なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「豹(ジャガー)は走った」 The Creature Called Man (1970)

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監督:西村潔
製作:山田順彦
脚本:長野洋
   石松愛弘
撮影:原一民
衣裳デザイン:コシノジュンコ
銃器アドバイザー:トビー門口
音楽:佐藤允彦
出演:加山雄三
   田宮二郎
   加賀まりこ
   高橋長英
   神山繁
   中村伸郎
   北竜二
   ナンシー・サマース
   草野大悟
日本映画/92分/カラー作品





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<あらすじ>
東南アジアの南ネシア共和国でクーデターが勃発し、激しい内戦の末に革命政権が樹立される。権力の座を追われたジャカール大統領はアメリカへ亡命することとなり、その経由地である日本に3日間滞在することとなった。しかし、大統領の命を狙う革命政権が黙って見過ごすわけはない。必ず暗殺を仕掛けてくるはずだ。ジャカール政権と同盟関係にあった日本としては、威信を賭けてでも守らねばならない。
そこで、警察庁の副総監(北竜二)と警備部長(神山繁)は、射撃の元オリンピック選手でもある戸田警部(加山雄三)に密命を与える。現在の日本の法律では敵から襲われた際に反撃することは出来ても、襲われる前に攻撃することは許されない。そこで、戸田を警察の職務から解雇し、一般人として秘かに大統領の周囲を警護させ、怪しい動きに対する先制攻撃を可能にしようというのだ。もちろん、警察は表向き一切関知しない。その代わり、若手刑事・平松(高橋長英)が警察とのパイプ役として戸田を補佐することとなった。
その頃、大手商社・大日本貿易の社長(中村伸郎)のもとに南ネシア革命政府の密使が訪れていた。実は、ジャカール政権との武器取引で莫大な利益を上げていた大日本貿易は、大統領の日本訪問を裏で手引きした張本人なのだが、その一方で革命政権とも武器取引の交渉を同時に進めていたのだ。つまり、両者を天秤にかけようというのである。なかなか取引条件を呑まない密使に対し、社長は交換条件としてジャカール大統領の暗殺を約束。革命政権側が送り込んだ刺客よりも先に大統領を殺せば、大日本貿易との取引に応じるという確約を革命政権密使から取り付ける。
そこで、社長秘書の秋山薫(加賀まりこ)は国際的な殺し屋・九条輝彦(田宮二郎)を日本へ呼び寄せる。反米派の革命政権を支持する日本の左翼テロリストが刺客として次々送り込まれては、戸田の活躍によって阻止されていく中、虎視眈々と暗殺の機会を狙う九条。彼らはやがてお互いの存在に気付いていく…。


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加山雄三が主演する東宝ニューアクションの第3弾。第2弾の「弾痕」('69)は、個人的にいまひとつ乗り切れないというか、あまりパッとしないような印象が強かった。この「豹(ジャガー)は走った」も、リアリズムを貫いた傑作「狙撃」に比べると劇画タッチの荒唐無稽やセンチメンタルなメロドラマ性が目立ち、どことなくB級感が漂うことは否めない。とはいえ、加山雄三の向こうを張る田宮二郎の惚れ惚れとするようなカッコ良さ、スコープサイズのワイド画面を存分に使い切った原一民カメラマンのダイナミックなカメラワークは見事なもの。また、ベトナム戦争や日米安保闘争などの時代的背景を巧みに取り入れたポリティカルな設定も悪くない。

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監督は「西部警察」や「あぶない刑事」などテレビの刑事アクションで知られる西村潔。大統領を護衛するパトカー軍団に狙撃されたヘリコプターが落下して突っ込む、大統領が参拝した靖国神社での左翼デモ隊と機動隊の衝突に紛れて自爆テロ犯が次々と攻撃を仕掛けるなどの派手なアクション演出は、なるほど「西部警察」っぽいと言えるかもしれない。ワルサーP38やS&W M27といった拳銃の細かなディテール描写もクールだ。中でも、クライマックスの巨大倉庫を舞台にした加山雄三と田宮二郎の死闘はなかなかの迫力。拳銃を知り尽くしたプロVSプロの対決が圧倒的な緊張感で描かれる。ただ、惜しむらくは過剰な血糊描写であろうか。弾丸を受けた傷口から、まるで噴水のようにシャーシャーと血が飛び散るのはちょっとやりすぎ。これは少なからず興醒めしてしまう。

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興醒めするといえば、田宮二郎ふんする殺し屋・九条と恋人をベトナム戦争で失ったアメリカ人女性ナンシーとのロマンスも、ベトナム戦争の悲劇を浮き彫りにするという意味において必要だったのかもしれないが、その一方で冷酷非情でクールな九条というキャラクターに若干のブレが生じてしまったことも否めない。しかも、ある事件をきっかけとして仕事に私情を挟んでしまう始末。これが一介の刑事である戸田警部であれば分かるが、世界を股にかけるプロの暗殺者としてはいかがなもんだろう?という疑問は生じる。まあ、百歩譲って九条という男の人間的な側面を描くという意味はあったのかもしれないが、しかしそれにしてもナンシー役を演じているナンシー・サマースという女優に魅力がなさ過ぎるのは困ったもの。ただの野暮ったい地味な田舎娘。白人だったら誰でも良かったのかい!?と首を傾げずにはいられない。こんなイモ娘を天下の二枚目・田宮二郎がナンパしたうえにゾッコン惚れ込んでしまうとは…。ありえないでしょう(笑)。

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さすがに今見ると、クサ過ぎて恥ずかしくなるようなシーンも若干見受けられる。しかし、その一方で原一民カメラマンの凝りに凝ったカメラワークは、見ていてワクワクするほどに刺激的でお洒落で今なお古びていない。特にワイドスクリーンの左右いっぱいに被写体を配置した画面構図の大胆さ、カッコ良さ、面白さ。それも、ただ無闇にカッコつけたり気取っているのではなく、ちゃんとそのシーンにおいて意味のあるアングルや位置をちゃんと巧妙に計算している。西村監督から好きなように撮っていいと言われたという原カメラマンは撮影当時38歳。新しいことに挑戦してやろうという意欲と情熱が、映画から如実に伝わって来る。

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また、群衆パニック・シーンが本当に靖国神社でロケされていることにも少なからず驚かされる。さすがに鳥居の中でのドンパチは撮影許可が下りなかったそうだが、それでも反米&反日を叫ぶ左翼活動家たちの大規模なデモや警察機動隊との衝突を靖国神社の真ん前で撮っているというのは、これ以上ないくらいの臨場感だと言えよう。厳かな参拝の儀式もちゃんと撮影用に再現されている。ほかにも、当時のホテルニューオータニや新宿アルタ前付近など、アラフィフ以上の世代には懐かしい光景も盛りだくさん。そうそう、新宿東口周辺って昔はこうだったよね!と思わず感慨に浸ってしまう。

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すっかりハードボイルド路線も板に付いた印象の加山雄三だが、本作では敵役の田宮二郎に押され気味であることは否めないだろう。なんたって都会的でスマートでシャープな田宮に比べると、お坊ちゃん育ちのわりにちょっと垢抜けない加山は分が悪い。まあ、その点で刑事役にはうってつけなのかもしれないが、やはり2人並ぶと田宮の引き立て役になってしまう。

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大映のワンマン社長・永田雅一とのイザコザで会社を解雇され、さらに五社協定を盾に映画界を干されたことでテレビ俳優へと転身した田宮二郎は、本作の前年の「日本暗殺秘録」('69)で映画界にカムバックしたばかり。東宝作品への出演はこれが初めてだった。大映時代には「犬」シリーズや「黒」シリーズなど、ダンディでハードボイルドな役柄は得意だった彼だけに、本作でも名うての殺し屋・九条役をスタイリッシュに演じてすこぶるカッコいい。時代に色褪せないハンサムな顔立ちにも渋みが漂っている。改めて、若くして命を絶ったことが惜しまれる。

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惜しまれるといえば、せっかくのヒロイン役でありながら殆ど活躍することのない加賀まりこ。戸田警部と九条の架け橋的な立ち位置にはなるのだが、どちらとも深く関わることはない。言うなれば傍観者的な役回りだ。「戦争を知らない人たちが遠い国の戦争反対を叫ぶ。平和で退屈な世の中よ」という彼女のセリフが象徴的だ。彼女はベトナム戦争にも日米安保闘争にも関心はない。戸田警部と九条の間でも中立。ただ事態を静観し、その推移を見極め、どちらに肩入れすることもなく利益だけを取る。感情を表面に出すこともほとんどない。使いようによっては非常に面白いキャラクターなのだが、最後まで傍観者のまま終わってしまうのは、どうも不完全燃焼のように思える。

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脇役陣で光っていたのは、当時まだ20代の高橋長英。加山ふんする戸田警部を慕う若手刑事という役どころで、とても爽やかな好青年ぶりを発揮している。そのほか、小津安二郎作品でしばしば親友役を演じている北竜二と中村伸郎が、直接的な絡みこそないものの、それぞれ警視庁副総監と大手商社社長として共演しているのも小津ファンには興味深いところだ。

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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:92分/発売元:東宝
特典:原一民カメラマン インタビュー(約42分)/オリジナル劇場予告編/スチールギャラリー/スチールギャラリー スペシャル


by nakachan1045 | 2016-08-21 15:27 | 映画 | Comments(0)

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