なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ヘアー」 Hair (1979)

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監督:ミロシュ・フォアマン
製作:レスター・パースキー
   マイケル・バトラー
原作:ジェローム・ラグニ
   ジェームズ・ラドー
脚本:マイケル・ウェラー
撮影:ミロスラフ・オンドリチェク
振り付け:トワイラ・サープ
音楽:ガルド・マクドーモット
出演:ジョン・サヴェージ
   トリート・ウィリアムス
   ビヴァリー・ダンジェロ
   アニー・ゴールデン
   ドーシー・ライト
   ドン・デイカス
   ネル・カーター
   シェリル・バーンズ
   メルバ・ムーア
   ロニー・ダイソン
   ニコラス・レイ
アメリカ映画/121分/カラー作品





<あらすじ>
オクラホマの田舎からニューヨーク行きのバスに乗る若者クロード(ジョン・サヴェージ)。見送る父親に別れを告げた彼は、ベトナム戦争へ徴兵され入隊を控える身だったが、それまでの2日間を憧れのニューヨークで過ごすことに決めていた。
ニューヨークへ到着した彼が最初に出会ったのは、セントラルパークにたむろするヒッピーの若者たち。リーダー格のバーガー(トリート・ウィリアムス)は大胆不敵だが気のいい若者で、黒人のハッド(ドーシー・ライト)は反骨精神旺盛な女たらし、長髪のウーフ(ドン・デイカス)はひょうきんなお調子者で、紅一点のジーニー(シェリル・バーンズ)は誰が父親か分からない子供をお腹に宿していた。
自由奔放で型破りなヒッピーたちに面食らいつつも、すぐに打ち解けて仲良くなるクロード。そんな彼は公園で乗馬を楽しむ富裕層の令嬢シーラ(ビヴァリー・ダンジェロ)に一目惚れをする。彼の気持ちを察したバーガーらは、あの手この手でシーラとクロードをくっつけようと画策し、はじめは戸惑っていた彼女もやがてヒッピーたちに親近感を覚えるようになる。
だが、楽しい2日間はあっという間に過ぎてしまった。戦争という過酷な現実がクロードの前に立ちはだかる。仲間やシーラと別れ、ネバダ州の軍事キャンプで訓練に明け暮れるクロードだったが…。


ベトナム反戦の気運が最高潮を迎えた'68年にブロードウェイで初演され、たちまち社会現象となった同名ロック・ミュージカルの映画化。しかし、オリジナルの初演から10年以上を経て実現した映画版は、結果として批評的にも興行的にも成功とは言い難かった。辛うじてゴールデン・グローブ賞のミュージカル/コメディ部門にノミネートされただけ。当時は既にラブ&ピースの時代ではなかったというのも理由の一つかもしれないが、しかし決してそれだけではないだろう。オリジナル版関係者が揃いも揃って、映画版について“舞台版の本質を全く捉えていない”、“ヒッピーたちがただの間抜けか、平和運動とはまるで無関係の奇人変人として描かれている”と酷評しているが、まさにそれこそが本作を見ていて強く感じる違和感の原因だろう。

本作に登場するヒッピーたちは、住むところもなく公園で野宿して生活し、仕事もせず人様から小銭を無心しては遊びほうけ、欲しいものは他人から奪って手に入れる。ただの甘ったれた大人になれないフーテン集団にしか見えない。しかも、愛と平和と助け合いの精神を唱えながら、シーラの社交界デビューの記念式典では狼藉を働いてパーティを台無しにするし、ハッドは自分の子供を産み育てている元恋人を冷たく突き放す。たとえ上流階級の人々に理不尽な扱いを受けても最低限の礼儀は守るべきだし、ハッドも偉そうに宇宙の真理を説く前に元カノの生活を援助するべきであり、それが出来ないのはただの無責任であり傲慢だ。要するに、彼らの生き様のいちいちに確固たる信条が見えず、結果的にヒッピーを単なる無軌道で自己中心的な悪ガキ集団へと貶めてしまっているのだ。

なので、そんな彼らが唐突にベトナム反戦を訴え始めても、当然のことながら説得力がまるでない。そもそも、彼らがなぜ権力の横暴に異議を唱えるのか、なぜ戦争に反対するのかという核心の部分が全く描けていないのだ。恐らく本作の最大の問題は、主人公たちの内面的な葛藤や信念の具体的な描写をまるごとすっ飛ばしている点にあるだろう。それゆえに、あらゆる言動が唐突かつ突飛に感じられてしまうのだ。ヒッピーの生き方に懐疑的だったハッドの元カノはあっという間に感化されてしまうし、どう見たってクロードよりもバーガーに興味津々だったシーラもいきなりクロードと熱い抱擁とキスを交わす。そう、この映画に出てくる人たちには出発点と終着点しかなく、その間の迷いや葛藤がまるでないのだ。そのため、後半で盛り上がる反戦のメッセージも、まるで勉強するのは嫌だ、野菜を食べるのは嫌だといった子供のわがままレベルにしか感じられない。これでは原作者たちが怒るのも当然だろう。

前作「カッコーの巣の上で」('75)がアカデミー賞5部門を制覇したミロシュ・フォアマン監督だが、本作でもミュージカル・シーンのダイナミックかつイマジネーション豊かな演出に才気の片鱗を伺わせるものの、全体的な完成度としてはあまり芳しくない。なんというか、どうにも演出のモヤモヤ感を払拭できないのだ。その最たるものが時代考証だろう。もしかすると'60年代や'70年代の風俗に馴染みのない若い世代には気にならないかもしれないのだが、本作はベトナム戦争の時代、つまり少なくとも'68年前後を舞台にしているにも関わらず、画面に映る人々の服装も髪型も、ニューヨークの街の風景すらも、その大半が明らかにディスコ全盛期、つまり映画版が製作された'79年前後のものにしか見えないのである。部分的には'60年代だけど、ほとんどが'70年代。これがあえて意図したものなのか、それとも単なる手抜きなのかは分からないが、果たしてこんな中途半端なことで本当にいいのだろうか?という疑問は終始付きまとってしまう。ん~、マジでモヤモヤするんだよなあ。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考ブルーレイ情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio/字幕:日本語・英語/地域コード:A/時間:121分/発売元:20世紀フォックスホームエンターテインメントジャパン(2011年)
特典:オリジナル劇場予告編


by nakachan1045 | 2016-09-11 17:28 | 映画 | Comments(0)

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