なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ダーク・エンジェル/殺しの抱擁」 Olivia aka Prozzie aka Double Jeopardy (1983)

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監督:ウーリ・ロンメル
製作:ウーリ・ロンメル
脚本:ウーリ・ロンメル
   ジョン・P・マーシュ
   ロン・ノーマン
撮影:ウーリ・ロンメル
   ヨーキン・ブレイテンシュテイン
   ヨン・クランハウゼン
   デヴィッド・スパーリング
   ユルグ・V・ヴァルタール
編集:テレル・タネン
音楽:ジョエル・ゴールドスミス
出演:スザンナ・ラヴ
   ロバート・ウォーカー・ジュニア
   ビッブ・ハンセン
   ジェフ・ウィンチェスター
   ニコラス・ラヴ
   エイミー・ロビンソン
アメリカ・西ドイツ合作/84分/カラー作品




<あらすじ>
ロンドンの下町に住む平凡な主婦オリヴィア(スザンナ・ラヴ)は、子供の頃に売春婦だった母親(ビッブ・ハンセン)を目の前で殺されたという暗い過去がある。17歳で機械修理工リチャード(ジェフ・ウィンチェスター)と結婚し、専業主婦として夫のために弁当や食事を作る毎日を送っていた彼女だが、とある誕生日に突然亡き母親の声が聞こえるようになる。その声に命ぜられるまま売春婦となり、母親と同じように橋のたもとで客を取るオリヴィア。しかし、乱暴な性行為を強要されると反射的に相手を殺してしまう。
その頃、アメリカ人の建築士マイク・グラント(ロバート・ウォーカー・ジュニア)がロンドンへとやって来る。新たに架け替えられるロンドン橋を、アメリカのアリゾナに移築するためだ。ある晩、橋の近くで犬を散歩させているオリヴィアを見かけたマイクは、一目で恋におちてしまうのだった。紳士的で優しいマイクに身を委ねるオリヴィア。彼には人妻であることを隠して逢瀬を重ねる。しかし、そんな彼女を母親の声が激しく非難し、こらえきれなくなったオリヴィアはマイクに別れを切り出す。
だが、どうしても諦めきれないマイク。オリヴィアが人妻であろうと関係なかった。深夜に橋の上で会って愛を確かめ合う2人だが、そこへ妻の不倫に気付いたリチャードが現われ、マイクと激しいもみ合いになる。テムズ川へと転落するリチャード。慌てて夜の闇へと消えていくオリヴィア。マイクはたった一人橋の上に取り残された。
それから4年後。移築の完了したロンドン橋を見るためにアリゾナを訪れたマイクは、オリヴィアと瓜二つのアメリカ人女性ジェニー(スザンナ・ラヴ二役)を目撃して驚く。果たして彼女は他人の空似なのか、それともオリヴィアその人なのか。ジェニーに急接近するマイクだったが…。


世界広しと言えども、ウーリ・ロンメルほど作家としての方向性を大胆にギアチェンジした映画監督は珍しいかもしれない。もともとはドイツの巨匠ライナー・ウェルナー・ファスビンダーの愛弟子。ファスビンダー作品の常連俳優から映画監督へと転じ、ニュー・ジャーマン・シネマ期待の若手として頭角を現す。ドイツ表現主義の傑作『M』('31)に影響を受けた実験的ホラー映画『Die Zärtlichkeit der Wölfe(狼の優しさ)』('73)では、ベルリン国際映画祭の金熊賞候補となった。

その後ニューヨークへ拠点を移してからは、アンディー・ウォーホルの取り巻き一派に加わり、伝説のディスコ、スタジオ54に常連として入りびたり、デボラ・ハリーやミック・ジャガーなど大物ロック・スターたちと親交を深める。私生活では米国3大財閥の一つ、デュポン一族の令嬢スザンナ・ラヴと'79年に結婚。監督としてはウォーホルのプロデュースで『コカイン・ウォーズ』('79)を手掛け、ニューヨークのリアルなパンク・シーンを題材にした『ブランク・ジェネレーション』('80)を発表。この頃のロンメルは、ニューヨーク・アンダーグラウンド・シーンの最先端を行くヒップな映像作家だった。

ところが、『ハロウィン』('78)に始まるホラー映画ブームの真っ只中、何を思ったのか突然B級ホラー映画『死霊の鏡/ブギーマン』('80)を妻スザンナ・ラヴのポケットマネーで自主製作。しかも、主演は大富豪にして売れない女優だった妻スザンナその人。『ハロウィン』と『エクソシスト』を足して割ったようなチープ極まりない映画だったが、『処刑軍団ザップ』('70)や『サンゲリア』('79)の全米配給で知られるグラインドハウスの帝王ジェリー・グロスの配給で公開され、予想を遥かに上回る大ヒットを記録してしまう。これに味をしめたのか、ロンメルはその後低予算ホラー映画やエログロ映画を立て続けに発表。しょうもないクズ映画ばかり撮る監督として悪名を馳せることとなる。

そんなロンメルが、『死霊の鏡/ブギーマン』に続いて手掛けたのが本作。一言でいえば、ヒッチコックの名作『めまい』の劣化版コピーだ。今回も製作費を出した妻スザンナが主演。ベッドシーンでは大胆なヘアヌードにも挑んでいる。とりあえず演技力はクソだけどルックスは美人なので、これはこれでアリかなといったところ。ジャンルとしてはエロティック・サスペンスに分類されると思うのだが、エロはあってもサスペンスは全くない。別にヒロインが死んだりするわけでもないので、後半に登場する瓜二つの美女が本人であることは誰でも察しが付く。また、その背景として幼少期に母親の殺人現場を目撃したトラウマとか、頭の中で彼女に命令する亡き母親の声とかいった『サイコ』的な仕掛けも用意されてはいるが、結局のところまるっきり生かされないまま終わる。なんも関係ねーじゃん!って感じだ(笑)。

もともと企画の発端は、ロンメルが妻とアリゾナ州のレイクハバスシティを訪れた際に、ロンドン橋とそっくりな橋を見つけたこと。実はこれが'68年のロンドン橋架け替え工事の際に、イギリスから移築されてきた本物だと知った彼は、これを上手く使って映画を作れないものかと考えたのだそうだ。ただし、ストーリーは撮影しながら考えましょうといういい加減さ(笑)。脚本もない状態から、行き当たりばったりで撮影を進めたのだそうだ。撮影監督として、ロンメル自身を含む5人のカメラマンがクレジットされているのはそのため。明確なスケジュールが決まっていないため、その都度手の空いているカメラマンを雇ったのである。

ダークでミステリアスなノワール的雰囲気は悪くないものの、ロンメルの演出は締まりがなくてグデングデン。良くも悪くも、この人はアングラ実験映画の作家なんだと思い知らされる。要は、即興的なアート映画作りには強いけれど、コンヴェンショナルな娯楽映画を作らせるとまるでダメ。同じウォーホル組のポール・モリセイと一緒だ。モリセイの『悪魔のはらわた』と『処女の生血』が散々な仕上がりだったため、困った製作者のカルロ・ポンティがベテラン職人監督アントニオ・マルゲリティに作り直しを依頼したのは有名な話。あちらは客観的にマズイと判断できるプロがいたから良かったが、こちらはそういう幸運に恵まれなかった。

撮影を開始したのは'81年の初旬だったそうだが、結局全米公開されたのは'83年の3月。配給を担当したジェリー・グロスは、『死霊の鏡/ブギーマン』の成功よもう一度と期待したそうなのだが、残念ながら蓋を開けてみれば大コケ。あまりにも客入りが悪かったため、タイトルを変えて別作品としてもう一度公開したほどだったという。おかげでグロスはロンメルとの配給契約をこれっきりで打ち切り、既に用意されていた『魔女の棲む村』('83)と『ブレイン・ウェイブス/悪夢の生体実験』('83)はビデオ・ストレート扱いになった。ただし、ロンメル自身は本作をいたく気に入っているとのこと。まあ、おかしな映画であることは間違いないので、変わりもの好きでウーリ・ロンメルに興味のあるコアな映画ファンであれば、一度くらい見ておいても損はないとは思うけど。

なお、アメリカ人の建築技師マイク役を演じているのは、ロバート・ウォーカーとジェニファー・ジョーンズというハリウッドの大物スターを両親に持つサラブレッド俳優ロバート・ウォーカー・ジュニア。ジョン・ウェインの『戦う幌馬車』('67)やロバート・ミッチャムの『国境のかなたに明日はない』('69)などに出演して売り出されたものの、大して成功はしなかった。また、オリヴィアの夫リチャード役を演じているジェフ・ウィンチェスターはプロの俳優ではなく、撮影監督デヴィッド・スパーリングのアシスタントだ。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考ブルーレイ情報(イギリス盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:84分/発売元:88 Films (2016年)
特典/ウーリ・ロンメル監督インタビュー(約5分)/撮影監督デヴィッド・スパーリング インタビュー(約24分)/88 Films予告編集

by nakachan1045 | 2017-03-24 03:25 | 映画 | Comments(0)

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