なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「Mansion of the Doomed」 (1976)

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監督:マイケル・パタキ
製作:チャールズ・バンド
脚本:フランク・レイ・ペリリ
製作監修:アルバート・バンド
撮影:アンドリュー・デイヴィス
特殊メイク:スタン・ウィンストン
音楽:ロバート・O・ラグランド
出演:リチャード・ベイスハート
   グロリア・グレアム
   トリッシュ・スチュワート
   ランス・ヘンリクセン
   アル・フェラーラ
   マリリン・ジョイ
   ヴィック・テイバック
アメリカ映画/89分/カラー作品




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<あらすじ>
眼科学の権威であるチェイニー博士(リチャード・ベイスハート)は、ビバリーヒルズの豪邸で愛娘ナンシー(トリッシュ・スチュワート)と共に暮らしていた。ところがある日、チェイニー博士の運転していた車が交通事故を起こしてしまい、助手席に座っていたナンシーが失明してしまう。
それ以来、博士は娘の視力を戻すためにあらゆる実験を行ってきた。そしてようやく、彼は動物の生体実験で眼球の移植に成功する。これで娘の治療が出来る。そう考えたチェイニー博士だが、一つだけ問題があった。移植は生きたままでしかできない。つまり、死体から眼球を取り出しても意味がないのだ。しかも、人間の移植手術には人間の眼球が必要だ。当然ながら、健康な眼球を提供してくれるドナーなど見つかるはずがなかった。
そこで、博士はナンシーの元恋人である部下ブライアン博士(ランス・ヘンリクセン)に目を付ける。事故が原因で2人は別れてしまったのだ。娘を見捨てた男など許せない。助手キャサリン(グロリア・グレアム)の協力を得たチェイニー博士は、ブライアン博士の酒に睡眠薬を混ぜ、寝ている間に移植手術を行ってしまう。
術後の経過は良好だった。ところが、しばらくするとナンシーは再び視力を失ってしまう。原因は不明だ。切羽詰まったチェイニー博士は、行きずりの女性ヒッチハイカーや、偽の募集広告に応募してきた看護婦など、身寄りのなさそうな人々を次々と拉致しては手術を行うが、どれも失敗に終わってしまうのだった。
一方、眼球を奪われた被害者たちは地下室に閉じ込められていた。ブライアン博士を中心に一致団結した彼らは、脱走計画を準備する。秘かに壁に穴を掘る被害者たち。全員の脱走は不可能であるため、一人の女性が外へ出て助けを求めることになった。
事態に気付いて女性の後を追いかけるチェイニー博士とキャサリン。しかし、あと一歩のところで女性は車に轢き殺されてしまう。事故現場で女性の異常に気付いた警察が動き始める。もはや時間がないと悟った博士は、地下室の被害者たちを殺すべきか悩むのだったが…。
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'80年代にエンパイア・ピクチャーズの総裁として『死霊のはらわた』('85)や『ドールズ』('86)などB級ホラーの傑作を世に送り出し、'90年代以降もビデオ・ストレート専門のB級ホラー映画会社フルムーン・フィーチャーズを率いる映画製作者リチャード・バンド。そんな彼にとって、オフィシャルな初プロデュース作品となったのが本作だ。日本では劇場未公開、テレビ未放送、ビデオ未発売。まあ、確かにお世辞にも良く出来た映画とは言えないものの、しかし主演にはハリウッド黄金期のフィルム・ノワール映画を象徴する名優リチャード・ベイスハートにグロリア・グレアム、スタッフにはアンドリュー・デイヴィスやらスタン・ウィンストンやら後の大物が顔を揃えている。コアな映画ファンなら見逃せない一本と言えるだろう。
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で、オフィシャルな…との断りがつくのにはちゃんとした理由がある。恐らくご存知の方も多いとは思うが、チャールズ・バンドの父親は'50~'60年代に活躍したB級映画監督アルバート・バンド。もともとワーナー・ブラザーズの編集者としてキャリアをスタートし、フリーランスの監督として低予算映画を撮っていたアルバートは、'60年代にイタリアへ拠点を移してマカロニ西部劇やスペクタクル史劇などを数多く手がける。時はまさにイタリア映画の黄金期。B級娯楽映画とはいえ、予算は潤沢だし制作規模も大きい。5歳の頃から父親の作品に子役として出演したり、撮影現場の雑用係や助手などをしていたチャールズは、それこそフェリーニの『甘い生活』さながらの華やかな世界に身を置いて育った。しかし、そんな良い時代も長くは続かない。'60年代末にイタリア映画界のバブルが衰退しはじめると、父アルバートもすっかり仕事がなくなってしまい、一家揃ってほぼ無一文の状態でアメリカへ戻らねばならなくなった。時は1970年。チャールズが19歳の時である。
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父親に頼らず自立せねばと考えたチャールズ。いずれは自分でも映画を作ろうと秘かな野心を燃やしつつも、紳士服店の販売員などの職を転々とすることになる。そんな頃に知り合ったのが、『ドーベルマン・ギャング』('72)の脚本家として知られるフランク・レイ・ペリリ。帰国しても仕事のなかった父アルバートに、AIPのサミュエル・Z・アーコフを紹介したことから、バンド親子と家族ぐるみの付き合いとなったペリリは、チャールズが映画ビジネスを志していることを知り、金をかけずに手っ取り早く儲けるならパロディ映画が一番だと助言をする。本当はホラー映画を撮りたかったチャールズだが、なにしろ相手は業界の先輩で父親の恩人。自らのポケットマネーと知人からの借金で製作費を集め、ペリリの書いた脚本を基にチャールズ自身が演出を手掛けた初の自主制作映画が、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』のパロディ映画『Last Foxtrot in Burbank』('71)だった。ところが試写を行っても配給先が決まらず、仕方なしにL.A.市内の映画館2軒をハコ借りして劇場公開することに。映画館側の取り分はロビー売店の売り上げのみで、チケット代の売り上げは丸々こちらのものになるという好条件だったのだが、なんと初日の入場者はたったの2人。すぐに上映は打ち切られ、これを機に映画の道へと意気込んでいた若きチャールズにとって、ことのほか苦い経験となってしまったのだった。
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ということで、再び生活のために職を転々とすることとなったチャールズだが、やがて思いがけず転機が訪れる。話が長くなるので詳細は割愛するが、とある転売ビジネスが成功して思いがけない大金を手にし、それを元手に再び映画製作に乗り出すこととなったのだ。脚本の執筆は再びペリリに依頼したものの、今度こそは失敗しても悔いの残らないよう、自分の好きなホラー映画を撮ることに。得意な金の計算やセールスに注力するため、監督は『Last Foxtrot in Burbank』にも主演した俳優マイケル・パタキに任せることにした。さらに、ペリリの紹介でB級映画専門の会社グループ1(『ジャイアント・スパイダー/大襲来』など)が配給を担当することも決定。そうやって完成したのが、エンパイアの前身であるチャールズ・バンド・プロダクションの第1回製作作品『Mansion of the Doomed』だったというわけだ。
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交通事故で視力を失った愛娘のため、人々を拉致しては眼球を取り出して移植手術するドクターとその愛人の助手。そう、基本プロットはジョルジュ・フランジュの傑作『顔のない眼』('59)のパクリである。まあ、そもそも『顔のない眼』のパクリといえば、ジェス・フランコ監督の『美女の皮をはぐ男』('61)を筆頭として枚挙にいとまないわけだが、本作の場合は皮膚じゃなくて眼球を奪うというところがミソ。しかも手当たり次第に睡眠薬を飲ましては手術しまくる(笑)。ストーリーの半分近くは、チェイニー博士があの手この手で次なる犠牲者を物色するシーンや手術シーンに費やされているため、正直なところだんだんと飽きてきてしまうのだよね。一応、最初の手術シーンでは眼球を取り出す直接的なゴア描写も見られるものの、以降はスプラッターな見せ場も全くなし。こういってはなんだが、無駄をなくせば60分そこらで完結してしまう話を、ダラダラと無理に引き延ばしているという印象は否めないだろう。
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一方、眼球を奪われた犠牲者たちが薄暗い地下牢に閉じ込められている様子はなんとも不気味。目の部分に穴が開いて落ち窪んでしまった人々の集団は、それだけでなかなかのインパクトだ。特殊メイクを担当したのは、後に『エイリアン2』('86)や『ターミネーター2』('91)、『ジュラシック・パーク』('93)でアカデミー賞に輝くスタン・ウィンストン。当時はまだテレビを中心に活動していた頃で、クレジットでもスタンリー・ウィンストンと表記されている。本作と同時期には、チャールズの父アルバートの『ドラキュラ・ゾルタン』('76)にも参加していた。また、撮影監督にはその後ハリソン・フォード主演の『逃亡者」('93)やシュワルツェネッガー主演の『コラテラル・ダメージ』('01)などのメジャー映画を監督するアンドリュー・デイヴィス。彼は続く『クラッシュ!』('76)でもチャールズ・バンドと組んでいる。
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そして、監督は先述したようにチャールズの呪われた(?)処女作『Last Foxtrot in Burbank』に主演し、父アルバートの『ドラキュラ・ゾルタン』でもヴァンパイア役を演じていた俳優マイケル・パタキ。一般的には『ロッキー4/炎の友情』('85)で演じたロシア側プロモーター役が最も有名かもしれないが、その一方で『惨殺の墓場』('74)や『ソンゲリア』('80)、『ハロウィン4/ブギーマン復活』('88)などホラー映画への出演が多い人だ。本作が初めての監督作だったわけだが、そうした経験を買われた部分もあったのかもしれない。演出自体はそつがないというか、結構こなれているという印象。ただ、これといった個性のようなものが感じられないため、全体的にはテレビムービーのような印象が残る。
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最後にキャストについても言及しておこう。チェイニー博士役には『夜歩く男』('48)や『テレグラフ・ヒルの家』('51)などのフィルム・ノワール映画のヒーローとして知られ、フェリーニの傑作『道』('54)の綱渡り芸人役でも有名なリチャード・ベイスハート。助手キャサリンには、同じくフィルム・ノワールのミステリアスなヒロインとして『十字砲火』('47)や『孤独な場所で』('50)などに出演し、『悪人と美女』('52)でアカデミー助演女優賞を獲得したグロリア・グレアム。どちらもハリウッド黄金期の一流スターだっただけに、なるほど演技はB級ホラー映画に似つかわしくないほどしっかりとしている。トンチンカンなセリフにも風格が漂ってしまうところが逆に面白い。また、第1のターゲットにされるブライアン博士役には、当時まだ無名だった『エイリアン』シリーズのビショップことランス・ヘンリクセン。被害者たちのリーダーとして、後半の脱走計画を企てていくことになる。そのほか、被害者の一人として、イルサ・シリーズ第2弾『アラブ女地獄/悪魔のハーレム』('76)などグラインドハウス系カルト映画でお馴染みの黒人セクシー女優マリリン・ジョイが登場。また、脚本のペリリがもともとスタンダップ・コメディアン時代にレニー・ブルースの相方だったことから、ブルースの母親サリー・マーがブライアン博士の自宅の大家役で顔を出している。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.37:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:83分/発売元:Full Moon Features (2014年)
特典:グラインドハウス予告編集

by nakachan1045 | 2017-06-15 19:34 | 映画 | Comments(0)

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