なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

「女豹の罠」 Perfect Friday (1970)

f0367483_23191532.jpg
監督:ピーター・ホール
製作:ジャック・スミス
脚本:アンソニー・グレンヴィル=ベル
   C・スコット・フォーブス
撮影:アラン・ヒューム
衣装デザイン:キキ・バーン
音楽:ジョン・ダンクワース
出演:ウルスラ・アンドレス
   スタンリー・ベイカー
   デヴィッド・ワーナー
   ペイシェンス・コリアー
   T・P・マッケンナ
   デヴィッド・ウォーラー
イギリス映画/94分/カラー作品





f0367483_02424847.jpg
<あらすじ>
ロンドンの大手銀行で支配人補佐を務めるグレアム氏(スタンリー・ベイカー)は、勤続20年以上のベテラン銀行マン。戦時中に軍隊へ徴用された以外は無遅刻無欠勤でコツコツと働き続け、仕事だけを生き甲斐にしてきた生真面目で堅物な独身中年男だ。
だが、そんな彼の人生はある日を境に一変する。顧客である美しくも妖艶な貴婦人ブリット(ウルスラ・アンドレス)と出会ってしまったのだ。仕事もせずに贅沢三昧で家計は火の車。にも関わらず、貴族の称号によって社会的地位は保証され、銀行から借金したり家財道具を現金に変えたりしながら、自由気ままな放蕩生活を送っているブリットと夫のドーセット卿(デヴィッド・ワーナー)の派手な暮らしぶりを目の当たりにして、今までの自分の生き方がバカバカしくなってしまったのである。
そこで彼は一計を案ずる。ドーセット卿夫妻を巻き込んで銀行から30万ポンドを横領しようというのだ。その金で海外へ高飛びし、子供の頃からの夢だった牧場を買って悠々自適な人生を送ろうと考えるグレアム氏。浪費家のドーセット卿夫妻にとっても美味しい話だ。
しかも、ブリットに恋してしまったグレアム氏は、最終的にはドーセット卿を騙し、彼女を連れて2人で国外逃亡するつもりだった。とはいえ、頭は悪いものの抜け目のないドーセット卿。彼もまた、グレアム氏を騙して夫婦だけでブラジルへ逃げるつもりだったのである。
作戦の決行は週末の金曜日。支配人のウィリアムズ氏(デヴィッド・ウォーラー)がゴルフ旅行に出かけ、実務に不慣れな副支配人スミス氏(T・P・マッケンナ)が現金管理を任される。この日を狙って、グレアム氏たちは一世一代の大博打に出るのだったが、次々と予期せぬ出来事が起きてしまう…。

f0367483_02425105.jpg
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの創設者であり、英国演劇史にその名を刻む偉大な演出家であるピーター・ホール。今だと女優レベッカ・ホールの父親と言った方が通じるだろうか。日本ではいまひとつ馴染みの薄い名前だが、イギリスでは泣く子も黙る大物演劇人。そんな彼も'60年代末から'70年代前半にかけて、映画監督として精力的に作品を発表した時期があったのだが、その中の一つがこの「女豹の罠」である。

f0367483_02430371.jpg
結論から言うと、非常に惜しい映画である。面白くなる要素はいくらでも揃っているのだが、どうもいまひとつパッとしない。その最大の理由は、ピーター・ホール監督の几帳面な演出にあるように思う。基本的にコミカルでライトなタッチの作品ではあるのだが、強盗詐欺計画のディテールにこだわり過ぎて、映画的なダイナミズムに著しく乏しくなってしまった感は否めない。肝心の山場で全く盛り上がらないのだ。やはり、この種の映画は適度に荒唐無稽でいい加減なくらいが丁度いい。

f0367483_02425577.jpg
また、冒頭から時間軸を頻繁に行き来させつつ、パズルを組み合わせるようにして物語を紡いでいく手法は極めて映画的であり、そこは明らかに意識しているのだろうと思われるのだが、その一方でアクションよりもセリフ主体で各シーンを構成させていくスタイルは、やはりどこか演劇的だ。これもまた、全体的に地味でメリハリのない印象を与える原因になっている。

f0367483_02425385.jpg
ただ、物語の背景として英国社会に色濃く残る階級制度の矛盾を描いている点はとても面白い。長年に渡って真面目にコツコツと仕事をしてきたのに大して報われない庶民のグレアム氏、貴族という肩書きに胡座をかいて仕事もせず放蕩三昧のドーセット卿。この両者の対比と対立が、しばしば風刺の効いたユーモアを生んでいく。王様気取りでプライドだけは高いが、中身は空っぽで無能なドーセット卿。下々の者であるグレアム氏にいちいち指図されることが気に入らず、なにかにつけて反抗したり口を挟んだりするものの、その度にけんもほろろにやり込められてしまうのがなんとも滑稽。貴族は庶民を支配している気になっているが、しかし勤勉な庶民の支えがなければ貴族の生活など成り立たないというわけだ。

f0367483_02430110.jpg
「円卓の騎士」('53)や「トロイのヘレン」('55)、「リチャード三世」('55)など歴史劇でお馴染みの渋い名優スタンリー・ベイカー、「オーメン」('76)や「バンテッドQ」('81)、「タイタニック」('97)などで知られる個性派デヴィッド・ワーナーと、主演男優陣は揃っていつものイメージを覆すような役柄に挑んでいる。中でも、デヴィッド・ボウイばりにスウィンギン・ロンドンなケバケバしい出で立ちのデヴィッド・ワーナーにはビックリ(笑)。似合う似合わないは別としてインパクト強烈だ。

f0367483_02425976.jpg
しかし、やはり本作の目玉はドーセット卿夫人ブリットを演じているウルスラ・アンドレスであろう。コケティッシュな魅力で男たちを手玉に取って、美味しいところをかすめ取っていく憎めない悪女。ファッションモデルばりにゴージャスな衣装を次々と着こなしていくばかりか、ベッドシーンでは鍛え抜かれた彫刻のようなグラマラスボディも惜しげなく披露していく。また、スイス出身の彼女は英語の訛りが非常に強いため、出世作「007/ドクター・ノオ」('62)を含めてセリフを他人が吹き替えることが多かったのだが、本作では珍しく本人の声がそのまま使用されており、いかにも一筋縄ではいかない胡散臭さを醸し出して秀逸だ。ある意味、これは女優ウルスラ・アンドレスを愉しむための映画とも言えるだろう。

f0367483_02425796.jpg
なお、撮影を手がけたのは「007/ユア・アイズ・オンリー」('81)から「007/美しき獲物たち」('84)まで3本連続でカメラを担当したアラン・ヒューム。「召使」('63)や「唇からナイフ」('66)などジョセフ・ロージー作品で知られる名匠ジョン・ダンクワースが音楽スコアを書いている。これがまた、ちょっと場違いな印象が強い。コミカルなタッチを意識しすぎているというか、全体的に音楽がやかましくて過剰気味なのだ。もうちょっとスマートで洒落た音楽の方が雰囲気だったかもしれない。

f0367483_02430675.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス盤2枚組)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/1080p/音声:2.0ch LPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:B/時間:94分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕英語/地域コード:2/時間:94分
発売元:Network (2013年)
特典:ドイツ版オリジナル劇場予告編/サウンドトラック別バージョン/スチル・ギャラリー/プレス資料(PDF)



by nakachan1045 | 2016-09-26 19:02 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター