なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「スクワーム」 Squirm (1976)

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監督:ジェフ・リーバーマン
製作:ジョージ・マナッセ
脚本:ジェフ・リーバーマン
撮影:ジョセフ・マンジーン
特殊メイク:リック・ベイカー
音楽:ロバート・プリンス
出演:ドン・スカーディーノ
   パトリシア・ピアシー
   R・A・ダウ
   ジーン・サリヴァン
   ピーター・マクリーン
   フラン・ヒギンズ
アメリカ映画/93分/カラー作品





<あらすじ>
それは1975年9月29日の夜。ジョージア州の海岸沿いにある小さな町フライクリークを激しい雷雨が襲い、切断された高圧ケーブルから30万ボルトの電流が地中に漏れてしまう。その電気ショックにより、凶暴化したゴカイが大量増殖するのだが、しかし町の人々には知る由もなかった。
その翌日、フライクリークの人々は停電や断水に頭を抱えている。しかも、土砂崩れや洪水の影響で交通にも支障が出ており、町はさながら陸の孤島と化していた。母娘3人のサンダース家も同様で、母ナオミ(ジーン・サリヴァン)は精神的に参ってしまっている。しっかり者の長女ジェリー(パトリシア・ピアシー)は、大都会ニューヨークから恋人が来るため、隣人の青年ロジャー(R・A・ダウ)に仕事用のトラックを借りる。自由気ままな次女アルマ(フラン・ヒギンズ)は、いつも通りマリファナで上機嫌だ。
地元でも知る人の少ない裏道を抜けて、恋人ミック(ドン・スカーディーノ)を迎えに行ったジェリー。その帰りに2人は冷蔵庫用の氷を手に入れるため町へ寄る。ダイナーでエッグクリームを注文したミックは、その中に大きなゴカイが入っていて驚く。しかし、よそ者を嫌うレストン保安官(ピーター・マクリーン)は、ミックによるたちの悪い嫌がらせだと決め付ける。
自宅へ戻りロジャーにトラックを返した2人だったが、荷台から10万匹のゴカイが消えているという。ロジャーの父親は釣り餌の養殖で生計を立てていたのだ。秘かにジェリーに横恋慕しているロジャーは、この一件もあって尚更のことミックのことを恨むようになる。
さらに、隣人の庭で白骨死体が発見され、釣りに出たミックは餌用のゴカイに指を噛まれるなどの奇妙な出来事が続き、やがて膨大な数に増殖したゴカイの群れが町の人々に襲いかかる…。


これでもかと言わんばかりにウジャウジャと溢れ出るゴカイ(劇場公開時はミミズとされた)の大群。動物パニック映画がちょっとしたブームとなった'70年代には、ネズミやら蜂やらカエルやらサメやら、それこそいろんな動物が人間を襲う映画が作られたものだが、その中でもダントツにショッキングなトラウマ映画がこれだ。なんたって、人間の顔に噛み付いた無数のゴカイが、皮膚を食い破って顔面の下を這いつくばるシーンの衝撃的なこと!地上波テレビ放送時にこれを見て、悪夢にうなされた少年少女も少なくなかったに違いない。

自ら脚本も手がけた監督のジェフ・リーバーマンはこれが長編処女作。少年時代に弟と自宅の庭で地中に電流を流したところ、何匹もの蠕虫が地上へ這い出てきたという経験が、本作のアイディアの基になっている。恐怖小説の大家H・P・ラヴクラフトのファンだった彼は、もともとニューイングランド地方を物語の舞台にと考えていたが、紆余曲折あって南部のジョージア州で撮影することになったのだそうだ。

大都会ニューヨークからやって来た主人公ミックを待ち受けているのは、見るからに寂れて薄汚れた田舎町、よそ者への警戒心を露にする閉鎖的な人々、うだるような暑さと湿気。いかにもアメリカ南部らしいその光景は、極めて不快指数の高い異空間だ。言うなれば、「悪魔のいけにえ」('74)をはじめとする“アメリカの田舎は怖い”映画の系譜に属する作品。これもまた非常に'70年代的な題材なわけだが、ジョージア州の田舎に舞台設定を変えたことは、結果的に功を奏していると言えるだろう。

しかも、ノイローゼ気味で言動の不安定な母親ナオミ、粗野で頭の悪い木偶の坊ロジャー、理不尽に威圧的な保安官などなど、出てくる人の大半が絶妙なさじ加減で狂っている。だいたい、ニューヨーク名物のチョコレートドリンク、エッグクリームをこの地域の人達は見たことも聞いたこともない。彼らの喋る強烈な南部訛りはまるで外国語だ。同じアメリカでありながら疎外感を覚える場所。それが見る者の不安を煽っていく。

撮影のために25万匹のゴカイを投入したとのことだが、そのボリューム感と気持ち悪さは圧巻。家の中をゴカイが埋め尽くすシーンでは、見るからにゴム製のオモチャを使用しているものの、それでも薄暗い照明のおかげで絶叫指数はうなぎのぼりだ。というか、あれはオモチャで正解。でなけりゃ、とてもじゃないけど正視に耐えないと思う。

リーバーマンは本作に続き、LSDの副作用で発狂した人々が殺しまくる「悪魔の狂暴パニック」('78)、今度はオレゴン州のド田舎で殺人鬼が都会の若者を殺しまくる「序曲・13日の金曜日」('80)といったカルト映画を連発。「ネバーエンディング・ストーリー3」('94)の脚本も書いている。

ミック役のドン・スカーディーノは監督へと転向し、全米で一世を風靡した人気コメディドラマ「30 ROCK/サーティー・ロック」で3年連続エミー賞を獲得するなど、超売れっ子のテレビディレクター&プロデューサーとなった。

ジェリー役のパトリシア・ピアシーは「コックファイター」('75)でウォーレン・オーツのフィアンセ役を演じていた女優。実はこの役、当時まだ21歳だったキム・ベイシンガーもオーディションを受けていたのだそうだ。彼女の故郷はジョージア州のロケ地近くで、しかも近所には釣り餌の養殖場もあったらしく、役柄には適していたものの、まだ演技経験が全くなかったために採用されなかったらしい。

ジェリーの母親を演じているジーン・サリヴァンは、'40年代にワーナー専属のスター候補だった美人女優。しかし映画では大成せず、ブロードウェイの舞台女優として活動していた。次女アルマ役のフラン・ヒギンズは現地で採用された素人のようだが、あっけらかんとしたユニークな個性が、本作では一服の清涼剤的な役割を果たして好印象だ。

全体的に低予算の粗が目立つことは否めないし、脇役を務めるロケ地住民の素人丸出しな演技も安っぽさに拍車をかけるが、しかし当時まだ駆け出しだった巨匠リック・ベイカーによる特殊メイクの出来栄えは見事だし、少ない予算の中で工夫を凝らしたリーバーマンの演出も健闘している。ゲテモノ映画として片付けるべきではないだろう。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio Mono/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:93分/発売元:Scream Factory/MGM (2014)
特典:メイキング・ドキュメンタリー(約33分)/ジェフ・リーバーマン監督によるロケーション・ツアー(約7分)/オリジナル劇場予告編/テレビ・スポット集/ラジオ・スポット集/スチル・ギャラリー


by nakachan1045 | 2016-08-27 07:20 | 映画 | Comments(0)

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