なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ビート・ストリート」 Beat Street (1984)

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監督:スタン・レイサン
製作:ハリー・ベラフォンテ
   デヴィッド・V・ピッカー
原案:スティーヴ・ヘイガー
脚本:アンディ・デイヴィス
   デヴィッド・ギルバート
   ポール・ゴールディング
撮影:トム・プリーストリー・ジュニア
振付:レスター・ウィルソン
音楽監修:アーサー・ベイカー
     ハリー・ベラフォンテ
出演:レイ・ドーン・チョン
   ガイ・デイヴィス
   ジョン・チャーディエット
   レオン・W・グラント
   サウンドラ・サンチャゴ
   ロバート・テイラー
   メアリー・アリス
   ショーン・エリオット
   デュエイン・ジョーンズ
ゲスト:アフリカ・バンバータ&ザ・ソウル・ソニック・フォース+シャンゴ
    ティナ・B
    ファンタスティック・デュオ
    グランド・マスター・メリー・メル&ザ・フュリアス・ファイヴ
    マグニフィセント・フォース
    ニューヨークシティ・ブレイカーズ
    ロック・ステディ・クルー
    ブレンダ・K・スター
    ザ・システム
アメリカ映画/106分/カラー作品





<あらすじ>
ニューヨークの貧困地区サウス・ブロンクス。クラブDJのケニー(ガイ・デイヴィス)とその弟でストリートダンサーのリー(ロバート・テイラー)、グラフィティ・アーティストのラモーン(ジョン・チャーディエット)、自称プロモーターのチョリー(レオン・W・グラント)は、それぞれに成功を夢見ていたものの、なかなか認められるチャンスを掴めないでいた。そんな彼らを、ケニーとリーの母親コーラ(メアリー・アリス)は複雑な思いで見守っている。
ある晩、廃墟ビルでパーティを開いた彼らは、ホームレスの若者ヘンリー(ショーン・エリオット)と意気投合する。ストリートダンス集団ビート・ストリート・ブレイカーズ(ニューヨークシティ・ブレイカーズ)の一員であるリーは、ライバルのブロンクス・ロッカーズ(ロック・ステディ・クルー)と一触即発となるが、ヘンリーの仲裁でその場は事なきを得た。
ケニーの夢はニューヨークで最高のクラブ、ロキシーでプレイすること。仲間と共にロキシーへ繰り出した彼は、そこで音楽大学の学生トレイシー(レイ・ドーン・チョン)と知り合う。学校にも行けない貧しいケニーにとって、彼女は眩しい存在だった。
なにげない誤解から仲違いしたケニーとトレイシーだが、それをきっかけに急接近し、一晩を共に過ごす。その頃、ラモーンはチョリーやヘンリーらと共に地下鉄の車両にスプレイ・ペイントしていたが、人の気配を察知して逃げる。それはスピットという若者で、以前からラモーンの作品に自分の名前をスプレーするという嫌がらせを続けていた。
チョリーのおかげで人気クラブ、バーニング・スピアーのゲストDJに起用されたケニーは、そこで見事なクリスマス・ショータイムをプロデュースして評価される。自信をつけた彼はロキシーのオーディションを受け、新年パーティの仕事をゲットした。
一方、久しぶりに恋人カルメン(サウンドラ・サンチャゴ)と幼い息子に再会したラモーンは、父親から定職を探して身を固め、男としての責任を取るよう叱咤される。だが、彼はグラフィティ・アーティストとしての夢を諦められなかった。そんなある晩、再び地下鉄の車両にペイントしていた彼はスピットと遭遇。もみ合ううちに地下鉄の電線に接触し、2人とも感電死してしまう。
親友の死にショックを受けて塞ぎ込むケニー。トレイシーに励まされた彼は、ある計画を実行に移すことを決意する…。


'16年6月に日本公開されたドイツ映画『ブレイク・ビーターズ』('14)。'80年代半ばの東ドイツを舞台に、西側文化であるブレイクダンスに熱狂する若者たちと、彼らを統制しようと四苦八苦する政府当局のすったもんだを描いた作品だ。社会主義国家の東ドイツで巻き起こった空前のブレイクダンス・ブーム。へえ、そうだったんだ!と目からウロコな事実に驚いたが、そのブームの原点となったのが、実は映画『ビート・ストリート』だったのである。

メジャー・スタジオ(オライオン映画)が初めて手がける本格的なヒップ・ホップ映画でもあった本作。『ブレイクダンス』('84)の項でも記述したように、後から撮影に入ったキャノン・フィルム制作の『ブレイクダンス』が駆け込み的に先行公開されて話題をさらったこともあってか、本作の全米興行収入は1600万ドルとそこそこの成績ではあったものの、『ブレイクダンス』のおよそ3900万ドルという興収には残念ながら遠く及ばなかった。ただ、『ブレイクダンス』がヒップホップカルチャーをハリウッド的なクリシェで換骨奪胎した、ある種の夢物語であったのに対し、『ビート・ストリート』は当時のニューヨークのストリートカルチャーとそのバックグラウンドを限りなくリアルかつ等身大に捉えており、そういう意味ではよりオーセンティックな作品に仕上がっていると言えるだろう。

本作のベースになっているのは、当時のヒップホップカルチャーを取材したドキュメンタリー映画『Style Wars』('83)。同作に登場した若者や彼らの日常生活が脚本のヒントとなっている。監督のスタン・レイサンは黒人向けテレビドラマのパイオニアとして知られる人物だが、同時にブラックカルチャーを題材にしたテレビドキュメンタリーも数多く手掛けており、長年に渡って同胞のアフリカ系アメリカ人に寄り添ってきた映像作家だった。ニューヨークの貧民街に暮らす、黒人やヒスパニック系の若者たちのライフスタイルをありのままに描く本作のドキュメンタリー的な演出は、そうした彼の作家性や問題意識に依るところが大きいのかもしれない。

ストーリーに明確な起承転結はない。まあ、亡き友人へオマージュを捧げる最後のクラブパーティ・シーンはクライマックスに相応しいと言えるかもしれないが、それ以外はサウス・ブロンクスに暮らす貧困層の若者たちの日常をヒップホップ・ミュージックやブレイクダンスを交えながら淡々と描いていく。ドラマティックな誇張や装飾は一切なし。大学や専門学校で勉強したくても貧しいから進学など夢のまた夢、仕事といえば工場や作業現場の肉体労働かスーパーやコンビニの店員あたりがせいぜい。そんな将来への希望なき社会の底辺でくすぶっている若者たちが、DJやブレイクダンス、グラフィティといったストリートカルチャーにのめり込み、その世界での成功を夢見る。彼らにとっては、それ以外に人生を変えるチャンスはないからだ。

全編に渡ってサウス・ブロンクスやブルックリン、クイーンズなどでロケが行われており、当時の荒廃したニューヨークの姿を有りのままに映し出す。車両もホームもスプレーペイントされまくった地下鉄。場所代が要らないからと今にも崩れ落ちそうな廃墟ビルでDJパーティを開く若者たち。その階下にはホームレスもたむろしている。若者たちの安っぽいストリートファッションも、いかにもお洒落でトレンディな『ブレイクダンス』のそれとは明らかに一線を画す。まさにドキュメンタリーかと見紛うリアルなストリート感が本作の魅力だ。

しかし、なんといっても最大の見どころは、アフリカ・バンバータ&ソウルソニックフォースやグランドマスター・メリー・メル&フュリアス・ファイヴなど、当時のニューヨークのストリート・シーンを代表する伝説的なアーティストたちが大挙して出演するパフォーマンスの数々だろう。しかも音楽を手掛けたのはヒップ・ホップ&フリースタイルの神様アーサー・ベイカー。当時デビューしたてのブレンダ・K・スターやティナ・Bなど、アーサー・ベイカー一派のアーティストも勢揃いする。さらに、ダンスバトルにはニューヨークシティ・ブレイカーズとロック・ステディ・クルーの面々が登場。現在のハイテクニックで洗練されたヒップ・ホップ・ダンスと違ってかなり荒削りだが、しかしだからこそのストリート感溢れるオーセンティックなブレイクダンスを存分に堪能できる。

もちろんクラブシーンでプレイされるBGMも豪華。サントラ盤LPを2枚に分けて連続リリースするというのは当時画期的だったが、それでも収録しきれないほどの楽曲が使用されている。アーサー・ベイカー自身によるテーマ曲「Breaker's Revenge」は傑作中の傑作。また、当時まだ無名だったリサ・フィッシャーがゼナ名義でレコーディングしたラテン・フリースタイル「Only Love」は、サントラ盤に収録されていないばかりか当時レコード化自体されず、後にデモバージョンがアーサー・ベイカー率いるクリミナル・レコードのオムニバス盤CDに収録されたのみという幻の名曲だ。





評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:106分/発売元:Olive Films/20th Century Fox/MGM (2016)
特典:なし


by nakachan1045 | 2016-11-19 04:07 | 映画 | Comments(0)

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