なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「クリスマスまで開けないで/サンタクロース殺人事件」 Don't Open Till Christmas (1984)

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監督:エドマンド・パードム
製作:ディック・ランドール
   スティーブン・ミナシアン
脚本:デレク・フォード
追加シーン監督:レイ・セルフェ
追加シーン脚本:アラン・バーキンショウ
撮影:アラン・パドニー
音楽:デス・ドーラン
出演:エドマンド・パードム
   アラン・レイク
   ベリンダ・メイン
   ジェリー・サンドキスト
   マーク・ジョーンズ
   ケリー・ベイカー
特別出演:キャロライン・マンロー
イギリス映画/86分/カラー作品




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<あらすじ>
クリスマスの近づくロンドン。サンタクロースの衣装を着た男が恋人とカーセックスをしている最中に殺される。さらに、クリスマスパーティの余興でサンタに扮した男性が、会場に紛れ込んだ何者かによって後頭部から槍を突き刺されて殺された。その場には男性の娘ケイト(ベリンダ・メイン)とその恋人クリフ(ジェリー・サンドキスト)も居合わせていた。
事件の捜査を担当するのはスコットランドヤードのイアン・ハリス警部(エドマンド・パードム)とパウエル警部補(マーク・ジョーンズ)。近ごろロンドンではサンタクロースの格好をした人物ばかりを狙った連続殺人事件が発生しており、ケイトの父親を殺したのも同一人物だろうとハリス警部らは睨んでいる。
そうこうしているうちに、次々とサンタクロースが犠牲になっていく。パウエル警部は新聞記者を名乗るジャイルズ(アラン・レイク)という人物から奇妙な電話を受け取る。その頃、クリフはケイトを誘ってヌード写真スタジオを訪れる。そこには写真家とヌードモデルが。クリフはサプライズのダブルデートを計画していたのだが、怒ったケイトは先に帰ってしまった。ヌードモデルと一緒に帰ろうとしたクリフは、パトロール中の警官を見つけて逃げ出す。道に迷ったヌードモデルはナイフを持った殺人鬼と遭遇するが、相手は何もせずに姿を消した。
さらに、続々とサンタクロースが殺されていく。パウエル警部補のもとにジャイルズが現れた。新聞社に問い合わせたらジャイルズなんて記者はいなかったと言うパウエルに、ジャイルズはハリス警部には重大な秘密があると言い残して去っていく。ケイトが独自に調査したところ、ハリス警部の出生届が存在しなかった。パウエル警部補はハリスが怪しいと疑う。さらに、覗き部屋のストリッパー、シャロン(ケリー・ベイカー)に素顔がばれた犯人は、彼女を拉致監禁していたぶろうとするのだが…。

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『ハロウィン』('78)や『プロムナイト』('80)、『誕生日はもう来ない』('81)、『血のバレンタイン』('81)、『エイプリル・フール』('86)などなど、特定のアニバーサリーに連続殺人鬼が人を殺しまくるのはスラッシャー映画の定番シチュエーションだが、クリスマスの聖夜もまた御多分に漏れず。『聖き血の夜』('74)や『暗闇にベルが鳴る』('75)、『サンタが殺しにやって来る』('81)、『悪魔のサンタクロース/惨殺の斧』('84)など、意外とクリスマス・モチーフのスラッシャー映画は数多い。ストーリーとしてありがちなのは、サンタクロースの扮装をした殺人鬼がクリスマスのお祝いムードに紛れて人々を血祭りに挙げていくというもの。ところが、この『クリスマスまで開けないで/サンタクロース殺人事件』は全く逆で、反対にサンタクロースがバンバン殺されていくという珍しいパターンの作品だ。

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とりあえず、大筋としてはサンタクロース連続殺人事件の謎を追うスコットランドヤードの警部、父親を殺されたことから心に深い傷を負った女性、犯人を目撃したために命を狙われる覗き部屋のストリッパーと、3つのプロットが同時進行で展開していくわけだが、それぞれのストーリーがまるで噛み合っていない。タイトルの『クリスマスまで開けないで』というのは、冒頭に犯人から警部へ宛てて差出人不明で贈られたクリスマスプレゼントのことなのだが、これもまた動機がいまひとつ理解できず。一応、話に一貫性を持たせようという努力の跡は見受けられるものの、かえって無理矢理なこじつけ感があちらこちらで際立ってしまうことに。それこそ後出しジャンケンのごとく、セリフの説明で強引に辻褄を合わせてしまうようなシーンもしばしば見受けられる。脚本の破綻具合はハンパじゃない。それは、制作の過程で3度に渡って監督がバトンタッチされたことと無関係ではないだろう。

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監督としてクレジットされているのは、往年のハリウッド俳優エドマンド・パードム。'50年代に『エジプト人』('54)や『プロディガル』('55)などのハリウッド産スペクタクル史劇に主演して脚光を浴びたパードムだが、メジャースタジオの強力なプッシュがあったわりにスターとしての人気は定着せず、その後はイタリアへと活動の拠点を移し、元ハリウッド・スターの肩書を看板にしてマカロニ・ウエスタンやホラーなどのB級映画で食いつないでいた。その中の一本が、スペインのフアン・ピケール・シモン監督による血みどろスプラッターの迷作『ブラッド・ピーセス/悪魔のチェーンソー』('82)だ。これはパードムと同じくイタリアを拠点にしていたアメリカ人プロデューサー、ディック・ランドールが製作したスペインとの合作映画で、その露骨過ぎる残酷描写から意外にも興行的にはまずまずの成功を収めた。そこで、味をしめたランドールは再びスプラッター映画を手掛けることとなり、同作で犯人役を演じたエドマンド・パードムに出演のオファーを打診したところ、条件付きでOKの返事が来た。その条件というのが、今度は監督もやらせてくれというものだったのである。

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もともとホラー映画が大好きだったというパードム。俳優としては長いキャリアを誇るベテランだが、しかし監督としては素人も同然だ。その辺をプロデューサーのランドールがどう考えていたのか定かではないものの、ひとまず実際に演出をやらせてみたところ、これが見事なまでに無能だったようだ。撮りあがったフィルムの内容があまりにも酷かったため、ランドールは代役を立てて作り直すことに。本作の脚本を書いたデレク・フォードが低予算映画の監督としても実績があることから、彼に作品の修正を任せることにしたランドールだったが、蓋を開けてみるとフォードはアルコール中毒で役立たずだった。すぐに彼はクビを言い渡され、本来は編集者として雇われたレイ・セルフェが監督を兼ねることとなり、さらにはカルト・ホラー『Killer's Moon』('78)で知られるアラン・バーキンショウ監督が追加シーンの脚本を執筆。エドマンド・パードムの出演シーン以外は概ね撮り直しされ、新たなゴア・シーンや補足シーンが撮影された。そして、それらの素材をもとのフィルムと混ぜ合わせた結果、まるで別々の映画のフィルムを寄せ集めてきたかのような作品に仕上がってしまったのだ。

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なので、シーンとシーンのつなぎがブツ切り状態、時系列の流れがまるでちぐはぐ、殺人シーンが突然始まって突然終わる、唐突な設定の追加や変更はセリフの説明だけで済ませるなんてのは当たり前(笑)。一本のまとまった映画作品としての体をなしていない。まるでサイレント時代の映画のように、固定されたカメラの前で役者が芝居をするだけのシーンも少なからず見受けられる。恐らくエドマンド・パードムの演出なのだろうと想像されるが、もはや中学生や高校生の自主製作映画レベルだ。役者の演技もこれみよがしに大袈裟。一部のシーンは現場で音録りをしなかったのか、アフレコで処理されているのだが、ろくにセリフと口の動きが合っていない。スプラッターシーンはそれなりにいろいろと用意されているが、特殊メイクのクオリティは粗雑そのもの。ただ、あまりにもヘッポコな出来栄えなので、笑ってバカにするという意味では存分に楽しめるかもしれない。

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犯人役のアラン・レイクはイギリスを代表するグラマー女優ダイアナ・ドースの旦那だった人。その妻がガンで亡くなったショックから、本作の劇場公開直前に自殺を遂げてしまった。ヒロイン役にはジェーン・フォンダと瓜二つの英国女優ベリンダ・メイン。エイリアンの続編を勝手に名乗ったイタリア産SFホラー『エイリアンズ』('80)にも主演していた人だ。その恋人クリフを演じているのは、ドイツ映画『レッスンC』('78)でナスターシャ・キンスキーの相手役をやっていたジェリー・サンドキスト。そして、ホラー&SF映画の女王であるカルト女優キャロライン・マンローが本人役でゲスト出演し、犯人に追われたサンタクロースが迷い込むライブハウスで歌声を披露している。歌手として何枚かシングルを出しているマンローだが、映画の中で歌うのは極めて珍しい。

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なお、先述したようにイタリアで映画を作っていたディック・ランドールだが、当時はロンドンへ移住したばかりだったことから、本作はイギリス資本で製作されている。プロデュース作品には必ずカメオ出演している彼は、ここでもケイトの父親が殺されるパーティー・シーンのゲストとして登場。酒樽のような巨体をこれでもかと揺らしながらディスコを踊っている。

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評価(5点満点):★☆☆☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Stereo/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:86分/発売元:Mondo Macabro (2011年)
特典:メイキング・ドキュメンタリー(52分・1984年制作)/ドキュメンタリー「The Wild Wild World of Dick Randall」(32分)/オリジナル劇場予告編/プロダクション・ノート/スタッフ&キャスト・バイオグラフィー






by nakachan1045 | 2016-12-25 02:15 | 映画 | Comments(0)

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