なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

「大酔侠」 Come Drink With Me (1966)

f0367483_01013386.jpg
監督:キン・フー
製作:ランラン・ショウ
脚本:キン・フー
   エラ・ヤン
撮影:ホー・ランシャン(西本正)
美術:ジョンソン・ツァオ
武術指導:ハン・インチェ
音楽:チョウ・ランヒン
出演:チェン・ペイペイ
   ユエ・ホア
   チャン・ホンリエ
   リー・ヤンチュン
   ヤン・チーチン
   ファン・イ
   ワン・チュン
香港映画/94分/カラー作品




<あらすじ>
明朝時代の中国。逮捕された盗賊幹部を護送中の一行が、仲間を奪還せんとする盗賊一味の襲撃を受け、囚人を奪われたばかりか護送の責任者である総督の息子チャン(ワン・チュン)まで捕虜となってしまう。盗賊を率いるのは、全身白づくめで顔にも白粉を塗った副首領ティン・チュンユ(チェン・ホンリエ)。彼は総督に対し、チャンを返して欲しければ投獄中の首領を解放するよう要求する。
しかし、無法者たちの要求に応えるつもりなどない総督は、武術の名手として悪人たちにも恐れられている金燕子=チン・イエンツ(チェン・ペイペイ)を差し向ける。男の格好をしている金燕子だが、その正体は実は女性。しかも総督の娘でチャンの妹だった。
敵地の宿屋で盗賊たちに囲まれるものの、卓越した武術の技で撃退する金燕子。その様子を地元の酔っ払い、ファン・ターペイ(ユエ・ホア)が見つめていた。そのまま宿屋で一夜を明かすことにした金燕子のイタズラを仕掛けるファン・ターペイ。だが、それは盗賊たちの夜襲から彼女を守るためだった。さらに翌朝、乞食の子供たちを連れて宿屋で日銭稼ぎの歌を披露したファン・ターペイは、その歌詞に散りばめたメッセージで盗賊たちの根城を金燕子に教える。それは近くの寺だった。
たった一人で寺へと乗り込む金燕子。盗賊たちと戦う彼女だったが、ティン・チュンユの扇子から飛び出した毒針を胸に受けてしまい、またしてもファン・ターペイに助けられて彼の隠れ家に匿われる。
実は、ファン・ターペイの正体は「酔侠」と呼ばれる武術の達人だった。彼は青竹流の門下生だったのだが、兄弟子リャオコン大師(ヤン・チーチン)が師匠を殺して一門を乗っ取ってしまったのだ。しかし、正当な継承者はファン・ターペイであり、その象徴である青竹は彼が持っている。ファンは師匠の仇であるリャオコン大師を、リャオコン大師は青竹を持つファン・ターペイを。お互いがお互いを宿敵として探していた。そして今、ファンは盗賊一味の協力者がリャオコン大師であることを知り、リャオコン大師もファンが金燕子に力を貸していることを知る。
やがて、盗賊との人質交換が行われることに。金燕子とファン・ターペイは盗賊たちを出し抜くための罠を用意していたのだが…?


チャン・チェ監督と並ぶ中国時代劇=武侠映画の父として、ツイ・ハークからアン・リー、タランティーノに至るまで、様々な映像作家に多大な影響を与えた香港・台湾映画の巨匠キン・フー。それまで比較的のどかな時代劇だった伝統的武侠映画に現代的アクションのダイナミズムとバイオレンスを持ち込み、世界的な人気ジャンルへと育て上げたわけだが、そんな彼にとって初めての武侠映画となったのが本作だ。

ストーリーは極めてシンプル。盗賊一味に兄を誘拐された女剣士の奪還劇と、兄弟子に師匠を殺された武術家の復讐劇が交錯する。男装の麗人に扮したヒロイン、酔っ払いの道化者という仮面を被ったヒーロー、顔面白塗りで白装束の奇天烈な極悪人など、それぞれに強烈な個性の際立つ登場人物を含めて非常にマンガ的だ。それゆえ、時としてバカバカしくも思えるような瞬間や展開があることは否めないものの、そのような荒唐無稽を補って余りあるのは、ロマンティックで詩情溢れるキン・フー監督の演出である。美しい月夜の晩に屋根の上を飛び回る幻想的な追跡シーンなどはその真骨頂だろう。後の『スウォーズマン』や『グリーン・デスティニー』ほど、ファンタジーに振り切っていないところも逆に良い。また、正確な時代考証に基づく衣装や小道具、セットなどのリアリズムも、ある種の格調高さを作品に与えている。見栄えの派手さや奇抜さを重視した数多の武侠映画、カンフー映画との大きな違いだと言えよう。

もちろん、最大の見せ場は華麗なチャンバラ・アクションだ。まるで京劇の舞踊を思わせる優雅な殺陣は、ブルース・リーやジャッキー・チェン以降のカンフー・アクションを見慣れた映画ファンの目には迫力不足と映るかもしれないし、いかにも振り付けという嘘くさい印象は否めないものの、しかし”舞うように戦う”スタイリッシュなアクションこそがキン・フー監督の目指したもの。そこへ、腕を切り落とすような血みどろバイオレンス描写が盛り込まれることで、ファンタジーとリアリズムの絶妙なバランスが保たれる。宿屋の酒場や寺の境内などの巨大セットを縦横無尽に駆け巡り、スコープサイズのワイドスクリーン画面を存分に生かしたカメラワークも素晴らしい。本作ではまだワイヤー・ワークは導入されていないが、それでも十二分にダイナミックだ。

そして、なんといっても魅力的なのは金燕子を演じる女優チェン・ペイペイである。美しくてチャーミングでクール。もともとダンスの素養があり、ミュージカル映画でも活躍した人だけあって、アクションの演技にも切れがあって非常に身軽だ。もちろん、このダンスを基礎とした非現実的なスタント・アクションには賛否両論あろうとは思うが、キン・フー監督作品の世界観の中では大正解。なにより、その後キン・フー映画のヒロインとなる台湾女優シュー・フォンと比べてもダントツに可愛い。

ちなみに、子役時代のジャッキー・チェンが出ているとも言われているが、本編を見てもそれらしき少年は見当たらず。実際、チェン・ペイペイもその説を否定しているようなので、恐らく単なる噂に過ぎないのだろう。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:北京語/字幕:日本語/地域コード:ALL/時間:94分/発売元:ツイン/パラマウント・ジャパン
特典:オリジナル劇場予告編/ニュートレーラー

by nakachan1045 | 2017-01-23 10:29 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

最新の記事

「Casa d'appunt..
at 2017-12-18 06:18
「殺し屋人別帳」 Kille..
at 2017-12-17 13:00
「フライトナイト」Frigh..
at 2017-12-17 11:57
「デボラの甘い肉体」 Il ..
at 2017-12-14 00:03
「La morte risa..
at 2017-12-13 00:30

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター