なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「愛欲の魔神島・謎の全裸美女惨殺体」 Tower of Evil (1972)

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監督:ジム・オコノリー
製作:リチャード・ゴードン
原作:ジョージ・バクスト
脚本:ジム・オコノリー
撮影:デズモンド・ディッキンソン
音楽:ケネス・V・ジョーンズ
出演:ブライアント・ハリデイ
   ジル・ヘイワース
   マーク・エドワーズ
   ジャック・ワトソン
   アンナ・パルク
   デレク・フォウルズ
   ゲイリー・ハミルトン
   ジョージ・コールーリス
   キャンディス・グレンデニング
   ロビン・アスクウィズ
特別出演:デニス・プライス
     アンソニー・ヴァレンタイン
イギリス映画/89分/カラー作品





<あらすじ>
カナダのハドソン沖に浮かぶ無人島スネイプ島。真夜中に上陸した地元の漁師ハンプ(ジャック・ワトソン)とその父親ジョン(ジョージ・コールーリス)は、バラバラに切断された若者たちの全裸死体を発見する。さらに、灯台の周辺を調査したところ、扉に隠れていた若い女性が悲鳴を上げてジョンをナイフでメッタ刺しにし、狂ったように叫びながら暗闇を駆け抜けていった。
女性の名前はペニー(キャンディス・グレンデニング)。数日前に他の友人4人とスネイプ島を訪れたものの、彼女以外の全員が惨殺されていた。警察は彼女が犯人ではないかと睨むが、状況的に不可解な点が多い。しかも、ペニー本人は極度のショックで話をできるような状態ではなく、精神科医シンプソン博士(アンソニー・ヴァレンタイン)の催眠療法も効果が薄かった。
その頃、博物館館長ベイクウェル卿(デニス・プライス)のもとに4人の考古学者が集まっていた。才色兼備のローズ(ジル・ヘイワース)とその元恋人アダム(マーク・エドワーズ)、ダン・ウィンスロップ(デレク・フォウルズ)とその妻ノーラ(アンナ・パルク)だ。というのも、ペニーが手にしていたナイフは古代フェニキアの邪教の儀式に使用されたもので、4人は発掘調査に向かうこととなったのだ。
ペニーの家族から彼女の無実を証明するため雇われた私立探偵ブレント(ブライアント・ハリデイ)も加わり、一行は漁師ハンプと甥っ子ブロム(ゲイリー・ハミルトン)の案内で島へ到着する。彼らは惨劇の舞台となった灯台に寝泊りすることとなった。
かつて、この灯台にはハンプの弟家族が住んでいた。だが、妻子が船事故で溺死してしまい、悲しみのあまり弟は自殺してしまったという。今や島には誰も住んでいないはずだったが、ローズは何者かに見張られているような気配を感じ、やがて一人また一人と殺されていく。
実は、ハンプの弟ソールは自殺などしていなかった。もともと本土に暮らしていた弟一家だったが、ソールが精神病を患ってしまい、療養を兼ねてスネイプ島で暮らすようになったのだ。食料などの物資は定期的にハンプが届けていたものの、半年前に一家は忽然と姿を消してしまう。ハンプとジョンがペニーを発見した夜も、弟家族の捜索のために来ていたのだ。
完全に狂ってしまったソールが犯人に違いない。そう確信したブレントたちは手分けして島を捜索。すると、地下に古代フェニキアの邪神バールを祀る神殿が発見され、衝撃的な真実が明らかとなる…。


'70年代のUKホラーが生んだ異形の怪作にして、ホラー映画ファンならば絶対に見逃せない隠れた名作である。強烈なスプラッター描写にセックス描写、古代文明の邪教を絡めたオカルト的な禍々しいムード、そして島から忽然と姿を消した狂人一家の謎。劇場公開当時は興行的に全く奮わず、日本でもテレビ放送されたのみでビデオ発売すらされなかったが、その後の口コミによって熱狂的なファンを生んだカルト映画だ。筆者にとっても、「地獄のサブウェイ」('72)や「死霊の町」('60)、「フライトメア」('74)などと並んで、最も愛してやまない英国産モダンホラー映画の一つである。

先述したようにオカルト的なムードが濃厚ではあるものの、あくまでも一要素として匂わせているだけであり、正確にはスラッシャー映画にカテゴライズするべき作品であろう。実際、欧米では本作をスラッシャー映画の原点とする向きもある。ただし、これには異論があって然るべきだろう。というのも、「13日の金曜日」('80)を筆頭とするスラッシャー映画に直接的な影響を与えた作品は、両者の類似点の多さを鑑みてもマリオ・バーヴァ監督の「血みどろの入江」('71)と考えるのが妥当であり、その1年後に公開された本作を原点とするには無理があるからだ。むしろ、本作も「血みどろの入江」の影響下で生まれた作品として見るほうが自然だ。

しかしながら、人里離れた孤島に潜む狂人一家による連続猟奇殺人というプロットは「悪魔のいけにえ」('74)を先取りしているし、最後に登場する真犯人のグロテスクな特殊メイクや死にざまは「バーニング」('81)とソックリ。スラッシャー映画の歴史を紐解く上で、少なからず重要な位置を占める作品であることには間違いないだろう。性的に奔放な男女ばかりが犠牲になるという設定も、恐らく本作が原点と言えるかもしれない。

また、主要キャストの大半が美男美女で構成されている本作だが、若くて美しい女性と同様に若くてハンサムな男性のヌードもバンバン出てくる点は興味深い。どことなくクイアーな香りがするのである。その中の一人ジョン・ハミルがもともとビーフケーキマガジンと呼ばれるマッチョな男性ヌード専門雑誌のモデル出身で、特にゲイからの人気が高かったというのも、もしかしたら偶然ではないのかもしれない。監督のジム・オコノリーもプロデューサーのリチャード・ゴードンも生涯独身だったようなので、まあ、さもありならんという感じはする。いずれにせよ、美女だけでなく美男の全裸も見せるというのは、'72年当時の映画界では画期的な試みだったと言えるだろう。

そのジム・オコノリー監督は怪獣映画「恐竜グワンジ」('69)で知られる人だが、決して優れた演出家というわけではない。本作もテクニカルな面では稚拙な点が多々見受けられる。ただ、全体を覆う独特のダークで伝奇的な雰囲気は秀逸だし、グラフィックな残酷描写にも性描写にも躊躇のないところは好感が持てる。もしかすると、後者はプロデューサー、リチャード・ゴードンの趣味や意向もあったのかもしれないが。なんたって、「ホラー・ホスピタル」('73)や「悪魔の受胎」('81)などのキワモノ映画を製作した人なので(笑)。

役者陣で注目したのが、私立探偵ブレントを演じているブライアント・ハリデイ。実はこの人、黒澤明やフェデリコ・フェリーニ、フランソワ・トリュフォー、イングマール・ベルイマンなどの映画をアメリカに紹介したことで有名な伝説的配給会社ヤヌス・フィルムズの創設者なのである。配給ビジネスに手を出す前は俳優だった彼は、プライベートでは大のホラー映画ファンだったことから、完全に趣味で何本ものホラー映画に出演していたそうだ。また、冒頭で殺される漁師の老人ジョンを演じたジョージ・コールーリスは、あのマーキュリー劇団をオーソン・ウェルズと共に創設した舞台俳優で、「市民ケーン」('40)や「楽聖ショパン」('44)、「ジャンヌ・ダーク」('48)などの古典映画にも出演している名優だ。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:2.0ch DST-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:89分/発売元:Scorpion Releasing (2013年)
特典:映画史家デヴィッド・デル・ヴァレのインタビュー(約13分)/カトリーナのナイトメア・シアター(約5分)/オリジナル劇場予告編集(2種類)


by nakachan1045 | 2016-09-18 22:00 | 映画 | Comments(0)

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