なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「脱走大作戦」 The Secret War of Harry Frigg (1968)

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監督:ジャック・スマイト
製作:ハル・E・チェスター
原案:フランク・ターロフ
脚本:ピーター・ストーン
   フランク・ターロフ
撮影:ラッセル・メティ
音楽:カルロ・ルスティケッリ
出演:ポール・ニューマン
   シルヴァ・コシナ
   アンドリュー・ダガン
   トム・ボスレー
   ジョン・ウィリアムズ
   チャールズ・グレイ
   ヴィト・スコッティ
   ジェームズ・グレゴリー
   ジャック・ルー
   ウェルナー・ピータース
   ノーマン・フェル
   バック・ヘンリー
アメリカ映画/110分/カラー作品




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<あらすじ>
第二次世界大戦中の1943年。北部イタリア戦線で、揃ってトルコ風呂に入浴中だった5人の連合軍将校が捕虜となってしまう。米軍のアームストロング准将(アンドリュー・ダガン)にペニーパッカー准将(トム・ボスレー)、英軍のメイヒュー准将(ジョン・ウィリアムス)にコックス=ロバーツ准将(チャールズ・グレイ)、そして仏軍のロシャンブー准将(ジャック・ルー)だ。
ローマ市内に将校クラスの捕虜収容所がないことから、フランチェスカ・デ・モンテフィオーレ伯爵夫人(シルヴァ・コシナ)が所有する豪華なヴィラに監禁されることとなった5人の准将。伊軍のフェルッチ大佐(ヴィト・スコッティ)に歓迎された彼らは、豪勢な食事や至れり尽くせりのサービス、そして伯爵夫人フランチェスカの美しさにすっかり骨抜きにされる。一応、脱走計画を立ててはみるものの、全員が同ランクの将校であるために意見がまとまらず、戦争などどこ吹く風の平和な毎日が過ぎていく。
一方、連合軍の最前線では、5人の将校が捕虜になって遊びほうけているとの噂でもちきり。困ったプレンティス准将(ジェームズ・グレゴリー)は、スパイを送り込んで彼らを強引に脱走させることにする。白羽の矢が立てられたのは二等兵フリッグ(ポール・ニューマン)。なにかと上官に盾つく彼は軍規違反でたびたび逮捕されるが、そのたびに脱獄に成功していたのだ。准将よりも1ランク上の少将へと一時的に昇格された彼は、残された刑期の帳消しと本物の昇格を交換条件に任務を引き受ける。
とりあえず捕虜としてヴィラに潜入したフリッグだったが、なにしろつい先日までは一兵卒だった身。突然偉くなったことで調子に乗ってしまい、さらにフランチェスカに夢中となったため、脱走計画のことなどどうでもよくなってしまう。そんな彼が偽物の少将であることを見抜いたフランチェスカは、彼の無責任な態度に鋭く釘をさす。
その言葉で目が覚めたフリッグ。仲良くなったフェルッチ大佐の昇進を祝うため、脱走計画を1日だけ延ばすことを決めたところ、イタリア軍がドイツ軍に降伏してしまい、ナチスのスティグニッツ少佐(ウェルナー・ピータース)が乗り込んで来る。ドイツ軍の捕虜収容所へ移送されたフリッグらは、決死の脱走を試みるのだが…。
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ポール・ニューマンとジャック・スマイト監督が、名作『動く標的』('66)に続いてコンビを組んだ映画なのだが、これが何を隠そう、前作のクールなハードボイルド路線から一転して底抜けにふざけた戦争コメディ。第二次世界大戦末期の北イタリア戦線を舞台に、捕虜となった5人の連合軍将校を奪還するため、脱走の達人たる米軍一兵卒が送り込まれるも、イタリア式のおもてなしと美女の歓待にメロメロとなってしまう。なんとも人を食ったというか、お気楽で愉快な作品に仕上がっている。
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笑いの肝となるのは、軍隊の格式ばった権威主義とメンツばかりを重んじる体質に対する痛烈な皮肉だ。いや、皮肉というよりもおちょくりと言った方がいいかもしれない。イタリアの風光明媚で豪華な伯爵邸で、およそ捕虜のイメージとは程遠いような至れり尽くせりの優雅な日々を満喫する連合軍将校たち。とりあえず脱走計画を立てては見るものの、もちろん居心地がいいということもあるが、それよりもなによりも全員が准将という同ランクゆえ、お互いが意地を張り合って全く意見がまとまらない。それは本部の方でも重々わきまえており、とりあえず将校がいつまでたっても戻ってこないというのは軍隊のメンツに関わるし、一刻も早く彼らを連れ戻さないことには士気の低下にもつながるってことで、脱獄常習犯の問題児であるフリッグ二等兵を准将よりも1ランク上の少将に昇格させ、敵陣へと潜入させることになるわけだ。
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で、このフリッグ二等兵。制作された年代が年代だけに、ベトナム反戦時代を象徴するようなアンチ・ヒーローとして描かれても良さそうなところなのだが、むしろ植木等的な軽~いノリのお調子者キャラ。愚直過ぎるくらい愚直な、庶民代表のいなかっぺだ。だからこそ、ここでは軍隊のおかしな点に対する風刺が際立つこととなる。例えば、フリッグ”少将”の到着を歓迎する晩餐会での一幕。彼が偽物の将校だと見抜いた伯爵夫人フランチェスカが、わざと出席者全員にお気に入りの一流レストランの名前を挙げるよう促す。それぞれの准将たちが世界各地の名店を次々と列挙していく中、初めて見るアスパラガスの食べ方すら分からずにまごついているフリッグスに答えられるはずがない。しまいには手洗い用の水で乾杯しようとする始末。すっかり恥をかかされたフリッグは、腹いせに「軍人がレストランに詳しくったってちっとも偉くなんかない!」と八つ当たりするのだが、なるほど彼の言うことは一理ある。贅沢に慣れ過ぎて軍人としての本分を忘れた将校たち。その後も、彼らの弛んだ根性やお腹にフリッグが活を入れることで、将校たちもまた初心を思い返さざるを得なくなっていくのである。
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一方のフリッグ二等兵も、にわか少将を演じることになったおかげで、自分自身の子供じみた生き方や考え方を反省していくことになる。すっかり伯爵邸の優雅な暮らしが気に入ってしまい、棚ぼたで手に入れた将校クラスの職権にも酔いしれ、美しきフランチェスカの魅力にもデレデレとなったことから、肝心の脱走計画を先延ばし先延ばしにしていくフリッグ。そんな彼にフランチェスカが鋭く釘をさす。「あなたは階級に伴う責任から逃げている。将軍のマネをして遊んでいるだけよ」と。彼が軍規違反でたびたび逮捕されていた理由もそこにある。上官には上官としての役割と責任があるわけだが、彼はそれを全く理解していなかったため、やみくもに盾ついていただけだったのだ。つまり、これは大人になりきれない未熟な反逆児の成長譚でもある。原題の「The Secret War of Harry Frigg」には、そういう意味も込められているのだ。
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このフランチェスカ役を演じているシルヴァ・コシナ(正確な発音はシルヴァ・コスチーナ)が抜群にいい。イタリア映画の名作『鉄道員』('56)の美少女役で注目された彼女も当時は30代半ば。まさに美しさの絶頂期だ。しかも、エレガントで上品でチャーミング。こういう大人の色香と余裕を兼ね備えた女優は、今となっては世界中の映画界を探しても見つからないだろう。これこそが映画スターですよ。本作でも、ハリウッドの大スター、ポール・ニューマンと並んで全く遜色なし。それだけに、容色の衰えた'70年代半ば以降、低予算のB級映画でヘアヌードも辞さないような役をやるようになったことは、返す返すも残念だった。
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で、いよいよ脱走計画を実行に移そうとなった矢先、敵側なれども愛すべきイタリア軍のフェルッチ大佐が准将へ昇格することが決まり、祝賀会を催すために計画を1日先延ばしにすることとなる。なにしろ、昇格の理由が「脱走騒ぎゼロの実績を評価されて」なのだから仕方あるまい。しかし、この善意が思いがけず仇となってしまう。というのも、祝賀会の夜を以ってイタリアはドイツに占領されてしまったからだ。かくして、ドイツ軍のスティグニッツ少佐によってナチスの捕虜収容所へと移送されてしまう主人公たち。豪邸での優雅な日々もオシマイ。それどころか、ナチスによる情け容赦ない拷問と尋問が待っている。ってことで、ここへきてようやく、日本語タイトル通りの脱走大作戦が展開していくことになるわけだ。
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ジャック・スマイト監督の演出はまさに軽妙洒脱。『シャレード』('63)や『スイート・チャリティ』('68)でお馴染みのピーター・ストーンが参加した脚本もウィットに富んでいる。これぞ大人向けのコメディといった按配だ。脇役陣では連合軍本部の飄々としたプレンティス准将を演じるジェームズ・グレゴリーと、そんな上司のお気楽ぶりに終始イラっとしているスタンリー大尉役のノーマン・フェルの名コンビぶりがなんとも絶妙。このノーマン・フェルの堅物キャラは『ブリット』('68)や『シンジケート』('73)などへと引き継がれていく。元一流ホテルのマネージャーゆえサービス精神が必要以上に旺盛なフェルッチ大佐を演じる、イタリア系アメリカ人俳優ヴィト・スコッティのマンマ・ミーア!なイタリア人ぶりも楽しい。また、『007』シリーズなどの悪役でお馴染みチャールズ・グレイが、珍しくユーモラスで人情味のある演技を披露しているのも見どころ。もちろん、単細胞だけれど正直で憎めない、いざという時に頼りになるフリッグを演じるポール・ニューマンの明朗快活さも魅力だ。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:日本語:地域コード:2/時間:110分/発売元:株式会社アイ・ヴィー・シー
特典:作品解説/スタッフ・キャスト紹介

by nakachan1045 | 2017-05-13 22:24 | 映画 | Comments(0)

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