なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「アスファルト・ガール」 Asphalt Girl (1964)

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監督:島耕二
ミュージカルシーン監督:ロッド・アレキサンダー
制作:永田雅一
企画:熊田朝男
   高橋淳一
脚本:船橋和郎
撮影:小原壤治
美術:下河原友雄
衣装デザイン:真木小太郎
作曲・作詞:平岡精二
作曲・編曲:前田憲男
出演:中田康子
   坂本博士
   岩村信雄
   原田信夫とファイブ・キャラクターズ
   尾藤イサオ
   寺島正
   中条静夫
   ローランド・ハナ・カルテット
日本映画/88分/カラー作品




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<あらすじ>
美しい女性たちが揃った日本観光ガイドクラブ。そこは観光ガイドとは名ばかりのホステスを提供する出張サービス店だ。今夜はアメリカから来たジャズ・バンドの接待に大勢のホステスたちが呼ばれていくが、しかしオーナー田辺(岩村信雄)の愛人でもあるエミ子(中田康子)にはお声がかからず。お嬢様風の上品なエミ子は客受けがあまり良くないのだ。そこへ、品の良い女性をという客の注文が入り、エミ子が派遣されることとなった。
待ち合わせ場所にいたのは、星野(坂本博士)という真面目そうな紳士。ブラジルでコーヒー園を経営しているという彼は、久しぶりに帰国したところ友人たちに結婚話を無理強いされ、それを断る口実としてエミ子に恋人のふりをして欲しいという。それならお安い御用とばかりに引き受けたエミ子だったが、ついお酒を飲み過ぎて酔いつぶれてしまう。実は彼女、大人しそうな顔をして大変な酒乱だったのだ。
翌朝目覚めて深く反省するエミ子だったが、そんな彼女を星野は気に入ってしまう。協力してくれたお礼にと、エミ子が前々から欲しかった靴まで買ってくれた星野に対し、彼女も少なからず好感を抱く。しかし、店に戻ると田辺からダメ出しを食らう。ホステスだったらそんないいカモを逃がすな、たかるだけたかって金を搾り取れというのだ。
言われたとおり、再び星野の泊まるホテルを訪れるエミ子。そこを縄張りにしているライバル店のホステスたちに取り囲まれ、乱暴されそうになったところを星野に救われた彼女は、その優しさに改めて心を打たれる。実は記憶喪失で昔のことを覚えていない、気が付いたらホステスになっていて田辺の愛人にされていたと告白するエミ子だったが、それは彼に嫌われたくない一心でついた嘘だった。
エミ子の言葉を本気にして、彼女の記憶を取り戻そうと横浜へと連れ出す星野。うしろめたさをこらえきれなくなったエミ子は、実は子供の頃から靴磨きをして生計を立てていたこと、田辺にスカウトされてホステスになったことを白状する。すると、星野も本当のことを喋り出した。コーヒー園はとうの昔に倒産して無一文であること、ブラジルで一からやり直すつもりであること、最後の見納めだと思って日本に一時帰国したこと。その上で彼は、一緒にブラジルへ行って欲しいとエミ子に申し出るのだが…。
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一連の黒澤映画や溝口映画で世界各国の映画賞を席巻し、戦後の日本映画黄金期の立役者となった映画会社・大映。'61年には日本初の70ミリ映画『釈迦』を、続いてユル・ブリンナーら豪華キャストを揃えた日米合作映画『あしやからの飛行』('64)を手掛けた大映が、日本初の本格的ミュージカル映画として送り出したのが本作。当時の日本では『ウエスト・サイド物語』('61)が戦後最大のロングランヒットを記録したばかりで、いわばミュージカル映画ブームの真っ只中だった。もともと日本には『狸御殿』シリーズに代表される時代劇ミュージカルなるジャンルが戦前から存在したものの、このブームの波に乗ってハリウッドの向こうを張るモダンなミュージカル大作を…ということで企画されたのであろうことは想像に難くない。
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まあ、結論から言うと残念ながらハリウッド・ミュージカルには遠く及ばない。当時興行的に大惨敗を喫したのもむべなるかなという印象だ。一応、ミュージカル・シーンの演出にはハリウッドからロッド・アレキサンダーなる人物を招いており、それなりに形にはなっているものの、しかしそもそもアレキサンダーは振付師であって演出家ではない。それも、代表作は『回転木馬』('56)くらいのもので、基本的にはテレビ畑の人だった。要するに、ミュージカル監督としての実績はほぼないに等しいのだ。実際、本作のミュージカル・シーンは『踊る紐育』('49)や『野郎どもと女たち』('55)など過去の名作からコピーしたような代物ばかりで、オリジナリティにも想像力にも著しく欠けている。そればかりか、演出のセンスは凡庸だし映像のスケールも小さい。本場ハリウッドから来たミュージカル監督といっても、蓋を開ければ全くの看板倒れだ。
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また、せっかくハリウッド風の洒落たミュージカル大作を志しておきながら、焼き鳥だ蒲焼だ馬に鹿だとあか抜けないミュージカル・ナンバーの歌詞にも苦笑い。モダンなビジュアルとはだいぶミスマッチだ。メロディに言葉が上手く乗っていない部分も多々見受けられる。音楽を担当したのは、名曲『学生時代』の作者として知られる平岡精二とテレビ番組のテーマ曲を数多く手がけた前田憲男。どちらもジャズ畑の出身だ。モダン・ジャズに影響を受けたサウンドは非常に洗練されているが、それでもミュージカル・ナンバーとしては粗削りな点も多く、かなり試行錯誤したであろうことが伺える。
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その一方で、パンプスを履いた若い女性の膝から下だけで展開されるオープニングを筆頭に、工夫を凝らした小粋で都会的なムードは悪くない。沢山の洗濯物が干されたビル屋上でのロマンティックなダンス・シーンも印象的。小津安二郎作品でお馴染みの名匠・下河原友雄による美術セットの美しさに助けられている部分は大きいだろう。また、舞台ミュージカルの美術や衣装の第一人者でもあった、真木小太郎のデザインによる衣装もむちゃくちゃオシャレ。女性陣のカラフルなドレスはもちろん、男性陣のスマートなスーツスタイルも決まっている。その辺りはさすが大映。ビジュアルに関しては申し分ない。
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また、キャスト陣によるダンスのクオリティもなかなかのものだ。ヒロインのエミ子を演じている中田康子は宝塚歌劇団の出身で、日劇ダンシングチームでも活躍した本格派。映画女優としては大成しなかったものの、さすがにミュージカルは得意分野とあって、本場のミュージカル女優にも負けないパフォーマンスを披露する。中でも、靴磨きの男性たちとのトリオによるダンス・シーンは本作最大の見せ場。男性ダンサーたちのアクロバティックなダンスも見事だ。これでもっと演出に躍動感があれば大変な名シーンになっていただろう。
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とはいえ、その一方でキャストに華がないこともまた否めない。特に星野役の坂本博士。舞台のバリトン歌手としての実力を見込まれての起用だったとは思うのだが、映画の主役を張るにはいかんせん見た目が地味過ぎる。どこからどうみてもフツーのオジサンだ。いや、実際当時はまだそれなりに若かったはずだが、老け顔なのか新橋辺りによくいる中年サラリーマンにしか見えない。中田康子にしたってミュージカル女優としては一流なのかもしれないが、映画女優としては2番手3番手といったところ。失礼ながらトップスターではない。その他のキャストもダンスや歌の実力重視で選ばれたのか、知名度もルックスもいまひとつといった感じ。田辺の手下のチンピラ役で当時まだデビューしたての尾藤イサオが出ており、終盤では彼がメインとなるミュージカル・ナンバーも用意されているものの、元祖和製ロック・スターとしての魅力を十分に発揮しているとは言い難い。
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ちなみに、監督は『銀座カンカン娘』('49)や『リンゴ園の少女』('52)など音楽映画や歌謡映画も数多く手がけている名匠・島耕二。横浜の緑豊かな丘の上を舞台にした主演コンビのデュエット・シーンなど、繊細で抒情的な演出は島監督らしいなと思わせられる。2人が初めて会う噴水シーンのカラフルな色彩も抜群にロマンティック。そう、実のところいろいろ見どころはあるのだが、いかんせんミュージカル映画としては決定的に弱い。日本映画華やかなりし頃、頑張ってこういう映画も作られたんだけど、ちょっと残念な結果に終わってしまったんだよね、ということを知るという意味において、一見の価値はあるかもしれない。
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評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:88分/発売元:株式会社KADOKAWA(2017年)
特典:劇場予告編/フォトギャラリー



by nakachan1045 | 2017-03-15 18:22 | 映画 | Comments(0)

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