なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ブレイクダンス」 Breakin' (1984)

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監督:ジョエル・シルバーグ
製作:アレン・ドベヴォワース
   デヴィッド・ジトー
製作総指揮:メナハム・ゴーラン
      ヨーラム・グローバス
脚本:アレン・ドベヴォワース
   チャールズ・パーカー
   ジェラルド・スカイフェ
撮影:ハナニア・ベア
音楽:マイケル・ロイド
   ゲイリー・レマル
出演:ルシンダ・ディッキー
   シャバ=ドゥー
   ブーガルー・シュリンプ
   ベン・ロキー
   フィネアス・ニューボーン・Ⅲ
   クリストファー・マクドナルド
   アイス・T
   ポッピン・ピート
アメリカ映画/87分/カラー作品





<あらすじ>
エンターテインメントのメッカ、ロサンゼルス。プロのダンサーを目指すケリー(ルシンダ・ディッキー)は、ファストフード店でアルバイトをしながらダンススタジオに通っていたが、近頃はすっかりスランプ状態だ。ゲイの親友アダム(フィネアス・ニューボーン・Ⅲ)から気晴らしにとベニス・ビーチへ誘われた彼女は、そこでブレイクダンスと呼ばれる最先端のストリートダンスと出会い、アダムの友人でもあるオゾン(シャバ=ドゥー)とターボ(ブーガルー・シュリンプ)の自由でダイナミックなパフォーマンスに魅了される。
意気投合したオゾンとターボをダンススタジオに連れて行くケリー。生徒たちの誰もが2人のダンスを大絶賛するが、コーチのフランコ(ベン・ロキー)はストリートダンスを素人の遊びだと決めつけてオゾンとターボを追い出し、今後2度と彼らに近づかないようケリーに忠告する。この1件で2人とは疎遠になってしまったケリーだが、しかしブレイクダンスこそ自分の求めていたものだと考え、彼らに教えを請うことにした。
はじめこそ抵抗感を抱いていたオゾンとターボだったが、しかしライバルのダンスチーム、エレクトリック・ロックとのダンスバトルに負けたばかり。相手は女性をメンバーに入れてパワーアップしたこともあり、彼らもケリーを仲間に入れて巻き返しを図ろうと考える。そして、連日の猛特訓にもへこたれないケリーとの間に固い絆が生まれていくのだった。
そんな折、ケリーはエージェントのジェームズ(クリストファー・マクドナルド)から大きなダンス・コンテストへの出場を勧められ、オゾンとターボの2人と一緒に参加することを提案する。最初は猛反対していたジェームズだったが、彼らのダンスを間近で見て強い感銘を受け、トリオでのコンテスト参加に賛成する。
エレクトリック・ロックとのダンスバトルにも勝利し、コンテストへ向けて士気を高めるケリーたち。ところが、審査員に影響力を持つフランコの横槍もあって、コンテストへの出場を拒否されてしまう。そこで彼らは一計を案ずるのだったが…。


'80年代に世界を席巻したブレイクダンス。日本でもアイドルの風見しんごが振り付けに取り入れるなどして市民権を得、今に続くストリートダンス文化の素地を作ったわけだが、そのブームを当時のハリウッド映画界が見過ごすはずもなかった。恐らく最初にブレイクダンスを題材にした映画は『ワイルド・スタイル』('82)だろう。今やB-BOYたちのバイブルともされている同作だが、しかし劇場公開当時は興業的にカルトヒットの域を出るものではなかった。大ヒットした『フラッシュダンス』('83)にもブレイクダンスは登場するが、あくまでも全体を構成する要素の一つに過ぎなかった。ブレイクダンスを正面きって本格的に取り上げ、なおかつ興業的にもメジャー級の大成功を収めた最初の作品は、'84年5月4日に全米で封切られた『ブレイクダンス』だったと言って間違いはないだろう。

本作の制作を手がけたのは、メナハム・ゴーランとヨーラム・グローバスの率いる映画会社キャノン・フィルム。'80年代のハリウッド映画界で最も勢いのあった独立系スタジオであり、チャック・ノリスのアクション映画からトビー・フーパーのホラー映画、ゴダールやカサヴェテスの芸術映画までありとあらゆるジャンルの作品を世に送り出した会社だったが、実はそのキャノン・フィルムにとって初めてのメジャーヒットが本作だった。それまでもショー・コスギ主演のニンジャ映画やチャールズ・ブロンソン主演のアクション映画などを成功させていたものの、いずれも興行収入1000~2000万ドルクラスの中堅ヒット。しかし、本作は'80年代青春映画の金字塔『すてきな片想い』を抜いてキャノン・フィルム史上初となる全米興行ランキング1位を見事に達成し、なおかつ120万ドルの制作費に対して、なんと米国内だけで4000万ドル近い興行収入を稼ぎだしたのだ。

ブレイクダンスを題材に映画を撮るというのはメナハム・ゴーランのアイディア。劇中でもベニス・ビーチに集うブレイクダンサーたちの様子を捉えているが、実際にゴーランの娘がベニスビーチを訪れた際にブレイクダンスに興じる若者たちの姿を見かけ、その話を伝え聞いたゴーランが、まあ、言ってみれば金のなる木を見つけたというわけだ(笑)。ちなみに、この劇中におけるベニス・ビーチのシーンには、当時まだ無名だったジャン=クロード・ヴァン・ダムが顔を出している。ブレイクダンサーを取り囲む観衆の中の、中央手前に立ってハンドクラップしながらリズムを取っている、黒のタンクトップに黒の短パンという出で立ちの若者がヴァン・ダムだ。その後、同じくキャノン制作の『地獄のヒーロー』('85)にも端役で出演した彼は、『ブラッド・スポーツ』('87)に『サイボーグ』('88)、『キックボクサー』('88)と、キャノン・フィルムのB級アクション映画でスターの階段を駆け上がっていくことになる。

'83年11月から翌年の2月にかけて、たった3ヶ月間で完成にこぎ着けたという『ブレイクダンス』。というのも、当時既にオライオン映画がブレイクダンス映画『ビート・ストリート』('84)の制作に着手しており、そちらよりも先に劇場公開する必要があったからだ。似たような映画が同時期に公開される場合は、やはり先手必勝が興行上の基本であろう。実際、本作は『ビート・ストリート』の1か月前に滑り込みで劇場公開され、まんまとヒットをかっさらうことが出来たのである。

ストーリーは陳腐なくらいに単純明快。ブレイクダンス(自由な若者)VSダンス業界(保守的な権威)という対立構造を軸に、ダンサーとしての壁にぶつかったヒロインが新たな時代のムーブメントと出会うことで、踊ることの自由と喜びを再発見して才能を開花させていく。それこそ、ミッキー・ルーニー&ジュディ・ガーランドが主演したティーン・ミュージカルの時代から使い古された古典的なサクセスストーリーだ。役者陣の素人臭さ丸出しな演技、まるで捻りも工夫もない演出を含め、十分に構想を練ることもなく、準備に時間をかけることもなく、大急ぎの駆け足で作られたであろうことは一目瞭然。映画作品としての安っぽさは否めない。

だが、そんな致命的欠点を補って余りあるのが、全編に散りばめられた超一流ダンサーたちによる紛れもない“本物”のパフォーマンスである。オゾン役のシャバ=ドゥーは「ザ・ロッカーズ」の元メンバー。「ザ・ロッカーズ」とは、全米No.1ヒット『ミッキー』で有名な歌手兼女優兼振付師のトニー・バジルと「ソウルトレイン」出身のダンサー、ドン・キャンベルが'71年に立ち上げた伝説的なダンス集団。今やストリート・ダンスの基本中の基本であるロックダンスを考案した人物こそドン・キャンベルであり、「ザ・ロッカーズ」はアメリカにおけるストリートダンスのパイオニア的な存在だった。'76年に解散してからは別のメンバーが「ザ・ロッカーズ」を名乗って活動したが、シャバ=ドゥーは正真正銘のオリジナルメンバーで、グループ解散後もマドンナやライオネル・リッチーなどの振付師として活躍していた。そんな彼が才能に惚れ込んでスカウトし、共に活動をしてきた愛弟子がターボ役のブーガルー・シュリンプだったのである。

さらに、マイケル・ジャクソンの「スリラー」や「今夜はビート・イット」の振付師として有名なダンサー、ポッピン・ピートもライバル、エレクトリック・ロックのメンバーとして登場。両者による白熱のダンスバトルはなかなかの見ものだし、クラフトワークの「ツール・ド・フランス」をバックにした、ブーガルー・シュリンプのホウキを使った独創的なパフォーマンスも素晴らしい。映画としては二流だがダンスは一流。それはそれで、個人的にはアリだと思う。

主人公ケリー役を演じているルシンダ・ディッキーもダンサー出身で、ハリウッドの名門ローランド・デュプリー・ダンス・アカデミーの特待生だった。ただし、彼女の場合は役柄と同じくバレエやジャズダンスなどの王道を学んだ正統派ダンサー。ストリートダンスの経験は殆どなかったため、撮影ではケリー同様にシャバ=ドゥーやブーガルー・シュリンプから手ほどきを受けたという。ちなみに彼女、本作の次にキャノン制作のニンジャ映画『ニンジャ』('84)でヒロインを演じているが、実は撮影の順番としてはあちらの方が先だったらしい。

そのほか、当時新進気鋭のラッパーだったアイス・Tや、ヒップホップDJのパイオニアでドクター・ドレーやスヌープ・ドッグのプロデューサーとしても有名なクリス・テイラー(本作ではスクラッチャー名義)なども登場。ストリートダンスを毛嫌いするフランコ役のベン・ロキーは、マイケル・ジャクソンの「スリラー」のダンサーだった。また、『ターミナル・ベロシティ』('94)などの悪役としての印象が強いクリストファー・マクドナルドが、珍しくヒロインの後ろ盾になる善人役を演じているのも興味深い。

監督のジョエル・シルバーグはゴーラン&グローバスと同郷のイスラエル出身で、祖国では'60年代から活躍しているベテラン。過去にゴーラン&グローバスのプロデュースで数本のイスラエル映画を撮っていることから、アメリカへ招かれたものと思われる。そんなイスラエル時代の作品がどんなものだったのかは定かでないものの、アメリカでは本作以降も『Rappin'』('85)やら『ランバダ/青春に燃えて』('90)やらと、流行に便乗しただけの安物音楽映画ばかり撮らされており、そういう意味では不遇の人だったと言えるかもしれない。

なお、全米トップ10ヒットになったオリー&ジェリーのテーマ曲をはじめとするサントラの魅力も本作を語る上では欠かせないだろう。短期間で作られた映画なのでオリジナル曲は少ないものの、ルーファス&チャカ・カーンやバーケイズ、アル・ジャロウ、クラフトワークなど既成ヒットの選曲は、オールドスクール好きの音楽ファンにはニンマリものだろう。ブレイクダンスやファッションなども含め、'80年代前半のストリートカルチャーをフィルムに捉えたタイムカプセルとしても楽しめる作品だ。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)※続編『ブレイクダンス2/ブーガルビートでT.K.O.!』とのカップリング
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:87分/発売元:Shout Factory/MGM (2015)
特典:なし


by nakachan1045 | 2016-11-08 02:12 | 映画 | Comments(0)

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