なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

「露骨な顔」 The Naked Face (1984)

f0367483_19415628.jpg
監督:ブライアン・フォーブス
製作:メナハム・ゴーラン
   ヨーラム・グローバス
原作:シドニー・シェルダン
脚本:ブライアン・フォーブス
撮影:デヴィッド・ガーフィンケル
美術デザイン:ウィリアム・フォッサー
音楽:マイケル・J・ルイス
出演:ロジャー・ムーア
   ロッド・スタイガー
   エリオット・グールド
   アート・カーニー
   アン・アーチャー
   デヴィッド・ヘディソン
   ロン・パラディ
アメリカ映画/103分/カラー作品




<あらすじ>
シカゴに住む精神科医スティーヴンス(ロジャー・ムーア)は、事故で妻子を失って以来ずっと仕事に没頭してきた。ある日、患者の一人が診察直後に何者かによって殺害される。さらに、スティーヴンスの帰宅後にオフィスが荒らされ、たまたま居合わせた秘書が惨殺されてしまった。捜査を担当するのはベテランのマクグレイヴィー(ロッド・スタイガー)と後輩アンジェリ(エリオット・グールド)の2人。そのマクグレイヴィーとスティーヴンスには過去の因縁があった。
以前に警察官殺しの犯人が捕まった際、スティーヴンスによって犯人は精神障害と診断され、死刑を免れるという事件があった。その殺された警察官の元相棒がマクグレイヴィーだったのだ。スティーヴンスに対して個人的な恨みと嫌悪感を露わにするマクグレイヴィーは、はなからスティーヴンスを犯人扱いする。
亡き妻の兄で親友でもある外科医ピーター(デヴィッド・ヘディソン)夫妻と食事をした帰り、スティーヴンスは物陰で待ち構えていたバイクに轢き殺されそうになる。さらに、自宅アパートでドアマンに成りすました殺し屋2人組に襲われ、間一髪のところをピーターに救われた。何者かがスティーヴンスの命を狙っていることは明白。殺された患者や秘書は巻き添えになっただけだったのだ。
しかし、目撃証言や物証があるにも関わらず、マクグレイヴィーはスティーヴンスの自作自演だとして取り合わず、それどころか彼を殺人事件の容疑者として検挙しようと血眼になる。その常軌を逸した行動に、さすがのアンジェリも付き合いきれなくなり上司に報告。マクグレイヴィーは捜査から外されることとなる。
一方、警察が当てに出来ないことから、スティーヴンスは自ら事件の真相を突き止めようと、私立探偵を雇うことに。誰を信用していいのか分からないため、紹介ではなくイエローページで探した初老の探偵モーゲンス(アート・カーニー)に調査を依頼する。そんな折、患者の一人である美しい人妻アン・ブレイク(アン・アーチャー)から、私のせいであなたに危険が迫っていると告げられるスティーヴンス。彼女は何かを知っている様子だったが…。


ジェームズ・ボンド役で活躍していた頃のロジャー・ムーアが、軽妙洒脱なアクション・スターのイメージとは真逆の物静かな精神科医役に挑んだ巻き込まれ型サスペンス。当時のムーアは50代半ばで初老にさしかかり、そろそろボンド役にも無理があるのでは?と囁かれていた時期。翌年の『007/美しき獲物たち』を最後にボンド役を卒業するわけだが、恐らくこの時点でその後を見据えていたのだろう。実際、本作の映画化を製作元のキャノン・フィルムに働きかけたのはムーア本人だったらしい。ここでは拳銃を持ったことすらなく、殺し屋を前に手も足も出ない、そんな極めて平凡な紳士を演じている。

原作は、あのミステリー小説の大家シドニー・シェルダンのデビュー作『顔』。当時はシドニー・シェルダン作品の映像化がちょっとしたブームだった。とはいえ、彼の小説は基本的にボリュームがあってスケールも大きいため、『天使の自立』('83)や『ゲームの達人』('84)、『明日があるなら』('86)など大半がテレビの大型ミニシリーズ。劇場用映画は'70年代に『真夜中の向こう側』('77)と『華麗なる相続人』('79)が作られた程度だ。本作の場合は、ストーリーが比較的シンプルなので映画向きだったのかもしれない。

妻子を亡くしたばかりの孤独な精神科医スティーヴンスの周囲で不可解な連続殺人事件が発生。やがて彼は、自分こそが犯人のメインターゲットであることに気付く。ところが、担当刑事のマクグレイヴィーはスティーヴンスに個人的な恨みと偏見を持っており、なにかにつけて彼を容疑者扱いするばかりか、数々の証言や証拠を捻じ曲げてまでスティーヴンスを犯人として逮捕しようと追い詰めていくのだ。

このマクグレイヴィーのパラノイア的な執念が実に恐ろしい。こんな刑事に睨まれたらたまったもんじゃないという感じだ。演じるのは名優ロッド・スタイガー。オスカーに輝いた『夜の大捜査線』('68)の当たり役、偏狭な人種差別主義者の警察署長役のイメージをそのまま生かしていると言えよう。当時のスタイガーは2度に渡る心臓手術の後遺症で健康状態が思わしくなく、さらに離婚を契機にもともと患っていたうつ病が悪化していた時期で、見るからに具合悪そうなのだが、それがかえってマクグレイヴィーの妄想めいた狂気に真実味を与えていて鬼気迫るものがある。

で、頼りにすべき警察も全く当てに出来ず、次々と殺し屋に襲われて身の危険を感じたスティーヴンスは、自ら真犯人を見つけようと私立探偵の力を借りることに。それがオスカー俳優アート・カーニー演じる老人モーゲンスだ。スラム街の古いボロアパートで猫と2人暮らし…って『ハリーとトント』そのまんまじゃん!と突っ込みたくなる素晴らしい設定。見たところまるで冴えない爺さんなのだが、数々の修羅場をくぐって来たなかなかの曲者で、意外にも頼りになるプロだったりする。アート・カーニーの飄々とした演技のおかげもあって、かなり魅力的なキャラクターだ。しかも、さりげないセリフに含蓄がある。例えば、モーゲンスに拳銃所持を勧められたスティーヴンスが「私は拳銃を信じていないのでね」と断ると、すかさず「わしだってサンタクロースを信じていないが、それでもクリスマスは毎年やって来る」と、粋な表現で”備えあれば憂いなし”を諭す。やっぱ私立探偵はこういう気の利いたキャラじゃないとね。

で、終盤になっていよいよ真犯人が発覚。実はいろいろと伏線が張られていたことも判明し、マクグレイヴィー刑事の隠された真意というのも明るみになる。このあたりのどんでん返し的な仕掛けは賛否両論あることだろう。いろいろ深く考えると、なにもそこまでする必要もなかったのでは?との疑問も少なからず湧いてくるからだ。これについては映像化の弊害というか、小説から映像へ移し替える際に失われた物に起因する部分が大きいように思われる。

また、謎を解くカギとなる女性患者アン・ブレイクの存在感がいまひとつ薄いことも気になるところ。後に『危険な情事』('87)で有名になるアン・アーチャーは抜群に綺麗なのだけれど、この役に必要なファム・ファタール的魅力がちょっと足りない。一方、マクグレイヴィーの相棒でなだめ役のアンジェリ刑事に扮するエリオット・グールドは、実は意外に食わせ物だったりする役どころを上手いこと演じていて光る。この頃から暫くはB級路線まっしぐらになっていくのだけれどね。

監督と演出を手掛けたのは、『サンデー・ラバーズ』('80)に続いてこれがロジャー・ムーアと2度目のコンビとなるブライアン・フォーブス。実はムーアが主演したベイジル・ディアデン監督作『悪魔の虚像/ドッペルゲンガー』('70)にも、フォーブスがノークレジットで製作と脚本に携わっており、厳密には3度目の顔合わせとなる。私生活でも2人は非常に親しかったらしい。『雨の午後の降霊祭』('64)や『ステップフォード・ワイフ』('74)など、サスペンス&スリラーで佳作の多いフォーブス監督だけに、本作の演出はまさしく適役。哀愁漂うセンチメンタルな音楽スコアの使い方もセンスが良く、大人向けの上質なサスペンス映画として上手くまとまっている。ただ、フォーブスとの仲がこじれたキャノン・フィルムが宣伝費の予算を大幅に削ったこともあってか、残念ながら興行的には全く奮わず、これが最後の監督作となってしまったことが惜しまれる。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:103分/発売元:Kino Lorber/MGM(2014年)
特典:オリジナル劇場予告編

by nakachan1045 | 2017-03-21 11:11 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

最新の記事

「A Study in Te..
at 2017-10-16 05:48
「七人の特命隊」 Ammaz..
at 2017-10-15 00:37
「サタンバグ」 The Sa..
at 2017-10-14 13:09
「猟奇!喰人鬼の島」 Ant..
at 2017-10-12 23:34
「手討」 Teuchi (..
at 2017-10-11 23:55

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター