なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「サイコ3/怨霊の囁き」 Psycho Ⅲ (1986)

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監督:アンソニー・パーキンス
製作:ヒルトン・A・グリーン
脚本:チャールズ・エドワード・ポーグ
撮影:ブルース・サーティーズ
特殊メイク:マイケル・ウェストモア
音楽:カーター・バーウェル
出演:アンソニー・パーキンス
   ダイアナ・スカーウィッド
   ジェフ・フェイヒー
   ロバータ・マクスウェル
   ヒュー・ギリン
   カット・シェア
アメリカ映画/93分/カラー作品




<あらすじ>
カリフォルニアの荒野にポツンと建つ古い女子修道院。信仰心に迷いの生じた若い修道女モーリーン・コイル(ダイアナ・スカーウィッド)は、絶望のあまり鐘楼から身投げしようとしたところ、誤って先輩のシスターを転落死させてしまう。いたたまれず修道院を出た彼女は、ロサンゼルスを目指すロックスター志望の若者デューク(ジェフ・フェヒー)の運転する車に拾われるが、レイプされそうになって抵抗したところ逆に車から放り出された。
その頃、ベイツ邸ではノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)が実の母親スプール夫人の死体と共に暮らしていた。あれから1カ月が経ち、もはやすっかり精神に異常をきたしてしまったノーマンだが、町の人々はそのことに全く気付いておらず、スプール夫人の失踪についても彼に疑いの目を向ける者はいない。だが、ロサンゼルスから来た女性記者トレイシー(ロバータ・マクスウェル)だけは違った。ノーマンが再び人殺しを始めたと信じる彼女は、彼の身辺を調査していた。
ある日、ダイナーを訪れたノーマンに取材を試みるトレイシー。そこへ、徒歩で町へたどり着いたモーリーンがやって来る。かつての犠牲者マリオン・クレインと同じM.C.のイニシャルが入ったカバンを見てギョッとするノーマン。さらに、マリオンと瓜二つのモーリーンの容姿を見て強い衝撃を受ける。
ベイツ・モーテルでは、旅の途中で所持金の尽きたデュークがアルバイトで働くようになっていた。そこにモーリーンが部屋を求めてやって来る。マリオンと同じ1号室に宿泊することとなった彼女は、シャワールームで自殺を試みたところ、そこへ母親に成り替わったノーマンがナイフを片手に現れる。彼女を殺すつもりだったものの、思いがけない展開に驚いて病院へ担ぎ込むノーマン。モーリーンはノーマンこそ自分を救ってくれる存在として心酔するようになる。
モーテルを訪れるふしだらな客たちを殺害しながらも、モーリーンと本気で愛し合うようになるノーマン。その頭の中では、平凡な幸福を求める彼自身とその邪魔をする母親の2つの人格が闘っていた。一方、トレイシーから情報提供を求められたデュークは、彼女からノーマンの暗い過去を教えられ、恐喝のネタにしようとする…。

批評的にも興行的にも成功を収めた『サイコ2』('83)から3年後に公開されたシリーズ第3弾。ノーマン・ベイツを当たり役にするアンソニー・パーキンスが、今度は監督も兼ねるということで話題を呼んだが、しかし前作とは打って変わって批評家には酷評され、興行成績も全く奮わなかった。なるほど、映画史に燦然と輝く傑作たる1作目はおろか、前作にすら完成度の点において遠く及ばないことは確かだが、しかし宗教色を帯びた独特のダークな世界観と、露骨な残酷描写や性描写の醸し出す下世話なB級感の組み合わせは意外と面白く、単なる失敗作として片づけるには惜しい映画でもある。

ズームレンズを使った教会の鐘楼からの転落シーンという、ヒッチコックの『めまい』('58)への明らかなオマージュで幕を開ける本作。神への信仰心を失った修道女モーリーンが、そのことによって重大な罪を犯してしまい、放浪の末にたどり着いたベイツ・モーテルでノーマン・ベイツと宿命的な出会いを果たす。シャワールームで自殺を試みたところ、命を助けてくれたノーマンに神の救いを見出し、やがてそれが愛情へと変わっていく。実のところ、母親に人格を乗っ取られたノーマンは彼女を殺すつもりだったものの、思いがけず助けることになってしまっただけなのだが。両手首を切って意識の朦朧とするモーリーン。その目の前に現れるナイフを持った女装のノーマン・ベイツが、彼女の眼には十字架を手にした聖母マリアに見えてしまうという描写がまた面白い。そんなモーリーンに対して自身も愛情を覚えつつ、同時に心の中の悪魔=母親の人格とも格闘するノーマン。これはある意味、迷える子羊たる罪深い男女が惹かれあい、その交流を通じて魂の救済を見出していく物語とも言えるだろう。ただ、結果的にこの要素はうやむやになってしまい、凡庸なクライマックスへと落ち着いてしまうことになる。そこがなんとも惜しい。

そのモーリーン役を演じている女優ダイアナ・スカーウィッドも本作の大きな弱点の一つ。どちらかというと地味で田舎臭い風貌ゆえ、ヒロイン向きの女優とは言えないし、なによりもブロンドのショートカットという髪型以外、1作目のマリオン役を演じたジャネット・リーとは似ても似つかないのだ。これではさすがに、マリオンと生き写しの美女という設定には無理があり過ぎる。死んだ女性に瓜二つの女性と恋に落ちるという流れは、冒頭シーンと同じく『めまい』へのオマージュと思われるが、ここはもうちょっと似たような魅力のある女優をキャスティングすべきだったように思う。ちなみに、もともとユニバーサル映画が想定していた当初のアイディアでは、ジャネット・リー本人がマリオンとソックリな精神科医を演じることになっていたらしいが、この案は早い段階で却下されたようだ。確かに、そっちの方がもっと無理がある(笑)。

また、前作ではノーマンの意外な出生の秘密がラストのどんでん返しで効果を上げていたが、本作でもさらにそれを覆すような生い立ちの真相がクライマックスで明かされる。正直、またかよ!といった感じ。とりあえず、その真相によってノーマンはようやく母親の呪縛から解放されるわけなので、全く意味がないというわけではないものの、しかしそれでも二番煎じの印象は免れまい。そういうわけなので、本作を鑑賞するに当たって前2作の予習は必須。でないと、終盤の展開がなんのことだか分からなくなってしまうだろう。

さらにさらに、当時のスラッシャー映画ブーム&スプラッター映画ブームを特に意識してのことなのだろうが、ユニバーサルというメジャー・スタジオ製作の映画としてはかなり過激な性描写および残酷描写も賛否の分かれるところかもしれない。死体の隠されたクーラーボックスに手を入れた保安官が、よく中を見ないまま血の付いた氷を口に入れてほおばるなんてシーンもなかなか悪趣味。よく考えると、血の味で気づきそうなものなんだけれどね(笑)。デューク役のジェフ・フェヒーは股間丸出しの全裸シーンをパーキンス監督に要求されたそうなのだが、さすがにそこまでは抵抗感があったことから、ランプで大切な部分をなんとか隠している。また、モーリーン役のダイアナ・スカーウィッドはそもそもヌード自体がNGだったため、後にB級ホラー映画のスクリーム・クィーンとして名を馳せるブリンク・スティーブンスが着替えシーンのボディ・ダブルを担当。スティーヴンスは『ボディ・ダブル』('84)でもメラニー・グリフィスのヌード代役を受け持っていた。

脚本を手掛けたのはデヴィッド・クローネンバーグ監督のメジャー出世作『ザ・フライ』('86)で知られるチャールズ・エドワード・ポーグ。こちらの方が製作期間が短かったため完成は早かったが、実際は『ザ・フライ』の最終稿を書き上げた直後から本作に着手したという。撮影監督は『白い肌の異常な夜』('71)から『ダーティハリー』('71)、『アルカトラズからの脱出』('79)などを経て『ペイルライダー』('85)に至るまで、一連のクリント・イーストウッド作品を手掛けた名カメラマン、ブルース・サーティーズ。また、『マスク』('85)でオスカーに輝いたマイケル・ウェストモアが特殊メイクを担当している。父親は『風と共に去りぬ』('39)や『レベッカ』('40)のモンテ・ウェストモア、叔父は『大アマゾンの半魚人』('54)や『スパルタカス』('60)のバド・ウェストモア。祖父の代からハリウッドで活躍するメイクアップ・アーティスト一族、ウェストモア・ファミリーの一員だ。もともと'61年からユニバーサル専属だった彼は、'70年代初頭にはフリーとなっていたものの、かつての専属スタッフを集めたいというユニバーサルの意向で招集されたという。確かに美術デザインのヘンリー・バムステッド(ヒッチコックの『知りすぎた男』や『めまい』も担当)や衣装デザインのピーター・V・サルドゥッティ、スクリプト・ス-パーバイザーのベティ・グリフィンなど、本作には'50~'60年代にユニバーサル専属だったスタッフが多く参加している。

ロック・スター志望の女たらしなチンピラ男デューク役には、当時『シルバラード』('85)や『バックファイア』('87)などで頭角を現していたジェフ・フェヒー。今でこそテレビドラマ『LOST』や映画『グラインドハウス』('07)のアクの強いクセ者俳優というイメージの強いフェヒーだが、当時は危険な匂いを醸し出す不良系イケメン俳優というポジションだった。まあ、ケヴィン・J・オコナーとかヴィンセント・ドノフリオと同じパターンですな。一方、執拗なまでにノーマンを追い詰める女性記者役には、ブロードウェイの舞台女優として有名なロバータ・マクスウェル。映画ではいまひとつ成功しなかった。また、殺された挙句にクーラーボックスへ押し込められる犠牲者パッツィ役に、その後映画監督として『ストリッパー殺人事件』('87)や『キャリー2』('99)などを手掛けるカット・シェア。本作が女優として最後の仕事だった。そのほか、保安官役ヒュー・ギリンやウェイトレス役リー・ガーリントンらが前作に引き続いての再登板。ノーマンの母親役の声も、前2作同様にヴァージニア・グレッグが担当している。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio・2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:93分/発売元:Scream Factory/Universal Studios
特典:脚本家チャールズ・エドワード・ポーグによる音声解説/俳優ジェフ・フェヒーのインタビュー(約17分)/女優カット・シェアのインタビュー(約9分)/女優ブリンク・スティーヴンスのインタビュー(約5分)/特殊メイク担当マイケル・ウェストモアのインタビュー(約11分)/オリジナル劇場予告編

by nakachan1045 | 2017-05-27 23:54 | 映画 | Comments(0)

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