なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「フリーセックス地帯を行く/天国か地獄か」 Svenzia Inferno e Paradiso (1968)

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監督:ルイジ・スカティーニ
製作:マリオ・ボルギ
脚本:ルイジ・スカティーニ
撮影:クラウディオ・ラッカ
音楽:ピエロ・ウミリアーニ
出演:エンリコ・マリア・サレルノ(イタリア語ナレーション)
   エドマンド・パードム(英語ナレーション)
   マリー・リシュダール
イタリア映画/86分/カラー映画





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<あらすじ>
世界に名だたる福祉国家であると同時にフリーセックス大国でもあるスウェーデン。その性教育の現場やティーンたちのセックス事情、さらには国の認めたポルノ市場やスワッピングクラブ、レズビアンクラブなどに潜入取材を行いつつ、ドラッグに溺れる若者たちや極寒の冬を命懸けで越すホームレスたち、福祉が充実しているゆえに自殺をする人々などスウェーデンの知られざる暗部にも切り込んでいく。

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'60年代に世界中で大流行したイタリア産モンド映画の一つ。当時フリーセックスの先進国として注目されていたスウェーデンの光と影をカメラに捉えつつ、果たして世界でも稀に見る福祉国家は天国なのか地獄なのか?という疑問に迫っていくドキュメンタリーである。

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とはいえ、これを真面目なドキュメンタリーとして額面通りに受け取ってはいけない。なんたってモンド映画なのだから。ここでモンド映画に馴染みのない方のために、その何たるかを簡単に述べておこう。モンド映画というのは別名ショッキュメンタリーとも呼ばれ、いわゆるセンセーショナリズムを売り物にしたイタリア産ドキュメンタリーのこと。世界の様々な変わった風俗や奇習をレポートするという名目のもと、エログロ満載の下世話なシーンの連続で観客の好奇心を煽るゲテモノ映画だ。なので、ヤラセや捏造などは当たり前。要するに、似非ドキュメンタリーである。そのブームの火付け役はテーマ曲「モア」がオスカー候補になったグァルティエロ・ヤコペッティ監督の「世界残酷物語」('62)。その原題Mondo Caneが、モンド映画という言葉の由来だ。

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ただ、この手のゲテモノ映画というのは一連のモンド映画の遥か以前から存在する。恐らくそのルーツは、'30年代~'40年代にアメリカで量産された啓蒙映画にあるだろう。当時のハリウッドでは厳しい自主規制が敷かれ、それ以前のように性や暴力を題材にした映画を作ることが難しくなった。そこで弱小のインディペンデント製作者たちが考えついたのが、現代アメリカの堕落したモラルを糾弾するという崇高なテーマを装って、その堕落したアメリカのセックスとバイオレンスを映画の呼び水にするという手法だ。これならエログロ満載の内容を批判されても、あくまで啓蒙が目的ですからと言い訳がたつ。代表作は「リーファー・マッドネス 麻薬中毒者の狂気」('38)や「マリファナ」('36)などなど。いずれも劇映画ではあったが、事実を基にしていると言いつつ拡大解釈ないし誇張、もしくは平然と捏造するという点において、モンド映画と根幹は共通するものがある。

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で、本題である「フリーセックス地帯を行く/天国か地獄か」だが、こちらも全てが全て捏造だとは言わないものの、しかし明らかにヤラセだろうというシーンは枚挙に暇ない。その最たるものがバイカー野郎たちによる集団レイプとホームレスの凍死、そして若い女性の自殺だ。なにしろ、レイプされる女性をよく見るとスウェーデンの有名なソフトポルノ女優マリー・リシュダール。これはもう、はなからヤラセを隠すつもりがない(笑)。だいたい、若い女性が目の前で集団レイプされているというのに、そのまま延々とカメラを回し続けるなんて、これが事実だとしたら有り得ないだろう。凍死したというホームレス男性の遺体も、一瞬だが目が動いているのが分かる。どう見たって役者だ。若い女性が公衆電話から神父に相談したあと自殺するという展開も、ドキュメンタリーとしてはあまりに都合が良すぎる。

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他にも、若者たちのドラッグ・パーティやレズビアン・クラブの乱痴気騒ぎなど、恐らく予め脚本が用意されていて、その通りに演じているだけだと思われるシーンも数多い。浮浪者たちがシンナー遊びをしながら靴墨をパンに塗って食べるシーンなんかも、ちょっと考えればバカバカしい誇張だというのがよく分かる。また、若い女性が日光浴をしているシーンでは、スウェーデンの女性は誰もが全裸で日光浴をするとナレーションで説明されているが、出てくる女性たちはみんなビキニの日焼け跡がクッキリ(笑)。バレバレの嘘である。そもそも、あたり一面女性ばかりという日光浴のシチュエーションも明らかにヤラセだ。当時スウェーデンでは劇場公開されなかったという本作。その理由は、被写体となった人々が撮影の本来の趣旨を知らされておらず、まさかドキュメンタリーだとは思わなかったからだとも伝えられるが、まあ、そりゃそうだろう(笑)。

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その一方、国が認めたポルノショップの様子やエロ本の印刷風景、学校や病院での性教育の現場などの描写は、事実に沿っているであろうことが想像に難くない。別々に育った実の兄と妹が恋に落ちて結婚したというエピソードも、現地の新聞報道と併せて実名入りで紹介されているので、こちらも恐らく本物なのだろう。また、全編に渡って当時のストックホルムや近郊の街の風景が美しいカメラワークで捉えられており、タイムカプセル的な意味合いで楽しめる部分も多々ある。

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しかし、数あるモンド映画の中で本作に特筆すべき点があるとすれば、それはピエロ・ウミリアーニの手がけた音楽スコアに尽きると言えよう。なんたって、あの名曲「マナマナ」を生み出した作品なのだから。後にアメリカのテレビ番組「セサミ・ストリート」で使用され、ビルボードの全米シングル・チャートにもランクイン。数々のカバー・バージョンもリリースされ、今でも定番クラブ・チューンとして愛され続けている「マナマナ」だが、もともとは本作のサントラのために書き下ろされた楽曲だったのだ。それ以外にもファンキーでグルーヴィーでイージーなナンバーが盛りだくさん。ウミリアーニの代表作と呼んでもいいだろう。

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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(イタリア盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Stereo/言語:イタリア語・英語/字幕:イタリア語/地域コード:2/時間:86分/発売元:CG Home Video (2011)
特典:ルイジ・スカティーニ監督ドキュメンタリー(約23分)/オリジナル劇場予告編




by nakachan1045 | 2016-08-19 05:30 | 映画 | Comments(0)

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