般公開する…という記事を新聞に載せてもらうというのだ。そうすれば、焦った犯人がのこのこと出てくるかもしれない。要するに、自らがおとりになろうというのである。警察のヴェリアン警視正(フランク・フィンレイ)は無茶だと反対するも、しかし目下のところ他に糸口がない。
早速、記事の反応があった。生徒の父親を名乗る人物から会いたいとの電話がジュリーのもとにかかってきたのだ。調べてみると本人からの連絡ではなかった。そこで、警察はジュリーをおとりにして待ち伏せするが、今一歩のところで取り逃がしてしまう。すると、そのすぐ近くで倒れている精神科医ロマックスが見つかる。犯人ともみ合って怪我をしたという。ジュリーを心配している様子の彼だが、何か下心がある様子だ。さらに、学長の夫サンフォード氏(トニー・ベックリー)が女学生たちにセクハラを行っていることが発覚。また、ロマックスの同僚である精神科医バートレット(アンソニー・エインリー)の行動も怪しい。果たして、ロマックス、サンフォード、バートレットのいずれかが犯人なのか…?

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これはズバリ、英国産ジャッロである。ダリオ・アルジェントの大ヒット作「歓びの毒牙('69)に主演したスージー・ケンドールをヒロイン役に迎えていることでも、本作が当時世界的なブームとなっていたジャッロを意識して作られたであろうことは想像に難くない。しかも、正体不明の犯人が黒い革手袋をはめているというのも、マリオ・バーヴァ監督作「モデル連続殺人」('64)以来のジャッロの伝統だ。

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しかしながら、イタリアの本家ジャッロと比較してエロとグロの要素は決定的に足りない。直接的な残酷描写はほぼ皆無。性描写もサンフォード氏が隠し持っているエロ写真がせいぜいで、あとはほのめかす程度にとどめている。主演の正統派美人女優スージー・ケンドールは勿論のこと、ミニスカートの制服も眩しい女学生たちが肌を露にするシーンも全くない。これがイタリア映画だったら血糊たっぷり、若い女性のヌードもてんこ盛りになるところだが、本作はだいぶ控えめだ。それでも、未成年(という設定)の女性たちがレイプされたり、大人の男性を挑発したりするシーンがあることから、アメリカでは成人指定を免れるために再編集した短縮版での公開を余儀なくされたという。

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さらに、シドニー・ヘイヤーズ監督の演出も、ジョン・クルーズの脚本も非常に折り目正しいというか、まさにサスペンス映画の王道といったところ。演出的な遊びや実験、意表を突くストーリー展開など、何か他と違うことをやって観客を驚かせてやろうというイタリア産ジャッロのセンセーショナリズムはここにはない。その辺は、やはりサスペンスやミステリーの本場たるイギリスの誇りなのか。非常にロジカルで破綻することもないが、同時に意外性や驚きに欠けることも否めない。

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そして、本作の最大の難点というべきが、あまりにも耳障りな音楽スコアである。サスペンス・シーンになると、大音量の大げさなオーケストラ音楽がこれでもかとガンガン鳴りっぱなし。しかも、見せ場に近づくに従って音楽のテンションも上がるので、これから何かが起きるというのが丸分かりだ。おかげで何一つとして怖くもなければドキドキもしない。これはサスペンス映画としては重大な欠陥だろう。

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監督のシドニー・ヘイヤーズはジュール・ヴェルヌ原作の冒険活劇からクリフ・リチャード主演のロック・ミュージカルまで、幅広いジャンルを手がけた職人肌の演出家。「殺人鬼登場」('60)や「真夜中の放火魔」('70)など、サスペンス&ホラーのジャンルも少なからず手がけており、犯人が徘徊する森の昼間でも不気味な雰囲気はとてもよく出ているし、女学生が執拗に追いかけられ追い詰められるシーンの緊迫感もなかなかのもの。ただ、全体的にセンスが'60年代風というか、本作が劇場公開された'71年当時でも既に古臭く感じられたのではないかと思うような印象は否定できないだろう。

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「いつも心に太陽を」('66)と同じく清楚な女教師役のスージー・ケンドール、「クルーゾー警部」('68)から「名探偵ホームズ/黒馬車の影」('78)まで警察官役は得意のフランク・フィンレイと、主演コンビはそれぞれ安定感抜群のはまり役。「夕暮れにベルが鳴る」('79)のサイコパス役も印象的だったトニー・ベックリーも、日頃から女学生たちにムラムラしているむっつりスケベな学長の旦那役で、ねっとりとした嫌らしさを醸し出して秀逸だ。

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また、事件の最初の被害者でクライマックスでも重要なカギを握る女学生テッサを演じる、当時まだ17歳のレスリー=アン・ダウンの圧倒的な美少女ぶりも必見。「ハノーバー・ストリート」('79)や「ラフ・カット」('80)の絶世の美女は、やっぱり若い頃も絶世の美少女だった。さらに、特ダネのためなら何してもOKな新聞記者を演じている名脇役フレディ・ジョーンズも強烈。というか、逃げるジュリーを追いかけて路上で暴行まがいのことをするわ、夜中に彼女の家へ押しかけて中へ入ろうとするわ、取材を断られるとドアをいつまでもドンドンと叩き続けて罵詈雑言を浴びせるわ、そりゃもうやりたい放題。なにか喋ろって言ってんだ、あんた頭がおかしいのか!?って、それはジュリーのセリフだろ(笑)。今だったら接近禁止命令を出されるか逮捕されるかだね、こりゃ。

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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(イギリス盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.75:1)※スクィーズ収録/音声:1.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:2/時間:87分/発売元:Network (2007)
特典:オリジナル劇場予告編/フランク・フィンレイ主演テレビドラマ「Tales of the Unexpected - There's One Born Every Minute」(1981年・27分)/スチルギャラリー


by nakachan1045 | 2016-08-15 12:48 | 映画 | Comments(0)

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