なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「別れのタンゴ」 Farewell Tango (1949)

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監督:佐々木康
企画:吉村公三郎
脚本:長瀬喜伴
撮影:原田雄春
音楽:万城目正
出演:高峰三枝子
   若原雅夫
   高杉妙子
   佐分利信
   坂本武
   清水一郎
日本映画/86分/モノクロ作品




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<あらすじ>
父親を亡くした大富豪の令嬢・花村恵美子(高峰三枝子)は人並み外れた歌の才能があり、なおかつ美しい容姿にも恵まれていることから、レコード会社のディレクター、村田(清水一郎)から再三に渡って歌手デビューの誘いを受けていたが、頑なに断り続けていた。それでもなお引き下がらない村田の熱意、さらには亡き父から後見人に指名された、いわば実質的な婚約者である大井泰介(佐分利信)の勧めもあって、ようやくレコード会社との専属契約を結ぶことにする。
その晩、キャバレーへ遊びに出かける恵美子と村田。すると、店の用心棒として働くヤクザ者、宮田浩三(若原雅夫)が、酒に酔って騒ぎ始める。もともと前途有望なバイオリニストだった宮田だが、戦争で指に怪我をしてキャリアを絶たれてしまった。日頃から不満の鬱積した彼は、酔った勢いで自分の書いた楽曲を店で演奏しようとするのだが、他の用心棒たちに取り押さえられ叩き出されてしまう。その楽譜を拾った村田は絶対にヒットする曲だと確信し、これを恵美子のデビュー曲にしようと決める。
レコード会社上層部もすっかり乗り気となった。しかし、さすがに拾った譜面だとは言い出せない村田は、作曲者の頼みだとウソをついて、恵美子に自作の曲だと偽るよう頼み込む。事情を知らない恵美子は、戸惑いながらも引き受けた。
かくして、レコード化された「しのび泣くブルース」はたちまち大ヒットを記録し、恵美子は一躍トップスターとなった。しかし、ラジオでその曲を聞いた宮田はすぐに自作だと気付き、恵美子の楽屋に押しかけて激しく抗議する。驚いた恵美子は村田を呼ぼうとするが、それを逃げようとしているものと勘違いした宮田は逆上し、恵美子に暴力を振るってしまう。恵美子は頬に5センチの傷を負い、宮田は傷害罪で刑務所に入れられるのだった。
事の次第を初めて知った恵美子は、宮田を救うためにも世間に事実を公表しようと考えるが、保身のことしか頭にない村田は絶対に口外してはならない、さもないと貴女は破滅すると釘をさす。良心の呵責に苛まれた恵美子は刑務所の宮田に差し入れを送り続けるが、宮田の幼馴染で彼を愛する杉浦富子(高杉妙子)に偽善者だと責められ、さらに深く傷つくのだった。
彼女の将来を心配する大井からも、今さら世間に公表したって誰も得をしないと説得される恵美子。だが意を決して刑務所の宮田を訪ね、自分はどうなっても構わないので世間に事実を公表して欲しいと告げる。音楽大学の後輩でもある彼女を激しく憎んでいた宮田だが、その言葉に少なからず心を動かされる。
やがて出所した宮田を出迎えた恵美子。詳しい事情を知った宮田は、もう恵美子のことを恨んではいなかった。そこで、恵美子はせめてもの罪滅ぼしにと、彼に自宅の部屋や楽器を提供して作曲活動に専念して欲しいと願い出る。やがて宮田の書いた『別れのタンゴ』が恵美子の新曲として採用され、さらには彼女が初主演する映画の主題歌にも決まる。いつしか愛し合うようになった2人だったが、しかし上流階級の令嬢で人気スターの恵美子と、しがない作曲家の宮田では、あまりにも身分が違い過ぎた…。

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元祖・歌う映画女優として、戦前より松竹の誇る看板スターだった高峰三枝子。終戦からほどなくして、主演のみならず自ら主題歌も歌った一連の歌謡映画で続々とヒットを飛ばすわけだが、その中の一つがこの昭和24年に劇場公開された『別れのタンゴ』だ。

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監督はデビュー作『母を尋ねて』('36)以来、『純情二重奏』('39)や『懐かしのブルース』('48)などで組んできた佐々木康。音楽も同じく万城目正で、企画には『暖流』('39)や『嫉妬』('49)で組んだ吉村公三郎監督という、高峰三枝子にとってはお馴染みの布陣だ。役柄も歌手の才能に恵まれた良家の令嬢。父親と死に別れたという設定も含め、高峰自身の生い立ちやイメージがそのまま反映されており、彼女のために用意された純然たるスター映画であることがよく分かる。

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で、ストーリーはというと、これまた古典的な少女漫画の王道を行くような、身分違いの男女の哀しい恋愛を描いたコッテコテの大衆向けメロドラマ。不運な偶然と誤解が生んだ盗作騒動によってヒーローがヒロインに一方的な恨みを抱く、という導入部分はちょっとばかり捻りが効いているものの、お互いにわだかまりが解けてからの清く正しく美しい純愛ロマンス、僕のような卑しい身分の男にお嬢様を幸せにする資格はないと身を引くヒーロー、そして愛する人の書いた曲を歌いながら女の幸せよりも歌手として生きる道を選ぶヒロイン。いやー、これがいわゆる松竹大船調ってやつなのかどうかは分からないけれど、清々しいくらいに奇をてらわない展開だ。

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唯一引っかかるのは、盗作騒動&傷害事件の原因を作ったいい加減なレコード会社ディレクターが何一つ責任を取らないばかりか、そのまま何事もなかったようにヒロインの担当ディレクターを続けるということぐらいか。基本的に悪意を持った人は出てこないというスタンス。それもまた、古き良き昭和の大衆娯楽映画ならではなのかもしれない。当時は敗戦から4年余り。洋風の立派な大豪邸に暮らし、夜な夜な高級キャバレーでカクテルを楽しみながらワルツを踊るブルジョワな恵美子の暮らしは優雅そのものだが、しかし一方で浩三や妙子ら貧しい庶民の暮らしにはいまだ戦争の深い傷跡が残されている。その辺りの歴然としたギャップは今見ると興味深いだろう。美空ひばりの『悲しき口笛』や『東京キッド』で有名な万城目正の書いた主題歌『別れのタンゴ』も情感たっぷりで印象的だ。

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相手役の浩三には『想い出のボレロ』('50)や『情熱のルムバ』('50)でも高峰三枝子と共演する若原雅夫。原節子や月丘夢路、高峰秀子などスター女優の相手役を数多く演じた二枚目スターだ。で、松竹三羽烏の一人としてトップスターだった佐分利信は、今回は陰でヒロインを見守るという二番手の役柄。ちょうど当たり役に恵まれず低迷していた時期で、この直後に独立プロの芸研プロダクションに加わって再び戦前の名声と輝きを取り戻すことになる。

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浩三の幼馴染で秘かに彼を慕うけなげな女性・富子には、『東京キッド』('50)で美空ひばりの母親代わりとなる女性を演じた高杉妙子。あちらも役名は富子だった。なんだろ、富子って感じの顔だったのだろうか(笑)。もともとは歌謡曲の歌手だったらしく、テレビでサザエさん役を演じたこともあるらしいが、残念ながら筆者にはあまり馴染みがない。見た目的には水戸光子にソックリだなとは思うのだが。また、戦前から戦後にかけて小津安二郎監督作品の常連だった名バイプレイヤー、坂本武が浩三の叔父役で顔を出しているが、これといった出番はほとんどない。

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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.37:1)/音声:1.0ch Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:86分/発売元:コアラブックス/松竹
特典:なし

by nakachan1045 | 2017-01-08 18:35 | 映画 | Comments(0)

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