なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「犬神の悪霊(たたり)」 Curse of the Dog God (1977)

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監督:伊藤俊也
企画:天尾完次
   安斉昭夫
脚本:伊藤俊也
撮影:仲沢半次郎
美術:桑名忠之
音楽:菊池俊輔
出演:大和田伸也
   山内恵美子
   泉じゅん
   長谷川真砂美
   岸田今日子
   小山明子
   鈴木瑞穂
   室田日出男
   三谷昇
   小野進也
   小林稔侍
   白石加代子
日本映画/103分/カラー作品





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<あらすじ>
ウラン鉱探索のために久賀村へとやって来たウラン技師の加納竜次(大和田伸也)と同僚の西岡(小野進也)と安井(畑中猛重)は、車の運転を誤って小さな祠を壊した上に勇少年(加藤淳也)の飼っている犬をひき殺してしまう。さらに、水浴びをしている垂水かおり(山内恵美子)と親友の剣持麗子(泉じゅん)と遭遇した加納は、その半年後に麗子と結婚するのだった。
麗子の父親・剣持剛造(鈴木瑞穂)は村一番の地主で、その所有地には大量のウランが眠っていた。原子力開発を進める会社にとっても2人の結婚は望ましく、披露宴も東京で盛大に行われる。ところが、その席上で西岡が発狂して投身自殺を遂げ、続いて安井が野良犬の群れに食い殺されてしまう。さらに、加納までもが高熱でうなされるのだった。
久賀村での出来事を知った麗子は、それが犬神の祟りであると悟る。村外れには垂水家という犬神筋の家族が住んでおり、普段より村人たちから忌み嫌われていた。その長男が勇少年であり、麗子の親友かおりはその実姉だった。犬を轢き殺された恨み、加納に横恋慕していたかおるの恨みだと考えた麗子は、愛する夫の代わりに祟りを我が身に引き受ける。
すると加納の病は治まったが、今度は麗子の頭がおかしくなってしまう。病院でも手の施しようがなく、加納は久賀村へ彼女を連れて帰る。そこで村人たちは拷問にも似た除霊術を行うものの、その責め苦に耐え切れなかった麗子は死亡。村人たちは垂水家のせいだとして憎悪の目を向ける。だが、垂水家の人々が善良であることを知った加納は、次第にかおりと惹かれあうのだった。
その頃、ウラン採掘場では奇妙な事件が発生し、会社は採掘方法を変えることにする。ところが、その際に使用する硫酸が村の水源に流れ出し、井戸水を飲んだ村人たちが次々と死亡。会社も剣持剛造も事実をひた隠す。垂水家が井戸に毒を混ぜたものと思い込んだ村人たちは暴徒と化し、幼い勇少年を含む垂水家の人々を虐殺してしまう。一人残された父親の垂水降作(室田日出男)は犬を地中に埋め、呪いの呪文とともにその首をはねる。すると、宙を飛んだ犬の首は降作の喉笛に食らいつき、呪いの儀式は完了。麗子の幼い妹・磨子(長谷川真砂美)に犬神が憑依し、いよいよ村人への壮絶な復讐が始まる…。

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なるほど、確かに怪作ではある。折からの世界的なオカルト映画ブーム、そして当時世間を賑わせていた「犬神家の一族」の大ヒットに便乗する形で、日本を代表するキワモノ映画の殿堂(?)東映が放った“日本初のオカルト映画”。とはいえ、「エクソシスト」「オーメン」を凌駕する!と銘打ったものの、興行的にはまるでパッとせず、ビデオ草創期の'81年に一度だけVHSで発売されたのみで、その後長いことソフト化されることがなく、いつしか幻のカルト映画として伝説化されていった。

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劇中の犬のひどい扱いが動物虐待に当たるから、村八分の描写が部落差別を想起させるからなどなど、あまりの罰当たり物件ゆえに封印された映画などと実しやかに伝えられてきた本作だが、いざ蓋を開けてみれば大したことはない。犬を首から下だけ地中に埋めるシーンはちょっと可哀想だが、この程度の“演技”は当時なら日本でも海外でもザラだったし、もちろん首チョンパ(死語)されるシーンだって見るからにぬいぐるみ。差別描写も確かに陰惨ではあるものの、ことさら過激なわけでもないし、村八分にされる垂水家の人々への同情的な描き方からは、問題視されるような理由など特に見当たらない。まあ、今の倫理基準からすれば罰当たりというか、良識的な観客の至極真っ当な神経を逆なでするような描写もないではないが、'70年代当時の東映としてはごく当たり前の通常営業だ。上記のような諸々の“曰く”というのは、恐らく幸運(?)にも本作を見ることの出来た一部の人々が尾ひれをつけた結果であり、ただ単に需要が見込めないからソフト化されなかったというのが実際のところだろうと思う。

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それよりも、本作の特筆すべき点は伊藤俊也監督の異常にハイテンションな演出にあると言えるだろう。とにかくストーリー展開のテンポが速い。余計な説明どころか、そこはもうちょっと必要じゃね?と思われる説明や途中過程までも、躊躇することなくバンバンとすっ飛ばしていく。辻褄が合わないとか、設定に無理があるとか、そんなもん関係なし!とばかりに全編これ大暴走。撮影期間が短かったせいなのか、岡田社長からのプレッシャーが強かったからなのか、真相は定かでないものの、ほとんどヤケッパチといった感じの勢いだ。おかげで、状況を呑み込めないまま観客が置いてきぼりを食らってしまうような場面も多々あり。その上、ウラン採掘の既得権益を巡る大企業の思惑やら、採掘現場で起きるポルターガイストのごとき超常現象やら、由緒正しい剣持家の蔵に隠された精神異常の長男やらと、次から次へといろんな要素をぶっ込んでくる。日本全国津々浦々の秘宝館も真っ青の、狂ったような混沌ぶりだ。

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そんなトゥーマッチにもほどがある伊藤監督の演出に負けず劣らず、出てくる役者たちの演技もこの上なく過剰である。特に主演の大和田伸也。表情筋の限界に挑戦するかのごとき顔面演技の過剰ぶりは、もはやホラーではなくスラップスティックコメディ。白目を剥き出しにしながら悪霊祓いを行う祈祷師役の白石加代子、犬の首をはねて呪いの儀式を遂行する室田日出男、水木しげるの漫画から抜け出してきたような顔つきで錯乱演技を披露する小野進也、そしてトランス状態で祭壇に祈りを捧げる村人役のアングラ舞踏団と、犬神様なんか目じゃないくらいに強烈な面々が次々と登場する。いやはや、祟りよりも人間のほうがよっぽど恐ろしい(笑)。

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そう、本作における恐怖の対象というのは、実は犬神でも祟りでもなくて人間そのもの。それは、なにか不幸が起きると自分たちの行いを棚に上げて立場の弱い被差別者の垂水家に責任をなすりつける村人たち、そんな無知で浅はかな愚民どもを手玉に取って利益を得ようとする地主や大企業といった権力者たちのこと。嘘と迷信に踊らされた村人が次第に暴徒と化し、一家皆殺しの残虐へと駆り立てられていく姿に、恐らく伊藤監督は第二次世界大戦へとなだれ込んでいった戦前の日本を重ね合わせているのだろう。磨子に取り憑いた犬神の壮絶な復讐劇というのも、そんな閉鎖的で狂った社会を正すためのショック療法みたいなものなのだ。

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そのクライマックスの、磨子に取り憑いた犬神VS大和田伸也のバトルが、本作の最大の山場だと言えるだろう。特殊メイクだとか特殊効果だとかに予算や時間を割く余裕がなかったからなのか、基本的には飛んだり跳ねたりのアクロバティックなアクションがメイン。ここは、磨子役を演じる美少女・長谷川真砂美の身軽な立ち回りが見ものだ。あ、もちろん大和田伸也のやり過ぎ大熱演もね(笑)。ただ、憑依されたといっても、顔面白塗りに隈取をして赤いコンタクトはめただけなので、残念ながら「エクソシスト」のリーガンに比べるとだいぶ迫力不足。というか、白石加代子の吹き替えた声はともかくとして、見た目に関してはまるで怖くない。むしろ、大和田伸也の肩に飛び乗った磨子(犬神バージョン)の脚をよく見ると、そこだけすね毛ボーボーのオッサンの脚(もちろんボディダブル)に取って変わられているのが最大の恐怖だ。

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でもって、日本映画史において他に類を見ないほど意味不明なラストシーンに驚愕(笑)。想像するに、恐らく「キャリー」のラストを意識したものなのだろうが、あまりにも唐突過ぎて違和感ありまくりだ。全体的にやっつけ仕事的なシーンの少なくない本作だが、このラストは最もそれが顕著かもしれない。そういう意味でも、作品の出来はともかくインパクトだけは強烈な作品だと言えよう。

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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:103分/販売元:東映株式会社(2007)
特典:フォトギャラリー/予告編


by nakachan1045 | 2016-10-01 03:53 | 映画 | Comments(0)

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