なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「キング・オブ・ジプシー」 King of the Gypsies (1978)

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監督:フランク・ピアソン
製作:フェデリコ・デ・ラウレンティス
原作:ピーター・マーズ
脚本:フランク・ピアソン
撮影:スヴェン・ニクヴィスト
美術デザイン:ジーン・キャラハン
衣装デザイン:アンナ・ヒル・ジョンストーン
音楽:デヴィッド・グリスマン
出演:エリック・ロバーツ
   スターリング・ヘイドン
   シェリー・ウィンターズ
   スーザン・サランドン
   ジャド・ハーシュ
   ブルック・シールズ
   アネット・オトゥール
   アニー・ポッツ
   マイケル・V・ガッゾ
   マシュー・ラボート
   ステファン・グラッペリ
アメリカ映画/113分/カラー作品




<あらすじ>
現代のアメリカ。とあるジプシーの巨大なキャラバンへ、「ジプシーの王」を自称するキング・ザルコ(スターリング・ヘイドン)と妻クイーン・レイチェル(シェリー・ウィンタース)が訪れる。器量の良いジョルジオ(マイケル・V・ガッゾ)の娘ローズを、我が息子グロッフォの嫁にしようというのだ。しかし、ジョルジオに縁談を断られた上、ジプシーの長老会からは勝手に王を名乗ることを禁じられる。従うつもりのないキング・ザルコは、嫌がるローズを誘拐同然に連れ去ってしまう。
やがて歳月は経ち、グロッフォ(ジャド・ハーシュ)とローズ(スーザン・サランドン)との間に息子デイヴが生まれ、さらに妹のティタも誕生した。一族は大所帯でアメリカの各地を流れ歩き、詐欺や盗みで生計を立てている。ジプシーの絆は固く、自分たちの伝統的な掟に従って生きていた。だが、飲んだくれでしばしば家族に暴力を振るうグロッフォをキング・ザルコは見限っており、幼いながらも賢いデイヴをキングの跡継ぎにしようと考えていた。しかし、結婚相手ばかりか自分の人生まで祖父に決められてしまうことに反発したデイヴは、一族のもとを離れて家出をするのだった。
それから数年後、成人したデイヴ(エリック・ロバーツ)はニューヨークで当たり屋などをしながら生活していた。そんな彼を見つけたキング・ザルコは家族のもとへ連れ戻す。一族はニューヨークに定住していた。成長したティタ(ブルック・シールズ)や母親との再会を喜ぶデイヴだったが、父親グロッフォは相変わらずのクズ。息子に拳銃を向ける父に愛想を尽かしたデイヴは再び家を飛び出す。
イタリアン・レストランのボーイとして働き、恋人シャロン(アネット・オトゥール)と慎ましくも落ち着いた生活を送るデイヴ。そこへ母とティタがやって来る。キング・ザルコが危篤だというのだ。ジプシーとは関わり合いたくないデイヴだったが、愛する祖父に一目会うため病院を訪れる。すると、キング・ザルコは今わの際にキングの証であるメダルをデイヴに渡す。とはいえ、キングの座を継ぐつもりなどないデイヴは、そのメダルを父親に譲り渡すものの、キング・ザルコが自分ではなくデイヴを後継者に選んだことを恨むグロッフォは、息子を亡き者にしようと殺し屋を差し向けるのだった…。


いわばジプシー版『ゴッドファーザー』だ。20世紀の現代社会、しかもアメリカという先進国においてもなお、古くからの因習と掟を頑なに守り続ける流浪の民ジプシー。身内以外の人間は寄せ付けず、自分たちには関係がないからと国家にも法律にも従わず、それゆえに詐欺や窃盗などの犯罪を生業とし、個人の自由や権利よりも目上の者への絶対服従を最優先する。そんな閉鎖的かつ封建的な民族のリーダーとなることを、生まれながらに運命づけられながらも、自由を求めて外の世界へと飛び出した若者デイヴが、しかしその呪縛の波に飲み込まれていく姿が描かれる。ストーリーはまさしく『ゴッドファーザー』。己の道を歩もうともがき苦しむ主人公のデイヴは、さながらマイケル・コルレオーネである。

『バラキ』('72)や『セルピコ』('73)などの犯罪映画の原作者としても有名なベストセラー作家ピーター・マーズの小説を、『狼たちの午後』('75)でオスカーに輝いた脚本家フランク・ピアソンが脚色し、自ら演出も手掛けている。他にも『暴力脱獄』('67)や『推定無罪』('90)などの優れた脚本で知られるピアソンだが、しかし映画監督としてはいまひとつ。代表作である『鏡の国の戦争』('68)も『スター誕生』('76)も名作と呼ぶまでには及ばず、いまひとつ決定打に欠けるという印象が拭えない。それは本作も同様だ。

オリジナリティに欠けたストーリーはともかくとしても、この内容で2時間弱の上映時間は駆け足過ぎたかもしれない。主人公デイヴ自身のモノローグによる補足が加えられてはいるものの、全体的に彼の苦悩や葛藤、家族との確執のドラマに掘り下げが足りておらず、ことのほか軽い印象を受けてしまうことは否めまい。父親グロッフォと母親ローズの複雑な夫婦関係や、金のために売られたも同然な妹ティタの結婚についても、サラリとしか触れられていないのは片手落ちだ。ここをきっちりと丁寧に描かなければ、己の出自に対するデイヴの嫌悪感や反発心、自由を渇望する内面的な葛藤がリアルに伝わってこないのである。恐らく、本来ならばベルトルッチの『1900年』('76)のように、2部作構成の長尺で語られるべき話であったように思う。

その『1900年』を彷彿とさせるような映像美を随所で披露するのは、ベルイマン映画でもお馴染みの名カメラマン、スヴェン・ニクヴィスト。アメリカを舞台にしながらも映像の雰囲気は非常にヨーロッパ的で、どこか陰鬱とした物悲しさがペシミスティックなストーリーにとてもよく似合っている。終盤の血を分けた親子が殺し合うバイオレンス描写にも、ドラマチックな熱気と残酷な荒々しさが漲って印象的だ。また、東欧のロマ音楽を下敷きにした哀愁漂う音楽スコアもなかなかいい。演奏にはジャズ・ヴァイオリニストの第一人者ステファン・グラッペリが参加しており、スクリーン上でもその姿を拝むことが出来る。

そして、これが映画デビュー作だったデイヴ役エリック・ロバーツのハンサムなことときたら!確かに妹ジュリアとソックリではあるが、美しさに関しては兄エリックの方がずば抜けていることがよく分かる。当時はまだ22歳。少なくともこの頃のエリック・ロバーツは、非の打ちどころのない美男子という意味で若き日のアラン・ドロンにも匹敵すると言えよう。透き通るような白い肌に端正な顔立ち。どこか孤独な陰を漂わせているところもいい。演技に関しても申し分なしだ。

豪快で貫録たっぷりのスターリング・ヘイドンは、『ゴッドファーザー』や『1900年』のイメージそのまま。シェリー・ウィンタースの強面な肝っ玉母さんぶりは、『血まみれギャングママ』('70)と『グリニッチ・ビレッジの青春』('76)を足して割ったような感じだ。一方、映画『インデペンデンス・デイ』('96)やドラマ『NUMBERS ~天才数学者の事件ファイル』の温厚で優しいお父さん役のイメージが強いジャド・ハーシュが、ここでは飲んだくれの残酷で浅ましいDV親父役。さらに、当時32歳だったスーザン・サランドンがデイヴの母親役で登場し、息子への愛情とジプシーの伝統の狭間で葛藤しつつも、古い掟の呪縛から逃れられずに誤った選択をしてしまう母親の哀れを熱演している。もちろん、ブルック・シールズの美少女ぶりも秀逸。そのほか、キャスト陣の顔ぶれはかなり豪華で、その確かなアンサンブル演技がストーリーの弱点を補っている。

そんなわけで、脚本や演出の力不足は如何ともしがたいものの、格調高いカメラワークと音楽スコアの素晴らしさ、オールスター・キャストによる熱のこもった演技のおかげで、それなりに見応えのある作品には仕上がっている。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:113分/発売元:Olive Films/Paramount Pictures (2015年)
特典:なし

by nakachan1045 | 2017-05-11 00:58 | 映画 | Comments(0)

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