なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「オペラ座の怪人」 Phantom of the Opera (1989)

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監督:ドワイト・H・リトル
製作:ハリー・アラン・タワーズ
製作総指揮:メナハム・ゴーラン
原作:ガストン・ルルー
脚色:ジェリー・オハラ
脚本:デューク・サンデファー
撮影:エレメール・ラガリイ
特殊メイク:ケヴィン・イェガー
音楽:ミーシャ・シーガル
出演:ロバート・イングランド
   ジル・ショーレン
   アレックス・ハイド=ホワイト
   ビル・ナイー
   ステファニー・ローレンス
   テレンス・ハーヴェイ
   モリー・シャノン
アメリカ映画/93分/カラー作品





<あらすじ>
現代のニューヨーク。ジュリアードを卒業した無名のオペラ歌手クリスティーン(ジル・ショーレン)は、舞台のオーディションを控えていたが、そんな彼女のために親友メグ(モリー・シャノン)が珍しい楽譜を渡す。それは、倉庫の奥から発見された無名の作曲家エリック・デスラーの作品だった。なぜかその名前に聞き覚えがあるクリスティーン。だが、彼女はオーディションの最中に、落下物に当たって気を失ってしまう。
目覚めたクリスティーンは、1881年のロンドンのオペラ座にいた。彼女は人気オペラ歌手ラ・カルロッタ(ステファニー・ローレンス)の代役だったが、カルロッタはクリスティーンの才能と若さに嫉妬して、オペラ座の経営者バートン(ビル・ナイー)に彼女を解雇するよう迫っていた。すると、カルロッタの楽屋のタンスから流れ出る血が。扉を開けると、そこには全身の皮を剥がれて血まみれのスタッフが、虫の息で倒れている。あまりのショックに悲鳴を上げたカルロッタは、声を潰してしまった。
この事件を仕組んだのは、オペラ座の地下に棲む謎の怪人(ロバート・イングランド)だ。実は、彼こそがエリック・デスラーだった。売れない作曲家だった彼は悪魔に魂を売り、永遠の命と名声を得ていたのだ。だが、音楽で成功する代わりとして容姿の醜くなった彼は、“天使の声”として惚れ込んだクリスティーンの前には決して姿を現さず、陰ながら彼女を支えていたのである。
カルロッタの代役として舞台に立ったクリスティーンは、その素晴らしい歌声で拍手喝采を受ける。オペラ座の共同経営者でもある恋人リチャード(アレックス・ハイド=ホワイト)も成功を祝った。ところが、カルロッタを贔屓にするバートンから賄賂を受け取った音楽評論家が新聞でクリスティーンを酷評。ショックを受けた彼女は亡き父の墓前で涙に暮れる。
怒り狂った怪人は音楽評論家を惨殺。さらに、邪魔者のカルロッタを始末するべく仮面舞踏会に現れる。一方、スコットランドヤードのホーキンス警部(テレンス・ハーヴェイ)から怪人の正体を知らされたリチャードは、クリスティーンを救うべくオペラ座の地下へと足を踏み入れるのだが…。


アンドリュー・ロイド・ウェッバーのミュージカルとしても有名な、ガストン・ルルー原作の同名小説をストレートなゴシック・ホラーとして映画化した作品。劇場公開時はかなり酷評されたが、実際のところ決して出来は悪くない。

恐らく、当時正当な評価を得ることができなかった最大の理由は、あまりにも過激で露骨なスプラッター描写にあるだろう。怪人のキャラクターも完全にモンスター。演じているのがロバート・イングランドだからというわけではないが、まさしく「エルム街の悪夢」('85)シリーズのフレディ・クルーガーそのものだ。ミュージカル版のようにロマンティックな悲恋物語を期待したであろう観客が、これを見て拒絶反応を起こしたとしても無理はない。

だが、そもそもガストン・ルルーの原作自体がれっきとした怪奇小説で、ちゃんと読むと内容はけっこう陰惨で残酷だ。最初の映画化であるサイレント版「オペラの怪人」('25)も、紛うことなきホラー映画だった。ロマンティック路線にアレンジされたのはユニバーサル版「オペラ座の怪人」('43)辺りからのこと。なので、原作と比較すればミュージカル版「オペラ座の怪人」の方こそ邪道だとも言えよう。

監督のドワイト・H・リトルは、最近だと「24 - TWENTY FOUR」や「プリズン・ブレイク」、「NIKITA/ニキータ」、「エージェント・オブ・シールド」などテレビシリーズで引っ張りだこの人物だが、本作の当時は「ハロウィン4/ブギーマン復活」('88)の見事な恐怖演出で注目を集めたばかりの新進気鋭だった。少年時代からホラー映画ファンだった彼は、本作を演出するに当たって大好きなハマー・ホラーを意識したというが、確かに原色の照明や極端な陰影を駆使したビジュアル・イメージは「吸血鬼ドラキュラ」や「フランケンシュタインの逆襲」など初期ハマー作品に酷似している。ホラー・マニアなら、それだけでワクワクすること請け合いだ。

そもそも、メナハム・ゴーランがキャノン・フィルム時代から温めていた企画だったらしいが、彼が経営難に陥ったキャノンを追い出されたことから頓挫。しかし、ガストン・ルルーの原作の著作権保護期間が終了したことを新聞記事で知ったことから、新たに社長に就任した21世紀フィルムで映画化することになったという。しかも、プロデューサーは英国映画界きっての商売人で、ジェス・フランコとも組んでいた鬼才ハリー・アラン・タワーズ。筆者にとってはまさしく夢の顔合わせである(笑)。

オープニングとエンディングはニューヨークでのロケだが、それ以外は全てブダペストでの撮影。というのも、ゴーランが監督したオペレッタ大作映画「三文オペラ」('88)のために建てた巨大な19世紀末ロンドンのセットを、そのまま流用しているからだ。しかも当時のチェコは物価も人件費もアメリカに比べると超激安。なので、本作は低予算映画であるにも関わらず、美術セットから衣装、エキストラの数に至るまで、まるで大作映画のごとくゴージャスに見える。舞台を原作のパリからロンドンへ変えたのも、それが理由だ。

脚本のドラフトはキャノン時代から存在したらしいが、ドワイト・H・リトル監督はそれを一旦白紙に戻し、以前にテレビで仕事をしたことのある脚本家デューク・サンデファーと組んで新たな脚本を仕上げたという。彼が目指したのは、当時既に大ヒットしていた舞台ミュージカル版の「オペラ座の怪人」ではなく、原作の世界観に限りなく近いもの。なので、本人はもちろんスタッフも、本作の撮影が終わるまでは絶対にミュージカル版を見ないよう決めていたそうだ。影響されてしまうことを恐れたからである。

また、本作の魅力を一層のこと高めているのがミーシャ・シーガルによるクラシカルな音楽スコア。中でも、彼が作曲したエリック・デスラーの歌曲の美しさは特筆すべきものだ。映画音楽家として決して作品に恵まれているとは言い難いシーガルだが、本作は間違いなく彼の代表作であり、名刺がわりの傑作だと言えるだろう。

評価:★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio・2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/地域コード:A/時間:93分/発売元:Scream Factory/Prion Pictures (2015)
特典:メイキング・ドキュメンタリー(約38分)/ドワイト・H・リトル監督とロバート・イングランドによる音声解説(2.0ch Dolby Digital)/オリジナル劇場予告編/テレビスポット/ラジオ・スポット集/スチル・ギャラリー


by nakachan1045 | 2016-08-17 18:48 | 映画 | Comments(0)

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