なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「女の勲章」 Onna no Kunsho (1961)

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監督:吉村公三郎
製作:永田雅一
企画:土井逸雄
原作:山崎豊子
脚本:新藤兼人
撮影:小原譲治
美術:間野重雄
服飾:中村乃武夫
   上野芳生
音楽:池野成
出演:京マチ子
   若尾文子
   叶順子
   中村玉緒
   田宮二郎
   船越英二
   三津田健
   内藤武敏
   森雅之
日本映画/110分/カラー作品




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<あらすじ>
大阪は船場の良家に育ったお嬢様・大庭式子(京マチ子)は、神戸で小さな洋裁教室を4年前から営んでいた。生徒数も順調に伸びていったのだが、1年ほど前に転がり込んだ布問屋の息子・八代銀四郎(田宮二郎)が自らマネージャーを買って出る。そして、その銀四郎が金策に奔走したおかげで、大阪の甲子園に大きな服飾学院を開校するに至った。
式子には3人の心強い愛弟子がいた。鼻っ柱の強い津川倫子(若尾文子)、チャキチャキした銀行員の娘・坪田かつ美(叶順子)、おっとりマイペースの大木冨枝(中村玉緒)だ。倫子とかつ美は大学まで出た銀四郎がなぜ企業に就職もせず、式子の下で馬車馬のように働いているのか首を傾げ、なにか裏に魂胆があるのではないかと疑っていた。
服飾学院の開校式が華々しく終わったのも束の間、関西デザイナー連盟の会合に初参加した式子は、先輩女性経営者たちによる新人虐めの現実にぶち当たる。協会が主催するファッション・ショーには繊維会社の協賛が不可欠だったが、まだ業界にコネのない式子は途方に暮れる。そこで、大企業・三ツ輪繊維の宣伝部員・野本(内藤武敏)と恋人関係にある倫子は、自らが商談をまとめることで式子に恩を着せて自分の立場を有利にしようと考えるが、あいにく計画が失敗しただけでなく、抜け目のない銀四郎に野心を見破られてしまう。
銀四郎は旧知の新聞記者・曽根(船越英二)の口利きで三ツ輪繊維の協賛を取り付け、式子を大阪モード界の新星として売り出すことに成功する。これで式子のさらなる信頼を得た銀四郎は、この機に乗じて式子と無理矢理関係を結び、色恋に初心な彼女をすっかり言いなりにしてしまう。さらに、彼は倫子、かつ美、冨枝を次々と手籠めにし、彼女たちにそれぞれ分校の校長や織物工場長の役職を与えることで飼い慣らし、さらにはわざと彼女らの対立を煽ることで学院の経営を我が物のように操っていく。
やがて、フランスの一流デザイナーとのデザイン提携が決まった式子だったが、パリへ行く直前に銀四郎の裏切りを知って深く傷つく。彼女はパリで再会した紳士的な男やもめの大学教授・白石(森雅之)に慰められ、全てを捨てて彼と結婚することを決意するのだったが、強欲で計算高い銀四郎がそれを黙って許すはずもなかった…。

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ご存知、『白い巨塔』や『華麗なる一族』、『大地の子』など数多の名作・傑作を世に送り出した作家・山崎豊子の小説の映画化。原作についてはあまり詳しくないのだが、単行本が出版された同じ年の6月に劇場公開されているので、恐らく猛烈な急ピッチで制作されたであろうことは想像に難くない。実際、本編を見ると駆け足で作られたような印象はそこかしこから受けるものの、それでもそれなりに風格のある映画に仕上げているのだから、当時の日本映画界および大映の底力が知れるというものだ。

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基本的にはドロドロとした女同士の熾烈な権力争いを描く昼メロ的な女性ドラマ。虚飾に彩られた華やかなファッション業界を舞台に、野心に燃える美しい女性たちが地位と名声を巡って水面下で火花を散らせ、策略を張り巡らせる。とはいっても、そこは大映のカラーなのか、はたまた古き良き時代の価値観なのか、全体的にえげつなさは控えめで上品にまとめられている感じだ。
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肝心なのは、物語の鍵を握るのが女性ではなく男性だということ。つまり、女たちの間を渡り歩く商売人のマネージャー、八代銀四郎である。高度経済成長期の日本に蔓延する非情な合理主義と露骨な拝金主義を象徴するような存在。金儲けのためだったら一切の手段を選ばず、まるでメフィストテレスのごとく女たちの耳元で甘い言葉を囁き、彼女たちの潜在的な野心と欲望を刺激し焚き付け、女性教育の高い理想を掲げた服飾学院が営利第一に邁進するよう巧みに操って利用していく。
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ただ、それが銀四郎にとって何の得になるのか?そもそも彼がこの学院の事業拡大に執着する理由とは?というところが本作では見えてこないため、ただむやみにヒロインたちの関係をかき乱して対立させ、破滅へと向かわせる邪悪な存在でしかないという点が惜しまれる。金が全ての刹那的な世相に対するストレートな風刺なのか、それとも女性の社会進出を食い物にする男性社会への痛烈な皮肉なのか、どちらとも解釈できるとは思うのだが、少なくともこの映画版ではハッキリとしない。ゆえに、通俗的な昼メロドラマの延長線上から抜けきらないという印象は否めないだろう。
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とはいえ、三面記事的なファッション業界内幕物としては普通に面白い。ゴージャスでドラマチックな吉村公三郎監督の演出はダグラス・サークさながらだ。間野重雄のモダンで洗練された美術デザインもハリウッド映画的で秀逸だし、色彩と陰影の調和が見事な小原譲治のカメラワークも抜群に美しい。日本ファッション界のパイオニアである中村乃武夫の手掛けた、女優陣の華麗なるコスチュームの数々も見どころだ。
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で、京マチ子に若尾文子、叶順子、中村玉緒と、大映の看板スターが揃った女優陣の顔ぶれ。お嬢様育ちゆえの脇の甘さで銀四郎に付け込まれていく式子役の京マチ子、己の出世欲のために師匠や恋人を踏み台にするも良心の呵責に苛まれる倫子役の若尾文子と、どちらも安定の好演ぶりだ。これといった見せ場のない叶順子は少々気の毒ではあれど、羊の皮を被った狼というか、弟子たちの中で実は一番計算高くて狡賢い冨枝を演じる中村玉緒が、中盤辺りから京や若尾の向こうを張る存在感を発揮するのが面白い。
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しかし、である。そうはいっても、やはり本作で最も強烈なインパクトを残すのは、銀四郎役の田宮二郎だろう。ここではいつものダンディでクールな二枚目を封印し、いかにも胡散臭い大阪の商売人を怪演。調子が良くて押しが強く、お喋りで耳ざとくて抜け目がない。いつも薄気味の悪い作り笑顔を浮かべているが、時折見せる真顔は冷酷そのもの。悪知恵と下半身をフル活用して女たちを振り回していく。色男の田宮が演じるからこその厭らしさがなんとも秀逸だ。
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そんなある種の怪物的すけこましの銀四郎に対し、いわば知性とモラルを象徴するのが森雅之演じる白石教授と、船越英二演じる新聞記者の曽根なのだが、どちらも立派なのは理念と言葉だけで、いざとなると全くの無力。銀四郎の魔手から女性を守るどころか、その破壊力にまるで太刀打ち出来ない。まあ、実際そうだもんね。人間の動物的本能に対する理性の脆さと弱さ。その辺りをもっと深く突き詰めても良かったかもしれない。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:110分/発売元:株式会社KADOKAWA/角川書店
特典:劇場予告編/スタッフ・キャスト解説/フォトギャラリー

by nakachan1045 | 2017-02-15 22:36 | 映画 | Comments(0)

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