なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「白い悪魔の囁き/ドクター・デス」 Doctor Death (1973)

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監督:エディ・シータ
製作:エディ・シータ
脚本:サル・ポンティ
撮影:エミル・オスター
   ケント・L・ウェイクフォード
美術デザイン:エド・グレイヴス
音楽:リチャード・ラサール
出演:ジョン・コンシダイン
   バリー・コー
   シェリル・ミラー
   スチュワート・モス
   レオン・アスキン
   フローレンス・マーリー
   ジョー・モロー
   モー・ハワード
アメリカ映画/89分/カラー作品




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あらすじ>
最愛の妻ローラ(ジョー・モロー)を交通事故で亡くした実業家フレッド(バリー・コー)。今わの際に「必ずあなたのもとへ戻って来る」と呟いたローラの言葉が頭から離れない彼は、妻をこの世に蘇らせようと霊媒師のもとで降霊会に参加したり、カルト教団の門を叩いたりするが、いずれも詐欺まがいの偽物だった。
そんなある日、彼は輪廻転生の相談に乗るという新聞広告を目にする。広告主はタナ(フローレンス・マーリー)という謎めいた女性。彼女はドクター・デス(ジョン・コンシダイン)という魔術師の主催する秘密集会へフレッドを連れていく。ドクター・デスは死者の魂を別の肉体へ移して生き返らせることが出来るという。
ステージには事故で顔が醜く変形してしまった若い女性。ドクター・デスと助手ソー(レオン・アスキン)は彼女を観衆の目の前で殺害し、その魂を別に用意してあった若く美しい女性の死体へと移す。にわかに信じがたい光景に驚くフレッドは、ドクター・デスの秘術が本物であることを認めつつも、「これでは殺人と変わらないじゃないか」と嫌悪感を露わにしてその場を立ち去るのだった。
だが、その帰り道に妻ローラの亡霊と遭遇したフレッドは考えを改め、ドクター・デスに妻の蘇生を相談する。死んでから数日が経過しているため、もはや妻の魂はあの世へと行っており、別の体へ移すことは不可能だという。その代わり、別人の魂をローラの肉体へ移すことで生き返らせることは可能だとドクター・デスは語る。それでは結局、妻の姿をしただけの別人ではないか?と落胆するフレッドだったが、肉体の記憶や癖などはそのまま受け継がれる、だからローラと変わらず彼女を愛せるはずだと説得するドクター・デス。その言葉にフレッドは心を動かされる。
ドクター・デスは用済みになった愛人タナを殺して、その魂をローラの肉体に移植しようとする。ところが、なぜかローラの肉体は新しい魂を受け付けない。他人の命を犠牲にしてまで妻を蘇らせることに改めて抵抗感を覚えたフレッドは、なかったことにしてくれとドクター・デスに断りを入れる。
しかし、ドクター・デスは諦めきれなかった。このようなことは過去に例がなかったからだ。次々と行きずりの若い女性を殺害しては、フレッドに無断でローラの蘇生を試みるドクター・デス。しかし、ことごとく失敗してしまう。
その頃、フレッドは心優しくて献身的な秘書サンディ(シェリル・ミラー)を愛するようになっていた。それを知ったドクター・デスは、フレッドと相思相愛のサンディの魂であれば、ローラの肉体も受け入れるのではないかと考える…。

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ちょっとばかり奇妙なオカルト映画である。ノリは古き良き'50~'60年代の低予算ホラー。ストーリーはまるで荒唐無稽だし、設定はどこまでも非論理的でバカバカしい。『ローズマリーの赤ちゃん』('68)や『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』('68)など以降、リアリズムを重視したモダン・ホラーが主流となりつつあったことを考えると、恐らく'73年当時の観客ですら大層古臭く感じたであろうことは想像に難くない。しかも、アメリカでの劇場公開は『エクソシスト』のまさに直前。同じ年に作られた映画とは思えないくらい、本作はその世界観も演出スタイルも極めて前時代的だ。その一方、露骨で血生臭いスプラッター描写や下世話なエロティシズムはまさに'70年代の産物。どこかハーシェル・ゴードン・ルイスの『血の魔術師』('72)を彷彿とさせる雰囲気もある。このちぐはぐなミスマッチが、独特の奇妙な味わいを生んでいると言えよう。

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監督のエディ・シータは、'30年代よりコロムビア映画やモノグラム映画で低予算プログラム・ピクチャーの助監督を務めてきた人物。これが唯一の監督作だった。撮影当時は59歳。なるほど、演出のスタイルやセンスが古臭くなってしまうのも無理はなかろう。なんたって、ティム・マッコイ主演のB級ウェスタンやベラ・ルゴシ主演のB級ホラーなどを長年作ってきた人なのだから。幽体離脱した死者の魂がクルクルと優雅に舞い踊りながら新しい肉体に乗り移るシーンなんか、もう、ね、作り手が大真面目だと分かっているからこそ、なおさらのこと大爆笑ですよ。白いドレスを無駄にヒラヒラさせた女幽霊っていうコンセプトもベタ過ぎて失笑もの。しかし、その時代錯誤なホラー・センスこそが、本作の意図せずして持ち合わせた面白さでもある。まあ、1ミリたりとも怖くはないのだけれどね。

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しかし、やはり最大の見どころは主人公ドクター・デスの強烈なキャラだろう。1000年以上も生きながらえる魔術師にして錬金術師。輪廻転生の謎を解き明かした彼は、肉体の寿命が近づくと他人を殺してその肉体を奪う。それを繰り返すことで、永遠の命を手に入れたというわけだ。そして、その秘術をビジネスにして金儲け。他言無用を条件として秘密裏に顧客を集めては、多額の報酬を見返りに輪廻転生の秘術を施している。といっても、本編では「我は汝に命ずる!その体へ入れ!」って幽霊に向かって大声で叫んでいるだけ(笑)。輪廻転生の秘術とやらがどういう仕組みなのかは最後までさっぱり分からない。まあ、作り手としても説明のしようがないからね…。ってことで、かなり大雑把なキャラクターではあるものの、演じるジョン・コンシダインの濃厚でクドい顔つきとコッテコテに大仰な演技のおかげもあって、かなりインパクトの強い存在感を放っている。

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で、このドクター・デスという人、かなり意固地な性格をされている様子で、依頼人フレッドの妻ローラの死体が魂の移植を受けつけないことに納得がいかず、「鳴かぬなら鳴かせてやろうホトトキズ」とばかりに、行きずりの女性を片っ端から殺しては執念深く移植を試みる。ストーリーの後半はずーっとその繰り返しだ。それはそれで、スラッシャー映画的な面白さはあるものの、だんだんと飽きてくるというのも正直なところ。上映時間を稼いでいるだけっていうのも見え見えだしね。しかも、なぜかこのローラの死体、亡くなってから何日も経過しているというのに全く腐敗が進まない。じゃないとストーリーが成立しないので仕方ないと言えば仕方ないのだけれど、そういう意味でご都合主義的な突っ込みどころは満載だ。

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一方、先述したようにスプラッターな残酷描写はなかなかのもの。どうやらドクター・デスの血液というのは強度な酸性らしく、彼を殺そうとナイフで刺して返り血を浴びたチンピラの顔面が解けて骨になるシーンは、『レイダース/失われた聖櫃<アーク>』('82)のクライマックスを彷彿とさせるような出来栄え。ま、ルーツは『吸血鬼ドラキュラ』('57)なんだろうと思うけれど。また、ドクター・デスに殺された女性の生首もかなりリアルな仕上がりだ。総じて特殊メイクには手間暇がかけられているという印象。ただ惜しむらくは、エロ描写がいまひとつ地味ってことくらいか。せいぜい下着姿の美女がセクシー・ポーズを取る程度。やはりこの手の映画は最低限オッパイポロリくらいはないといかんでしょ。
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ドクター・デス役のジョン・コンシダインはキリストの生涯を描いたスペクタクル大作『偉大な生涯の物語』('65)の使徒ヨハネ役で知られる俳優。ロバート・アルトマン監督との繋がりが強く、『ウエディング』('78)では脚本にも参加しているほか、アルトマン製作の『ロサンゼルス・それぞれの愛』('76)や『レイト・ショー』('77)にも出演している。また、ポール・ニューマン主演作でもたびたび脇役として顔を出していた。名前を聞いてもピンとこないし、どんな役をやっていたのかも思い出せないけれど、確実に顔は見たことがあるというタイプの名バイプレイヤーだ。

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亡き妻ローラ恋しさのあまりドクター・デスと関わってしまうフレッド役には、全米でセンセーションを巻き起こした『青春物語』('57)でハイスクールで一番のモテ男ロドニーを演じたバリー・コー。その秘書サンディ役には、60年代の人気テレビシリーズ『密林王国ダクタリ』('66~69)で主人公の獣医トレイシーの娘ポーラ役で人気を博したシェリル・ミラーが扮している。

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そのほか、フレッドの妻ローラ役にはウィリアム・キャッスル監督の『13ゴースト』('60)やレイ・ハリーハウゼンの『ガリバーの大冒険』('60)で売り出された女優ジョー・モロー、ドクター・デスの助手で謎めいたオバサマ、タナ役にはカルトSFホラー『Queen of Blood』('66)の吸血エイリアン役で有名なフローレンス・マーリー。さらには、あの伝説的な喜劇トリオ、三バカ大将ことスリー・ストゥージズのメンバー、モー・ハワードがワン・シーンで顔を出している。なお、脚本を手掛けているサル・ポンティは、ジョージ・パル監督の特撮ファンタジー『謎の大陸アトランティス』('61)に主演していた俳優アンソニー・ホールのこと。こちらが本名だったようだ。

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ちなみに、興味深いのは本作を配給した会社がシネラマだということ。そう、あのシネラマである。IMAXの原点とも言える超巨大サイズのワイドスクリーン、その名もシネラマを開発した会社だ。このシネラマ方式は『西部開拓史』('62)や『おかしなおかしなおかしな世界』('63)、『バルジ大作戦』('65)、『2001年宇宙の旅』('68)など数々の名作映画に採用されたが、その一方でシネラマは『ジャワの東』('68)や『ひとりぼっちの青春』('69)、『わらの犬』('71)などを自社で配給し、一時はメジャー・スタジオ並の収益を上げていた。アーネスト・ボーグナイン主演のB級バイオレンス映画『カントリー・サンデー/恐怖の日曜日』('74)を最後に映画配給事業から手を引いているようだが、その末期には本作のような低予算エクスプロイテーション映画もだいぶ手掛けていたようだ。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:89分/発売元:Scorpion Releasing
特典:俳優ジョン・コンシダインによる音声解説/ジョン・コンシダインのインタビュー(約10分)/エディ・シータ監督の息子スティーブン・シータのインタビュー(約10分)/ジョン・コンシダインとスコット・スピーゲルによるイントロダクション(約30秒)/テレビスポット

by nakachan1045 | 2017-01-26 09:39 | 映画 | Comments(0)

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