なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ザ・キラー・ビーズ」 The Bees (1978)

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監督:アルフレード・ザカリアス
製作:アルフレード・ザカリアス
   テリー・シュワルツ
脚本:アルフレード・ザカリアス
   ジャック・ヒル
撮影:レオン・サンチェス
音楽:リチャード・ギリス
出演:ジョン・サクソン
   エンジェル・トンプキンス
   ジョン・キャラダイン
   クラウディオ・ブルック
   アリシア・エンシナス
メキシコ映画/92分/カラー作品




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<あらすじ>
アフリカ大陸からブラジルへ輸入されたミツバチが突然変異し、獰猛な殺人蜂として人間や動物を襲うようになる。この殺人蜂は短期間で大量に増殖し、南米全体へ広がりを見せていった。事態を重く見た国連はブラジルに研究所を開設。責任者のミラー博士(クラウディオ・ブルック)は新たなハイブリッド種を完成させることで、これまでの二倍の蜂蜜を採取すること成功する。ところが、貧しい地元の農民親子が蜂蜜を盗もうとして殺人蜂の餌食となり、怒った住民が暴徒化して研究所を破壊し、ミラー博士が殺されてしまう。
暴動を生き延びたミラー博士夫人サンドラ(エンジェル・トンプキンス)は、夫の開発したハイブリッド種をニューヨークに住むノーマン博士(ジョン・サクソン)と叔父ハメル博士(ジョン・キャラダイン)のもとへ持ち込む。養蜂産業への活用が期待できるからだ。早速、興味を持った大企業の経営者たちがノーマン博士らに接触してくる。しかし、このハイブリッド種を管理するためには更なる研究が必要だった。すぐにでも実用化したい経営者たちは賄賂で買収した国連幹部と結託し、ブラジルから秘密裏にハイブリッド種の殺人蜂を密輸する。
ところが、不審に思った空港の税関職員が殺人蜂を放してしまい、たちまち全米規模で大量に繁殖した殺人蜂軍団が人々を襲い始める。そこで、ノーマン博士はハメル博士の開発した撃退スプレーを試す。そのスプレーに含まれたフェロモンによって、殺人蜂はオス同士で繁殖しようとして自滅してしまうというのだ。これが効果テキメン。早速アメリカ空軍の協力で全米に薬が散布され、殺人蜂は全滅したかに思えた。
ところが、僅かに生き残った殺人蜂が更なる進化を遂げて舞い戻って来る。ちょうど同じころ、研究の過程で国連幹部の関与を知ったハメル博士は、大企業経営者たちの差し向けた殺し屋によって暗殺される。息を引き取る前に彼は、この新種の殺人蜂が人類と同レベルの高い知性を備えており、コミュニケーションを取ることすら可能であることをノーマン博士に言い残す。その言葉を裏付けるように、殺人蜂軍団はノーマン博士とサンドラの前に姿を現し、ある提案を申し入れるのだった…。

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動物や昆虫が突如として人間を襲って殺すパニック映画が時ならぬブームを呼んだ'70年代。恐らくその原点は、いじめられっ子の若者がネズミを使って復讐する『ウィラード』('71)であるが、本格的なブームの口火を切ったのはスピルバーグ監督の出世作『ジョーズ』('74)だ。それ以降、サメやクマのような巨大生物から、アリやゴカイのように小さな昆虫まで、ありとあらゆる生き物が映画の中で人間を襲いまくった。中でも殺人蜂は最も人気の高いキャラ(?)の一つ。大量の殺人蜂軍団が大空から一斉に襲い来る画ずらにインパクトがあるからだろう、『恐怖の殺人蜜蜂』('74)に『キラー・ビー』('76)、『戦慄の毒蜂軍団』('78)、そしてオールスターキャストの超大作『スウォーム』('78)などなど、数多くの殺人蜂映画が短期間に作られたものだが、この『ザ・キラー・ビーズ』もその中の一本である。

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一応はメキシコ映画ということになっているが、製作資金を出したのはアメリカのB級映画の帝王ロジャー・コーマン。全米の劇場配給もコーマンの経営するニューワールド・ピクチャーズが担当している。もともとはコーマン門下生のジャック・ヒル監督が脚本と演出を兼ねる予定だったが、コーマンとの関係悪化が原因で撮影中に降板させられ、メキシコの職人監督アルフレード・ザカリアスがピンチヒッターとして起用されたという。脚本もヒルの書いたものを下敷きにザカリアス監督がリライトしたと言われているが、その一方でストーリーの発案者はザカリアス監督だという説もあるため、正確なところはハッキリと分からない。まあ、この種のゴタゴタは昔の独立系低予算映画にありがちなんですけれどね。

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で、そのザカリアス監督曰く、環境破壊を続ける人類への警告を込めた映画だという本作。ホントかよ、と言いたいところだが、確かにそうしたニュアンスを読み取ることは出来る。蜂蜜やロイヤルゼリーを商業利用するために改良を重ねた結果、高度な知性を持ち合わせてしまった殺人蜂。欲に目のくらんだ資本家や役人によって、南米からアメリカへ密輸された殺人蜂が大量繁殖し、未曽有の大パニックを引き起こしてしまう。さしずめ、己の利便性のために自然体系を破壊した人類の自業自得みたいなものだ。そうした環境保護的なメッセージは、クライマックスで殺人蜂軍団が人類へ提案する共存共栄のための交換条件でよりハッキリと明確にされる。

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とはいえ、映画としての完成度は正直言って酷い(笑)。あくまでもB級娯楽映画なので、科学的根拠ゼロなのは想定の範囲内だとしても、緊張感のないユルユルなザカリアス監督の演出は文字通り噴飯物だ。特に殺人蜂軍団が人を襲うパニックシーン。エキストラの大袈裟過ぎる悶絶演技といい、間の抜けたチープな音楽スコアといい、まるで寸劇コントのようなノリだ。もともとザカリアス監督は大衆コメディ畑の人らしいので、ついついいつもの癖が出てしまったのだろうか…って、んなわけないか(笑)。その上、殺人蜂の習性や毒性などの設定も場面ごとにコロコロと変わるし、登場人物たちは揃いも揃って思慮の浅いバカばっかりだし。とにかく突っ込みどころの多さだけは群を抜いている。そういう意味では楽しめるかもしれない。

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その一方で、サービス精神の豊かさだけは評価できる。この手の低予算映画にしてはパニックシーンもかなり多い。殺人蜂軍団の襲撃シーンは大量のおが屑を飛ばしているだけなのが丸分かりだが、それでも当時の映像技術レベルを考えると全体的な特撮シーンの仕上がりもまずまず。実はこの作品、内容の似た『スウォーム』と同時期の封切りを避けるため、ワーナー・ブラザーズが多額の金を積んで公開時期を延期させたらしい。それを特撮の制作資金に回したというのだ。ただし、後半の大掛かりな群衆パニック・シーンはデンマーク産怪獣映画『原子獣レプティリカス』('61)のフィルムを流用しただけなのだけれど…(笑)。

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主演は永遠のB級映画スター、ジョン・サクソン。当時はまだ『燃えよドラゴン』('73)のインパクトが強かったせいなのか、本作でもちゃっかりとカンフーアクション・シーンが用意されていてニンマリする。その相手役には、これまたB級映画界の名物セクシー女優エンジェル・トンプキンス。ギャングの情婦役や裏切り者の悪女役などのイメージが強い人だが、本作ではお茶目でチャーミングなヒロイン役を演じており、コメディエンヌ的な才能もあったことがよく分かる。もうちょっと作品に恵まれていたら、それなりに主演級スターとして成功できたのではなかろうか。

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でもって、ドイツ語訛りの飄々とした老科学者ハメル博士を演じているのは、ご存知『駅馬車』('39)などジョン・フォード映画の名優ジョン・キャラダイン。とはいえ、この人もある時期からB級・C級映画の常連組となったので、なるほど、ここにも出ていらっしゃいますかといった感じなのだけれど。また、冒頭に殺されるミラー博士役として、ギレルモ・デル・トロ監督の『クロノス』('92)で知られるメキシコ俳優クラウディオ・ブルックが出ているのも要注目。この人はメキシコを代表する大物俳優の一人で、'60年代にはフランスやイタリアでもスマートな二枚目スターとして活躍した人だった。

ちなみに劇場公開時の上映時間は83分だったが、昨年アメリカで発売されたブルーレイ&DVDには92分のディレクターズカット完全版が収録されている。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(アメリカ盤2枚組)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio Mono/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:92分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:92分
発売元:Vinegar Syndrome (2016年)
特典:アルフレード・ザカリアス監督インタビュー(約11分)/オリジナル劇場予告編

by nakachan1045 | 2017-02-11 13:48 | 映画 | Comments(0)

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