なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「サイコ4」 Psycho Ⅳ:The Beginning (1990)

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監督:ミック・ギャリス
製作:ジョージ・ザルーム
   レス・メイフィールド
製作総指揮:ヒルトン・A・グリーン
脚本:ジョセフ・ステファノ
撮影:ロドニー・チャーターズ
美術デザイン:マイケル・ハナン
特殊メイク:トニー・ガードナー
音楽:グレーム・レヴェル
オリジナル音楽:バーナード・ハーマン
出演:アンソニー・パーキンス
   オリヴィア・ハッセー
   ヘンリー・トーマス
   CCH・パウンダー
   ウォーレン・フロスト
   ドナ・ミッチェル
   トーマス・シャスター
   ジョン・ランディス
アメリカ映画(テレビ用)/96分/カラー作品




<あらすじ>
ラジオの人気女性DJ、フラン・アンブローズ(CCH・パウンダー)の担当するトーク番組。ある晩、精神科医リッチモンド(ウォーレン・フロスト)や元服役囚らをゲストに招き、母親殺しをテーマに話を進めていたところ、「エド」と名乗るリスナーからの電話が入る。自分も母親を殺したことがあると告白する「エド」。その正体はノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)だった。
4年前に精神病院を出て社会復帰し、かつて自分の担当だった精神科医コニー(ドナ・ミッチェル)と結婚して平穏な生活を送っているノーマン。それでもなお、自分の中に眠る悪魔と闘い続けている彼は、電話の向こうで固唾を飲んで聴いているフランたちに自らの過去を語り始める。
母親ノーマ(オリヴィア・ハッセー)は少女のように無邪気で愛情溢れる美しい女性だったが、しかし一方でガラス細工のように繊細で情緒不安定なところがあり、少年時代のノーマンはいつも母親のご機嫌を伺っていた。特に父親が蜂に刺されて死んでしまい、女手一つで子供を育てつつモーテルを経営するようになってからは、ノーマの気分のむらは激しくなっていく。ノーマンは幼いながらも、男である自分が母親を守らねばという意識に目覚めていった。
やがて思春期の若者に成長したノーマン(ヘンリー・トーマス)は、一家の大黒柱としてモーテルの切り盛りをしていたが、母親の精神状態はより不安定になっていく。特に息子の”性の目覚め”に対する嫌悪感は激しく、時には罰として無理矢理女装や化粧をさせてクローゼットに閉じ込めることすらあった。おかげでノーマンは、性に対する過度な罪悪感を植え付けられたのである。
それでも、母一人息子一人で支え合いながら生きていたベイツ親子。そんなある日、母親にチェット(トーマス・シャスター)という愛人が出来る。粗暴にして傲慢、無職でヒモ状態のチェットをノーマンは毛嫌いするが、腕力ではまるで歯が立たず、母親も息子の味方をしてくれない。思い余ったノーマンはアイスティーに毒薬を混ぜ、母親とチェットを殺害。それ以来、亡き母親が彼の頭の中に棲みつき、殺人の凶行を重ねていったのだった。
電話の向こうの相手がノーマン・ベイツであることに気付いたフラン。そんな彼女に、ノーマンは次なる殺人を予告する。必死の説得を試みるフランだったが…。

映画版『サイコ』シリーズの最終章。とはいえ、前作『サイコ3/怨霊の囁き』が興行的に不入りだったことから、本作はテレビ映画としてケーブル局Showtimeにて放送されている。製作費もたったの400万ドル。ちょうど当時、フロリダ州のオーランドにテーマ・パークとしてユニバーサル・スタジオ・フロリダがオープンしたばかりで、製作元ユニバーサルがゴーサインを出した条件の中には、本作のためフロリダのパーク敷地内に建設されたベイツ・モーテルおよびベイツ邸を、撮影終了後にアトラクションとして寄贈する旨が記されていたという。なので、恐らく同テーマ・パークのプロモーションを兼ねた企画だったのだろう。なるほど、アトラクション建設費+宣伝費と考えれば、400万ドルは妥当な金額かもしれない。

注目すべきは、オリジナル版『サイコ』('60)を手掛けたジョセフ・ステファノが脚本を書いていること。彼は2と3のストーリーが気に入らなかったらしく、そのため前2作で明かされたノーマンの出生の秘密はまるごとなかったことになっている。そればかりか、前2作で起きたこと自体が一切触れられていない。なので、これはある意味、1作目のダイレクトな続編とも言えるだろう。そのテーマは、殺人鬼ノーマン・ベイツがいかにして生まれたのか。ある種の近親相姦にも似た歪んだ親子関係を軸に、母親の支配と抑圧によって精神を蝕まれていくノーマンの心の闇を浮き彫りにしていく。とはいえ、ラジオのトーク番組での告白というフォーマットはやや陳腐に感じられることも否めず、殺人予告への繋がりも強引な印象が拭えない。やはり、『サイコ』が傑作たりえたのはヒッチコック監督の類稀な才能の賜物であり、ステファノは彼の意向を脚本という形で汲み上げたに過ぎないことを思い知らされる。

また、ミック・ギャリス監督の演出も一長一短である。当初はアンソニー・パーキンスが3に続いて演出を強く望んだらしいが、なにしろ前作が批評的にも興行的にも惨敗だったため、ユニバーサルはあえなくその要望を却下。スティーブン・スピルバーグ監督がユニバーサルで製作したテレビシリーズ『世にも不思議なアメージング・ストーリー』('85~'87)の脚本で頭角を現し、当時やはりユニバーサルが配給したテレビシリーズ『狼女の香り』('90~'91)のクリエイターを務めたギャリスに白羽の矢が立てられた。しかしながら、監督としてはB級映画『クリッター2』('88)くらいしか実績のなかったギャリス。そのため、撮影が始まって暫くのパーキンスは、ギャリスの演出力に対する疑問や不信感が拭えず、なにかにつけて腕を試すような言動が目立ったという。なにしろノーマン・ベイツは彼にとって生涯の当たり役。我こそが『サイコ』を一番理解しているという自負も強かったらしい。それゆえ、ギャリスはパーキンスの挑発や質問攻めに悩まされることも多かったという。

それはともかくとして、本人がヒッチコックよりもマリオ・バーヴァやダリオ・アルジェントを意識したと認める、ギャリス監督の演出は賛否あって然るべきだろう。特に原色の照明を多用したフラッシュバック・シーンのビジュアルは極めてイタリアン・ホラー的。部分的にヒッチコックへのオマージュは見受けられるものの、あくまでも限定的なものであり、もはやオリジナルの面影は殆ど見られないに等しい。辛うじて、新たにレコーディングされたバーナード・ハーマンの音楽スコアがヒッチコック版の名残を感じさせる程度。本作に対する映画ファンからの評価が著しく低いことも納得だ。極端な話、ベイツ母子を全く別のキャラクターに置き換えても映画として成立するだろう。

その一方で、ノーマン・ベイツと母親の危険で複雑な関係を、ノスタルジックで瑞々しい抒情性とダークでインモラルな雰囲気を交えながら描いた点は高く評価できる。中でも、ノーマ役にオリヴィア・ハッセーを起用した功績は大きい。我が子を溺愛する優しい母親と男に依存しまくる生々しい女の極端な二面性を兼ね備え、それゆえに精神を病んでいく哀れな女性。この聖母のように清らかな淑女と悪魔のように残酷な鬼女の顔を併せ持つノーマ・ベイツという特異なキャラクターには、『ロミオとジュリエット』('68)のジュリエット役で一世を風靡した永遠の清純派のイメージを色濃く残す美熟女オリヴィアが演じるからこその説得力がある。明らかに息子を誘惑しているだろ!と言いたくなる艶めかしいスキンシップ・シーンなどは出色だ。それでいて、いざ思春期の敏感な息子のムスコが反応してしまうと、途端に態度が豹変。嫌悪感をむき出しにして罵詈雑言を浴びせる。そりゃノーマンが屈折してしまうのも仕方なかろう。で、後ろめたさもなく女を全開にして頼れる愛人が出来てしまうと、今度は息子のことなどそっちのけで情欲に溺れていく始末。オリヴィアの鬼気迫る大熱演が素晴らしい。

その点、ノーマン役のアンソニー・パーキンスは、良くも悪くもいつものアンソニー・パーキンス。むしろ、若き日のノーマンに扮したヘンリー・トーマスの好演が光る。『E.T.』('82)の主人公エリオット役で脚光を浴びたヘンリー少年も撮影当時は18歳。内向的で感受性の豊かな若者ゆえの危うさを見事に体現している。そう考えると、本作はキャスティングの面では大いに成功していると言えるかもしれない。女性DJ役のCCH・パウンダーも手堅い演技でストーリーを支えている。これまた、出世作『バグダッド・カフェ』('87)のエキセントリックなイメージとは真逆のクールな存在感が印象的だ。ちなみに、ラジオ局のディレクター役でギャリス監督の師匠であるジョン・ランディス監督、そのアシスタント役でギャリス監督夫人シンシアが顔を出しているのも要注目。

なお、ミック・ギャリス監督は次回作『スリープウォーカーズ』('92)でも近親相姦的な母親と息子の狂気を描いているわけだが、その母親役に本作と同じくオリヴィア・ハッセーを想定していたらしい。結果的に、スタジオ側の判断でアリス・クリーグをキャスティングすることになったわけだが。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:96分/発売元:Scream Factory/Universal Studios
特典:ミック・ギャリス監督、オリヴィア・ハッセー、ヘンリー・トーマスによる音声解説/特殊メイク担当トニー・ガードナーのインタビュー(約28分)/撮影舞台裏映像(約13分)/音楽レコーディング風景映像(約6分)/フォト・ギャラリー

by nakachan1045 | 2017-05-29 05:24 | 映画 | Comments(0)

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