なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

「ビースト・キッス」 Meridian: Kiss of the Beast (1990)

f0367483_01160428.jpg
監督:チャールズ・バンド
製作:チャールズ・バンド
   デブラ・ディオン
原案:チャールズ・バンド
脚本:デニス・パオリ
撮影:マック・アールバーグ
編集:テッド・ニコロウ
特殊メイク:グレッグ・キャノム
美術監督:ジョヴァンニ・ナタルッチ
音楽:ピノ・ドナッジョ
出演:シェリリン・フェン
   マルコム・ジェイミソン
   ヒラリー・メイソン
   チャーリー・スプラドリング
   アレックス・ダニエルズ
   フィル・フォンダカーロ
   ヴァーノン・ドブチェフ
アメリカ映画/86分/カラー作品




f0367483_02375709.jpg
<あらすじ>
美術学校を卒業してイタリアへやって来たアメリカ人女性キャサリン(シェリリン・フェン)とジーナ(チャーリー・スプラドリング)。村の古い教会で美術品の修復作業に当たるジーナは、牧師(ヴァーノン・ドブチェフ)から15世紀に描かれた絵画の修復を頼まれる。新しい絵の下に古い絵が隠されていたのだ。
その週末、ジーナは亡き父親から古い城を相続したキャサリンのもとを訪れる。キャサリンの父親はイタリア人で、由緒正しい家系の出身だったのだ。幼い頃から可愛がってくれた乳母マーサ(ヒラリー・メイソン)が身の回りの世話をしてくれている。彼女の先祖は偉大な魔法使いだったという伝説が残されていた。
ちょうど城のすぐ近くにカーニバル一座がやって来る。その出し物を見て気に入った2人は、一座の面々を城へ招いて夕飯を楽しんだ。すると、小人の芸人(フィル・フォンダカーロ)がワインに媚薬を混ぜる。意識が朦朧としていくキャサリンとジーナ。2人は一座のリーダー、ローレンス(マルコム・ジェイミソン)に誘われるがまま肉体を奪われるのだが、キャサリンの時だけ途中から双子の弟オリヴァー(マルコム・ジェイミソンの2役)と交代する。キャサリンを抱いたオリヴァーは、たちまち獣人へと変貌するのだった。
翌朝目覚めたキャサリンは、おぼろげな記憶しかなかった。絵画の修復作業が残っているジーナは自宅へと戻る。一人残されたキャサリンは、白いドレスを身にまとった女性の幽霊を目撃する。恐れおののく彼女に、それは亡き父親の姉オードリーだとマーサが告げる。まだ父親が幼かった頃、オードリーはカーニバル一座のリーダーによって殺されたのだという。
実は、ローレンスとオリヴァーの兄弟は15世紀に魔法使いである城主の娘と三角関係になり、怒った父親によって呪いをかけられてしまったのだ。女性を愛するたびオリヴァーは獣人へと変身してしまう。その呪いを解く唯一の方法は、彼のことを心から愛する女性の手によって殺されることだった。それまで2人は死ぬことも出来ない。しかも、相手は城主の一族の女性でないとならなかった。かつてオリヴァーはオードリーと恋仲になったが、弟を憎むローレンスによって邪魔され、彼女は殺されてしまったのだ。
そして今、オリヴァーはキャサリンを愛するようになり、呪いの真相を知った彼女もまた心を動かされていく。だが、そんな2人の前に邪悪なローレンスが立ちふさがる。一方、絵画の修復作業を続けていたジーナは、そこに呪いの本当の意味が隠されていることに気付くのだった…。

f0367483_02392899.jpg
'80年代に映画会社エンパイア・ピクチャーズを設立し、『グーリーズ』('85)や『死霊のしたたり』('85)、『フロム・ビヨンド』('86)などの低予算B級ホラーを次々と大ヒットさせた製作者チャールズ・バンド。イタリアに制作拠点を移したエンパイアは、ディノ・デ・ラウレンティスの巨大スタジオを買収し、チャールズ・バンド自身も12世紀に建てられたジョーヴェ城を購入するなど、我が世の春を謳歌したものの長くは続かず、身の丈に合わない先行投資と浪費三昧がたたって、エンパイア・ピクチャーズは'88年に倒産してしまう。だが、転んでもただでは起きないバンドは、翌年に新たな映画会社フルムーン・フィーチャーズを設立。劇場公開せずに直接VHSおよびレーザーディスクで発売することで、中間マージンを省いて利益を増やすというビジネスモデルを採用する。第1回作品の『パペット・マスター』('89)は予想を遥かに上回る大ヒットを記録。続く第2弾として'90年に3本の作品がリリースされたのだが、そのうちの一本がこの『ビースト・キッス』だった。

f0367483_02385817.jpg
総裁であるチャールズ・バンド自身が監督と原案を手掛けた本作。いわば『美女と野獣』の変化球みたいな作品だ。ノリとしてはエロティックな純愛ファンタジー。もともとバンド自身、ホラーよりもSFやファンタジーが好きだとインタビューでたびたび公言しているが、そんな彼の個人的な趣味が色濃く反映された企画だったと考えていいだろう。とはいえ、話の流れはやたらとまどろっこしいし、双子の片方だけが獣人化するという呪いの仕組みもいまひとつ飲み込みづらい。奇をてらい過ぎて失敗してしまったような印象だ。脚本は『死霊のしたたり』や『フロム・ビヨンド』のデニス・パオリだが、そもそもバンドの考えた原案に重大な欠陥があるように思う。ここは素直に、『美女と野獣』のストレートな焼き直しにした方が良かったのかもしれない。

f0367483_02405756.jpg
その一方で、主演女優のシェリリン・フェンとチャーリー・スプラドリングの2人は文句なしに魅力的だ。特にシェリリン。まだテレビ『ツイン・ピークス』でブレイクする前の作品なのだが、これがもう非の打ちどころのないほどの美しさ。演技にはまだ若干のぎこちなさが残っているものの、輝かんばかりの美貌で観客の目を釘付けにする。若い頃のマーゴット・キダ―を彷彿とさせるチャーリーの親しみやすい個性も好感度が高い。しかも、2人とも臆することなくバンバン脱ぎまくる。ヒロインと獣人の濃厚なセックス・シーンもあり。まあ、さすがにワレリアン・ボロフチックの『獣人』ほど過激じゃないけれど。

f0367483_02395880.jpg
また、イタリアで撮影された中世の香り漂うロマンティックな映像美も見どころだ。主なロケ地はバンドが所有していたジョーヴェ城。張りぼてのセットでは表現することのできない、本物の古城だからこその重厚なゴシック感が、ビデオ・ストレートの低予算映画らしからぬ風格を醸し出している。撮影監督はエンパイア時代からの常連カメラマン、マック・アールバーグ。もともとスウェーデン出身のアールバーグは、'60年代に世界中でセンセーションを巻き起こしたスウェーディッシュ・ポルノ『わたしは女』('67)の監督だった人。『死霊のしたたり』や『フロム・ビヨンド』、『ドールズ』('86)も彼の仕事だ。

f0367483_02382829.jpg
グレッグ・キャノムが手掛けた獣人の特殊メイクも要注目。キャノムといえば、コッポラの『ドラキュラ』('92)や『ミセス・ダウト』('93)、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』('08)などで4度のオスカーに輝く大御所だ。ちょうどこの当時は立て続けにフルームーン作品に携わっていた時期で、中世の絵画から抜け出てきたようなクリーチャー・デザインが秀逸。『狼男アメリカン』('81)をパクった変身シーンも見せてくれる。ブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』('76)や『殺しのドレス』('80)などでもお馴染み、イタリアの生んだマエストロ、ピノ・ドナッジョによる甘美な音楽スコアがまた、ロマンティックなムードを高める。

f0367483_02402890.jpg
脇役ではなんといっても、乳母マーサ役のヒラリー・メイソンが存在感抜群。ニコラス・ローグの傑作『赤い影』('72)で盲目の老女を演じたことで有名なイギリスの性格女優だが、エンパイア作品『ドールズ』でも人形職人夫婦のお婆さん役で強烈な印象を残していた。見た目のインパクトもさることながら、その味わい深い演技が作品をワンランク・アップさせている。また、村の教会の牧師役に、マルグリット・デュラスの『インディア・ソング』('75)やハーバート・ロスの『ニジンスキー』('80)、ジャン=ジャック・アノーの『薔薇の名前』('86)などが印象深いフランスの名脇役俳優ヴァーノン・ドブチェフが顔を出しているのも興味深い。

f0367483_02372874.jpg
評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(オーストラリア盤)
カラー/スタンダード・サイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:86分/発売元:Full Moon Features/Kangaroo Video (2005年)
特典:メイキング・ドキュメンタリー「A Behind the Scenes: Look at Meridian」(約5分)

by nakachan1045 | 2016-12-13 05:44 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

最新の記事

「クリープス」 Night ..
at 2017-10-23 01:34
「Morte sospett..
at 2017-10-18 19:18
「A Study in Te..
at 2017-10-16 05:48
「七人の特命隊」 Ammaz..
at 2017-10-15 00:37
「サタンバグ」 The Sa..
at 2017-10-14 13:09

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター