なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「私を助けて/吹雪が恐怖を呼んでくる・人妻監禁事件」 You'll Like My Mother (1972)

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監督:ラモント・ジョンソン
製作:モート・ブリスキン
原作:ナオミ・A・ハインツ
脚本:ジョー・ヘイムス
撮影:ジャック・A・マルタ
音楽:ギル・メル
出演:パティ・デューク
   ローズマリー・マーフィ
   リチャード・トーマス
   シアン・バーバラ・アレン
アメリカ映画/92分/カラー作品




<あらすじ>
雪深い真冬のミネソタ州の田舎町。ベトナム戦争で夫を亡くした若妻フランチェスカ(パティ・デューク)は、義理の母親と初めて会うためにロサンゼルスから長距離バスでやって来た。しかし、夫の実家は人里離れた場所にあり、この雪だと妊婦の彼女が徒歩でたどり着くのは不可能であるため、親切な地元住民が近くまで送ってくれた。
そこは、広大な土地の真ん中に立つ古い大豪邸。義母キンソルヴィング夫人(ローズマリー・マーフィ)が出迎えるものの、しかしその態度は驚くほど冷淡で無礼だ。夫マシューから聞いていた明るく優しい母親像とはまるで違う。そればかりか、自分から息子を奪ったとしてフランチェスカを責め、お腹の中の子供も認知するつもりはないという。深く傷ついたフランチェスカはすぐに帰ろうとするが、しかし吹雪が強くなったため一夜を明かさなくてはならなくなる。
屋敷には義理の妹だというキャスリーン(シアン・バーバラ・アレン)もいた。これもまた夫からは聞いていなかった。知的障害で言葉の喋れないキャスリーンは、まるで召使のようにこき使われており、終始おどおどとした様子だ。そんな彼女に同情するフランチェスカ。親切な彼女に最初は驚いたキャスリーンだが、やがて徐々に心を開いていく。
寝しなに紅茶を出されたフランチェスカは、そのまま翌日の昼まで寝てしまう。紅茶に睡眠薬が入れられていたことは明らかだった。すぐにでも屋敷を出たかったが、しかし寒さのため義母の車は故障して動かず、電話も不通だという。このまま滞在する以外に選択肢はなかった。
この家の人たちは絶対におかしい。そう感じたフランチェスカは、真夜中にこっそりと忍び込んだ書斎で日誌を発見する。そこには、夫マシューが戦死する直前に義母が病死していたことが記されていた。つまり、今屋敷にいる義母は偽者なのだ。どうやら、本物の義母の姉が財産目的で妹に成りすまし、娘キャスリーンを連れて屋敷に居座ったらしい。そこへ、招かれざる客のフランチェスカが何も知らずにやって来たというわけだ。しかも、その偽義母にはケニー(リチャード・トーマス)という連続レイプ魔の長男がおり、地元新聞によると刑務所から脱走を企てて逃亡中だという。この屋敷を目指しているであろうことは必至だった。
なんとかして屋敷を脱出しなくてはと考えるフランチェスカ。ところが、そんなときに限って産気づいてしまう。看護婦だったというキンソルヴィング夫人の手で無事に出産を終えるものの、目を覚ましたフランチェスカに夫人は赤ん坊が死産だったことを伝える。遺体はキャスリーンが庭に埋めたという。ショックにうなだれるフランチェスカ。しかし、そんな彼女をキャスリーンが屋根裏部屋へ連れていく。
するとそこには元気そうな赤ん坊がすやすやと眠っていた。キャスリーンが母親に黙って赤ん坊を匿ってくれたのだ。だが安心したのも束の間。キャスリーンは恐ろしい事実を告げる。脱獄したケニーが屋敷の中に隠れているというのだ。自分と赤ん坊をケニーから守るため、意を決して屋敷を飛び出そうと考えるフランチェスカだったが…。


『ラスト・アメリカン・ヒーロー』('73)に『リップスティック』('76)、『ワン・オン・ワン』('77)などなど、青春ドラマからサスペンスまでジャンルの垣根を超え、数多くの良質な低予算映画を撮り続けた(まあ、中には『シャレード'79』なんて凡作もあるにはあるけど)職人監督ラモント・ジョンソンによるサスペンス・スリラー。しかも、脚本を手掛けたのは『恐怖のメロディ』('71)のジョー・ヘイムスということで、地味ながらも緊迫感溢れる、どこか寓話的なムードさえ醸し出す作品になっている。

ジャンルとしては密室サスペンス。亡き夫の実家を初めて訪れた新妻フランチェスカは、折からの豪雪のせいで屋敷の外へ出られなくなってしまうわけだが、この古い大豪邸には思いもよらぬ恐ろしい秘密が隠されていた。というのも、彼女を迎え入れたのは夫の家族ではなく、財産目的で屋敷を乗っ取った他人だったのだ。そればかりか、広い屋敷のどこかに連続レイプ魔まで潜んでいる。真相に気付いたフランチェスカは、騙されたままのふりをしながら脱出の機会を狙うのだが…ということで、まさにシンプル・イズ・ベスト。無駄のない設定とストーリー展開で一気に観客を引き込む。そればかりか、主人公を身重の妊婦としたことでスリルも倍増。派手な見せ場やショックシーンこそないものの、逃げ場のない閉塞感とじわじわ追い詰められるような緊張感の積み重ねで最後まで見せていく。

また、舞台となるヴィクトリア朝様式の大豪邸の厳かな雰囲気もストーリーにマッチしている。それこそ、『嵐が丘』や『レベッカ』を彷彿とさせるような感じだ。壮麗でありながらも暗く寂しげで、過去の亡霊がそこかしこに彷徨っているような異空間。ミネソタ州のダルースに現存する、100年以上前に建てられたグレンシーン邸という屋敷で撮影されたらしいのだが、このロケ地の魅力に助けられている部分も大きいだろう。なお、このグレンシーン邸では本作の約5年後にオーナー未亡人とその看護婦の2人が殺害される事件が発生。養女とその夫による財産目的の犯行だったという。

主演は『奇跡の人』('62)のヘレン・ケラー役でオスカーに輝いた元天才子役のパティ・デューク。やっぱりというか、さすがというか、迫真の演技が鼻につくほど上手い。そこがこの人の好き嫌いの分かれ目だとは思う。演技に隙がなさすぎるのだよね。優等生と言えば優等生なのだろうけど、上手過ぎちゃってかえって感情移入しづらい。そこが大人の女優として大成しなかった理由なのだろう。その点、息子のショーン・アスティンは非常にバランスがいい。って文句ばかり言っているようだけど、本作の場合は彼女のテンション高めな大熱演がサスペンスを高めるのに一役買っていることは間違いない。

『レベッカ』のダンヴァース夫人のごとき冷徹なキンソルヴィング夫人を演じるのは、『アラバマ物語』('62)の心優しき隣人ミス・モーディ役で知られるローズマリー・マーフィ。その娘で知的障害者キャスリーンを演じるシアン・バーバラ・アレンは、本作でゴールデン・グローブ賞の新人賞を獲得した。そして、連続レイプ魔のサイコパス、ケニー役を怪演するのが、日本ではリメイク版『西部戦線異状なし』('79)や『宇宙の7人』('80)の主演で知られるリチャード・トーマス。アメリカではテレビの国民的ファミリー・ドラマ『わが家は11人』('72~'81)の長男役で親しまれた爽やかな好青年俳優だ。悪役は見た目が普通なほど怖いとよく言うが、これなどはまさにその通り。得体の知れない狂気を宿したチャーミングな笑顔が薄気味悪い。

というわけで、ショッキングなインパクトよりも丁寧な語り口で恐怖を盛り上げていくタイプの作品。『冬の嵐』('87)や『暗くなるまで待って』('67)辺りが好きな人にはおススメだ。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:92分/発売元:Scream Factory/Universal Pictures (2016年)
特典:リチャード・トーマスとシアン・バーバラ・アレンのインタビュー(約56分)/フォト・ギャラリー/オリジナル劇場予告編

by nakachan1045 | 2017-03-14 01:50 | 映画 | Comments(0)

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