なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「現代狼男の怪」 The Boy Who Cried Werewolf (1973)

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監督:ネイサン・ジュラン
製作:アーロン・ローゼンバーグ
脚本:ボブ・ホメル
撮影:マイケル・P・ジョイス
特殊メイク:トーマス・R・バーマン
編集:バートン・ヘイズ
音楽:テッド・ストヴォール
出演:カーウィン・マシューズ
   エレイン・デヴリー
   ロバート・J・ウィルク
   スコット・シーリー
   ボブ・ホメル
   スーザン・フォスター
   ジャック・ルーカス
   ジョージ・ゲインズ
アメリカ映画/93分/カラー作品





<あらすじ>
両親の離婚で傷ついた少年リッチー(スコット・シーリー)。父親ロバート(カーウィン・マシューズ)はそんな息子を連れ、森の中の別荘へとやって来る。2人きりで釣りをして週末を過ごそうというのだ。ところが、森での散歩中に親子は毛むくじゃらのモンスターに襲われる。ロバートは左腕を噛まれたものの、辛うじて息子を守ることができた。相手は崖から転落して死亡。その遺体をよく見ると普通の男性だった。
保安官(ロバート・J・ウィルク)によると、犯人の身元は不明。検死の結果、血液に不可解な異常が発見されたが、それ以外は何も分からず、行きずりの狂人による犯行として片付けられた。リッチーは犯人が狼男だったと主張するものの、誰一人として信じてはくれない。父親ロバートも夜の暗がりでよく見えなかったという。
母親サンディ(エレイン・デヴリー)は事件の息子に対する精神的な影響を心配し、担当の精神科医マードロシアン博士(ジョージ・ゲインズ)に相談するようロバートに頼む。マードロシアン博士はもう一度リッチーを連れて別荘へ戻り、何一つ異常がないことを本人に確かめさせれば、狼男を見たという思い込みも収まるだろうと助言する。
そこで、再び2人きりで別荘へ向かった親子。ところが、満月の夜になって父親ロバートが狼男に変身し、リッチーに襲いかかってくる。だが、彼はそれが自分の父親だとは気付いていない。森の中を逃げ惑ったリッチーは、キャンピングカーを発見して助けを求める。中にいたのは新婚夫婦のハリー(ジャック・ルーカス)とジェニー(スーザン・フォスター)。2人はリッチーをかくまうものの、彼の主張する狼男の存在はにわかに信じ難かった。
翌朝、探しに来た父親ロバートに引き取られるリッチー。ロバートは狼男に襲われたという息子の話に呆れかえる。彼には変身中の記憶が一切ないのだ。そしてその晩、ロバートは再び狼男に変身。キャンピングカーを襲って崖から突き落とし、ハリーもジェニーも殺される。さらに、狼男ロバートはハリーの生首を食いちぎって別荘へ持ち帰り、ガレージの床土に埋めようとしたところ、夜が明けて人間の姿に戻ってしまう。その様子をリッチーが目撃していた。
今度は父親が狼男だと言い始めたリッチーに周囲は困惑。マードロシアン博士は、母親サンディも一緒に別荘へ行き、父親は狼男でもなんでもないことを証明すべきだとアドバイス。それに従って、親子は久しぶりの家族旅行へ出かけるのだが…。


『地球へ2千万マイル』('57)や『妖怪巨大女』('58)など、'50年代~'60年代初頭にかけて数々の優れたSF特撮映画を世に送り出したネイサン・ジュラン監督。その遺作となった映画がこれ。アメリカ本国ですら、今年に入ってブルーレイが発売されるまで1度もソフト化されたことがなかったというレアな作品だ。

アメリカでは『怪奇!吸血人間スネーク』('73)と2本立てで公開された本作。配給はかつて『倫敦の人狼』('35)や『狼男』('41)などの名作狼男映画を生んだ老舗ユニバーサルだ。同年に『エクソシスト』が大ヒットしていることからも察せられるように、当時は日常の中に潜む恐怖をリアルに描くモダン・ホラーが主流となりつつあり、狼男やら吸血鬼やらの古典的なモンスターは既に時代遅れだった。なので、ドライブイン・シアターやグラインドハウスで上映される低予算のインディペンデント映画ならいざ知らず、ユニバーサルのようなメジャースタジオが本作を配給したというのは少々意外だ。とはいえ、ユニバーサルはこの年に2本立て興行を打ち切っているので、ある意味、古き良きモンスター映画の終焉を飾った作品の一つと言えなくもないだろう。

ただ、本作も少なからずモダンホラーの潮流を意識していることは確かだ。舞台は現代。平凡な親子が週末の休暇先で何者かに襲われる。幼い息子は相手が狼男だったと主張するが、その場にいた父親を含めて大人たちは信じない。果たして少年の言う通り本当に狼男は存在するのか、それとも非日常的な恐怖に見舞われた少年が心の中で作り上げた妄想なのか。まあ、オープニングから獲物を求めて森を徘徊する狼男の姿が登場するし、噛まれた父親もすぐに狼男化してしまうので、観客にとって結論は初めから明白だが、それでもなお心理的メタファーとしてのモンスターというモダンホラー的なアプローチを匂わせている点は見逃せない。

劇中でヒッピーのカルト集団が登場するというのも非常に'70年代的。しかも、オカルト映画によく出てくるような恐ろしい狂信集団としてではなく、ラブ&ピースな気のいい若者たちという設定だ。その教祖ブラザー・クリストファーを演じているのが、本作の脚本家でもあるボブ・ホメル。ほぼ無名に近い売れない役者の彼が本作に携わることになった経緯は不明だが、子供を主人公にすることで青少年向け冒険活劇の要素を盛り込んだのは賢明だったかもしれない。当時は、この手のモンスター映画の主要な客層は10代の少年だったからだ。

なので、全体的にお子様向けな印象は否めない。とりあえず当時のレーティングは親の指導が必要なPG扱いだが、これといって目立ったような残酷描写もなし。狼男が犠牲者の生首を持ち帰るシーンはあるものの、それを具体的に見せたりすることはない。あくまでも、生首であることを連想させるだけ。血糊もほとんど使われていないので、ホラー映画としてはだいぶ刺激の少ない作品だと言えよう。

狼男の特殊メイクもかなり古典的。『狼男アメリカン』('81)や『ハウリング』('81)で人狼の特殊メイクに革命が起きるのはまだまだ先のこと。基本的には俳優がモンスターマスクを被った上で、手に特殊メイクを施して袖口から毛をはみ出させているだけだ。もちろん服は着たまんま。さすがに今見ると滑稽だ。当時のモンスター映画、特に狼男映画が下火になっていた理由の一つに、こうした特殊メイクのリアリティのなさが挙げられるだろう。まだまだ技術的に不可能なことが多かったのだ。変身シーンだって、次第に顔の毛が増えて狼男になっていく様子を静止画でオーバーラップさせただけ。ただ、狼というよりは狐に近いマスクのデザインはユニークだ。特殊メイクを担当したのは『ドクター・モローの島』('77)や『キャット・ピープル』('82)で有名なトーマス・R・バーマン。あの『ティーン・ウルフ』('85)もバーマンの仕事だ。

父親役を演じているのは『シンドバッド七回目の航海』('58)、『ジャックと悪魔の国』('62)に続いて、これがネイサン・ジュラン監督とのコンビ3度目になるカーウィン・マシューズ。冒険ファンタジー映画の二枚目ヒーローとして活躍した彼が、狼マスクを被って唸ったり吠えたりする姿はちょっと切ない。これを最後に俳優を引退したのもなんとなく納得。息子役のスコット・シーリーはなかなかの好演だが、映画出演は後にも先にもこれ一本きり。『真昼の決闘』('52)など西部劇の悪役として知られるロバート・J・ウィルクが石頭の保安官を、『ポリス・アカデミー』シリーズのラサール校長役でお馴染みのジョージ・ゲインズが実質的にほとんど役に立っていない精神科医を演じている。

てなわけで、あくまでも他愛のない青少年向けモンスターホラーではあるが、まだ駆け出しだった頃のトーマス・R・バーマンの人狼メイクを楽しめる作品として、SF特撮映画の名匠ネイサン・ジュランの遺作として、一度くらいは見ておいても損はないかもね…といったところだろうか。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:93分/発売元:Scream Factory/Universal (2016年)
特典:スチル・ギャラリー/オリジナル劇場予告編


by nakachan1045 | 2016-11-26 18:56 | 映画 | Comments(0)

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