なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

Serial (1980)

f0367483_19475475.jpg
監督:ビル・パースキー
製作:シドニー・ベッカーマン
原作:サイラ・マクファデン
脚本:ミッチ・ユースティス
   マイケル・エライアス
撮影:レックスフォード・メッツ
編集:ジョン・W・ホイーラー
音楽:ラロ・シフリン
出演:マーティン・マル
   チューズデイ・ウェルド
   サリー・ケラーマン
   クリストファー・リー
   ビル・メイシー
   ピーター・ボナーズ
   トム・スマザース
   バーバラ・ローズ
   パメラ・ベルウッド
   ニタ・タルボット
   ステイシー・ネルキン
   パッチ・マッケンジー
   サム・チュー・ジュニア
アメリカ映画/92分/カラー作品





<あらすじ>
時は1970年代後半、場所は流行の最先端を行くカリフォルニア州マリン郡。ごく平凡なサラリーマンのハーヴェイ(マーティン・マル)は、急激に変化していく社会の価値観になかなかついていけない。
フリーセックスにウーマン・リブやゲイ・リブ、自己啓発に精神分析、スピリチュアリズムに東洋思想などなど。妻ケイト(チューズデイ・ウェルド)はセックス革命に目覚めて主婦仲間らとの団結に忙しいし、娘ジョーニー(ジェニファー・マカリスター)はなんでもかんでも人権を主張して好き勝手やり放題だ。
周囲の友人らも自由恋愛やら自由結婚やらナチュラリズムを実践し、周辺では精神科医やら自己啓発セミナーやら健康食品やらが大流行。誰もが口々にラブ&ピースを唱え、ポリティカル・コレクトネスに神経をとがらせている。
すっかり男性としても父親としても自信を失いつつあるハーヴェイは、転職の相談に訪れたリクルート会社のエージェント(クリストファー・リー)から負け犬の烙印を押され、さらに意気消沈してしまう。そこで彼は自らもスーパーで知り合った19歳のナチュラリスト、マーリーン(ステイシー・ネルキン)と自由恋愛を実践し、美人秘書のステラ(マッチ・マッケンジー)と乱交パーティに参加。しかし、自分の浮気を棚に上げて腹を立てたケイトは家を出てヒッピーのコミューンに身を寄せ、娘ジョーニーは怪しげなカルト宗教団体に入信してしまう。
親友サム(ビル・メイシー)の自殺を機に、こんな状態ではいけないと腹を決めたハーヴェイは、娘をカルト教団から救い出して家族の絆を取り戻そうとするのだったが…。


アメリカ史上希に見るほど、社会全体がリベラルな空気に包まれた'70年代。中でも人権や性に対する人々の意識は大きく様変わりし、行き過ぎた高度資本主義への強い反発からカウンターカルチャーが支持され、自由と平等がある種のトレンドとして持て囃されたわけだが、その一方で後に社会問題ともなる過度な人権意識やセラピー依存、エコロジー崇拝などもこの頃に端を発すると言えよう。これは、そんな'70年代的リベラリズムの矛盾を、痛烈なブラックユーモアでバッサリと斬った風刺コメディである。

原作は'77年に出版されたサイラ・マクファデンの同名ベストセラー小説。もともとはカリフォルニア州マリン郡のローカル週刊紙パシフィック・サンの連載小説で、Serial(連載)というタイトルもそれに由来する。サンフランシスコ郊外に位置するマリン郡は、昔から全米で最も裕福で文化的で自由な気風のコミュニティの一つとして知られ、いわゆる“意識高い系”の富裕層が数多く暮らす地域だ。小説ではそんな住人たちの、時として過剰なくらいにリベラルなライフスタイルを面白おかしく描き、当時はローカルのみならず全米規模で話題を呼んだという。

小説版はトータルで52の独立したチャプターから成り立っているが、映画版ではそれらの主要エッセンスを抽出した上で、1つのまとまった群像劇として再構築している。主人公はどこにでもいる中年サラリーマンのハーヴェイ。これといって特に意識が高いわけでもない、平々凡々としたオジサンである彼の視点を通して、言うなればリベラリズムという名の流行病に浮かれ騒ぐ周囲の人々の狂乱ぶりをシニカルに見つめていく。

劇場公開当時は一部の批評家に高く評価されつつも、その一方で“レーガン時代の幕開けを告げるに相応しい女性蔑視的でホモフォビックな作品”という手厳しい批判も受けた本作。しかし、ちゃんと見直せばよく分かることだが、決して差別的な意図があるようには感じられない。だいたい、本作が槍玉に挙げているのはリベラリズムそのものではなく、よく意味も分からないまま流行に乗って自由や人権を語るインテリぶったブルジョワ層であり、人間や物事の普遍的な本質を無視した理想論を押し付ける“えせリベラリスト”たちだ。

ハーヴェイと同じような疑問を抱く親友サムが自殺を遂げ、彼の好きだったという丘の上で散骨するべく、家族や友人たちが最後のお別れに集まる。だが、そこで怒りを堪えきれないハーヴェイは参列者たちに問いかける。散骨するのは本当に故人の遺志か?単に流行のナチュラリスト志向に便乗しただけだろ?そもそもサムの好きだった場所はこんな丘の上じゃない。さっきからあんたたちは耳障りのいい綺麗事ばかり並べているが、なぜ彼が身投げをして死んだのか、誰もちゃんと分かっていないし、そもそも知ろうとすらしていないじゃないか、と。そういう表層的で浮ついたリベラリズムに対する批判が、本作の根幹にあると言えるだろう。

とまあ、社会風刺を込めたストーリーやテーマはとても面白い。放送禁止用語連発のセリフもパンチが効いていて笑えるし、大胆な性描写もハリウッド産コメディだからといって侮れない。全裸の男女がくんずほぐれつの乱交パーティで、主人公ハーヴェイがドギマギしながら会場を踏み分けていくシーンの気まずさも滑稽だ。『ミスター・マム』('83)や『殺人ゲームへの招待』('83)などで当時売れっ子だったマーティン・マル以下、芸達者な名優を揃えた豪華なキャスティングも魅力。ウーマンリブとフリーセックスを言い訳に男を取っ替え引っ替えのヤリマンマダムにサリー・ケラーマンってのも絶妙なはまり役だし、エリート意識丸出しで威張りくさったクリストファー・リーが実はクローゼットなハードゲイってのも意表を突く。後にテレビ『ダイナスティ』でブレイクする女優パメラ・ベルウッドが、“最高に身なりのいいクソ女”と呼ばれる性悪美女を演じているのも要注目だ。

ただし、映画作品としての完成度は正直なところ及第点。テレビのシットコム出身だからというわけではないが、ビル・パースキー監督の演出はまさにシットコム的な他愛なさから抜け切れておらず、エッジの効いた脚本についていけていないという印象だ。それゆえメッセージやテーマが明確に伝わらず、単なるドタバタに陥ってしまうようなシーンも少なくない。モンティ・パイソン一派辺りに任せるべき題材だったかもしれないとも思う。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:92分/発売元:Olive Films/Paramount Pictures (2016)
特典:なし


by nakachan1045 | 2016-11-06 03:41 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター