なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「凶人ドラキュラ」 Dracula: Prince of Darkness (1966)

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監督:テレンス・フィッシャー
製作:アンソニー・ネルソン・キーズ
原案:アンソニー・ハインズ(クレジット上はジョン・エルダー)
脚本:ジミー・サングスター(クレジット上はジョン・サンソム)
撮影:マイケル・リード
編集:クリス・バーンズ
美術デザイン:バーナード・ロビンソン
音楽:ジェームズ・バーナード
出演:クリストファー・リー
   バーバラ・シェリー
   アンドリュー・キアー
   フランシス・マシューズ
   スーザン・ファーマー
   チャールズ・ティングウェル
   ソーリー・ウォルターズ
イギリス映画/90分/カラー作品





<あらすじ>
吸血鬼ドラキュラの死から10年後。東欧のカルパチア地方を4人のイギリス人旅行客が訪れる。チャールズ・ケント(フランシス・マシューズ)と兄アラン(チャールズ・ティングウェル)、そしてそれぞれの妻ダイアナ(スーザン・ファーマー)とヘレン(バーバラ・シェリー)だ。4人がカールスバッドへ向かうと知ったサンドール神父(アンドリュー・キアー)は危険だと警告するが、彼らはそれを無視してしまう。
迷信深い御者に途中で馬車から下ろされ、途方に暮れる4人。そこへ、どこからともなく無人の馬車が現れる。これ幸いとばかりに乗り込んだ彼らだったが、馬車は勝手に近くのドラキュラ城へと向かうのだった。そこは、サンドール神父から何があっても近寄ってはいけないと言われた場所だ。一連の不可解な出来事に疑念を抱くヘレンは反対するものの、チャールズらは野宿せずに済むと勝手に中へ入っていく。
そこには、まるで彼らが来ることを待っていたかのように食事が用意されており、馬車に乗せていた荷物もいつの間にか部屋に運び込まれていた。奥から現れた執事クローヴ(フィリップ・レイサム)によると、亡き主人ドラキュラ伯爵の遺言で旅人を無条件で迎え入れることになっているという。絶対におかしいと訴えるヘレンの不安をよそに、チャールズたちは喜んで食事を楽しみ、そのまま城で一晩を明かすことにするのだった。
そして深夜、物音を辿って城の地下室へ迷い込んだアランがクローヴに殺され、その生き血によって吸血鬼ドラキュラが蘇ってしまう。さらに、ヘレンもドラキュラの毒牙にかかってしまった。
翌朝、アランとヘレンの不在に気づいたチャールズとダイアナ。彼らは城の地下室でアランの無残な死体を発見し、今や吸血鬼となったヘレン、そしてドラキュラ伯爵に襲われる。命からがら逃げ出した2人は、サンドール神父の修道院に匿われるが、そこにもドラキュラの魔手が忍び寄るのだった…。


出世作の「吸血鬼ドラキュラ」('58)でスターダムにのし上がったものの、それ以降はタイプキャストを嫌ってドラキュラ役を断り続けたクリストファー・リーが、およそ8年ぶりに再びハマー・プロ作品でドラキュラ役に挑んだのが本作。ピーター・カッシング扮するヴァン・ヘルシング教授こそ登場しないものの、監督にはテレンス・フィッシャーが再登板し、内容的にも前作の直接的な続編となっている。

ストーリーは極めて単純で他愛がない。東欧を訪れた無知な外国人旅行者がまんまとドラキュラの罠にかかってしまうものの、吸血鬼を熟知した地元の神父に助けられて見事に敵を退治するというだけのお話。以降のシリーズはマンネリ化を防ぐためにいろいろと趣向を凝らすことになるわけだが、本作の当時はまだこんなものでも良かったのだろう。かえって、シンプルすぎるくらいシンプルな語り口が、今となっては新鮮にも感じられる。

シンプルといえば、今回のドラキュラ伯爵にはセリフが一切ないというのも面白い。発するのは野獣的なうめき声のみ。血に飢えた魔物ドラキュラの怪物性を際立たせるという意味において、これは非常に的を得た設定だと言えるだろう。なので、彼の行動原理も単純明快だ。人間の血が飲みたい、以上。それ以外の感情も願望も欲望もない。まさに本能の赴くがまま襲い来るモンスター。これまた潔い。

ちなみに、本作でドラキュラにセリフがない理由は2つの説がある。まずは、もともと脚本にセリフがあったものの、あまりにもバカバカしいので喋るのを拒否したというクリストファー・リーの説。もう1つは、そもそも最初からドラキュラのセリフは書かなかったという脚本家ジミー・サングスターの説。ファンとしてはリーの説を支持したいところだが、しかし実際のところはサングスターの言い分の方が正しいように思う。だって、その後のドラキュラ映画では、とんでもなく臭いセリフや荒唐無稽なセリフだって平気でバンバン喋っているんだもん(笑)。それに、劇中における他のキャストのセリフから考えても、もともとそこにドラキュラのセリフがあったとは考えにくい。

いずれにせよ、ストーリーも設定もシンプルで分かりやすく、観客を怖がらせることに注力しているという点は好印象。また、殺したアランを逆さ吊りにし、ボタボタと滴り落ちる生き血でドラキュラを蘇らせるなど、随所に出てくるサディスティックな描写も悪くない。この辺りからハマー・ホラーのスプラッター指数が上昇し始めたのではないかと思う。そのドラキュラ復活の様子にしても、大量の血液が人間の形に凝固し、徐々に筋肉や血管を形成していき、最終的にドラキュラの姿になるまでをオーバーラップで丁寧に描いていく。テクニックとして原始的ではあるものの、なかなか見応えのあるシーンであり、後の「スペース・バンパイア」('86)にも影響を与えたのではないかとも考えられる。

ただ、最大の難点はドラキュラに襲われる側のキャラクターだ。とにかく、お前たち、マジでアホか?と言いたくなるくらいに危機感がないのだ(笑)。唯一の例外はヘレンだが、それ以外の3人は呆れるくらいに能天気。疑うことを知らないというか、なんでも自分に都合よく解釈するというか、飛んで火に入る夏の虫というか。ま、ストーリーを進めていく上でその方が好都合だというのは分かるし、もしかすると制作当時の一般的な危機意識そのものがこの程度だったのかもしれないが、それにしても大の大人がここまで警戒心が薄いというのは不自然にも感じる。少なくとも、現代の観点から見るとあり得ない。これを呑み込めるか否かで、評価も大きく変わることだろう。

リー御大以外のキャストでは、ブリティッシュ・ホラーを代表するスクリーム・クイーン、バーバラ・シェリーの気品溢れる大人の色香が魅力的。日本ではハマー・ホラー女優のイメージが強いかもしれないが、英国版「キャット・ピープル」と呼ぶべき「闇に狂う女豹」('57)や「生きていた吸血鬼」('58)など、ハマー作品以外でもホラー映画への出演が多い。実は本人自身もホラー映画の大ファンで、子供の頃に両親に連れられて見たユニバーサル・ホラー「フランケンシュタイン」('31)が一番のお気に入りだという。

ハマー映画の常連といえば、サンドール神父役のアンドリュー・キアーも忘れちゃならない。なんたって、「火星人地球大襲撃」('67)のクォーターマス教授だ。他にも、「クレオパトラ」('63)のローマ将軍アグリッパや「鉄海岸総攻撃」('67)のフランクリン大佐など、体が大きくて強面な個性を活かして軍人役や貴族役などを数多く演じた名脇役だった。

なお、海外でリリースされているStudio Canal原版のブルーレイは、フルHDによるレストアの施された修復バージョンで、過去のDVDは一体何だったんだ!と言いたくなるような超高画質。特典のメイキング・ドキュメンタリーには、バーバラ・シェリーやフランシス・マシューズの最新インタビューが含まれている。中でも、これが生前最後('14年に死去)のインタビューとなったマシューズの映像は貴重だ。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:90分/発売元:Millennium Entertainment (2013)
特典:音声解説(クリストファー・リー、スーザン・ファーマー、フランシス・マシューズ、バーバラ・シェリー)/メイキング・ドキュメンタリー「Back to Black」(約31分)/ハマーの世界「Hammer Stars: Christopher Lee」(約23分)/修復前後の比較映像/オリジナル劇場予告編(レストア版)/スチル・ギャラリー


by nakachan1045 | 2016-09-02 01:17 | 映画 | Comments(0)

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