なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

「地獄の女囚コマンド」 Hired To Kill (1990)

f0367483_23224424.jpg

監督:ニコ・マストラキス
   ピーター・レイダー
製作:ニコ・マストラキス
脚本:ニコ・マストラキス
   フレッド・C・ペリー
   カーク・エリス
撮影:アンドレアス・ベリーズ
プロダクション・デザイン:マイケル・ストリンガー
音楽:ジェリー・グラント
出演:ブライアン・トンプソン
   オリヴァー・リード
   ジョージ・ケネディ
   ホセ・ファーラー
   ミシェル・モフェット
   バーバラ・リー・アレクサンダー
   ジョーダナ・カプラ
   ケンドール・コンラッド
   キム・ロンズデール
   ジュード・マッサター
   ペネロープ・リード
   デヴィッド・ソウヤー
アメリカ映画/96分/カラー作品




f0367483_23283987.jpg
<あらすじ>
各国の紛争地帯で活動してきた凄腕の傭兵フランク・ライアン(ブライアン・トンプソン)は、アメリカ政府の影の仕事を請け負うビジネスマン、トーマス(ジョージ・ケネディ)から新たな任務の依頼を受ける。それは、地中海の独裁国家サイプラで捕らわれの身となっている元大統領ラリス(ホセ・ファーラー)の救出作戦だ。
実はサイプラでは、アメリカの政治介入によって軍事クーデーターが勃発。ラリス大統領の代わりに政権を握ったマイケル・バルトス大佐(オリヴァー・リード)は、アメリカの言いなりとなるはずだったのだが、手のひらを返したように独裁的な恐怖政治を敷き、国家財政も破たん寸前だった。そこでアメリカ政府は現地で国民的な人気が高く、反政府レジスタンスにも支持されているラリス元大統領を解放し、革命勢力のリーダーに祀り上げることで邪魔者バルトス大佐を排除しようというのだった。
しかし国境警備の厳重なサイプラに潜入するのは至難の業。そこで、トーマスは驚くべき作戦を提案する。フランクが新進気鋭の人気ファッション・デザイナー、セシル・ソーントンに扮し、選り抜きの女性兵士たちをファッションモデルに仕立て上げ、現地でファッションショーを開くことを名目に送り込もうというのだ。セシルはゲイという設定。すでに何年も前から、トーマスは架空の人物セシル・ソーントンの存在を作り上げてきた。派手好きで女好きなバルトス大佐の目をくらますには格好の作戦だ。
ゲイや女性に対して偏見の強いフランクはあまり気乗りしなかったものの、高額の報奨金につられて引き受けることにする。補佐役としてトーマスが用意したのは、フランクとは過去に因縁のある女傭兵シーラ(バーバラ・リー・アレクサンダー)と、サイプラス出身の売れっ子モデル、ダフネ(ケンドール・コンラッド)。早速、3人は女性兵士をスカウトするため世界各国へ足を運ぶ。
数々の凶悪犯罪でトルコの刑務所に入っていたシヴィ(キム・ロンズデール)、罠にはめられ国家反逆罪でサンクエンティンの刑務所に囚われていた元CIAスパイのジョアンナ(ジョーダナ・カプラ)、家族を虐殺されたショックで精神病院に幽閉されていた女兵士カトリーナ(ペネロープ・リード)、元イスラエル諜報員の女流写真家ダリア(ジュード・マッサター)を引き抜いたフランクは、過酷なブートキャンプで彼女たちを兵士としてもモデルとしても完璧にすべく徹底的に鍛え上げる。
サイプラではバルトス大佐から大歓迎を受ける一行。しかし、現地ではそこら中に秘密警察の盗聴や監視が張り巡らされているため、作戦に協力する革命軍からコンタクトを待つ必要があった。バルトス大佐から愛人のファッションモデル、アナ(ミシェル・モフェット)をショーに出してほしいと頼まれるフランク。実はそのアナこそが革命軍の連絡役だった。警護責任者のルイス(デヴィッド・ソウヤー)も仲間だ。やがて、ラリス元大統領が秘密裏に移送されるという情報を入手したフランクたちは、革命軍と一緒に救出作戦へ乗り出すことになるのだが、思いがけない人物による裏切りが待っていた…。

f0367483_23282969.jpg
エログロ問題作『ハードアブノーマル』('75)が商業的な大成功を収め、大富豪オナシスを題材にしたユニヴァーサル映画『愛はエーゲ海に燃ゆ』('78)の原案を手掛けることでハリウッドとのパイプを作ったニコ・マストラキス監督。パラマウント映画と2年間の契約を結ぶものの芽が出なかったことから、'80年代に入って独立系映画会社オメガ・ピクチャーズを設立。カースティ・アレイやホセ・ファーラーなどハリウッド・スターを招いたエロティック・サスペンス『エーゲ海の伝説』('84)で本格的に国際マーケットへ進出し、アクション・コメディ『スカイハイ/スパイ大作戦』('85)で活動の拠点をハリウッドへ移すこととなる。以降、アクションからホラー、コメディに至るまで様々なジャンルの低予算映画を大量生産したマストラキスだが、そんな彼にとって最も製作費をかけた野心作が『地獄の女囚コマンド』だった。

f0367483_23283364.jpg
アメリカ政府の裏仕事を請け負うビジネスマンに雇われた傭兵部隊が、独裁国家に囚われている要人を救出するというストーリーは、傭兵映画の金字塔ともいうべき名作『ワイルド・ギース』('78)のパクリと言ってもよかろう。大きく違う点があるとすれば、それはリーダー以外の傭兵が全員女性ということだ。それもモデル級のセクシー美女ばかり。なにしろ、ファッションデザイナーとモデル軍団を装って独裁国家に潜入するのだから。ただし、『地獄の女囚コマンド』という邦題は若干無理があって、メンバーの中で囚人だった女性は2人だけ。まあ、確かに昔は女囚映画というジャンルが成立するほど女囚ものは一部で人気が高かったので、あえてそっちにフォーカスしようとする配給会社の気持ちも分からないではないのだけれど。とはいえ、女ばかりの傭兵軍団というアイディアも、よくよく考えればアンディ・シダリス監督による一連のお色気アクション、要するに『ピカソ・トリガー』シリーズなんかのパクリ。基本的にオリジナリティは皆無に等しい。

f0367483_23284224.jpg
で、実はこの作品、もともとはマストラキスの愛弟子ピーター・レイダー監督の単独演出を想定した企画で、マストラキスも当初はプロデュースのみを手掛けるはずだった。低予算ホラー『ブラッド・ハウス/恐怖がつきささる』('88)でレイダーを監督デビューさせたマストラキスは、愛弟子の監督作第2弾として本作を用意したものの、なにしろ大勢のエキストラを動員した戦闘シーンから大量の火薬を爆発させる命がけのスタント、ヘリコプターによるダイナミックな空撮アクションなどが盛りだくさん。しかもオメガ・ピクチャーズ史上最大の予算を投入している。経験の浅いレイダー監督の手には全く負えず、たびたび撮影が滞ってしまうことから、見るに見かねた師匠が自ら演出にも携わることになった。共同監督としてクレジットされているマストラキスだが、実際に現場で主導権を握っていたのは彼だったようだ。

f0367483_23284800.jpg
そのB級感丸出しなタイトルや設定とは裏腹に、マストラキス監督のアプローチは極めて正統派。J・リー・トンプソンやジョルジュ・パン・コスマトス辺りを彷彿とさせるハリウッド流戦争アクションだ。もちろんメジャースタジオの大作映画に比べるとチープ感は否めないし、スタントシーンの演出も文句なしに迫力満点とは言い難いものの、ギリシャ時代から長年に渡ってコンビを組んでいる撮影監督アンドレアス・ベリーズのステディカムを多用したダイナミックなカメラワーク、世界遺産にも登録されているギリシャの撮影地ケルキラの美しいロケーションの魅力などにだいぶ助けられているという印象だ。

f0367483_23291481.jpg
そう、地中海の架空の独裁国家サイプラを舞台にした本作だが、ロケ地はマストラキス監督の母国ギリシャである。サイプラという名称も、おのずとキプロスを連想させるわけで、そこには少なからず明確な意図が見て取れるように思う。というのも、ギリシャ自体がかつて軍事政権による独裁国家だったからだ。マストラキス監督本人は純粋な娯楽映画で政治的な意図は全くないと述べているが、しかし当初は南米を舞台に撮影される予定だったものを、あえてギリシャへロケ地を変えたということは、もちろん勝手知ったる場所だからという理由もあるとは思うものの、それにしても何の含みもないとは考えずらい。なにしろ、マストラキス監督自身が当時の軍事政権と浅からざる関係があったのだから。

f0367483_23283669.jpg
'67年に起きた軍事クーデーターにより、その翌年独裁政権が樹立されたギリシャ。その陰にはアメリカ政府の支援があった。まさしく本作の設定そのまんまである。'73年の大規模な学生デモを契機に軍事政権は崩壊するわけだが、実はその間に、当時テレビの売れっ子ディレクターだったマストラキスは、本人が望んだわけではないにせよ、政府のプロパガンダに加担させられている。そのことが原因で、軍事政権崩壊後はテレビの仕事を干されたことから、映画に活路を求めたという経緯があったのだ。なので、確かに本作には政治的なメッセージこそないにしても、マストラキス監督自身の独裁政権時代の経験が多分に投影されていることは間違いないだろう。

f0367483_23282689.jpg
主演は当時マストラキスの娘婿だったブライアン・トンプソン。『ターミネーター』('84)や『コブラ』('85)などの悪役で頭角を現した役者だが、恐らく最も印象的なのはテレビ『Xファイル』の異星人バウンティハンター役だろう。もともとアメフト選手だっただけにゴリゴリのマッチョ体型。これが初めての主演作だったわけだが、その陰には孫の父親をアクションスターとして売り出そうという義父マストラキスの配慮があったわけだ。さらに、独裁者バルトス役にはオリヴァー・リード、ボスのトーマス役にはジョージ・ケネディ、元大統領ラリス役にはホセ・ファーラーと、ベテランの大御所俳優が共演。しかしこのオリヴァー・リードが、撮影現場では頭痛の種だったという。もともと酒癖の悪さでトラブルメーカーとして悪名高かったリードは、その素行が災いして、人気に陰りが見えた途端に業界から干されてしまう。本作の当時は仕事が殆どない状態だった。バルトス役を探していたマストラキスは、彼のエージェントからすっかり更生したから大丈夫だと太鼓判を押されたこともあって、それならばと起用したわけだが、これがとんでもないウソだった(笑)。朝からシャンパンのボトルを2本空け、ヘロヘロに酔っぱらって現場へ現れるという始末。撮影の本番中に立ちションベンを始めてスタッフ一同をドン引きさせたこともあったそうだ。

f0367483_23284544.jpg
また、先述したように命がけの大規模なスタントシーンの多い本作では、実際に死亡事故が起きている。終盤のヘリコプターを使った戦闘シーンで、そのヘリが撮影中に墜落してしまったのだ。パイロットは『私を愛したスパイ』('77)から『スペクター』('15)に至る『007』シリーズをはじめ、『エクスペンダブルズ』シリーズや『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』('15)などを手掛けている世界最高峰の航空スタントマン、マーク・ウルフ。直接的な原因はいまだ不明らしいのだが、突然ヘリが操縦不能となってしまい、危険を察したマークらスタントマンたちは墜落の直前に飛び降りて助かったが、最年少で経験の浅い若手スタントマンのクリント・カーペンター一人が逃げ遅れてしまったのだ。本編最後のクレジットでも、クリントに哀悼の意が捧げられている。

f0367483_23290624.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD&ブルーレイ情報(アメリカ盤)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio・2.0ch リニアPCM Stereo/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:96分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:5.1ch Dolby digital/2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:96分
発売元:Arrow Films (2016)
特典:編集者バリー・ゼトリンによる音声解説/ニコ・マストラキス監督インタビュー(約27分)/ブライアン・トンプソンのインタビュー(約18分)/オリジナル劇場予告編/スチル・ギャラリー/オリジナル脚本(PDF)/フルカラー解説書(24p)

by nakachan1045 | 2016-12-03 08:44 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター