なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「暴走パニック 大激突」 Violet Panic: The Big Crach (1976)

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監督:深作欣二
企画:本田達男
   杉本直幸
脚本:神波史男
   田中陽造
   深作欣二
撮影:中島徹
カーアクション:東洋レーシングチーム
音楽:津島利章
出演:渡瀬恒彦
   杉本美樹
   室田日出男
   川谷拓三
   渡辺やよい
   風戸祐介
   小林稔侍
   三谷昇
   曽根将之
   汐路章
   林彰太郎
   志賀勝
   潮健志
   成瀬正
日本映画/84分/カラー作品




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<あらすじ>
名古屋、大津、京都と銀行強盗を重ねる2人組、山中高志(渡瀬恒彦)と関光男(小林稔侍)は、次に計画する神戸の仕事を最後にブラジルへ高飛びするつもりだった。山中にとって一つ気がかりなのは、勤め先のスナックで知り合った元ホステスの女・緑川ミチ(杉本美樹)。器用に生きることの出来ない彼女は、幾度となく助けてくれた山中に惚れこんで頼りきっていた。そんな哀れな女を捨てていくのは酷だと関は言うが、しかし他の宿り木を探せばいいと山中はつぶやく。
そして、いよいよ神戸の銀行を襲撃する2人。ところが、通りがかったトラックに関が轢き殺されてしまう。いつも通り職場へ戻って高飛びの準備を進める山中。そこへ関の兄・勝男(室田日出男)が現われ、慰謝料代わりに自分にも分け前をよこせと迫る。
その頃、捜査を進めていた警察は銀行強盗の共犯者として山中の身元を確定。上司や同僚からバカにされ、出世街道からも取り残され、恋人の婦人警官・愛子(渡辺やよい)まで後輩(成瀬正)に寝取られた警察官・畠野(川谷拓三)は、周りを見返してやろうと山中の行方探しに血眼となっていた。
ミチを連れて逃亡する山中。自分といては危険だからとミチに別れを告げるものの、一時も離れたくない彼女はどこまでもついてくる。そんな彼女を置いてブラジル行きの飛行機へ乗ろうとする山中だったが、空港で待ち構えていた勝男と揉みあいになり、駆け付けた警官に現金の入ったボストンバッグを回収されてしまう。
戻ったホテルでぐったり倒れているミチを発見する山中。自殺未遂だった。そんな彼女に罪悪感と愛しさを感じた山中は、ミチのために最後の大仕事をしようと決意。大阪の梅田でたった一人、銀行強盗を決行する。奪った金をミチに渡して姿を消そうとする山中だったが、それでもミチは必死になってついてくる。やはり山中は彼女を見捨てることは出来なかった。
事件発生の報告を受けて、2人の乗った車を追跡するパトカー軍団。その先頭を走るのは畠野だ。さらに、執念深い勝男も追いかけてくる。運転の乱暴な畠野は行きずりの車に次々と追突。これに激怒した一般人の車が次々とパトカーを追いかけ始める。さらに、勝男の運転する車が暴走族の一人を轢き殺してしまい、復讐に燃えるバイカーたちも参戦。いつしか、逃走劇は膨大な規模のカーチェイスへと変貌していく。

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日本で最初の本格的カーアクション映画とのことだが、なるほど確かに、これほど大掛かりなカーチェイスをフィーチャーした作品は、それ以前の日本映画には存在しなかったかもしれない。しかも、当初は銀行強盗犯の主人公カップルと、その金を奪おうと狙う悪党、警察のパトカー軍団による三つ巴の戦いだったのが、その過程で一般人やら暴走族やらテレビ中継車やらが次々に加わり、あれよあれよという間に車の数が膨れ上がっていく。もはや、誰が誰を追いかけているのか分からないような状態に。そのハチャメチャぶりが実に素晴らしい。っていうか、あまりにもぶっ飛んでいるんで笑いが止まらなくなる。
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予告編を見ると200台の車を動員しているかのようなキャッチコピーが見受けられるものの、実際のところ何台の車を使っているのかは不明。まあ、当時の映画は誇大広告で煽ることなど当たり前だったので、予告編の数字なんかは眉唾であてにはできないが、それでもかなりの数の車を走らせていることは分かる。見るかに壊しても良さそうな中古車ばかりだけどね(笑)。当時は『バニシング・ポイント』('71)とか『バニシングin 60"』('74)とか、洋画のド派手なカーアクション映画が流行していた時代。それらを意識したことは明らかだろう。撮影規制の多い日本では、さすがに『ブルース・ブラザーズ』('80)ばりの大量爆走チェイス&クラッシュまでは期待できないものの、それにしても次から次へと激突・横転・炎上するカークラッシュは迫力満点。文句なしの大健闘と言って良いだろう。
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社会の底辺でくすぶるアウトローの意地と悲哀を浮かび上がらせたストーリーも痛快。先ごろ他界した渡瀬恒彦の迸るエネルギーに痺れまくる。中年以降の穏やかで丸くなった渡瀬しか知らない世代にとっては、恐らく少なからず驚きかもしれない。そう、若かりし頃の渡瀬恒彦は、タフでクールでギラギラとしたワイルドな、男の中の男だったのである。しかも、本作では全編のカーチェイスをスタントマンなしで自ら運転。今の日本映画では考えられないような、文字通り体を張ったアクションに挑んでいる。
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そんな渡瀬扮する主人公にどこまでもしがみついてついていく、捨てられた子猫のような幸薄い美女を演じる杉本美樹がまた抜群にいい。バカの一つ覚えと言われながらも、唯一の得意料理である煮豆料理を作って甲斐甲斐しく尽くす可愛らしさ。何度置いてきぼりにされようとも、黙って必死に後を追いかけていくいじらしさ。渡瀬が見捨てずにいられなくなるのも納得だ。池玲子と並ぶ東映セクシー女優の代表格だった杉本、代表作というと『女番長ゲリラ』('72)とか『0課の女 赤い手錠』('74)辺りが挙げられると思うが、これもなかなかの好演である。
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脇を固める役者陣、特にピラニア軍団の怪演もまた痛快。執念深さと生命力の塊みたいな室田日出男の怪物ぶり、周囲からバカにされ続けた挙句にブチ切れる川谷拓三の狂犬ぶりと、その演技のハンパない熱量はワクワクするほどだ。後半のカーチェイス・シーンでは志賀勝や片桐竜次らも参戦。大いに暴れて暴れまくる。さらに、杉本美樹に付きまとう変態中年サラリーマンに三谷昇、制服の下にエッチな下着を付けたお色気婦人警官に渡辺やよい、壮絶な最期を遂げる主人公の相棒に小林稔侍と、東映作品でお馴染みの名物役者が勢ぞろい。実に賑やかで楽しい。
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また、次から次へと車の数が増えていくカーチェイス・シーンの過程も風刺が効いていて面白い。是が非でも犯人を捕らえようと必死になるあまり、通りすがりの車を次々と巻き添えにしていく川谷拓三のパトカー。挙句の果てには人を轢き殺してしまい、日頃から警察権力の横暴に不満を抱えた市民の怒りの火に油を注いでしまう。ポリ公ぶっ殺す!とばかりに追いかけまくる一般車両が増える増える(笑)。さらに、国営テレビの取材を受けていた暴走族集団にカーチェイス一行が突入。室田日出男の車に仲間を轢き殺された暴走族までもが加わり、さらにはそれをテレビの中継車が追いかける。で、パトカー軍団の狼藉ぶりを直接目にしながらも、警察に配慮した噓のレポートで勝手に擁護するテレビレポーター。権力に対する日本のマスコミの姿勢は今も昔も変わりません(笑)。ところが、あまりにもコケにされるもんだからレポーターもプッツリとキレちゃって、なんと狂ったようにわめきながら機動隊の群れに中継車を突入させてしまう。この徹底した反権力の姿勢は、さすが深作欣二といったところだろう。
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で、サブプロットとして若いイケメン自動車修理工の話が挿入される。車を女のように愛するちょっと変態フェチの入ったイケメン君。顧客であるリッチな整形外科医の真っ赤なスポーツカーに惚れこんでしまい、わざと傷をつけては修理の依頼を受けるの繰り返し。それに気づいた客に拉致られるわけなのだが、実はこのオジサン、イケメン君の体狙いだったのだ。ラブホテルの一室に監禁され、ネチネチと変態的な凌辱を受ける気弱なイケメン君。演じるのは、なんと『ジャッカー電撃隊』のクローバーキングこと風戸祐介。子供向け特撮ヒーロー物の二枚目俳優にこんな役をやらせるとは、さすがは血も涙もない鬼畜・東映(笑)。まあ、昔の東映ではよくあったけどね、こういうこと。で、なんとなく本筋の話にちょいちょいと絡んではくるのだけれど、ぶっちゃけなくても成立するお話。恐らく上映時間稼ぎのために用意されたのだろうとは思うのだが、こういう下世話なストーリーを意味もなくぶち込んで来る辺りも、いかにも東映っぽくて好きだ。
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そして、人を食ったような荒唐無稽なラストも、バカバカしいながらも洒落ていて痛快。男気溢れるノワーリッシュな設定、反権力精神バリバリのストーリー、何でもありのハチャメチャなアクション、狂ったようなキャラクター群に暴走するセックス&バイオレンスと、深作映画ならではの醍醐味がこれでもかと詰まった濃厚な一本。後の『いつかギラギラする日』('92)を彷彿させるという意味でも見逃せない作品だ。
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評価(5点満点):★★★★★

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:84分/発売元:東映ビデオ株式会社
特典:フォトギャラリー/予告編

by nakachan1045 | 2017-03-19 18:20 | 映画 | Comments(0)

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