なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「アマゾン・アドベンチャー/グリーン・インフェルノ」 Natura contro aka Green Inferno (1988)

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監督:アントニオ・クリマーティ
原案:アントニオ・クリマーティ
   マルコ・メルロ
脚本:フランコ・プロスペリ
   アントニオ・クリマーティ
   フェデリコ・モッチア
   ロレンツォ・カステラーノ
撮影:アントニオ・クリマーティ
編集:エウジェニオ・アラビソ
特殊効果:パオロ・リッチ
音楽:マウリツィオ・ダーミ
出演:マルコ・メルロ
   マウリツィオ・メルロ
   メイ・デセリグニー
   ピオ・マリア・フェデリチ
   ブルーノ・コラツァーリ
   ロベルト・リッチ
   サルヴァトーレ・ボルゲーゼ
イタリア映画/90分/カラー作品





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<あらすじ>
高名な人類学者のコレンツ教授(ロベルト・リッチ)は、南米アマゾンの伝説的な幻の部族イマンを探してジャングルへ分け入ったが、そのまま消息を絶ってしまう。特ダネを狙う野心的な女性ジャーナリストのジェマ(メイ・デセリグニー)は、教授がまだ生きているという証拠を見つけたことから、友人である研究者ピート(ピオ・マリア・フェデリチ)を教授の行方を探す旅へ誘う。もしイマン族の存在が証明されれば世紀の大スクープだし、なによりも彼らが守り続けたとされる財宝を発見できるかもしれないからだ。
現地でジェマと合流するため、ピートは知人の航空パイロット、フレッド(マルコ・メルロ)とマーク(マウリツィオ・メルロ)を雇う。ところが、彼らの所有する飛行機が借金のカタに取られてしまったため、飛行場からセスナ機を盗み出して一路アマゾンへと向かうのだった。
エンジェル港で現地ガイドのフアン(サルヴァトーレ・ボルゲーゼ)を雇おうとするものの、あまりにも危険だと断られてしまったジェマたちは、単独でアマゾンへと乗り込んでいく。そこで彼らは様々な野生動物の脅威にさらされ、原住民を奴隷のように酷使する採掘業者や、子供たちを誘拐しては先進国へ売りさばく臓器売買業者(ブルーノ・コラツァーリ)などの悪人と遭遇し、原住民たちと共に手を取り合って戦うことになる。そんな冒険の旅の末に彼らがたどり着いた、イマン族の真実とは…?


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ルッジェロ・デオダート監督による世紀の大問題作にして大傑作「食人族」('80)を皮切りに、数多くの類似作品を生み出したイタリア産カンニバル映画ブーム。その人気もすっかり衰退した'80年代末に公開され、ジャンルそのものの歴史に終止符を打つことになったとされている作品がこれ。なにかと酷評されることの多い映画ではあるが、しかし改めてその内容を見直してみると、イタリア産カンニバル映画の系譜において重要な意味を持つ作品であることが分かるはずだ。

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まず初めに言っておくと、本作には食人族など一切登場しないし、そもそも内容的にカンニバリズムとは無関係である。確かに暴力的なシーンはある。だが、それは野蛮な文明人がアマゾンの人々に対して加える暴力であり、それに対抗して原住民が武器を手に戦うことこそあれど、彼らが文明人に対して危害を加えることは基本的にない。あえてジャンル分けをするのであれば、密林を舞台にした正統派の冒険アクション。主人公たちは原住民の味方となって、彼らの生活や人権を守るために大活躍を繰り広げる。なので、ホラー的な要素は皆無に等しい。

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その一方で、本作が「食人族」や一連のカンニバル映画を意識していることは明白だ。ジャングルで失踪した教授の行方を若者たちが探すという基本設定は、大学教授が若者グループの行方を捜すという「食人族」の設定をそのまま逆にしただけである。また、「食人族」を含むイタリア産カンニバル映画では、撮影のため実際にアマゾンの生き物を殺してみせるシーンがたびたび問題視されたわけだが、本作では一切動物を殺さないばかりか、逆に主人公たちは生きるために動物を食べなければいけない原住民たちの生活習慣に最大限の敬意を払いつつ、文明人たちの趣味や娯楽のために犠牲となる動物たちを積極的に救助し保護する。その根底にあるのは、等しく尊い生命への慈しみだ。そう、食人族を登場させないというある種の反則技を含め、本作では「食人族」に代表されるカンニバル映画のクリシェをことごとく否定しているのである。

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そこで重要なカギを握るのは、原案や脚本、撮影まで兼ねるアントニオ・クリマーティ監督の存在だ。実は彼、「世界残酷物語」('62)をはじめとするイタリア産キワモノ・ドキュメンタリー、いわゆるモンド映画の撮影監督出身で、人間がライオンに食い殺されるというショッキングな実録映像でセンセーションを巻き起こした「グレート・ハンティング/地上最後の残酷」('75)とその続編を監督した人物でもあるのだ。そして、一連のモンド映画から派生したサブジャンルこそが、何を隠そうカンニバル映画だったわけだ。

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そんなイタリア産ゲテモノ残酷映画を生み出した張本人の一人であるクリマーティが、ここではその歴史と伝統に真っ向からアンチテーゼを投げかけているという点が非常に興味深い。特にラストの多分に皮肉なハッピーエンドは、金儲けに走りがちな映像ジャーナリズムの堕落したモラルに対する痛烈な風刺であり、センセーショナリズムを身上としてきたイタリア産ゲテモノ残酷映画への、恐らく自戒の念を込めた上での批判だと解釈すべきだろう。これが彼にとって最後の監督作となったのは決して偶然ではないだろうし、初めからジャンルに終止符を打つ意図があったようにすら思えてしまう。また、イタリア産カンニバル映画へオマージュを捧げたイーライ・ロス監督の「グリーン・インフェルノ」('13)が本作の英語タイトルとそっくり同じであることにも、もしかしたら深い意味があるのかもしれない。

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ただ、上記のような解釈や背景を理解しなければ、あくまでも本作は平凡で健全な低予算冒険活劇映画であり、ポスターやビデオジャケットなどからカンニバル映画を連想した観客の期待を著しく裏切ることは確実だ。一部の国では勝手に「食人族」の続編として公開されたというから、劇場へ足を運んだ観客の落胆と怒りは容易に想像できよう(笑)。それでも、やはりドキュメンタリーで鍛え上げられたクリマーティ監督のカメラワークは侮れず、アマゾンの広大で神秘的な風景を捉えたインサートショットの美しさは格別だ。

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評価(5点満点):★★★☆☆

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参考DVD情報(アメリカ盤・廉価オムニバス)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:日本語(焼き込み)/地域コード:ALL/時間:90分/発売元:VideoAsia (2010年)


by nakachan1045 | 2016-09-19 03:55 | 映画 | Comments(0)

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