なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「真夜中へ五哩」 Five Miles to Midnight (1962)

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監督:アナトール・リトヴァク
製作:アナトール・リトヴァク
原案:アンドレ・ヴェルシーニ
翻案:ピーター・ヴィアテル
脚本:ピーター・ヴィアテル
   ヒュー・ホイーラー
撮影:アンリ・アルカン
衣装:ギ・ラロシュ
音楽:ミキス・テオドラキス
出演:ソフィア・ローレン
   アンソニー・パーキンス
   ギグ・ヤング
   ジャン=ピエール・オーモン
   ヨランド・ターナー
   トーマス・ノーデン
   エリナ・ラボーデット
アメリカ・フランス・イタリア合作/110分/モノクロ映画





<あらすじ>
パリの小さなアパートに暮らす夫婦ロバート(アンソニー・パーキンス)とリサ(ソフィア・ローレン)。アメリカ人のロバートは米空軍の兵士だったが、駐留先であるイタリアのナポリでリサと知り合い結婚し、除隊してパリに腰を落ち着けたのだった。しかし、夫婦仲は既に破綻寸前。子供のように甘えん坊で人懐っこいロバートは一見すると魅力的だが、しかし同時に我がままで短気で嘘つきで嫉妬深く、仕事もせずに妻の給料で遊び呆けている。そんな彼にリサは愛想を尽かしていた。
そんなある日、ロバートが所用でカサブランカへ行くことになる。空港で彼を見送ったリサは、心の中で離婚を決意していた。そのことをフランス人の友人アラン(ジャン=ピエール・オーモン)に打ち明けていると、新聞の大きな見出しが彼女の目に飛び込んでくる。ロバートの乗ったカサブランカ行きの飛行機が墜落し、乗員乗客が全員死亡したというのだ。
遺体の見つからぬまま葬儀を済ませたリサ。すると、真夜中に自宅のドアを叩く音が。玄関を開けると、そこには死んだはずのロバートが立っていた。実は彼一人だけ生き延びていたのだ。怪我の手当てをして警察に連絡しようとするリサを止めるロバート。そこで彼はある計画を妻に打ち明ける。
ロバートは飛行機に乗る前に12万ドルの生命保険をかけていた。彼が生きていることは誰も知らない。このまま黙って保険金を頂いちゃおうというのだ。そんな詐欺行為には関わりたくないし、あなたの顔も2度と見たくない。そう抗議する妻に、保険金を山分けしたら君の前から姿を消すと約束するロバート。リサは渋々ながら協力することにする。
しかし、保険金の受け取りには様々な手続きが必要だ。そのたびに嘘をつかねばならないリサは良心の呵責に悩まされる。しかも、自宅に身を潜めているロバートの存在を周囲に悟られてはならない。次第に神経が参っていく彼女にとって唯一の慰めは、アランの友人だという親切なアメリカ人記者デヴィッド(ギグ・ヤング)だったが、その存在に気づき始めたロバートが嫉妬を募らせていく…。


『うたかたの戀』('35)や『追想』('56)で知られる名匠アナトール・リトヴァクが自らプロデュースを手がけ、戦前に暮らした古巣のパリで全編ロケを行った心理サスペンス。しかも、脚本にはヒッチコックの『逃走迷路』('42)や『老人と海』('58)などでお馴染みの名脚本家ピーター・ヴィアテル、撮影監督はジャン・コクトーの『美女と野獣』('46)やオードリーの『ローマの休日』('53)などであまりにも有名な大御所中の大御所アンリ・アルカンという見事な布陣を揃えているのだが、しかしこれが予想外(?)にも平凡な作品となっている。

だいたい、旅客機の墜落事故でたった一人生き残ったロバートが、ほとんどかすり傷程度の怪我で済んだ上に、自力で我が家へ戻ってくるという設定自体に結構な無理がある。まあ、突き詰めれば映画なんてそもそもが与太話ではあるけれど、それにしたって上手い嘘と下手な嘘ってのがあろうというもの。んなわけなかろうに!と観客に思わせてしまっては失敗だ。

さらに、保険金詐欺を巡って繰り広げられる夫婦の葛藤やいざこざ、いつ計画がバレるか分からないというサスペンスも単調で捻りがない。というか、よくよく考えるとスムースに行き過ぎ。突然自宅に友達がおしかけてきて、隠れ場所に困ったロバートが右往左往するという展開はあるものの、それも手に汗握るというほどの危機的状況ではない。全体的にストーリーのメリハリが少ないのだ。

それでも、光と影のコントラストを強調したアンリ・アルカンのノワーリッシュなモノクロ映像は抜群の雰囲気だし、古き良きパリの街並みをふんだんに盛り込んだロケーション撮影も魅力的。当時の生活の息吹が手に取るように感じられる。また、ヒロインの勤め先がギ・ラロシュのブティックというのもファッション好きなら要注目。恐らく、実際の店舗でロケしたのだろう。馴染みの顧客が担当従業員にアポイントを取ってショッピングするなんて優雅な時代ですよ。店内に休憩用のソファーとエレガントな灰皿スタンドが用意されていて、お客さんは待ち時間に雑誌を読みながらタバコを燻らす…なんてのも今じゃ見られない光景だ。もちろん、女優陣の衣装もギ・ラロシュが提供している。

ロバート役のアンソニー・パーキンスははまり役。少年のように無邪気で気まぐれで、しかし身勝手で粘着質のかなり面倒くさい男。大人になりきれない大人ってやつだ。ちょうど『サイコ』以前の爽やか好青年と、『サイコ』以降の屈折したサイコパスの中間に当たるような役柄で、なるほど憎んでも憎みきれないヒロインの気持ちも分かろうというもの。

一方、そのヒロインのリサを演じるソフィア・ローレンはいつになくお堅い役柄というか、支配的な夫の言いなりになって追い詰められていく平凡な人妻という役どころで、それはそれで新鮮ではあるのだが、彼女本来の魅力が生かされていないという印象も受ける。

リサと急接近するアメリカ人記者デヴィッドには『ひとりぼっちの青春』('68)でオスカーに輝くギグ・ヤング。実は犯罪の匂いを嗅ぎつけてリサの周辺を探っていた…なんてどんでん返し的な仕掛けでも用意されているのかと期待したのだが、これが全くの空振り(笑)。まあ、最後の最後で重要な役割を果たすことにはなるのだけれど、それ以外はただの賑わせ要員といった感じだ。また、マルセル・カルネの『北ホテル』('38)やMGMミュージカル『リリー』('53)の二枚目フランス俳優ジャン=ピエール・オーモンも出ているが、ほんの5~6分程度の出番だけで消えてしまう。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(1.66:1)/1080p/音声:1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:110分/発売元:Kino Lorber/United Artists/MGM/20th Century Fox (2016年)
特典:フランス語版別テイク(約8分)/オリジナル劇場予告編/ソフィア・ローレン予告編集


by nakachan1045 | 2016-11-21 08:45 | 映画 | Comments(0)

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