なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ヘルレイザー」 Hellraiser (1987)

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監督:クライヴ・バーカー
製作:クリストファー・フィグ
原作:クライヴ・バーカー
脚本:クライヴ・バーカー
撮影:ロビン・ヴィジェオン
特殊メイク:ボブ・キーン
美術デザイン:マイケル・ブキャナン
音楽:クリストファー・ヤング
出演:アンドリュー・ロビンソン
   クレア・ヒギンズ
   アシュリー・ローレンス
   ショーン・チャップマン
   ダグ・ブラッドレイ
イギリス映画/93分/カラー作品





<あらすじ>
モロッコの市場で怪しげな男から一つのパズルボックスを購入したフランク・コットン(ショーン・チャップマン)。究極の性的快楽をもたらすと言われるそのパズルを解いた結果、フランクの肉体は細切れにバラバラとなり、そのまま消えてしまう。
それから数年後、イギリス郊外の寂れた古い家にフランクの兄ラリー(アンドリュー・ロビンソン)と2番目の妻ジュリア(クレア・ヒギンズ)が越してくる。一家が所有するものの手つかずだったこの家を改修して住もうというのだ。ただ、継母との関係が良いとは言えない娘カースティ(アシュリー・ローレンス)は、よそに部屋を借りることにする。
引越し作業中に手を怪我してしまったラリーは、屋根裏部屋に血をこぼしてしまう。実は、フランクがパズルボックスを解いたのはこの部屋だった。ラリーの血液を吸収して四次元の向こう側から甦るフランク。しかし、肉体を完全に復元するためには、まだまだ血の量が足りなかった。
屋根裏部屋で再生途中のフランクを発見して衝撃を受けるジュリア。実は、2人は過去に1度だけ不倫の関係にあった。ジュリアはその時の乱暴で激しいセックスの快楽をいまだ忘れられず、優しいだけで刺激のない夫ラリーに愛想を尽かしていた。そんな彼女はフランクに言われるがまま、彼の肉体を元通りにするため、夫の留守中に自宅へ男を連れ込んではトンカチで殴り殺し、フランクに生贄として捧げる。
だが、ある日カースティがその様子を目撃してしまい、フランクに襲われるもパズルボックスを奪って逃げ出す。父親に危険を知らせようとするも、気を失って病院で目覚めるカースティ。そこでパズルボックスを解いてしまった彼女の前に、世にも恐ろしい地獄の魔道士たちが姿を現す…。


簡潔に言うならば変態SMホラーである。究極の快楽とは究極の苦痛であるという概念のもと、血飛沫と肉片の飛び散る殺戮と拷問の地獄絵図が展開していく。殺人鬼が人々を殺していくスラッシャー映画がブームとなった'80年代、突如として出現した異形の怪作。気鋭のホラー作家クライヴ・バーカーが、自らの原作小説を映像化したグロテスクでフェティッシュな世界。カルト映画としてこれまでに8本の続編が制作され、魔導師のリーダー、ピンヘッドはジェイソンやフレディなどと並ぶホラー・アイコンとなった。それだけのインパクトを残すに十分な威力を持った作品だ。

なにかと魔導師たちの強烈なキャラで語られることの多い作品だが、しかし彼らは少なくともこの第1作目においては、単なる脇役であって主役ではない。形式上はカースティがヒロインだと言えるが、しかし真の主役はジュリアとフランクだ。究極の性的快楽を求めて四次元へ通じる禁断の扉を開いてしまったフランク、彼との歪んだ変態的な性行為の味が忘れられずに殺人を繰り返し家庭を破壊する人妻ジュリア。2人にとって血みどろの殺戮行為はセックスそのものだ。そんな彼らのどす黒い性への欲望と執着こそが、本作における恐怖の源であり、惨事の元凶なのである。

それはある意味、AIDが猛威を振るった'80年代だからこその着眼点であり、恐らくクライヴ・バーカー自身がゲイであることと無関係ではないだろう。もともと舞台演劇での実績はあったものの、映画製作に関しては全く未経験だったバーカーの演出は、確かに素人臭さの抜けきらないところがある。クロースアップに頼りすぎだし、編集もドン臭い。映画的に必要のない無駄な要素があるかと思えば、逆に必要な要素が欠けていたりもする。その辺の不安定さは、やはり経験不足から来るものであろう。

また、キャスティングも全体的に弱い。お人好しのラリー役に「ダーティハリー」('71)の殺人鬼スコルピオことアンドリュー・ロビンソンというの意外だったし、結果的になるほどそういうわけだったのね、と思わせる捻りの効いた配役の妙は素晴らしい。カースティ役のアシュリー・ローレンスも魅力的だ。しかし、ジュリア役のクレア・ヒギンズは、確かに彼女自身は優れた女優なのだが、あくまでも脇で光る人であって主演を張るタイプではない。本作もミスキャストだ。それ以外にも、フランク役のショーン・チャップマンは凡庸に過ぎるし、脇を固めている俳優陣はことごとく精彩を欠いている。ピンヘッド役のダグ・ブラッドレイら魔導師たちは、そもそもの出番が少ないしね。

とはいえ、それらの欠点を補って余りあるのが、変態SMチックで悪夢的で、見るからに痛そうでグロテスクなショックシーンと特殊メイクの数々だ。金属製フックで顔面の皮をビヨーンと伸ばしたりとか、カナヅチで顎を殴打されて歯頸がむき出しになるとか、とにかく思わずイタタタっと目を背けてしまうようなシーンの連続。それでいて、ある種の残酷の美学とも言うべきスタイルが貫かれており、不思議と嫌悪感はない。魔導師たちのフェティッシュでゴシックな出で立ちもクールだ。もちろん、ゴシックなデザインが実に美しいパズルボックスも魅力的だし、それが異次元の世界へと繋がる鍵になっているという、ラヴクラフト的世界観も素敵だ。

恐らく、ホラー映画ファンでも好き嫌いが分かれるタイプの作品だとは思うし、先述したように映画作品としての欠点も少なくないが、しかし他に類を見ない独創性と一種異様な世界観には傑出したものがある。

なお、日本盤ブルーレイは画質の悪さでファンに不評を買ってしまったが、アンカーベイ社より発売されているアメリカ盤ブルーレイはキズやホコリの一つもないクリアで鮮やかな超高画質。特典映像も満載なので、廃盤にならないうちに是非入手しておくことをオススメしたい。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch Dolby TrueHD/言語:英語/字幕:英語(SDH)・スペイン語/地域コード:A/時間:93分/発売元:Anchor Bay (2009)
特典:アンドリュー・ロビンソンのインタビュー(約16分)/アシュリー・ローレンスのインタビュー(約12分)/作曲家クリストファー・ヤングのインタビュー(約18分)/メイキング・ドキュメンタリー「Hellraiser: Resurrection」(約26分)/ダグ・ブラッドレイのインタビュー(約13分)/クライヴ・バーカー監督、アシュリー・ローレンスによる音声解説/オリジナル劇場予告編集(3種類)/テレビスポット集(4種類)/撮影舞台裏ギャラリー/ポスター&広告ギャラリー/ストーリーボード・ギャラリー/トリビア再生機能/脚本草稿完全収録(ファイルデータ)/脚本最終版完全収録(ファイルデータ)


by nakachan1045 | 2016-09-06 13:39 | 映画 | Comments(0)

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