なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「13日の金曜日」 Friday The 13th (1980)

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監督:ショーン・S・カニンガム
製作:ショーン・S・カニンガム
脚本:ヴィクター・ミラー
撮影:バリー・エイブラムス
特殊メイク:トム・サヴィーニ
音楽:ハリー・マンフレディーニ
出演:ベッツィ・パーマー
   エイドリアン・キング
   ハリー・クロスビー
   ローリー・バートラム
   マーク・ネルソン
   ジャニーン・テイラー
   ロビー・モーガン
   ケヴィン・ベーコン
   ピーター・ブルーワー
アメリカ映画/95分/カラー作品





<あらすじ>
始まりは1958年、場所はクリスタル・レイクのキャンプ場。納屋でこっそりとイチャついていた若い男女の監視員が、何者かによって惨殺される。
それから21年後の1979年夏。ヒッチハイカーのアニー・フィリップス(ロビー・モーガン)が小さな町のダイナーを訪れる。彼女は新たに再開されることとなったクリスタル・レイク・キャンプ場で、調理師として働くために向かう途中だった。
方角をたずねる彼女に、途中まで送っていくことを申し出るトラック運転手イーノス(レックス・エヴァーハート)。しかし、突然目の前に現れた奇妙な老人ラルフ(ウォルト・ゴーニー)にアニーは警告され、さらにイーノスにもクリスタル・レイクは不吉だから行くのをやめるよう諭される。イーノスのトラックを降り、通りがかった別のジープへ乗り込んだアニー。運転手の怪しい態度に車から飛び出して逃げる彼女だったが、森の中で喉を切り裂かれ殺される。
その頃、クリスタル・レイクには新たに監視員として雇われた若者たちが集まっていた。新装オープンを控えて作業に余念のないオーナーのクリスティ(ピーター・ブルーワー)と、その右腕の女性アリス(エイドリアン・キング)。一足先に到着していたビル(ハリー・クロスビー)とブレンダ(ローリー・バートラム)に、仲良しのジャック(ケヴィン・ベーコン)、ネッド(マーク・ネルソン)、マーシー(ジャニーン・テイラー)の3人が加わり、若者たちはオープン前の束の間の休息を楽しむ。
やがて日も暮れかけ、クリスティが買い出しのため町へ行っている間、若者たちが留守番をすることとなる。そんなクリスタル・レイクを徘徊する怪しい人影。やがて、一人また一人と若者たちが殺されていき、アリス一人だけが残されてしまう。事態に気づいて恐怖に震えあがるアリス。そこへ現れた中年女性パメラ(ベッツィ・パーマー)に助けを求める彼女だったが…。

言わずと知れたホラー映画の金字塔。'80年代に世界中で一世を風靡したスラッシャー映画、通称ボディ・カウント映画のブームはここから始まった。そもそも、'80年代ホラー映画ブームの火付け役自体が本作だったと言っても過言ではないだろう。たった55万ドルの制作費に対して、全米での興行収入は総額3970万ドル。低予算のインディペンデント映画がこれだけの大成功を収めることができた背景には、もちろんパラマウント映画というハリウッドの巨大スタジオが配給を手がけた(世界配給はワーナー)ことも大きく影響しているだろう。事実、本作はハリウッド・メジャーが初めて本格的に配給するスラッシャー映画だった。しかし、それだけでヒットが成り立つはずなどない。

スラッシャー映画の起源については諸説あるが、その正統なルーツはヒッチコック監督の「サイコ」('60)にあると考えて間違いないだろう。というか、スラッシャー映画を含むモダン・ホラーの原点を辿っていくと、どうやったって「サイコ」へと行き着かざるを得ない。その血生臭いリアリズムとセンセーショナリズムは、ウィリアム・キャッスルやマリオ・バーヴァ、ハーシェル・ゴードン・ルイスなどへと受け継がれていくわけだが、中でもイタリアのバーヴァが手がけた「モデル連続殺人」('63)こそが、恐らく世界で最初の本格的なスラッシャー映画だったのではないかと個人的には考えている。

さらに、バーヴァは「血みどろの入江」('71)という「13日の金曜日」の直接的なルーツとも思える怪作を残している。その類似性に関しては偶然の一致と見るのが妥当だと思うが、しかし我々の認識するスラッシャー映画の“ルック”が既にここにはある。「モデル連続殺人」はあくまでも原型であり、「血みどろの入江」こそがスタート地点だと言えよう。もちろん、ハーシェル・ゴードン・ルイスの「ゴア・ゴア・ガールズ」('72)、トビー・フーパーの「悪魔のいけにえ」('74)などの影響も無視はできない。いずれにしても、スラッシャー映画というジャンルが形成されたのは'70年代初頭のことと考えていいだろう。

そして、カナダのボブ・クラーク監督が手がけた「暗闇にベルが鳴る」('75)によって、'80年代スラッシャー映画の基本要素が初めて揃うことになる。限定された空間に解き放たれる正体不明の異常な殺人鬼、次々と残虐かつ奇抜な方法で殺されていく犠牲者たち(大半は盛りのついたバカな若者)、カメラは殺人鬼の目線となって血みどろの惨劇を余すことなく目撃、事件は主にクリスマスやハロウィンなど特定の祝祭日に発生し、最後は生き残った清らかな“処女“が殺人鬼と対決する。このフォーマットを継承したジョン・カーペンター監督のインディペンデント・ホラー「ハロウィン」('78)が、スラッシャー映画として初めて全米規模の大ヒットを記録。その「ハロウィン」の思いがけない大成功に感化され、当初から明確に「ハロウィン」のパクリとして企画されたのが、この「13日の金曜日」だったというわけだ。

ウェス・クレイヴン監督の傑作リベンジ・バイオレンス「鮮血の美学」('72)のプロデューサーとして一部に名を馳せたショーン・S・カニンガムだが、監督としては主にソフト・ポルノや青少年向けコメディを得意としていた。しかし、なかなか興行的なヒットには恵まれず。そんな折にカーペンターの低予算ホラー「ハロウィン」がブームとなり、その勢いに便乗しようと考えたカニンガムは、盟友ヴィクター・ミラーに脚本を依頼。それまでホラーにまるで関心のなかったミラーは、参考にするため映画館で見た「ハロウィン」の基本プロットを抽出し、それを基にして「13日の金曜日」の脚本を書き上げたのだった。

恐らく、ホラーというジャンルに関して監督も脚本家も素人同然だったことが、本作にとっては結果的に功を奏したのではないかと思う。余計なこだわりやジャンルへの愛着など一切ない、極めてシンプルかつストレートな絶叫ムービー。観客を怖がらせることだけに注力した単純明快さが、アトラクション的な刺激を求める当時の若年層を中心とした、ライトな観客層に訴求してメジャー・ヒットへと繋がったのだろう。

また、直接的な血みどろ残酷描写が実は意外と少ない、というのも幅広く受け入れられた要因の一つかもしれない。ホラー初心者でも比較的安心して楽しめるからだ。トム・サヴィーニによる特殊メイクは、さすがベトナム戦争の従軍カメラマンとして本物の死体を数多く見てきた人だけあって、なかなかにリアルでショッキングだが、スクリーンでの登場回数も登場時間もアッサリしている。必要以上にグロさを強調することなく、しかしピンポイントでしっかりと観客に衝撃を与える。この絶妙なさじ加減が本作のキモだ。もちろん、当時はまだスプラッター描写が市民権を得る前だったため、一般受けを考慮すれば自ずと限界があったことも事実だろう。ちょうどこの時期から特殊メイクの技術が飛躍的に進化したこともあり、その後のシリーズも作品を追うごとに殺人シーンの趣向が凝らされ、ホラー映画全般の残酷描写も過激さをエスカレートさせていくことになる。

とまあ、改めて見直すと意外にもエログロ度は控えめな「13日の金曜日」。むしろ青春映画としての趣きの方が強いように感じるのは、少年野球映画「GO!GO!タイガース」('78)や性春コメディ「スプリング・ブレイク」('83)のカニンガム監督ならではの個性と見るべきだろう。あくまでもムード重視で恐怖を高めていく丁寧な演出にも安定感があり、本作以降に雨後の筍のごとく登場した数多のC級~Z級スラッシャー映画の安っぽさとは明らかに一線を画する。そういう意味では、極めて良心的な絶叫エンターテインメントと言えるだろう。

ちなみに、ジェイソンの母親パメラ役を演じた女優ベッツィ・パーマーは、巨匠ジョン・フォードの「長い灰色の線」('55)や「ミスタア・ロバーツ」('55)で脚光を浴びた'50年代の良妻賢母スター。とはいえ、その全盛期は非常に短く、本作の当時は20年近く映画から遠ざかっている状態だった。元々は「俺たちに明日はない」('67)のオスカー女優エステル・パーソンズにオファーされたらしいが、こんなゲテモノ映画はゴメンだということで即却下。ベッツィーも当初は“ホラー映画なんて…”と出演に後ろ向きで、実際に送られてきた脚本を読んでも“クズみたいな映画”だとしか思わなかったそうだが、当時ちょうど新しい車を買う資金が必要だったこともあり、こんな映画はどうせ誰にも知られることなく消えてしまうに違いないと考え、純粋にギャラ目的で出演を承諾したらしい。そもそも、作り手であるカニンガム監督も“ドライブイン・シアターで当たれば儲けもの”くらいに考えていたというのだから、世の中何がどうなるのか分からないものである。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch TruHD・2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:ALL/時間:95分/発売元:Paramount Pictures/Warner Home Video
特典:ショーン・S・カニンガムおよびスタッフ&キャストによる音声解説/ドキュメンタリー「Friday the 13th Reunion」(約17分)/ドキュメンタリー「Fresh Cuts: New Tales from Friday the 13th」(約14分)/短編シリーズ「Lost Tale from Camp Blood - Part1」(約8分)/ドキュメンタリー「The Man Behind the Legacy: Sean S. Cunningham」(約9分)/ドキュメンタリー「The Friday the 13th Chronicles」(約20分)/ドキュメンタリー「Secrets Galore Behind the Gore」(約10分)/オリジナル劇場予告編


by nakachan1045 | 2016-10-04 04:49 | 映画 | Comments(0)

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