なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「裸の町」 The Naked City (1948)

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監督:ジュールズ・ダッシン
製作:マーク・ヘリンジャー
原案:マルヴィン・ウォルド
脚本:アルバート・マルツ
   マルヴィン・ウォルド
撮影:ウィリアム・ダニエルズ
編集:ジョン・F・デ・キュア
音楽:ミクロス・ローザ
   フランク・スキナー
出演:バリー・フィツジェラルド
   ハワード・ダフ
   ドロシー・ハート
   ドン・テイラー
   フランク・コンロイ
   テッド・デ・コルシア
   ハウス・ジェイムソン
   アン・サージェント
   アデライン・クレイン
   グローヴァー・バージェス
   トム・ペディ
   イーニッド・マーケイ
アメリカ映画/96分/モノクロ作品





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<あらすじ>
大都会ニューヨーク。ある夏の晩、高級アパートに住む若い女性ジーン・デクスターが2人組の男に自室で殺害され、その翌朝訪れたメイドが死体を発見する。その頃、イーストリバーのほとりでは犯人の片割れが相方を殴り殺して川へ沈めた。
通報を受けたニューヨーク市警第10分署のマルドゥーン警部(バリー・フィツジェラルド)は、部下の新人刑事ジミー(ドン・テイラー)と共に現場へ到着する。当初は自殺と思われたが、検死の結果クロロホルムを香がされた上で絞殺されたものと判明。メイドによるとジーンはマンハッタンの高級ブティックでモデルをしていたが、つい最近解雇されたばかりだという。大切に保管されていた宝石類が盗まれていることから、強盗目的の犯行と思われた。
しかし、なぜうら若い女性が高価な宝石や衣服をたくさん所有していたのか。ジーンにはボルティモア出身のヘンダーソン氏というパトロンがいたらしいが、メイドも詳しいことは知らなかった。
聞き込み調査に出かけたジミーは、まずジーンに睡眠薬を処方した医師ストーンマン(ハウス・ジェイムソン)のもとを訪れるが手がかりはなく、親友だったというモデル仲間のルース(ドロシー・ハート)もヘンダーソン氏のことは聞いたこともなかったという。
一方、マルドゥーン警部はジーンの友人だというビジネスマン、フランク・ナイルズ(ハワード・ダフ)に事情聴取するも、単に仕事上の付き合いがあっただけだという。ところが、そこへジミーに連れられたルースが現れ、意外な事実が発覚する。フランクはルースのフィアンセで、ジーンとは面識などないはずだというのだ。
さらなる取り調べて、フランクの証言がことごとくウソだったことが分かる。しかし、事件当夜のアリバイだけは本当だった。マルドゥーン警部は当面のところ彼を泳がせることにする。
遺体の本人確認のため、ジーンの両親(グローヴァー・バージェス、アデライン・クレイン)が田舎からやって来た。変わり果てた娘の姿に衝撃を受ける彼らだったが、ニューヨークへ出てきてからの彼女の生活に関しては殆ど知らなかったようだ。
その翌朝、フランクがストーンマン医師から盗んだシガレットケースを質入し、その金でメキシコ行きの航空券を買ったことが判明。さらに、彼がルースに贈った婚約指輪も盗品だったことが判明する。
事情を聞くべくマルドゥーン警部らがフランクの自宅を訪れると、何者かによって襲われた直後だった。意識を取り戻したフランクは、ジーンと共謀して窃盗を働いていたことを自白するも、殺人に関しては頑なに否定する。
その頃、イーストリバーでピーター・バッカリスという宝石泥棒の水死体が発見される。ジーン・デクスター殺害事件との関連性を直感したジミーは、ピーターの仲間だったという元プロレスラーの強盗犯ウィリー(テッド・デ・コルシア)を怪しいと睨むのだったが…。

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ドキュメンタリータッチのハードボイルドな犯罪捜査ものといえば、『フレンチ・コネクション』('72)を筆頭に古今東西枚挙に暇ないが、その原点とも言うべき作品がこの『裸の町』。しかも、全編に渡ってニューヨークでの現地ロケ、スタジオ・セットは一切使わないという徹底したリアリズム志向は、まだスタジオ・システムが健在だった当時のハリウッド映画では画期的な手法だった。群衆を巻き込んだ路上でのゲリラ撮影や銃撃シーンなど、時代を先駆けた演出も盛りだくさん。それこそ、『ダーティハリー』シリーズだって本作がなければ生まれなかったかもしれない。

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もともとアメリカの映画産業というのはニューヨークで産声をあげたが、'10年代にカリフォルニアのロサンゼルスへスタジオ機能を移して以降、ニューヨークで撮影される作品は極めて稀となった。その理由としては、ハリウッドの広大な撮影スタジオの敷地内にセットを組めてしまうから、わざわざ大陸を横断してまで行く必要がない…というのもあるが、一番は各映画会社が本社機能をニューヨークに残していたからであろう。予算の数字にうるさい事務方に現場を邪魔されたくなかったのである。

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しかし、第二次世界大戦を経てアメリカ国民の映画を見る目に変化が起きる。戦勝国としていち早く経済復興を果たしたアメリカでは旅行ブームが起き、一般庶民も国内外へ見聞を広めるようになった。また、戦時中に徴兵された多くの国民が大都会やヨーロッパを実際に目にして故郷へと戻った。以前のようにハリウッドのスタジオで再現されたニューヨークやロンドン、パリの街並みなどは、だんだんと通用しなくなっていったのである。さらに、戦後イタリアから輸入された『無防備都市』('45)や『靴みがき』('46)といったネオレアリズモ映画がアメリカ映画界にも多大な影響を与え、多くの映画人がスタジオを飛び出して実際の街中で撮影をするようになっていく。そうした状況下で誕生したのが本作だったのだ。

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本作の下敷きとなったのはニューヨーク在住の写真家ウィージーが'45年に出版した写真集「Naked City」。大都会の血なまぐさい犯罪現場や庶民の赤裸々な日常を活写したウィージーの作品は、当時センセーションを巻き起こしていた。そこに注目したのが、『夜までドライブ』('40)や『殺人者』('46)などのフィルムノワールで知られる映画製作者マーク・ヘリンジャー。もともとニューヨーク地元紙のジャーナリスト出身だった彼は、新聞の三面記事にこそ日常の現実があると考え、ドキュメンタリー畑出身の脚本家マルヴィン・ウォルドと「Homicide」なるタイトルの犯罪映画の企画を温めていたところ、ウィージーの写真集と出会うことによって方向性を確信したのである。

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監督に起用されたのは、骨太なフィルムノワール『真昼の暴動』('47)で当時注目されていたジュールズ・ダッシン。彼は単にニューロークでロケ撮影を行うというだけではなく、そこにある日常の風景の中へプロの役者を紛れ込ませることで、ドキュメンタリーとフィクションの中間に当たる独特の世界を構築している。なので、例えば劇中で刑事たちが容疑者の写真を手に街角で聞き込みをするシーンでも、質問を受けているのはローカルの住人。つまり一般の素人である。しかも、彼らは相手の刑事が役者であることも、自分が撮影されていることも知らない。また、終盤の大捕物シーンでは、騒ぎを聞きつけた群衆が何事かとパトカーの周囲に集まってくる。彼らもまた、これが映画の撮影だとは気付いていない。ダッシン監督は偽物のニューススタンドにカメラを隠したり、道路脇に停めたミニバンの中にカメラマンを仕込むなどしながらゲリラ撮影を敢行したのだ。ゆえに、そうしたシーンでは音声をマイクで拾うことが不可能だったため、セリフの代わりにナレーションがフル活用されている。

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そのナレーションを担当しているのが製作者のヘリンジャー自身。単にセリフのないシーンの補足だけに留まらず、物語の背景となるニューヨークの日常に解説を加え、そこで生きる人々の声を代弁しながら、大都会の赤裸々な素顔を明らかにする語り部としての役割を果たしている。中でもクライマックスの「裸の町には800万通りの物語がある。これはその中の一つだ」というセリフはあまりにも有名で、後に制作された同名テレビシリーズ版のオープニングにも使用された。

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そんなジャーナリスティックな視点の貫かれた作品ではあるが、しかし犯罪サスペンスとしては時代に色褪せてしまっていることは否めないだろう。ゲリラ撮影シーンの骨太なリアリズムに比して、人工照明を使った屋内撮影のドラマパートは古典的な撮影スタイルから抜けきれていないため、全体的なバランスはあまり良くない。結局のところ本作の主役はニューヨークの街そのものであり、サスペンスはその実像に迫るための手段に過ぎないのだと言えよう。

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役者陣では、飄々とした持ち味の中にベテラン刑事ならではの凄みを覗かせるマルドゥーン警部役のバリー・フィツジェラルドが秀逸。オスカーに輝いた『我が道を往く』('44)や『わが谷は緑なりき』('41)などの好々爺といった印象の強い名優だが、ここでは一味違う骨っぽ男らしさを垣間見せるのが興味深い。また、新人刑事ジミー役を演じるドン・テイラーの初々しさも魅力。本作が最初の出世作となったわけだが、ラストのウィリアムズバーグ橋での全速力の追撃シーンなど、体を張った大熱演も見ものだ。後に『クレイマー・クレイマー』('79)でオスカーを受賞するハワード・ダフも、『真昼の暴動』に続くダッシン監督とのコンビとなる本作で注目された。

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なお、アカデミー賞で撮影賞と編集賞に輝いた本作以降、『深夜復讐便』('49)や『街の野獣』('50)とリアリズム志向の傑作フィルムノワールを発表したダッシン監督だが、赤狩りによってハリウッドを追われ、ヨーロッパで『掟』('58)や『日曜はダメよ』('60)などの名作を手がけることになるのはご存知の通り。さらに、脚本に加わったアルバート・マルツもハリウッド・テンの一人として赤狩りの犠牲となり、'70年代に復帰するまで映画界を干されている。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス版2枚組セット)
ブルーレイ
モノクロ/スタンダードサイズ(1.37:1)/1080p/音声:1.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語(SDH)/地域コード:B/時間:96分
DVD
モノクロ/スタンダードサイズ(1.37:1)/音声:1.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語(SDH)/地域コード:2/時間96分
発売元:Arrow Films/Hollywood Classics/MGM (2013)
特典:脚本家マルヴィン・ウォルドによる音声解説/ドキュメンタリー「New York and The Naked City」(約40分)/ジュールズ・ダッシン監督インタビュー(約52分)/ドキュメンタリー「The Hollywood Ten」(1950年製作・約15分)/スチル・ギャラリー/オリジナル劇場予告編


by nakachan1045 | 2016-11-19 17:10 | 映画 | Comments(0)

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