なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「燃えよNINJA」 Enter The Ninja (1981)

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監督:メナハム・ゴーラン
製作:ジャド・バーナード
   ヨーラム・グローバス
原案:マイク・ストーン
脚本:ディック・デズモンド
撮影:デヴィッド・ガーフィンケル
スタント指導:マイク・ストーン
編集:マーク・ゴールドブラット
   マイケル・ダティー
音楽:W・マイケル・ルイス
   ローリン・リンダー
出演:フランコ・ネロ
   スーザン・ジョージ
   ショー・コスギ
   クリストファー・ジョージ
   アレックス・コートニー
   ウィル・ヘア
   ツァッチ・ノイ
   コンスタンティン・グレゴリー
   デイル・イシモト
アメリカ映画/99分/カラー作品




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<あらすじ>
日本で忍者の修行を終えたアメリカ人の元傭兵コール(フランコ・ネロ)は、その足でフィリピンのマニラへ向かう。かつてアフリカの戦争で共に戦った親友フランク(アレックス・コートニー)に呼ばれたのだ。
現地に広大な農園を持つフランクだったが、片腕に鉤爪を付けた通称フック(ツァッチ・ノイ)率いるならず者集団に悩まされていた。土地の買収を拒んだところ、彼らは従業員に対して暴行を働くようになり、農園は慢性的な人手不足の状態に。すっかり意気消沈したフランクは酒浸りとなり、負けん気の強い妻メアリー・アン(スーザン・ジョージ)が農園の切り盛りをしていた。
実は、フックの背後にいる黒幕は国際的な大物企業家ヴェナリウス(クリストファー・ジョージ)だった。フランクの土地に大量の石油資源が眠っていることが判明したことから、安値で買い叩いて奪い取ろうと考えていたのである。
しかし、コールが農園の用心棒代わりとしてならず者たちを次々と撃退。業を煮やしたヴェナリウスはフックをクビにし、右腕のパーカー(コンスタンティン・グレゴリー)にコールを始末するよう命令する。
ところが、コールはフランクや便利屋ダラーズ(ウィル・ヘア)と組んで、パーカーが揃えた選りすぐりの武装集団をも一網打尽にしてしまう。コールの正体が忍者だと知ったヴェナリウスは、「忍者を倒すのは忍者しかいない」と考え、パーカーを日本へ向かわせる。そこでスカウトしたのは、コールが修行を積んだ際の兄弟弟子であり、外国人忍者である彼を邪道だと敵視するライバル、ハセガワ(ショー・コスギ)だった。
コールがヴェナリウスのオフィスを偵察している間に農園へ侵入したハセガワは、フランクを殺害してメアリー・アンを誘拐。親友の死体を発見して怒りに震えるコールは、白装束の忍者として敵の本陣へと乗り込み、メアリー・アンを救うため黒装束に身を包んだ宿敵ハセガワと対決することになる。
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'80年代のアメリカにおけるニンジャ映画ブームの火付け役となった作品である。あくまでも忍者映画ではなくてニンジャ映画。なぜなら、それは欧米人の東洋文化に対する憧憬や好奇心や誤解がごちゃ混ぜになったファンタジーであり、日本のリアルな忍者とは全く別の代物だからだ。それゆえ、日本人から見ればトンチンカンで荒唐無稽な作品も多い。…というか、ほぼ全てのニンジャ映画は多かれ少なかれトンデモ系であり、もちろん本作の場合も御多分に洩れない。なんじゃそりゃ!?なデタラメ描写も満載だ。とはいえ、それまで欧米ではあまり一般的ではなかったニンジャの名称を広く浸透させ、現代のサブカルチャーを代表するアイコンとしてメジャーな存在へ押し上げた功績は計り知れないだろう。それこそ『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』(原作コミックは'84年出版)だって、『燃えよNINJA』の成功がなければ生まれなかったかもしれない。
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折からの日本ブームに沸いていた当時のアメリカ。徳川家康の外交顧問だったウィリアム・アダムスをモデルにした、ジェームズ・クラヴェルの歴史小説『将軍』が'75年に出版され、1500万部を売り上げる空前のベストセラーに。'80年に出版されたエリック・ヴァン・ラストベーダーのニンジャ小説『ザ・ニンジャ』も大ヒットし、現在までに7作の続編が執筆されているほどの人気シリーズとなった。このブームにハリウッドが目を付けないはずもなく、『将軍』はテレビのミニシリーズとして製作され、最高視聴率36.9%の大ヒットを記録し、日本やヨーロッパでは再編集版が劇場公開されて話題を呼んだ。千葉真一や三船敏郎が出演した『武士道ブレード』(81)や、巨匠ジョン・フランケンハイマー監督の『最後のサムライ ザ・チャレンジ』('82)など、日本を題材にした映画も続々と作られるように。そうした日本ブームの副産物として派生したのが、'80年代のニンジャ映画ブームだったとも言えるだろう。
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ちなみに、アメリカで最初のニンジャ映画は本作ではない。チャック・ノリス主演の『オクタゴン』('80)だ。日本の忍者に育てられたアメリカ人青年が、悪のニンジャ軍団と戦うというお話。チャック・ノリス演じる主人公は、あくまでもニンジャに精通した空手武道家という設定だった。なので、厳密にはニンジャ映画というよりもマーシャル・アーツ映画。ニンジャ映画ブームに直接的な影響を及ぼすことはあまりなかったと言えよう。また、先述したエリック・ヴァン・ラストベンダーの小説『ザ・ニンジャ』の権利を20世紀フォックスが取得し、ジョン・カーペンター監督で映画化するという企画も当時存在したが、脚色が難航した末に頓挫している。そうした中、当時まだ弱小インディペンデント映画会社だったキャノン・フィルムによって製作されたのが、この『燃えよNINJA』だった。
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監督はキャノン・フィルム総裁であるメナハム・ゴーランその人。もともとイスラエルの売れっ子映画監督だったゴーランは、ハリウッドで成功するという大志を抱いて、従兄弟の映画製作者ヨーラム・グローバスとともに渡米。グラインドハウス向けにB級・C級映画を制作・配給していたキャノン・フィルムを'79年に安値で買収し、低予算ホラーを中心に作品を発表していたが、なかなかヒットに恵まれないでいた。そんな折、一本の脚本がゴーランの元へ届けられる。執筆したのは元全米空手チャンピオンで、当時はプロのボディガードとして働いていたマイク・ストーン。当時の日本ブームを意識していたゴーランは、これはいけると直感してすぐにゴーサインを出す。脚本のタイトルは『Dance of Death』。これをディック・デズモンドなる人物とゴーランがリライトし、あのブルース・リーの傑作『燃えよドラゴン(Enter the Dragon)』('73)の知名度にあやかって、『燃えよNINJA(Enter the Ninja)』という新タイトルが付けられたというわけだ。
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予算は150万ドル。ハリウッド映画としては明らかに低予算だが、当時のキャノン・フィルム作品は100万ドル以下で作られるものが大半だったので、ゴーランとしてはそれなりに期待をかけた企画だったのだろう。撮影地は人件費の安いフィリピン。当初は『エイリアン・ゾンビ』('87)のエメット・オルストン監督が演出を、原作者のマイク・ストーンが主演を務めることになっていた。しかし、撮影現場を視察したゴーランはオルストンの仕事ぶりに不満を感じ、彼を解雇して自ら監督することに。さらに、演技素人のストーンでは主役を務めるのは無理だと判断。ちょうど当時、マニラ国際映画祭に出席するためフィリピンを訪れていた俳優フランコ・ネロを主演俳優として口説き落とし、ストーンにはスタント指導および主人公のボディダブルとして残って貰うことにする。このゴーランの臨機応変さこそ、その後短期間でキャノンをハリウッド最大のインディペンデント映画会社へと成長させた秘訣なのかもしれない。
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日本で修行の末に忍者免許皆伝を授かったアメリカ人が、フィリピンに住む親友夫婦や現地住民を困らせる悪徳実業家一味を一網打尽にし、敵の用心棒となったライバルの日本人忍者と死闘を繰り広げる…というのが大まかなあらすじ。プロットの基本は西部劇だ。そう考えると、なるほど、マカロニ西部劇スター、フランコ・ネロの起用は理に適っているとも言えよう。とはいえ、脚本の設定は相当にいい加減。だいたい、主人公が白装束という時点で、忍びの者として失格だ。それじゃ逃げも隠れも出来んだろう!と(笑)。なので、やはりここは忍者ではなくニンジャ。白装束=正義、黒装束=悪と、誰が見ても一目で分かるようにしつらえたのだろう。その他にも、本来なら地面にばら撒くはずの撒菱を敵の顔面に投げつけたり、そもそも忍具ではないヌンチャクを使ったりと、首を傾げるようなシーンのオンパレード。第一、忍者に免許制度ってあるのか?と突っ込まずにはいられない。一方で、忍者の保身術でもあった「九字護身法」は割と正確に描写されている。いずれにせよ、良きにつけ悪しきにつけ、本作に登場する間違いだらけの忍者像は、その後のアメリカ産ニンジャ映画におけるプロトタイプとなるわけなのだが。
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恐らく、メナハム・ゴーラン監督が目指したのは香港のB級カンフー映画なのだろう。黒装束のニンジャが次々と格闘技の型を披露するオープニングのタイトル・クレジットも、'70年代のショー・ブラザーズ作品を彷彿とさせるものがある。根っからの映画マニアだったゴーラン監督のこと、日本の忍者映画についての予備知識があったかどうかは定かでないが、少なくとも'70年代に世界的ブームを呼んだカンフー映画は確実に見ていたはず。それらの作品をお手本にしたのではないかと思われる。そう考えると、荒唐無稽そのものの演出もある意味で納得だ。往々にして映画興行師としては一流だったけど映画監督としては二流だった言われるゴーランだが、しかし後の実録戦争映画『ハンナ・セネッシュ』('88)やミュージカル映画『三文オペラ』('89)を堂々たる正統派のハリウッド大作映画として仕上げたように、演出家としての力量は十分に備えていた。そもそも初期のギャング映画『暗黒街の顔役』('74)や戦争映画『サンダーボルト救出作戦』('78)だって完成度は非常に高い。どれだけ優秀な映画監督だって、傑作もあれば駄作だってある。本作や『デルタ・フォース』('84)、『オーバー・ザ・トップ』('87)など一部の映画をあげつらって、さも鬼の首を取ったかのごとくバカにするのは、己の無知と不勉強をさらけ出すようなものだ。
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閑話休題。ニンジャ映画ブームの起爆剤となった本作は、同時にショー・コスギというニンジャ映画スターを生み出したことでも、特筆すべきものがあると言えよう。本名は小杉正一という日本人。売れない役者としてハリウッドでの長い下積みを経験する一方、格闘家として北米各地の大会で数百にも及ぶトロフィーを獲得し、ロサンゼルスに空手道場を開いて成功を収めていた。そんな彼がアクション俳優としてブレイクするきっかけとなったのが本作。主人公と敵対する黒装束の忍者ハセガワを演じた彼は、時として主演の国際的スター、フランコ・ネロを食ってしまうほどの存在感を発揮している。本格的な武術の見せ場もコスギの独壇場。ネロのスタント・ダブルを担当したマイク・ストーンをも完全に圧倒している。本作でコスギのポテンシャルに着目したゴーランは、次回作「ニンジャⅡ/修羅ノ章』('82)では彼を主演スターへと昇格させ、スタンド指導も任せることにする。かくして、コスギはハリウッド史上初のニンジャ映画スターとして一躍時の人となるわけだ。ちなみに、冒頭の忍者修行最終テスト・シーンにおいて黒装束の忍者として登場するコスギだが、よく見るとその他大勢の赤装束ニンジャの中にもコスギが紛れている(笑)。恐らく、格闘技経験のあるスタントマンが足りなかったのだろう。顔は隠しているけど、特徴のある目でばれてしまう。いわば、低予算映画ならではの苦肉の策だ。
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クリント・イーストウッドと並んでマカロニ西部劇の生んだ世界的大物スターのフランコ・ネロだが、そもそもハリウッド映画への出演は少なく、さらに当時のアメリカでは既に過去の人となりつつあったので、恐らくギャラはあまり高くなかったものと思われる。ヒロイン役のスーザン・ジョージも全盛期は『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』('74)辺りまで。悪徳実業家ヴェナリウス役のクリストファー・ジョージ(スーザンとは血縁関係一切なし)も'60年代のテレビ・スターで、当時はルチオ・フルチの『地獄の門』('80)やジェームズ・グリッケンハウスの『エクスタミネーター』('80)などB級映画専門だった。ショー・コスギだって当時はまだ無名。総じて主要キャストの出演料は、ネームバリューのわりに安かったはずだ。そのフランコ・ネロは、格闘技の経験がなかったために白装束のスタント・シーンは全てマイク・ストーンが担当。クロースアップのみネロが演じている。さらに、主人公コールはテキサス出身のアメリカ人という設定だが、ネロは生粋のイタリア人であるため、セリフは全て別人がアフレコで吹き替えている。
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なお、『007は二度死ぬ』('67)のブロムフェルドを彷彿とさせる…というか、明らかにパクっているドイツ人の小悪党フックを演じているのは、ゴーランがイスラエル時代にプロデュースを担当し、日本でも大ヒットを記録した性春映画『グローイング・アップ』('78)シリーズの主人公トリオの一人、デブのヒューイを演じて人気を博したツァッチ・ノイ。また、主人公たちに力を貸す便利屋ダラーズ役には、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』('85)のピーボディ老人役で知られるウィル・ヘアが扮している。

評価(5点満点):★★★☆☆
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参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス盤ボックスセット)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:B/時間:99分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:2/時間99分
発売元:Eureka Entertainment/MGM Studios/Hollywood Classics (2015年)
特典:オリジナル劇場予告編


by nakachan1045 | 2017-06-12 04:46 | 映画 | Comments(0)

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