なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ハードアブノーマル」 Island of Death (1976)

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監督:ニコ・マストラキス
製作:ニコ・マストラキス
脚本:ニコ・マストラキス
撮影:ニコス・ガルデリス
編集:ビル・シロポウロス
音楽:ニコス・ラヴラノス
出演:ボブ・ベリング
   ジェーン・ライアル
   ジェシカ・ダブリン
   ジェラルド・ゴナロンス
   ジャニス・マッコネル
   ニコス・ツァチリディス
   レイ・ズック
   マリオ・タトラス
ギリシャ映画/101分/カラー作品





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<あらすじ>
オフシーズンのギリシャはミコノス島にひと組のイギリス人カップルがやって来る。新婚夫婦だという彼らの名前はクリストファー(ボブ・ベリング)とセリア(ジェーン・ライアル)。旅行者向けの短期賃貸アパートを借りた2人は、ごく普通の仲睦まじい夫婦に見えるが、実はサディスティックな猟奇殺人犯。警察に追われてロンドンから逃亡してきたのだ。
到着早々に電話ボックスから実家の母親へ電話ししつつ、その場でセリアとセックスを始めるクリストファー。2人は当惑する母親に激しい喘ぎ声を聞かせて面白がる。だが、その電話を盗聴していた刑事フォスター(ジェラルド・ゴナロンス)は2人の居場所を知り、一路ギリシャへと向かうのだった。
翌朝、セリアに起き抜けのセックスを拒絶されたクリストファーは、家主が飼っている子ヤギを使って性処理した上で屠殺。この美しい島には純粋で素朴な人々が相応しい、汚らわしい変態どもは片っ端から殺してやるという彼ら独自の論理のもと、セリアに色目を使ったフランス人画家、同性愛者のアメリカ人男性とその若いギリシャ人の恋人、色情狂の有閑マダム(ジェシカ・ダブリン)、レズビアンのバーテンダー(ジャニス・マッコネル)らを次々と惨たらしい方法で殺害。さらにその様子をカメラに収め、現像した写真を眺めながら2人してオナニーに耽るのだった。
自分たちを追い詰めようとした刑事フォスターもまんまと殺した彼らだが、しかし一連の事件を追う地元在住の作家(ニコ・マストラキス)によって2人の犯行であることが露呈し、再び警察から追われることに。逃走の果てにクリストファーとセリアは人里離れた農家にたどり着く。そこで愚直そうな農夫(ニコス・ツァチリディス)に匿われる2人だが、そこで恐ろしくも皮肉な運命が彼らを待ち受けていた…。

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映画界におけるセックスとバイオレンスのタブーが次々と破られた'70年代。ケン・ラッセルの『肉体の悪魔』('71)やピエル・パオロ・パゾリーニの『ソドムの市』('75)などの問題作が世間に大きな衝撃を与え、日本でも東映の異常性愛路線やら日活のロマンポルノやらが物議を醸した。もはや肌も露わな激しい濡れ場や血まみれの残酷シーンなどは当たり前…というか一種のトレンドに。そうした潮流が野心的な映画の作り手により自由な映像表現の可能性を与えたわけだが、一方で過激なセックスとバイオレンスを売り物にしただけのチープなゲテモノ映画も、文字通り雨後の筍のごとく量産された。その中でもひときわ悪名高い作品の一つが、日本では当時ポルノ映画として劇場公開されたギリシャ映画『ハードアブノーマル』だ。

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監督は当時ギリシャのテレビ界で活躍していた若手監督ニコ・マストラキス。コスタ=ガヴラスやマイケル・カコヤニスなどの名匠・巨匠を輩出してきたギリシャ映画界だが、しかし映画産業そのものの規模は決して大きくない。当初から国外で稼げるような娯楽映画を志向していたマストラキスは、あるときアテネの映画館で見たアメリカ映画『悪魔のいけにえ』('74)が、たった30万ドルの制作費でその100倍以上を稼いだと知って、いいアイディアを思いつく。もっと過激なことをやれば、さらに低予算の映画でも稼げるんじゃないかと。それだったら自分にもできるかもしれない。そう考えて生まれたのが本作だったというわけだ。

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なのでマストラキス監督自身、この作品は純粋に金儲け目当てで作ったということを堂々と認めている。その言葉に裏付けされるように、ストーリーにはほとんど脈絡がない。ミコノス島にやって来た男女のサイコパスが、次々と残虐極まりない方法で人々を殺していく様子を、露骨な性描写と暴力描写てんこ盛りで映し出していくだけ。しかも、その犠牲者というのがいずれも当時で言うところの性的倒錯者ということで、ホモセックスにレズセックス、青姦に放尿プレイと、それこそ変態行為の品評会とも言うべき生々しい光景が繰り広げられていく。

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普通じゃない変態どもはバンバン殺してオッケー!とばかりに、ブルドーザーを使って首チョンパしたり、ガスバーナーで顔面を焼いたり、槍で体を串刺しにしたりとやりたい放題の主人公たちだが、そんな事を言っている自分たちだって子ヤギを相手に獣姦したり、殺人行為を撮影した写真を見ながら2人並んでオナニーに耽ったりと、怖いもの知らずの変態っぷりをこれでもかと発揮。しかも、実は夫婦じゃなくて兄妹だったというオチまでつく。そして、そんな主人公たちの大いなる矛盾や異常な犯罪行為に深い意味など一切持たせていないところがまた潔い。

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まさしく、混じりっけなしの100%ピュアなキワモノ映画。ここまで開き直ってくれれば逆にアッパレだ。なんだかんだでミコノス島の美しい町並みや自然を捉えた映像もキレイなので、明らかに低予算ではあるものの見た目的な安っぽさはそれほど感じられない。むしろ、時として詩情すら漂わせるほどだ。ニコス・ラヴラノスによる歌謡フォーク調の音楽スコア&挿入曲も哀愁たっぷり。その辺はさすがヨーロッパ映画、そこはかとなく湿ったタッチはイタリア産B級エンターテインメントにも通じるものがある。

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また、ゲテモノだキワモノだとは言っても、例えば『ソドムの市』なんかに比べればエログロのさじ加減もかなり控えめ。性描写はせいぜいヘアがチラリと見える程度だし、スプラッターだっていかにも作り物といった感じで、今となってはショッキングと呼ぶには程遠い。まあ、確かに題材的にはタブーな要素が満載であることは確かだが、プレゼンテーションは節度を保っているという印象だ。よっぽどボロフチックの『インモラル物語』('75)の方が過激だんもんね。

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ほぼ1週間で脚本を書き上げたというマストラキス監督は、当初からギリシャ語ではなく英語で撮影するつもりであったことから、キャストも英語力を最も重視して選んだという。クリストファー役のボブ・ベリングは当時ギリシャ在住だったアメリカ人俳優。ロバート・ベリングの名前で『香港コネクション』('81)や『クジョー』('83)にも出ている。セリア役のジェーン・ライアルもギリシャ在住だったイギリス人。2人はギリシャで撮影されたUKホラー『デビルズ・ビレッジ/魔神のいけにえ』('76)でも再共演している。

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色情狂の有閑マダムを演じるジェシカ・ダブリンはニューヨーク出身のアメリカ人で、イタリアでフェリーニの『サテリコン』('69)やヴィスコンティの『地獄に堕ちた勇者ども』('69)などに端役で出演した後、ギリシャに拠点を移して活動していた。本作の撮影当時で既に50代半ば。アメリカへ帰国後は『悪魔の毒々モンスター東京へ行く』('88)などトロマ・ピクチャーズの作品にたびたび出演している。最後に登場する農夫役のニコス・ツァチリディスは、ギリシャでは名の知られた個性派俳優。そのほか、脇役の大半は現地のミコノス島で、通行人の中からスカウトしたのだそうだ。

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かくしてマストラキス監督の目論見通り、本作は良くも悪くも各国でスキャンダラスな話題を振りまいて大ヒット。これを機に彼はアンソニー・クインとジャクリーン・ビセット主演のハリウッド映画『愛はエーゲ海に燃ゆ』('78)の原案に携わり、アメリカへ拠点を移して自らの独立系映画会社オメガ・ピクチャーズを設立。『悪魔のサバイバル』('85)や『地獄の女囚コマンド』('90)といったB級アクション映画で名を馳せるようになる。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(イギリス盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:1.0ch Dolby digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間101分/発売元:Arrow Films (2011年)
特典:ニコ・マストラキス監督による音声解説/ニコ・マストラキス監督インタビュー(約25分)/ニコ・マストラキス監督Q&A(約17分)/挿入歌集(約7分)/主題歌「Destination Understanding」カバー・バージョン集(約21分)/オリジナル劇場予告編/フルカラー解説書(8p)


by nakachan1045 | 2016-11-27 22:17 | 映画 | Comments(0)

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