なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「火星着陸第一号」 Robinson Crusoe On Mars (1964)

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監督:バイロン・ハスキン
製作:オーブリー・シェンク
原作:ダニエル・デフォー
脚本:イブ・メルキアー
   ジョン・ヒギンズ
撮影:ウィントン・C・ホック
特殊視覚効果:ローレンス・W・バトラー
       アルバート・ホイットロック
美術デザイン:アル・ノザキ
音楽:ヴァン・クリーヴ
出演:ポール・マンティー
   ヴィクター・ランディン
   アダム・ウェスト
   バーニー(猿)
アメリカ映画/110分/カラー作品





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<あらすじ>
火星へと近づいたアメリカの宇宙探査船は、その直前に流星群に遭遇してしまい、衝突を避けようとして帰りの燃料を使い果たしてしまう。地球へSOS信号を出した乗組員のドレイパー大佐(ポール・マンティー)とマクレディ大佐(アダム・ウェスト)は、動物実験用の猿モナ(バーニー)を連れ、避難用ポッドで火星へ降り立つこととなる。
火山地帯に不時着したドレイパーは危機一髪で脱出するものの、引火したポッドは爆発してしまう。手元に残ったのは2日分の酸素と5日分の水、そして僅かな宇宙食と通信機器のみだった。洞窟の中に避難場所を見つけた彼は、マクレディとモナを乗せたポッドを捜索。ようやく発見したものの、マクレディは既に死んでおり、生き延びたモナを連れて洞窟へ戻る。
地球にSOS信号が届いたかは分からない。このまま火星で朽ち果てるしかないのかと考えたドレイパーだが、火星の石を燃やすことで酸素が発生することを発見。さらに、地下水とソーセージに似た植物を見つけた。
それから数ヵ月後、火星の上空に飛行物体が現れる。地球からの救援隊だと思って外へ飛び出したドレイパーだったが、それはエイリアンの宇宙船だった。そこで彼は、宇宙船の攻撃から逃げる一人の男(ヴィクター・ランディン)と遭遇し、洞窟へと連れて帰る。
人間ソックリのその男は、エイリアンの奴隷だった。エイリアンは奴隷を使い、火星で採掘作業をしていたのだ。ドレイパーは男をフライデーと名付ける。お互いに言葉も文化も全く違う2人だったが、やがて打ち解け親しくなる。だが、フライデーの腕に付けられた奴隷用の手錠には発信機が備わっており、やがて彼を捕らえるべく宇宙船の群が戻ってくる…。


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火星にたった一人残された男のサバイバルを描くSF映画。そう、言うなれば「オデッセイ」('16)のご先祖様みたいな作品だ。宇宙人と遭遇する後半こそ一種荒唐無稽ではあるが、SF映画といえば高度な文明を持つエイリアンが地球に襲来する侵略型、もしくは惑星探査中に様々なクリーチャーと戦うことになるモンスター型の2パターンが大半だった当時にあって、本作のような科学的根拠に基づいたリアリズム重視の本格的空想科学映画は珍しかったと言えよう。

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まず目を奪われるのはビジュアルの美しさだ。西部劇のロケ地として有名なカリフォルニアのデス・ヴァレーで撮影された火星の風景は、CGばりにハイレベルなマットペイント合成やオプチカル合成の効果もあって、実に神秘的で幻想的な雰囲気を漂わせている。昔のSF映画にありがちな、お化けみたいな巨大植物やら奇妙な宇宙生物など出てこない。現実の火星がそうであるように、全くの不毛の惑星として描かれている。

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とはいえ、全てが全て科学的根拠に基づいているわけではない。火星に地下水や食べられる植物があるとは現実的に考えにくいし、火星の石を燃やすと酸素が発生するなんて事実もないし、仮にそういう奇跡のような状況下にあったとしても、大気の95%が二酸化炭素という火星で主人公たちがマスクなしで自由に行動することは不可能だろう。当時ですら明らかに荒唐無稽な描写が少なくないことは否めない。あくまでも、その他大勢のSF映画に比べると限りなく現実に近いというだけで、その辺はエンターテインメント作品として割り切る必要があるだろう。

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興味深いのは主人公ドレイパーと異星人フライデーの友情ドラマだ。言葉も文化も違う相手とコミュニケーションを取るため、ドレイパーは英語を覚えたり地球の習慣を学んだりするようフライデーに強要するものの、やがて友情が芽生えるに従って、彼は相手の言葉や文化も積極的に尊重して学ぼうとしていく。その背景には、歴史的に世界中で自分たちの文化を優れたものとして一方的に押し付けてきた欧米先進諸国への批判があるのは明らかだし、フライデーが使い捨ての奴隷であるという設定を含めると、当時アメリカで盛り上がりつつあった公民権運動の精神も確実に反映されている。これは、文化の多様性と相互理解の重要性を描いた作品でもあるのだ。

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原題を見れば一目瞭然だが、ストーリーのベースはダニエル・デフォーの古典的冒険小説「ロビンソン・クルーソー」。エイリアンの奴隷フライデーの名前も同作に由来する。監督はジョージ・パル製作の侵略型SFパニック映画の傑作「宇宙戦争」('53)のバイロン・ハスキン。「宇宙戦争」に出てきたエイリアンの戦闘機が本作でも登場する。もともと戦前からハリウッドを代表する特殊効果マンとして活躍してきた人だけに、当時の原始的なSFXをいかにナチュラルかつリアルに見せるかをちゃんと心得ている。実は彼、「宇宙征服」('55)でもリアリズム志向のSF映画に挑戦しているものの、極めてエンターテインメント性の薄い硬派な内容だったこともあって、興行的に大惨敗を喫してしまった。本作はそのリベンジでもあったわけだ。

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そう考えると、本作が科学的根拠一辺倒ではない理由も理解できることだろう。その上で、前半はリアリズム重視のシリアスな宇宙サバイバル、後半はエンタメ性を増したSF冒険活劇と、全体的に観客を飽きさせないようなバランスが計算されている。逆に言うと、そのサービス精神が賛否の分かれるポイントにもなる。当時としては斬新な発想だったかもしれないが、今となっては時代に色あせてしまった感は否めないし、やはり「宇宙戦争」のような荒唐無稽に徹した派手なSF娯楽映画の方が素直に楽しめるだろう。実際、当時の興行成績は振るわなかった。とはいえ、脚本や特撮の完成度は非常に高いので、カルト映画として根強いファンが多いことも納得できるのだが。

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主人公ドレイパーを演じているポール・マンティーは、これが初めての大役にして初めての主演作だった。無名の俳優を探していた製作陣は、アメリカ初の宇宙飛行士アラン・シェパードに顔立ちが似ていることから彼を選んだという。異星人フライデー役のヴィクター・ランディンは、「宇宙大作戦(スター・トレック)」('66~'69)のクリンゴン星人役などエイリアンを演じることの多かった役者。また、テレビ版「バットマン」('66~'68)およびその映画版でブルース・ウェインを演じたアダム・ウェストが、出番こそ少ないもののドレイパーの相棒マクレディ役で顔を見せている。

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評価(5点満点中):★★★☆☆

参考ソフト情報(イギリス盤ブルーレイ&DVD2枚組セット)
ブルーレイ仕様
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch LPCM/言語:英語/字幕:英語(SDH)/地域コード:B/時間:110分
DVD仕様
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語(SDH)/地域コード:2/時間110分
発売元:Eureka Entertainment/Paramount Pictures (2015)
特典:特殊効果デザイナー、ロバート・スコタックによる音声解説/オリジナル劇場予告編/フルカラー解説ブックレット(28ページ)


by nakachan1045 | 2016-09-18 01:19 | 映画 | Comments(0)

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