なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「狂った野獣」 Crazed Beast (1976)

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監督:中島貞夫
企画:奈村協
   上阪和久
脚本:中島貞夫
   大原清秀
   関本郁夫
撮影:堀越堅二
編集:神田忠男
音楽:広瀬健次郎
出演:渡瀬恒彦
   室田日出男
   川谷拓三
   星野じゅん
   橘麻紀
   中川三穂子
   松井康子
   三浦徳子
   荒木雅子
   片桐竜次
   野口貴史
   志賀勝
   三上寛
   笑福亭鶴瓶
日本映画/78分/カラー作品




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<あらすじ>
大阪で8500万円相当の宝石が強奪されるという事件が発生。犯人は元テストドライバーの速水伸(渡瀬恒彦)と恋人・美代子(星野じゅん)の2人だった。視力の低下でテスト運転中に事故を起こしたことからクビになった速水は、自分で商売を始めるために金が必要だったのだ。2人は警察の追手を巻くために別々で行動。先にバイクで移動した美代子が京都駅周辺で待機し、路線バスを使って向かった速水と落ち合う手はずだった。
その頃、京都市内で銀行強盗に失敗した2人組、谷村三郎(川谷拓三)と桐野利夫(片桐竜次)が逃走。たまたま通りがかった路線バスに乗り込んでハイジャックする。乗客はオーディションへ向かう途中の売れない女優・立花かおる(橘麻紀)、銭湯へ行くはずだったホステスの小林ハルミ(中川三穂子)、愛犬を動物病院へ連れていく途中の主婦・戸田政江(荒木雅子)、不倫中の小学校教師・松原恵一(野口貴史)と生徒の母親・川原文子(三浦徳子)、チンドン屋の極楽一郎(志賀勝)など13名。その中に速水も含まれていた。
狂犬のように殺気立った谷村と桐野を相手になす術もない乗客たち。土方の青年が谷村を取り押さえようとするも、桐野に出刃包丁で脚を刺されてしまう。極限状態の中でパニックに陥り、醜い本性を露わにしていく平凡な人々。その中で一人落ち着き払った速水のことが犯人たちは気に食わない。
一方、銀行から通報を受けた警察が一斉に動き始める。自社のバスが占拠されたことを知ったバス会社は、担当部署の責任者から信じられない事実を聞かされる。該当車両の運転手は心筋梗塞の持病があり、極度の緊張で発作を起こしてしまう危険性があるというのだ。
ナンバープレートを付け替えるために営業所へ忍び込んだバス。速水は隙を見て逃げ出すものの、宝石を入れたケースを車内に残してしまう。逃走するバスを懸命に追いかける速水。そこへ事件を知った美代子がバイクで通りがかる。美代子の運転するバイクの後ろに乗った速水は、そのまま走行中のバスへと飛び乗った。
速水が銀行強盗犯だと知った犯人コンビと乗客たち。すると、運転手が心臓発作を起こして死んでしまう。慌ててハンドルを握る速水。追いかけてくる警察の白バイ&パトカー軍団。速水はこのまま逃げ切ろうとスピードを上げ、今や彼の凄まじい気迫に押されっぱなしの谷村と桐野に警察の追跡を妨害するよう指示する。だが、極度のストレスで速水の視力に異変が…。
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3か月前に公開された『暴走パニック 大激突』('76)と並ぶ東映カーアクションの大傑作にして、間違いなく渡瀬恒彦のアクション俳優としての代表作と言えるだろう。前作『暴走パニック~』でも自ら捨て身のカースタントに挑んだ渡瀬だが、本作ではさらにその上を行く命懸けのアクションに挑んでいるのだ。
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これがね、もう凄いのなんのって。猛スピードで走行するバイクの後ろで立ち上がり、そのまま並走するバスの窓から車内へと飛び乗るなんて荒業を披露。しかも、バイクを運転しているのはプロのドライバーではなく、恋人役を演じている女優の星野じゅん。よくぞまあ、現場スタッフもやらせたもんだ。さらに後半のバス大暴走シーンでも、この撮影のために大型免許を取得したという渡瀬本人がバスを運転し、白バイやパトカーとの壮絶カーチェイスを演じる。しかもビックリするのは、バスが横転するクラッシュシーンでも渡瀬がハンドルを握っているということ。どちらも一歩間違えたら命の保証はない超危険なスタントだ。今だったら絶対に芸能事務所がオーケーしないし、そもそも古今東西これだけ度胸のある…というか無茶なことやる役者を探すこと自体が難しいはず。トム・クルーズか渡瀬恒彦かってなもんだろう。
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ほぼ全編バスの車内で展開する、無駄を省いたシンプルなストーリー構成も見事。恐らくお手本となっているのは、地下鉄車内を舞台にした傑作『ある戦慄』('67)だと思うのだが、あちらが本編前半を登場人物それぞれの背景や事情の説明に費やしたのに対し、本作はそうした前振りの類を潔くごっそりと省略。必要に応じてフラッシュバックでスパスパと挿入していく。この手際の良さが実に効果テキメンで、緊迫感溢れる車内の人間ドラマとサスペンスにしっかりと集中できるのだ。
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その人間ドラマがまた皮肉と風刺が効いていて面白い。乗客それぞれのエゴと保身がぶつかり合い、どんどんと醜い本性が暴かれていくというのは『ある戦慄』と同様だが、こちらの一般市民はさらにたちが悪い。ネタバレになるので多くは語らないが、人間の欲と偽善を嫌味たっぷりに皮肉ったラストなんか思わず苦笑いですよ。犯人と乗客、どっちが悪人だか分からなくなる。そうそう、窮すれば鈍するで切羽詰まった犯人たちの負け犬的な人間臭さもまた秀逸。ここでは川谷拓三が相変わらずいい味を出していて、女性乗客陣からまくしたてられるように責められ困り果てる様子なんか傑作だ。そんなどこかお人好しな川谷に対し、より獰猛で主導的な立場にある片桐竜次がまた、追い詰められてやけっぱちになった負け犬の怖さというか執念を全身から醸し出して強烈。その眼光鋭さがむしろカッコいい。ってか、世良公則みたい。そうかと思えば、同じピラニア軍団の志賀勝が、ここでは気弱なチンドン屋のオヤジに扮していて、その辺のキャスティングにもニンマリさせられる。
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監督は深作欣二と並ぶ東映実録ヤクザ路線の巨匠・中島貞夫。『唐獅子警察』('73)とか『脱獄広島殺人囚』('74)とか、まさに乗りに乗っていた時期の作品ということもあってか、とにかくはちきれんばかりに勢いがある。カーチェイスの規模的には『暴走パニック~』の方に軍配が上がるものの、スピーディでタイトな演出の剛腕ぶりは負けていない。その後は『やくざ戦争 日本の首領』('77)シリーズや『制覇』('82)、『序の舞』('84)などで大作志向に落ち着いてしまって、それはそれで全然悪くはないのだが、やっぱりこの頃のヤバい雰囲気が一番好きかもしれない。
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惜しむらくは、ヒロイン役の星野じゅんにいまひとつ魅力がないことか。ヤンキー系の小娘という感じで、確かに美人ではあるのだけれど存在感は薄い。演技力も正直なところ及第点。とりあえずバイクを運転できるからということで起用されたらしいのだが、まあ、確かにそう言われるとスタントマンなしでこの役をやれる女優となると限られてしまうだろう。そう考えると仕方ないかとも思えるのだが。
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なお、人質となった子供の母親役で元祖ピンク映画の女王・松井康子が登場。事件を知って慌てて飛び出したという設定のため(?)、顔面に真っ白なパックを塗りたくったままそこら中を駆け回る。あとは事件を報じるラジオ番組のDJ役で、当時まだ20代半ばだったアフロヘアの笑福亭鶴瓶も顔を出している。また面白かったのは、『暴走パニック 大激突』で”このポリ公めえ!”とばかりにパトカーを追い回していた岩尾正隆が、ここではバスジャック事件捜査の担当主任刑事をやっていること。そういえば、同じく『暴走パニック~』で渡瀬を執拗に追い回した室田日出男が、ここでも同様に執念深い白バイ警察官を演じており、僅かな出番ながらも場をかっさらっていく。
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そんなこんなで、『暴走パニック~』に引き続いて、温厚な十津川警部やおみやさんでしか渡瀬恒彦を知らない世代には是非とも見て欲しい作品。いかに彼が男の中の男だったか、いかにキレたらヤバい狂犬だったのか、よ~く分かるはずだ。そして、こういうぶっ飛んだ映画を作ることがもはや不可能になった、日本映画の情けない体たらくを嘆いてもらいたい。
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評価(5点満点):★★★★★

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:78分/発売元:東映ビデオ株式会社
特典:フォトギャラリー/予告編

by nakachan1045 | 2017-03-20 14:53 | 映画 | Comments(0)

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