なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

「人体解剖島/ドクター・ブッチャー」 Zombi Holocaust (1980)

f0367483_00140821.jpg
監督:フランク・マーティン(マリーノ・ジロラーミ)
製作:ファブリツィオ・デ・アンジェリス
   ジャンフランコ・クーユームジャン
原案:ファブリツィオ・デ・アンジェリス
脚本:ロマーノ・スカンダリアート
撮影:ファウスト・ズッコリ
特殊メイク:マウリツィオ・トラーニ
音楽:ニコ・フィデンコ
出演:イアン・マカロック
   アレクサンドラ・デッリ・コッリ
   シェリー・ブキャナン
   ピーター・オニール
   ドナルド・オブライエン
   ダカール
   ワルター・パトリアルカ
イタリア映画/84分/カラー映画





<あらすじ>
ニューヨークの大病院で、遺体の内蔵や手などが盗まれるという事件が連続して発生する。病院と警察が内偵を進めていたところ、アジア人の職員が真夜中に死体の内蔵を食っている現場を取り押さえる。
その職員はインドネシア領モルッカ諸島にある、キトーという島の出身だった。この島ではキトーという古代の邪神を崇拝しており、職員の腕にはキトーの印が刻まれている。ちょうどその頃、病院に勤務する女性人類学者ローリ(アレクサンドラ・デッリ・コッリ)の自宅が荒らされ、その現場にも同じくキトーの印が残されていた。実は彼女、幼い頃にキトーに住んでいたことがあった。
すべての謎を解く鍵は島にある。そう考えたチャンドラー博士(イアン・マカロック)とローリ、助手ジョージ(ピーター・オニール)は、一路モルッカ諸島へ向かうことに。また、一連の事件をレポートする野心的な女性新聞記者スーザン(シェリー・ブキャナン)も同行することとなった。
彼らは現地で開業する医師オブレロ博士(ドナルド・オブライエン)に協力を依頼する。彼は助手モロット(ダカール)および現地人スタッフを案内役として提供してくれた。ところが、到着した島で一行は食人族に襲われる。現地人スタッフやジョージが食い殺され、スーザンが連れ去られてしまった。その上、食人族さえも恐れる不気味なゾンビが出現。命からがら逃げたチャンドラー博士とローリは、ジャングルの奥で研究施設を発見する。
実は、全ての黒幕はオブレロ博士だったのだ。彼はジャングルの原住民に人肉食を覚えさせることで食糧問題を解決し、その見返りとして実験用の死体を調達させ、長年の夢だったゾンビの開発に成功していたのだ。オブレロ博士に捕らえられたチャンドラー、食人族に捕らえられたローリ。果たして彼らの運命は…?


ジョージ・A・ロメロ監督作品「ゾンビ」('78)の大ヒットによってゾンビ映画ブームが大いに盛り上がり、ルッジェロ・デオダート監督の「カニバル/世界最後の人喰い族」('76)やセルジョ・マルティーノ監督の「ホーリー・マウンテンの秘宝」('78)などの食人族映画が脚光を浴びつつあった'80年代初頭のイタリアB級映画界。この2大人気ジャンルを合体させたら絶対儲かるに違いない!と考えるプロデューサーがいたとしてもなんら不思議ではない。それが世界中のどこよりも商魂逞しいイタリア人だったら尚更のこと…ってなわけで生まれた作品がこれ。ゾンビ×食人族の夢の競演(?)が実現したイタリア産ゲテモノ映画「人体解剖島/ドクター・ブッチャー」である。

ストーリーは基本的にルチオ・フルチ監督の傑作ゾンビ映画「サンゲリア」のパクリ。そもそもプロデューサーと主演俳優(イアン・マカロック)はもちろんのこと、ロケ地および撮影セットまで「サンゲリア」と同じだ。さすが、同じスタッフ&キャストで映画2~3本分まとめ撮りするのが得意だったドケチ商売人ファブリツィオ・デ・アンジェリス。ま、この手法はロジャー・コーマンの時代からB級インディペンデント映画の常套。少ない予算で最大限儲けるための知恵である。

とはいえ、作品のクオリティは「サンゲリア」に遥か及ばず。見るからに急ごしらえで制作されたのがバレバレだ。実際、主演のマカロックによれば「サンゲリア」の撮影終了とほぼ同時にいきなりオファーされ、十分な準備期間もないまま撮影に突入したのだという。あくまでもゾンビと食人族を一緒に出すことが最優先なため、ストーリーは辻褄が合う合わない以前の破綻状態。結局、ニューヨークでの連続人肉食事件の真相は何だったのか、女性人類学者ローリの生い立ちとどんな関係があったのか、何ひとつ解決されることなく終わってしまう。恐らく、最初からそんなことはどうでもよかったのだろう。要するに、主人公たちを南海の孤島へ向かわせるための、少々奇をてらった口実に過ぎないのである。

やはり、最大の目玉はゾンビと食人族、ついでにマッドサイエンティストのオブレロ博士によるグログロのスプラッター描写だろう。人間の腹をかっ捌いて内蔵をひねり出し食らうなんての朝飯前。指で目玉をえぐり取ったり、ゾンビの頭をボートのスクリューでグチャグチャにしたり、頭皮を剥がされた美女の頭蓋骨を切断して脳みそをむき出しにしたりとやりたい放題。特殊メイクの荒削りなチープさが、かえって気色悪さを倍増させる。医学的根拠を完全に無視したゾンビのデザインも、バカバカしいと同時にインパクトは強烈だ。さらに、フルチの「ザ・リッパー」('82)で色情狂女を演じていた、強面セクシー女優アレクサンドラ・デッリ・コッリの御開帳シーン含む大胆ヌードもてんこ盛り。まさに、エロ・グロ・ナンセンスの三点セットが揃い踏みといった感じだ。

監督はイタリアン・アクションの帝王エンツォ・G・カステラーリ監督の父親であるマリーノ・ジロラーミ。本作の時点で30年のキャリアを誇り、スペクタクル史劇からマカロニ・ウエスタンまで幅広いジャンルの映画を大量に手がけた職人監督だったが、そんな経験豊富な大ベテランの仕事とは思えないくらいに演出はショボい。まあ、恐らく現場の状況的にショボくならざるを得なかったのだろうが、それにしてもやっつけ感がハンパないのは寂しい…というより哀しい。金に困ったベトナム難民を激安のギャラで雇ってやらせたという、現地人および食人族の下手っクソな素人演技も見ていて少々気の毒。彼らの多くは菜食主義者だったため、内蔵を食うシーンではその場に吐き捨てていたそうだ。

主演のイアン・マカロックはイギリスの人気テレビ俳優で、彼の代表作「Survivors」('75~'77)がイタリアでもヒットしたことから「サンゲリア」に起用されたらしい。本作に続いて、ルイジ・コッツィ監督による「エイリアン」のパクリ映画「エイリアンドローム」('81)にも主演。しかし、この3本でイタリアでの俳優活動はパッタリと途絶えてしまう。本人によると、もっと若くてカッコいいイギリス人俳優デヴィッド・ウォーベックにオファーが行くようになり、さっさとお払い箱になってしまったのだという。人気商売の世知辛さだ。

そんなこんなで、さすがにコアなホラー映画ファンにもそうそうオススメ出来るような代物ではないものの、イタリア産ゲテモノ映画全盛期に生まれた徒花的な怪作として忘れられない一本ではある。ルッジェロ・デオダート監督の傑作カンニバル映画「食人族」('80)と、公開時期がほぼ被っているという点でも興味深い。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考ブルーレイ情報(イギリス盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio ※ジャケ裏表記は1.0ch LPCM/言語:英語・イタリア語/字幕:英語/地域コード:B/時間:84分/発売元:88 Films
特典:イタリア産カンニバル映画ドキュメンタリー「Eaten Alive」(約85分)/イアン・マカロック インタビュー(約48分)/未公開シーン(約5分)/オリジナル劇場予告編
封入特典:ポストカード(オリジナル・ポスターアート)/フルカラー解説ブックレット(16p)


by nakachan1045 | 2016-10-24 04:44 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

最新の記事

「ニンジャⅡ:修羅ノ章」 R..
at 2017-06-19 19:12
「アムステルダム・キル」 T..
at 2017-06-18 23:19
「Mansion of th..
at 2017-06-15 19:34
「燃えよNINJA」 Ent..
at 2017-06-12 04:46
L'orribile seg..
at 2017-06-11 03:14

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター