なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「姿なき訪問者」 Invasion (1965)

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監督:アラン・ブリッジズ
製作:ジャック・グリーンウッド
原案:ロバート・ホームズ
脚本:ロジャー・マーシャル
撮影:ジェームズ・ウィルソン
特撮:ロニー・ホワイトハウス
   ジャック・カイン
   スタン・シールズ
音楽:バーナード・エビングハウス
出演:エドワード・ジャッド
   谷洋子
   ヴァレリー・ギアロン
   リンドン・ブルック
   エリック・ヤング
   ツァイ・チン
   バリー・インガム
   アンソニー・シャープ
   グリン・ヒューストン
   アン・キャッスル
イギリス映画/78分/モノクロ映画




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<あらすじ>
イギリスのとある田舎道。初老の紳士ブラックバーン氏(アンソニー・シャープ)の運転する車が、霧の中から突然姿を現した男性を轢いてしまう。慌てて近隣の病院へ男性を運び込んだブラックバーン氏は、警察のドレイコット巡査(グリン・ヒューストン)に事故当時の状況を説明するが、話を聞いた巡査は首を傾げる。その日、近隣で霧など一切確認されていないからだ。
すぐに男性(エリック・ヤング)の手当てを始めるヴァーノン医師(エドワード・ジャッド)。すると、血液型を確認していた同僚の女性医師ハーランド(ヴァレリー・ギアロン)から驚くべき事実を知らされる。男性の血液は人間のものではない、そればかりか地球上にまだ確認されたことのない未知のものだったのだ。さらに、レントゲン検査では男性の脳に円盤型の物体が埋め込まれていることも判明する。
この男性はいったい何者なのか。見たところアジア人のような顔立ちだったが、中国系の看護婦リン(ツァイ・チン)は「中国人にも日本人にも見えない」と述べる。着ている服も、ゴムのような奇妙な素材で出来ている。すると、意識を取り戻した男性はおもむろに語り始めた。自分はリストリアン星から来た宇宙人だというのだ。宇宙船が地球圏内で故障し、その混乱に紛れて2人の囚人が脱走したことこから、追跡していた最中に車とぶつかってしまったというのだ。
その頃、近隣ではアジア系の顔をした2人の女性が、何かを探しているかのように徘徊していた。自宅に戻ったブラックバーン氏はガレージで物音がするのに気づき、懐中電灯を照らしながら調べようとすると、突然現れた2人の女性に驚き心臓発作で死んでしまう。女性たちは二手に分かれ、一人が病院へと近づいた。
一方、レーダーで不審な飛行物体を確認していた軍隊は、森の中に巨大な宇宙船らしきものの不時着跡と、さらに乗り捨てられた小型ロケットを発見する。ドレイコット巡査から身元不明の男性が事故に遭ったと聞いたマンキャスター大佐(バリー・インガム)は、それが宇宙人ではないかと睨んで病院へ駆けつける。
病院ではカーター院長(リンドン・ブルック)が、この世紀の大発見を有効活用しようと策を練っていた。すると、辺りの気温が不自然に急上昇し、酸素が薄くなってきていることにヴァーノン医師が気付く。それは宇宙船の影響だった。このままでは医師も患者も高温と酸欠で死んでしまう。さらに、自宅へ戻ろうとしたカーター院長の車が見えない壁に激突して大破。院長は死んでしまう。病院の周囲は見えないシールドで囲まれていたのだ。
再びリストリアン星人の男性に説明を求めると、実は逃亡した囚人は彼自身だと打ち明けた。リストリアン星は冷酷非情な女性が支配しており、彼は無実の罪で捕らわれたのだという。自分が宇宙船へ戻れば元通りになる。しかし、そのためには特殊なベルトが必要なのだが、事故に遭った際にブラックバーン氏の車に残してきてしまった。
ベルトを取り戻すには病院の外へ出なくてはならない。だが、病院はシールドで覆われている。水道が通じていることに気付いたヴァーノン医師は、透明シールドが地表しか覆っていないと考え、地下の下水道をたどって外へ出ることを思いつく。しかしその頃、先ほどの女性、つまりリストリアン星人のリーダー(谷洋子)が病院へと足を踏み入れ、看護婦のふりをして男性を探していた…。

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古くは早川雪洲に三船敏郎、最近では渡辺謙に真田広之と、海外で活躍する日本人の男優は少なくない。だがその一方で女優はというと、かつて京マチ子や岸恵子などが数本の外国映画に出演した程度で、本格的に成功したと言えるのはナンシー梅木と菊地凛子の2人くらいのものだ。しかし、そんな中で海外を拠点に50本以上の映画やドラマで活躍し、世界を股にかけて引っ張りだこだった日本人の人気女優が存在した。それが谷洋子である。

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今ではすっかり忘れられてしまった存在の谷洋子。日本よりも海外で人気が高かったこともあり、彼女の名前を知っている日本人は多くないだろう。父親がフランスの日本大使館関係者だったことから、1928年にパリで生まれて日本で育った谷は、戦後にソルボンヌ大学へ留学するため再びパリへ赴いたものの、そこでショービジネスの世界に魅了される。ナイトクラブのダンサーとなった彼女は、かの有名な超高級ストリップクラブ、クレイジー・ホースにも出演し、巨匠マルセル・カルネに見出されて映画にも出るようになった。カンヌ映画祭で知り合った谷口千吉監督や黒澤明監督の誘いで帰国し、東宝の映画に何本か出演するものの再びフランスへ。イタリアで撮影されたハリウッド映画『静かなアメリカ人』('58)に抜擢されたことから国際的にも注目され、以降フランスのみならずイギリスやイタリア、ハリウッドの映画に次々と出演して人気を博した。その多くは色添え的な役柄だったが、中にはダーク・ボガードの相手役を演じた文芸映画『風は知らない』('58)のような作品も。決してずば抜けて美人というわけではないし、演技も格別上手かったわけでもないのだが、いかにもオリエンタルな顔立ちは外国人好みだったろうし、なによりも当時の欧米ではアジア系のスター女優が殆どいなかったために重宝されたのだろう。

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'60年代半ばには人気も急落してしまう谷洋子だが、その後期の出演作に当たるのが、このイギリス映画『姿なき訪問者』。言うなれば、異星人とのファースト・コンタクトを描いたSFサスペンスだ。病院に担ぎ込まれた身元不明の男性患者が、実は地球から遠く離れたリストリアン星から来た異星人だと判明。次々と不可解な異常現象が発生し、外界から遮断された病院内の人々は絶体絶命の危機に陥る。事態を打破するためには、異星人の男性を宇宙船へ戻さねばならない。しかし、彼を捕えようとする悪い女性異星人が病院内に紛れ込んでいた。その女性異星人を演じているのが谷洋子というわけだ。

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SF映画としては極めて地味な作品である。舞台の大半は病院内外。特撮シーンも最初と最後にチョロっと出てくるだけだ。設定には辻褄の合わない部分も多いし、そもそもストーリーのスケールが小さすぎ。よくよく考えたら、エイリアンがやってきて去っていくだけの話なんだよね(笑)。とりあえず、追手の女性異星人が本当に悪者なのか、それとも怪我をした男性異星人が本当は悪者で噓をついているだけなのかという、極めて他愛のないサスペンスもどきの要素は含まれているものの、それ以外は極めてのどか。異常現象の危機感も殆ど伝わってこない。ノリとしては『ミステリー・ゾーン』の1エピソード、それもあまり出来が良くない部類のヤツを無理矢理伸ばして長尺にしたような感じだ。

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ただ、作品全体を覆うちょっと不気味な雰囲気は悪くない。霧に包まれた暗い夜の森、人気のない郊外の住宅地を彷徨う異星人の影など、ホラー映画のようなイメージの数々がダークなムードを醸し出す。監督はロバート・ショウとサラ・マイルズが主演した日本未公開作『The Hireling』('73)でカンヌ国際映画祭のパルムドールを獲得したアラン・ブリッジズ。ソフィア・ローレンとリチャード・バートンの主演でリメイクされた『逢いびき』('74)も彼の作品だ。撮影監督はSF映画『宇宙原水爆戦・人工衛星X号』('56)のジェームズ・ウィルソン。イギリスの国民的SFドラマ『ドクター・フー』の脚本家として有名なロバート・ホームズが原案を手掛け、『ツイステッド・ナーブ 密室の恐怖実験』('68)や『スクリーミング/夜歩く手首』('73)のロジャー・マーシャルが脚本を書いている。

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で、谷洋子はクレジット上だと特別出演の扱いで、役どころとしては異星人のリーダーというストーリーの鍵を握る重要なポジションだが、全編を通して出番はあまり多くない。最後も逃げた脱走犯の男を追って消えたっきり。恐らく予算の都合で宇宙船のセットが組めなかったのだろう。クライマックスは脱走犯の乗った小型ロケットを宇宙船が撃墜するわけだが、その様子をカメラがロングショットで捉えているだけなので、宇宙船の中で指揮を執っているのが彼女なのかどうか、そもそも宇宙船に乗っているのが誰なのかすら分からないままジ・エンドとなる。

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主演はヴァーノン医師を演じているエドワード・ジャッド。『The Day The Earth Caught Fire』('61)や『H・G・ウェルズのSF月世界探検』('64)など、イギリス産SF映画の主演スターとしてお馴染みの俳優だ。ハーランド医師役のヴァレリー・ギアロンは、『1000日のアン』('68)でジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド扮するヒロイン、アン・ブーリンの姉メアリーを演じていた女優さん。また、ブラックバーン氏役のアンソニー・シャープはキューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』('71)に『バリー・リンドン』('75)、さらには007番外編『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』('83)など数多くの映画に出演した名脇役俳優だが、コアなホラー映画ファンにとっては、ピート・ウォーカー監督の傑作カルト映画『魔界神父』('75)のサイコパスな老神父役で有名だろう。

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さらに注目なのは、病院の中国系看護婦役として出演しているツァイ・チン。ツァイ・チンといえばなんといっても、クリストファー・リーが謎の世界的犯罪王フー・マンチューを演じた007風スパイアクション映画『怪人フー・マンチュー』('65)シリーズの、フー・マンチューの娘にして父親も顔負けの悪女リン・タン役で知られる中国系イギリス人女優。彼女は007シリーズにも縁が深く、『007は二度死ぬ』('67)で殺し屋のボンドガールを、そのおよそ40年後の『007/カジノ・ロワイヤル』('06)では高級カジノに出入りするプロのギャンブラー、マダム・ウーを演じている。イギリスを代表する中国系女優だ。本作ではクールなデキる看護婦を演じており、出番は少ないものの強く印象に残る。あの特徴的なベビーボイスも健在だ。

※imdbでは劇場公開日時が1966年とだけ記されているが、英国版のオフィシャルDVDの裏ジャケには1965年10月と、より具体的な日付が表記されているので、ここではそちらを信頼することにした。

評価(5点満点):★★☆☆☆

評価(イギリス盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(1.66:1)/音声:1.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:78分/発売元:Network/Studiocanal (2014年)
特典:オリジナル劇場予告編/スチル・ギャラリー/プロモーション用素材(PDF)




by nakachan1045 | 2016-12-26 01:11 | 映画 | Comments(0)

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