なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

「異次元へのパスポート」 The Day Time Ended (1980)

f0367483_01145050.jpg
監督:ジョン・゛バッド“・カードス
製作:ウェイン・シュミット
   スティーヴ・ニール
製作総指揮:チャールズ・バンド
原案:スティーヴ・ニール
脚本:ウェイン・シュミット
   J・ラリー・キャロル
   デヴィッド・シュモーラー
撮影:ジョン・モリル
特殊視覚効果:ポール・W・ジェントリー
テクニカル・アドバイザー:デヴィッド・アレン
特殊アニメーション効果監修:ピート・クラン
ストップモーション・フィギュア・デザイン&造形:ライル・コンウェイ
マットペイント:ジム・ダンフォース
音楽:リチャード・バンド
出演:ジム・デイヴィス
   クリス・ミッチャム
   ドロシー・マローン
   マーシー・ラファティ
   スコット・コールデン
   ナターシャ・ライアン
アメリカ映画/80分/カラー作品




f0367483_02330991.jpg
<あらすじ>
カリフォルニアのソノラ砂漠のど真ん中に建てられた、最新鋭のソーラーシステムを完備した豪邸に三世代の家族が引っ越してくる。一家の主グラント(ジム・デイヴィス)に美しい妻アナ(ドロシー・マローン)、長女のベス(マーシー・ラファティ)、娘婿リチャード(クリス・ミッチャム)、孫娘ジェニー(ナターシャ・ライアン)、そして長男スティーヴ(スコット・コールデン)のウィリアムズ一家だ。
しかし、到着早々から周辺では奇妙な出来事が次々と起きる。家の中は荒らされており、ジェニーは納屋の裏でピラミッド型の緑色にすると光る物体に遭遇。その物体は手のひらサイズに縮小し、ジェニーはそれを家に持ち帰ると、彼女の願い事が次々と叶うようになる。夕食後に散歩へ出かけたグラントとアナは、夜空を突き抜けるUFOを目撃した。
その晩、ジェニーの部屋に緑色の小人が出現し、なにかを警告しようとする。すると、家の中に浮遊する物体が侵入し、グラントは家族を守ろうと銃を向けるものの、レーザーによって弾丸が破壊されてしまう。追いつめられるウィリアムズ家の人々。しかし、それは突然目の前から姿を消し、今度は巨大なモンスターが2体現れて格闘を始める。勝った方のモンスターがウィリアムズ一家に襲いかかろうとするも、とっさの判断でグラントが納屋から放った馬を追いかけ、その途中で光の渦と共に消えた。
銀河系の遥か彼方で起きた超新星の爆発で天候に異変が起きているとニュースで聞いたリチャードは、仕事先から家へかけた電話で家族に危険が迫っていることを知り、急いで帰路に就く。しかし、その途中でUFOに遭遇して車が大破してしまった。
その頃、ウィリアムズ家は地震に見舞われ、気付くとそれまで夜だったのが昼間になっている。外を見ると無数の飛行機の残骸が広がっていた。すると、今度は家全体が光の渦に包まれ、外へ出ていたジェニーと彼女を助けようとしたベスが忽然と消えてしまう。いや、厳密にいうと家の方が消えたのだ。
パラレルワールドのような異空間へと迷い込んでしまったグラント、アン、スティーヴ。なぜだか分からないが、砂漠の真ん中に時空の裂け目が生まれ、そこに飲み込まれてしまったらしい。3人はあてどもなく浮浪の旅に出るのだが…。

f0367483_02324744.jpg
エンパイア・ピクチャーズを設立する以前のチャールズ・バンドが、自ら率いる弱小制作プロダクション、その名もチャールズ・バンド・プロダクションズの作品として発表したSF映画。それまでも監督を兼ねた『クラッシュ!』('76)や『エンド・オブ・ザ・ワールド』('77)、『SFレーザーブラスト』('78)など、数々の低予算娯楽映画を手掛けていたバンドだが、本作はエンパイア以前の彼のプロデュース映画としては最大となる製作費(それでも約60万ドルという安さなのだが…)を投じた野心作であり、同時に最大のポンコツ映画として悪名高い(?)作品でもある。

f0367483_02325402.jpg
そもそも、本作の原案を手掛けたのは『宇宙の7人』('80)や『空の大怪獣Q』('82)、『スタートレックⅥ/未知の世界』('91)などの特殊メイクマンとして知られるスティーヴ・ニール。そのアイディアを基にして、後に『ジュラシック・アマゾネス』('94)や『サイバー・コマンド』('95)などの編集を手掛けるウェイン・シュミットが脚本の第一稿を仕上げた。しかし、2人とも映画の脚本に関しては素人も同然。中でもウェインはスティーヴの親友というだけで、当時はまだ映画界での実務経験ゼロという正真正銘の素人だった。エンパイア・ピクチャーズの集大成本「Empire of the B's : The Mad Movie World of Charles Band」に掲載されているウェイン・シュミットおよびチャールズ・バンドの証言によると、当時『SFレーザーブラスト』の特殊メイクに携わっていたスティーヴ・ニールがチャールズにアイディアを売り込み、そのレスポンスを基にしてスティーヴが改善したストーリーを、ウェインが脚本としてまとめたのだという。一方チャールズとしては、当時『SFレーザーブラスト』で組んだデヴィッド・アレンの仕事ぶりに強い感銘を受け、彼の特撮技術をふんだんに盛り込んだSF映画を撮りたいと考えていた。まさしく渡りに船の企画だったわけだ。

f0367483_02324326.jpg
ちなみに、当初は『Vortex』というタイトルだったが、既に同じタイトルの企画を進めていたディズニーより警告書が届いたことから、『The Day Time Ended』に変更したらしい。で、そのウェイン・シュミットの書き上げた脚本の出来栄えが酷かった。まあ、素人の仕事だから仕方ない部分もあろう。困ったチャールズ・バンドは、当時『デビルズ・ゾーン』('78)の製作準備中だった監督・脚本コンビ、デヴィッド・シュモーラーとJ・ラリー・キャロルに急きょリライトを依頼する。しかし、彼らに与えられた猶予は週末の数日間だけ。とりあえず引き受けはしたものの、ほとんど手の施しようがなかったとデヴィッドは後に語っている。

f0367483_02330544.jpg
かくして、出来の悪い不完全な脚本から映画を作らねばならなくなったチャールズ・バンド。この時点でポンコツ映画の誕生は運命づけられたようなものだったわけだが、さらに事態を悪化させたのが監督のジョン・”バッド”・カードスだったという。カードスと言えば『巨大クモ軍団の襲撃』('77)や『ザ・ダーク』('79)などの低予算SFホラー映画で知られる人物。知人から彼を紹介されたチャールズは、その経歴からして適任だと考えて採用したらしいのだが、すぐに後悔することとなった。撮影は一向に進まず、予算もどんどんと膨れ上がってしまったのだ。おかげでチャールズは金策に奔走させられ、多額の借金を抱えることに。破産寸前まで追い詰められたという。さらに、カードス監督は身内のスタッフに頼んで勝手に脚本を改変。ウェイン・シュミット曰く、観客が状況を理解するために必要なセリフがことごとくカットされてしまい、その代わりに冒頭の意味不明なナレーションが加えられ、本来意図したものとはまるで異なる作品になってしまったのだそうだ。

f0367483_02323837.jpg
実際、お世辞にも良く出来た映画だとは言い難い。とりあえず、最大の売りである特撮だけは完全度が高いと言えよう。あくまでも当時の低予算映画としては、という断り書きが必要にはなるものの、当時すでに名声を確立していたデヴィッド・アレンにジム・ダンフォース、後にメジャー超大作を次々と手掛けることになるポール・ジェントリーにライル・コンウェイなど、錚々たる顔ぶれのスタッフたちが限られた予算の範囲内で最良の仕事をしている。ただし、これら特撮に関わるポスト・プロダクションに最も時間が費やされることとなり、結果的に撮影終了から劇場公開まで2年近くかかってしまったわけなのだが。

f0367483_02325162.jpg
やはり最大の問題はストーリーの構成だ。賑やかな特撮シーンをふんだんに見せてくれるのはいいのだが、肝心のストーリーが支離滅裂で完全に破綻している。一応、超新星の爆発によって時空の裂け目が出来てしまい、そこに主人公一家が巻き込まれてしまうということらしいのだが、だからどうした?としか言いようがないのだ。各エピソードもぶつ切り状態。緑色のエイリアンのような小人や巨大なモンスター、様々な形のUFOなどが次から次へと登場するわけだが、いずれも唐突に現れては唐突に消える。それに対する説明も一切なし。まるで特撮シーンを見せるための道具として、形式的にストーリーらしきものが存在するといった感じだ。しかも、窓ガラスを破壊することなくスルリと通り抜けて屋敷に侵入した浮遊する殺人マシーンが、なぜか木製のドアはレーザー光線で破壊しないと通れない、光の渦に巻き込まれて時空を超えた主人公一家だが、唯一残されたはずの娘婿もいつの間にかあちら側にいるなど、いまひとつ辻褄の合わない描写も少なくない。でもって、あの強引過ぎるハッピーエンドだ。そもそもこの種の映画を作るには予算が少なすぎたと、ウェイン・シュミットはカードス監督のことを弁護しているものの、なんたって『ザ・ダーク』とか『ミュータント/人類改造計画』('84)を撮った人である。予算の問題だけではなかろう。誰がチャールズ・バンドに彼を推薦したのかは知らないが、なんとも罪作りなことをしたもんだ。

f0367483_02315945.jpg
特撮スタッフほどではないものの、キャストもそれなりに充実している。祖父グラント役には'40~50年代のB級映画スターで、'70年代末から'80年代にかけて空前の大ブームを巻き起こしたテレビシリーズ『ダラス』のユーイング家当主ジョック役で有名なジム・デイヴィス。その妻には巨匠ダグラス・サークの『風と共に散る』('56)でオスカーに輝いた往年の名女優ドロシー・マローン。娘婿役には大スター、ロバート・ミッチャムの息子で、『リオ・ロボ』('70)や『サマータイム・キラー』('73)などが印象深いクリストファー・ミッチャム。孫のジェニー役には、『悪魔の棲む家』('79)や『エンティティー/霊体』('81)などで当時売れっ子だった美少女子役ナターシャ・ライアン。まっとうな役者をそろえているが、それだけにこの脚本ではかえって気の毒だ。ちなみに、息子スティーヴ役のスコット・コールデンは、ディズニー制作の実写映画やテレビドラマの常連子役だったが、本作を最後に役者を引退して、現在は数々の映画技術賞に輝くハリウッドでも名うてのサウンド・エンジニアとして活躍している。

f0367483_02325826.jpg
当時は史上最低の映画が出来てしまったと落胆したというウェイン・シュミット。まだ若くて経験の浅い自分ではコントロールが出来なかった、最悪の思い出だと振り返るチャールズ・バンド。そんな舞台裏の苦労話を知るとちょっとばかり同情もしたくなるが、それを加味してもなおポンコツ映画であることには変わりない。なお、劇場公開時の画面アスペクト比は2.35:1のスコープサイズだったのだが、その後はビデオソフト版もテレビ放送版も全てスタンダードサイズにトリミングされている。

f0367483_02330161.jpg
評価(5点満点):★☆☆☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:80分/発売元:Full Moon Features (2013年)
特典:フルムーン予告編集

by nakachan1045 | 2016-12-20 03:15 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

最新の記事

「A Study in Te..
at 2017-10-16 05:48
「七人の特命隊」 Ammaz..
at 2017-10-15 00:37
「サタンバグ」 The Sa..
at 2017-10-14 13:09
「猟奇!喰人鬼の島」 Ant..
at 2017-10-12 23:34
「手討」 Teuchi (..
at 2017-10-11 23:55

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター