なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「バンパイア・イン・ベニス」 Nosferatu a Venezia (1988)

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監督:アウグスト・カミニート
製作:アウグスト・カミニート
原案:カルロ・アルベルト・アルフィエリ
   レアンドロ・ルケッティ
脚本:アウグスト・カミニート
撮影:アントニオ・ナルディ
衣装デザイン:ヴェラ・コッツォリーノ
音楽:ルイジ・チェッカレリ
挿入曲:ヴァンゲリス
出演:クラウス・キンスキー
   バルバラ・デ・ロッシ
   クリストファー・プラマー
   ドナルド・プレザンス
   ヨルゴ・ヴォヤギス
   アンヌ・ネクト
   エルヴァイラ・オードレ
   クララ・コロジモ
   マリア・クレメンティーナ・クマーニ・クァジモド
イタリア映画/93分/カラー作品




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<あらすじ>
ヴァンパイア研究の第一人者であるカタラーノ教授(クリストファー・プラマー)がヴェネチアを訪れる。彼を招いたのは由緒正しい貴族カニンス家の令嬢ヘンリエッタ(バルバラ・デ・ロッシ)だ。
もともと16世紀にトランシルヴァニアからイタリアへと移住してきたカニンス家には、ヴァンパイアにまつわる伝説や噂が今も残されており、中でもヘンリエッタの祖先に当たる女性レティツィアは悪名高きヴァンパイア、ノスフェラトゥ(クラウス・キンスキー)の愛人だったとされている。彼女はその真相を突き止めるべく、カタラーノ教授の助けを求めたのだった。
しかし、カニンス家の女当主である侯爵夫人(マリア・クレメンティーナ・クマーニ・クァジモド)は一族の暗い過去を他人に探られることを嫌い、カニンス家に仕える神父ドン・アルヴィーゼ(ドナルド・プレザンス)はヴァンパイアを怪しげな迷信だと考えていた。
かつてヴェネチアへ流れ着いたノスフェラトゥだが、1786年のカーニバルで発生したペスト騒ぎの最中に姿を消し、そのまま消息を絶っている。ヘンリエッタは屋敷の地下墓地に収められた棺の中に、そのノスフェラトゥが眠っていると考えるが、もしそれが当たっていれば棺を開けることは危険だ。そこで、カタラーノ教授は降霊会で真実を確かめようと提案する。
霊媒師(クララ・コロジモ)を招いて開かれた降霊会だったが、ヘンリエッタが不可解な言葉を発して気を失ってしまう。その頃、遠く離れたスペインの地でノスフェラトゥが甦り、ヘンリエッタの声を頼りにヴェネチアへとたどり着く。
ある晩、侯爵夫人が窓から落ちて死亡した。カタラーノ教授らはノスフェラトゥの仕業だと直感する。世の中に絶望し永遠の命を呪うノスフェラトゥは、自らの死を望んでいたが、それは無垢な処女による純粋な愛にしか成就できない。ヘンリエッタは、うら若い妹マリア(アンヌ・ネクト)が狙われるのではないかと心配する。
やがてカーニバルが催され、ヘンリエッタは医師バルネヴァル(ヨルゴ・ヴォヤギス)と舞踏会へ出かけるが、そこにノスフェラトゥも現れた。かつて愛したレティツィアと瓜二つのヘンリエッタに心奪われるノスフェラトゥ。カタラーノ教授やバルネヴァル医師の努力も空しくヘンリエッタは連れ去られ、さらにマリアもノスフェラトゥの毒牙にかかるのだが…。
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イタリアン・ホラーが衰退の一途を辿るばかりだった'80年代の末、突如として現れた正統派ゴシック・ホラーが本作。興行的には全くの不発だったらしく、当時日本でもひっそりと上映されただけで殆ど話題にならず、その後はVHSで発売されたっきり。筆者は辛うじて映画館で見ることが出来たのだが、これがなかなか面白かった。現代の古都ヴェネチアに甦った吸血鬼ノスフェラトゥが、愛と死を探し求めて彷徨い歩く妖しくも哀しい物語。クラウス・キンスキー以下、錚々たる名優陣をキャストに揃え、中世ヨーロッパの伝統を今に残すヴェネチアで全編ロケされた壮麗な怪奇譚。ゴシック・ホラー好きにはたまらない要素が満載だ。とはいえ、改めて見直してみると欠点の多い作品でもあるのだが…(^^;
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そもそも、クラウス・キンスキーでノスフェラトゥといえば、誰もが思い浮かべるのはドイツの巨匠ウェルナー・ヘルツォーク監督の傑作ホラー『ノスフェラトゥ』('78)であろう。もともとノスフェラトゥというキャラクターは、ドイツ映画の巨匠F・W・ムルナウのサイレント映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』('22)に由来する。当初、ムルナウはブラム・ストーカーの怪奇小説「吸血鬼ドラキュラ」を映画化するつもりだったのだが、著作権を持つストーカー未亡人の許諾が得られなかったことから、ツルツルの禿げ頭に真っ白な顔で長い指を持ったインパクト強烈なオリジナル吸血鬼ノスフェラトゥが生み出されたのだ。で、それをリメイクしたのがヘルツォーク版『ノスフェラトゥ』だったわけだが、本作は本来その正統な続編として企画されたものだったという。
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ところが、蓋を開けてみると肝心のキンスキーが禿げ頭も特殊メイクも拒否。その結果、まるで金髪ロン毛の内田裕也が牙を付けただけのような、およそノスフェラトゥのイメージとは程遠いようなノスフェラトゥが登場することとなってしまった。共通項はクラウス・キンスキーが演じているという事実のみ。さすがにこれでは『ノスフェラトゥ』の続編は名乗れないだろう。
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なんといったって、映画界きってのナルシストな鬼畜クズ野郎として悪名を轟かせ、数々のトラブル伝説を残している怪優クラウス・キンスキー。その後も事あるごとに制作陣の頭を悩ませるわけだが、そもそも本作はそれ以外でもご難続きだった。マカロニ西部劇で知られるマウリツィオ・ルチディを監督に迎えて始まった撮影だが、製作者アウグスト・カミニートはその仕事ぶりに満足せず、カーニバル・シーンの撮影を終えた段階で彼を解雇する。次に社会派マフィア映画で有名な名匠パスクァーレ・スキティエッリ監督が起用されるものの、今度は全く別の問題が生じる。妥協を許さないスキティエッリ監督の方向性を実現するとなると、製作費が当初の予算を大きく上回る恐れが出たのだ。
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そこで、カミニートはベテラン職人監督マリオ・カイアーノを改めて起用。マカロニ西部劇の監督として有名なカイアーノだが、その一方でバーバラ・スティール主演の『亡霊の復讐』('65)というゴシック・ホラーの名作も撮っている。まさに適任だと思われたその矢先、撮影現場でキンスキーからたびたび侮辱されたカイアーノが、我慢しきれなくなって自ら降板。それまで全ての監督に満額でギャラを支払っていたカミニートは、これ以上新しい監督を雇う余裕もなければ、撮影スケジュールだって押しまくっているということで、自らメガホンを取ることを決意する。マカロニ西部劇の脚本家を経て、ルチオ・フルチ作品などのプロデュースを手掛けていたカミニートにとって、本作は唯一の監督作。当時はなぜ彼が…?と首を捻ったものだったが、そういう裏事情があったのである。なお、さすがのカミニートも慣れない演出を一人で手掛けることは不安だったらしく、『スタークラッシュ』('78)や『エイリアン・ドローム』('81)でお馴染みのルイジ・コッツィ監督にアシストして貰ったそうだ。
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さらに、ノスフェラトゥの最期(?)の恋人となる美しき処女マリア役には、当初大女優ステファニア・サンドレッリの愛娘アマンダがキャスティングされていたものの、キンスキーの猛反対でクビにせざるを得なくなる。恐らく、彼の好みではなかったのだろう。代わりに起用されたのは、ずぶの素人だったアンヌ・ネクト。彼女はバルネヴァル医師を演じているヨルゴ・ヴォヤギスの知人で、撮影現場へ遊びに来ているところを見かけたキンスキーが一目惚れし、カミニートを強引に説き伏せて出演させたのだ。もちろん、劇中では全裸のセックス・シーンもあり。まさに公私混同ですな(笑)。
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で、出来上がった作品はというと、やはりカミニート監督の経験不足が如実に表れていることは否めない。雰囲気重視なのは別に構わないのだが、あまりにもダラダラしているというか、全体の流れにメリハリがまるでないため、話はいつまで経っても一向に盛り上がらないまま。クラウス・キンスキーやクリストファー・プラマーが、ゴンドラに乗ったり歩いたりしながらヴェネチアを彷徨う姿を延々と見せられるだけというシーンも少なくない。さすがにこれはいかんだろう。
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ただし、映像の幻想的な美しさには特筆すべきものがある。これはひとえに、ジャンニ・アメリオ監督やピーター・デル・モンテ監督とのコラボレーションで知られる名カメラマン、トニーノ・ナルディ(本作でのクレジットはアントニオ・ナルディ名義)の力量に依るところが大きいと言えよう。また、ヴェネチアの荘厳な街並みや豪邸の内装を彩る華やかな美術品、絢爛豪華なインテリアなども見応えたっぷり。これぞヨーロッパ産ゴシック・ホラーの醍醐味といった感じだ。
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ただそこにいるだけで異様なオーラを放ちまくるクラウス・キンスキー、同じくそこにいるだけで画になるクリストファー・プラマー、そしてそこにいるだけで安心感を与えてくれるドナルド・プレザンスと、名優たちの存在に助けられている部分もかなり大きい。これは間違いなくキャスティングの勝利だ。さらには、当時イタリアで売れっ子女優だったバルバラ・デ・ロッシ、『その男ゾルバ』('64)や『リトル・ドラマー・ガール』('84)などハリウッド映画でも活躍したギリシャの名優ヨルゴ・ヴォヤギスなども出演。フェリーニ映画の常連だった怪女優クララ・コロジモも、霊媒師役で少ない出番ながら強烈なインパクトを残す。
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また、どことなく薄気味の悪い侯爵夫人を演じるマリア・クレメンティーナ・クマーニ・クァジモドも存在感抜群。この人、何者なのかと思ったら、あのノーベル文学賞に輝くイタリアの文豪、サルヴァトーレ・クァジモドの奥さんなのだそうだ。結婚前はバレリーナとして有名だったらしく、なるほど、不気味でありながらも高貴な香りの漂う理由はそれか。当時既に80歳という高齢だったようだが、その風格と貫禄は本作の厳かなムード作りに大いに貢献している。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.77:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:英語・イタリア語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:93分/発売元:One 7 Movies (2014年)
特典:フォトギャラリー

by nakachan1045 | 2017-05-18 02:33 | 映画 | Comments(0)

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