なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「女の賭場」 (1966)

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監督:田中重雄
企画:伊藤武郎
原案:青山光二
脚本:直居鉄哉
   服部圭
撮影:小林節雄
音楽:池野成
出演:江波杏子
   川津祐介
   渡辺文雄
   南萬
   見明凡太郎
   酒井修
   水原浩一
   桜京美
日本映画/84分/カラー作品





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<あらすじ>
小さいながらも繁盛している小料理屋の女将・沢井アキ(江波杏子)は、名人と謳われるベテラン賭博師・沢井辰造(水原浩一)の娘で、自らも若いながら才能ある女賭博師として評判だったが、サラリーマンの婚約者・守屋俊夫(南萬)と結婚して平凡な幸せを掴むため、ヤクザな世界と縁を切るべく足を洗っていた。
そんなある晩、関東一円の親分衆を集めた大規模な花会で、辰造は若手のヤクザ立花鉄次(渡辺文雄)にイカサマを見破られ、その落とし前として自決してしまう。誇り高い父親がイカサマを行ったことに当惑するアキ。複雑な年頃の高校生の弟・広志(酒井修)は父の不名誉に失望と怒りを抱き、学業を放棄して不良仲間とつるみ、非行の道へと走っていく。
一方、花会の一件で頭角を現した立花は親分衆に認められ、立花組を組織して一挙に勢力を拡大。アキが世話になっている恩人・兼松万之助(見明凡太郎)の縄張りを横取りするばかりか、アキを自分の賭場の胴師にすべく強引に迫る。頑なに拒絶するアキだったが、狡猾な立花は彼女と婚約者・守屋の仲を裂いて博打の道へ引き入れるべく、巧妙な罠を仕掛けるのだった。しかも、ヤクザらしからぬ現代的なビジネスで手を広げる立花に憧れた広志が、こともあろうか立花組に入門してしまう。
その頃、辰造が友人・塚田(夏木章)の頼みでイカサマを行ったこと、事件の直後に塚田が姿を消したことを不審に思ったアキは、辰三の忠実な弟子である政吉(川津祐介)に頼んで事情を調べさせる。すると、全ては立花が自らの立身出世を目論んで仕組んだ罠だったことが判明。そこでアキは政吉のもとで花札の猛特訓を積み、一度だけ賭博師に復帰することを決意する。次の大きな花会で立花を罠にかけ、復讐しようというのだった…。

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'66年~'71年にかけて通算17作が製作され、「悪名」シリーズや「座頭市」シリーズにも匹敵する大映の人気看板映画となった「女賭博師」シリーズ。当時注目されつつあった女優・江波杏子の出世作であり、後に藤純子が主演した東映の「緋牡丹博徒」シリーズにも多大な影響を与えたわけだが、その記念すべき第一弾がこの「女の賭場」である。

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東映の「緋牡丹博徒」シリーズに比べると都会的というか、任侠映画にどことなくギャング映画やフィルムノワールの香りを漂わせるのは、やはり大映ならではのカラーだろうか。あちらがコテコテのド演歌ならば、こちらは洗練された夜のムード歌謡。どちらかというとアクションやバイオレンス満載の「緋牡丹博徒」シリーズの方が好みといえば好みだが、よりモダンな雰囲気の「女賭博師」シリーズも決して悪くはない。なにより、エキゾチックなクールビューティ、江波杏子の凛とした佇まいは、柔らかで可憐な「緋牡丹博徒」の藤純子よりも魅力的だ。まあ、その辺はあくまでも個人の趣味ではあるのだけど。

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もともとは若尾文子が主演するはずだったものの、怪我で降板したため江波杏子にチャンスが回ってきたという本作。才能はあるが未熟者だったヒロインが、賭博の名人である父親の非業の死をきっかけに鍛錬を積んで一流の賭博師となり、最後に父親の仇を取るという基本プロットは以降のシリーズと共通しているものの、細部の設定や作風はかなり異なった印象だ。何よりも違うのは、ヒロインがヤクザの世界を忌み嫌い、あくまでも堅気として平凡な幸せを望んでいるということ。全体的には任侠映画というよりも、裏社会との関わりに苦悩し翻弄される女性を描いた都会的メロドラマといった感じだ。

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そもそも当初からシリーズ化される予定があったわけではなく、本作の大ヒットで似たような筋立ての映画を江波杏子主演で作り続けたところ、いつの間にかシリーズになっていたというのが真相だったようなので、少なくとも初期の作品は暗中模索であったに違いない。事実、作品タイトルの頭に「女賭博師」と付けてシリーズを銘打つようになったのは、6作目「女賭博師乗り込む」('68)以降のこと。ヒロインの役名が大滝銀子に定着するのも5作目「関東女賭博師」('68)からで、本作の頃は作品ごとに名前がコロコロと変わっていた。

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また、本作でユニークなのは渡辺文雄演じる立花鉄次というキャラクターだ。役回りとしては悪人ということになるのだが、しかし数多のヤクザ映画にありがちな紋切り型の悪党とはだいぶ異なる。伝統やしきたりに縛られた古臭いヤクザの世界を嫌悪し、合法的かつ合理的な手段でビジネスを拡大していく立花は、さながら旧世代の権威に反旗を翻す新世代のニューヤクザといった趣きだ。その背景には、ヤクザの息子として幼い頃から理不尽な差別を受け、いつか世間を見返してやりたいという彼なりの強い信念がある。なので、義理人情よりも実利を優先させるのは、彼の理屈からすると当たり前の正義なのだ。花会でアキの父親・辰造をハメたのは事実だが、しかしそのことが原因で自殺するとまでは考えていなかった。確かに冷酷非情で狡猾な男ではあるが、しかし根っからの悪人というわけではない。そんなグレーゾーンの人物を悪役に配するという点でも、本作は任侠映画として極めてモダンだと言えよう。

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新しい時代の渡世人を象徴するのが立花鉄次ならば、昔気質の渡世人を象徴するのは川津祐介演じる政吉だ。義理人情を何よりも尊重し、私利私欲ではなく他者への忠義に生き、淡い恋心を抱きつつも黙って恩人の娘アキに仕える、不器用で寡黙な男。本作においては、いわば渡世人の良心を体現するような存在でもある。立花に代表されるヤクザの反社会的な本質を大前提として踏まえつつ、そのような世界にしか居場所のない人間の誇りや哀しみ、美学のようなものを政吉に投影させる。そんな、ヤクザに対するニュートラルな視点も本作の面白さである。

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脇役で光っているのは、アキの経営する小料理屋の女給・おとよを演じている桜京美。テレビ「お笑い三人組」でブレイクした喜劇女優とのことで、世代的に筆者は全く馴染みがないのだが、かしまし娘の正司歌江をちょっと可愛くしたコケティッシュさは魅力だ。また、勝新太郎の秘蔵っ子だった酒井修がアキの弟・広志を演じており、まだ人相が悪くなる前の初々しい美少年ぶりを披露している。この広志と周囲の非行少年少女グループの、今となっては他愛ない不良っぷりも微笑ましい。クスリをやるわけでもなく、オヤジ狩りをするわけでもなく、せいぜいヤクザに喧嘩を売ったり、酒に酔いつぶれる程度なのだから。

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というわけで、任侠映画として見るとだいぶ上品で大人しい作品だが、高度成長期における日本社会のある側面を映し出した映画として見ると興味深い。もちろん、江波杏子の美貌を堪能するだけでも十分に楽しめるはずだ。

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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:1.0ch Dolby Digital/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:84分/発売元:オフィスワイケー(2011年)
特典:なし


by nakachan1045 | 2016-10-16 17:24 | 映画 | Comments(0)

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