なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「フライトナイト」 Fright Night (1985)

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監督:トム・ホランド
製作:ハーブ・ジャッフェ
脚本:トム・ホランド
撮影:ジャン・キーサー
特殊視覚効果:リチャード・エドランド
クリーチャー効果:スティーヴ・ジョンソン&ランダル・ウィリアム・クック
音楽:ブラッド・フィーデル
出演:クリス・サランドン
   ウィリアム・ラグスデール
   ロディ・マクドウォール
   アマンダ・ビアース
   スティーブン・ジョフリーズ
   ジョナサン・スターク
   ドロシー・フィールディング
   アート・J・エヴァンス
アメリカ映画/106分/カラー作品





<あらすじ>
ホラー映画ファンの高校生チャーリー(ウィリアム・ラグスデール)は、落ちぶれた往年のホラー映画俳優ピーター・ヴィンセント(ロディ・マクドウォール)がホスト役を務める深夜のホラー番組が大好き。ただし、目下のところは恋人エイミー(アマンダ・ビアース)に夢中だ。
そんなある晩、彼は隣家にこっそりと棺桶が運び込まれるのを目撃し、新たな隣人ジェリー・ダンドリッジ(クリス・サランドン)がヴァンパイアではないかと疑い始める。しかも、近頃世間を騒がせている連続殺人事件の犠牲者たちを、チャーリーは隣家で目撃していた。これは絶対にそうだ!と確信した彼は母親に訴えるも笑い飛ばされ、警察に相談しても担当刑事レノックス(アート・J・エヴァンス)から白い目で見られる。
そして、とある真夜中にチャーリーはジェリーが美女の血を吸う現場を目撃し、しかも自分が覗き見していることを悟られてしまう。挨拶をするふりをして自宅へやって来たジェリーから、見たことを忘れなければ母親もろとも殺すと脅され、恐怖のあまり寝ることも出来なくなった彼は、藁にもすがる気持ちでピーター・ヴィンセントのもとを訪れる。ピーターはテレビで自らをヴァンパイア・ハンターだと名乗っているからだ。
もちろん、それはあくまでも番組の設定上のこと。助けてくれと必死に懇願するチャーリーだが、視聴率の伸び悩みで番組を解雇されたピーターはそれどころじゃない。しかし、チャーリーの様子を心配する親友エド(スティーブン・ジョフリーズ)とアマンダに頼み込まれ、ひとまずジェリーがヴァンパイアなどでないことを立証して見せることにする。
あらかじめの打ち合わせ通り、チャーリーの前で聖水という名のただの水を飲んで、ヴァンパイアではないことを証明するジェリー。だが、帰り際にピーターはジェリーの姿が鏡に映っていないことに気づいてしまう…。


まさにホラー映画ブーム真っ只中の'80年代半ばに登場した、ティーン向け青春ホラー・コメディの傑作。普通の高校生が隣の家に引っ越してきたヴァンパイアとバイトルを繰り広げる…ってだけの話なのだが、きちんと描き込まれたキャラクターの魅力や、笑いと恐怖の絶妙なバランス、SFXや特殊メイクの(当時としては)高い完成度、そしてそこはかとなく漂う哀しみなどなど、とにかく当時のブームに乗っただけの安易な映画ではなく、作り手の愛情と精魂が込められているところがいい。

中でも、本作の核となるのが、なんちゃってヴァンパイア・ハンターのピーター・ヴィンセントだ。往年のB級ホラー映画スターだが、いまではテレビのしがない深夜ホラー番組で細々とホストを務めている。カメラの前では勇敢そうにヴァンパイア・ハンター役を演じているが、本人はいたって平凡な小心者。しかも、キャリアが落ちぶれたことですっかり自信を失っている。そんな彼が高校生チャーリーとその友達に頼まれ、嫌々ながらも報奨金につられてヴァンパイア騒動に関わり、おっかなびっくり逃げ回りながらも、やがて本当にヴァンパイア・ハンターとして未知の恐怖に立ち向かうことで、失っていた自信を取り戻していく。

演じているロディ・マクドウォールは往年の人気子役スターで、長じてからも「クレオパトラ」('63)や「ポセイドン・アドベンチャー」('72)などの名脇役として活躍していたが、本作の当時はキャリアの低迷期にあった。そんな本人と役柄のイメージが見事に重なり合い、なおかつ彼のユーモラスかつ感受性豊かな演技が、ピーター・ヴィンセントというキャラに活き活きとした魅力を与えている。これで再び注目されたのもむべなるかなの名演だ。

また、主人公チャーリーのちょっと変わった親友エドも出色のキャラクターだ。いわばコミック・リリーフ的な立ち位置になるのだが、そんな彼が最も悲惨な運命を辿ることになる。特に哀れな最期は思わずジーンときてしまうほど。ここでも、そんなエドの姿に哀れみと共感の眼差しを向ける、ピーター・ヴィンセント=ロディ・マクドウォールのきめ細やかな感情表現が際立つ。ちなみに、エド役のスティーブン・ジョフリーズは、その後ゲイ・ポルノの男優となった。

邪悪でありながらもユーモアのセンスがあって、どこか憎めないダンディでセクシーなヴァンパイア、ジェリーを演じているクリス・サランドンも魅力的だ。ある意味で、これは従来のヴァンパイアのイメージをカリカチュアしたようなキャラクター。本性を現すと怪物のような姿になるという設定だが、この怪物の姿は恐らく「ノスフェラトゥ」('22)へのオマージュだろう。この変身パターンは本作をきっかけとして、その後「ロストボーイ」('87)や「ブレイド」('98)シリーズなどへと引き継がれていくことになる。なお、ジェリーはしょっちゅうリンゴなどのフルーツを食べているが、これはオオコウモリの主食が果実であることを知ったクリス・サランドンのアイディアだという。

本作が監督デビューとなったトム・ホランドは、'80年代らしいポップで軽妙なタッチを前面に押し出しつつ、古き良き古典的ホラーへの愛情をふんだんに盛り込んでいる。ヴァンパイアの設定にも、変な現代的解釈を与えたりなどしていない。ピーター・ヴィンセントが深夜ホラー番組のホストという設定も、ホラー・マニアのホランドならではだろう。アメリカでは昔から深夜に古いホラー映画を放送するテレビ番組がローカル局を中心に多く放送され、魔女やらヴァンパイアやらの格好をしてホスト役を務めるヴァンピラやザッカリー、エルヴァイラなどのキャラクターが一部マニアの間で人気を集めてきたという文化史的な背景がある。実は、もともとホランドは往年の怪奇映画スター、ヴィンセント・プライスを本人役で起用することを望んでいたらしいのだが、あまりにもホラー映画のオファーばかりが続くことに辟易していたプライスは、本作の話も断ってしまったらしい。実際、その後彼は「八月の鯨」('86)や「シザーハンズ」('90)など、ホラー以外の仕事を増やしていくことになる。

本作は'11年にコリン・ファレル主演でリメイクされたが、結果はあまり芳しくなかった。その理由は、オリジナル版を魅力的なものにしている全ての要素、キャラクターの面白さやジャンルへの深い愛情などが決定的に欠けているからにほかならない。

なお、ブルーレイは日本盤だけがなぜか劇中シーンのスチルをジャケット・デザインに使用。ファンにとっては、やはり劇場公開時のポスター・デザインにして欲しかった。とはいえ、限定リリースの米国盤は理不尽にも高額なため、筆者は手頃なドイツ盤ブルーレイを入手。中身は日本盤と全く変わりなく、日本向けBDプレイヤーで再生するとメニューも日本語表示となる。

評価(5点満点):★★★★★

参考ブルーレイ情報(ドイツ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.40:1)/音声:5.1ch Dolby Surround ※ポルトガル語のみ2.0ch Dolby Digital Mono、スペイン語のみ2.0ch Dolby Surround/言語:英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・ポルトガル語・スペイン語/字幕:日本語・韓国語・ノルウェー語・ポーランド語・ポルトガル語(ブラジル)・ポルトガル語(ポルトガル)・スペイン語・スウェーデン語・トルコ語・英語・英語(SDH)・アラビア語・ブルガリア語・中国語・チェコ語・デンマーク語・オランダ語・フィンランド語・フランス語・ドイツ語・ギリシャ語・ヘブライ語・ハンガリー語・アイスランド語・イタリア語/地域コード:ALL/時間106分/発売元:Sony Pictures (2014)
特典:なし


by nakachan1045 | 2016-08-17 14:13 | 映画 | Comments(0)

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